「なんなのよこいつら〜!」
「くわばらくわばら」
ヨヨコ先輩がスマホを見ながら荒ぶってるので手を合わせて拝む。
「ヨヨコ先輩、荒れてるっすねー」
「先輩、そんな気にすること無いじゃないですか、落ち着きましょうよ」
俺が宥めると、先輩の剣幕がさらに強まった。
「黙ってられないわよ!知名度利用して女と遊んでるだけで実力は大したことないとか言われてるのよ!湊が!」
「まあまあ、アンチコメントなんて気にしても仕方ないじゃないですか」
「嫌ったら嫌なの!湊がバカにされてるのが!許せない!」
先輩がこんな風に荒れてるのは、俺のチャンネルにアップされた動画がアンチに燃やされた事が原因だ。
先日撮影した結束バンドのMVのために公園で遊んだ動画、MVに俺は映らないと1号さんは言ったが、俺のチャンネルに上がらないとは言ってなかった。
宣伝のために先に出来上がった動画を俺も確認して、アップロードした。
動画内でも俺と喜多ちゃんが同級生で仲がいいこと、結束バンドとは普段から仲良くしてることなどは書かれているのだが、最近ケモノリアとの動画を上げていたことと合わさって『咲良湊はガールズバンドとばかり仲良くしてる、そのために知名度を利用してる』とアンチ達が燃やしにかかってきてるのが現場だ。
でも、そんなに否定する気もない。たまたまだけどガールズバンドと絡む事が多いのは本当だし、そんな日々を楽しんでるし。
という訳で放置していたのだが、俺よりもヨヨコ先輩が我慢の限界だし、1号さんや結束バンドも少し申し訳なさそうにしていた。
皆に辛い思いをさせたままというのも気持ちが悪いので、ここは俺がかっこよく収めてみせよう。
念のため撮っていた短い動画を投稿する。
内容は炎上してる内容についての“自慢”をする話。
アンチが燃やしてるけど、知名度が高いのはそもそも実力が高いから。
たまたま近くにいたり交流を持ったのがガールズバンドなだけで、狙って行った訳ではない。
ただ女の子は大好きだし、音楽的にも外見的にも素晴らしい人たちと、たまたま繋がりを持てた俺は幸せ者だ。
という自慢。
そう、廣井姐さんと出会った時から続く俺の幸運を、自慢した。
「あっ新着……」
早速気づいたヨヨコ先輩が見てくれて、隣のあくびちゃんも見てくれてる。
「おお、湊さん、好戦的っすね……」
「そうかな?ただ皆が好きって言ってるだけだし」
「このタイミングで火に油を注ぐのが……まあロックンローラーっすもんね」
「そうそう、俺ロックンローラー」
「湊くん、クッキーまだあるよ〜」
「まじ?食べる〜」
ふーちゃんのクッキーを食べに行こうとしたところで襟首を掴まれた。
「み〜な〜と〜!さっきから私がアンチコメに対応してたのに!なんでこんな煽るような動画あげてるのよ!」
「誰がどの立場で何をしてるんすか……」
動画からヨヨコ先輩がコメント欄で戦ってるのを見たあくびちゃんが呆れてる。
「ヨヨコ先輩にそんな事で時間取って欲しくなかったんですよ、アンチなんて俺たちが仲良くしてる方が悔しがるんですから、楽しくやりましょうよ」
それでも俺がバカにされたのが悔しい、嫌だ。という表情を崩さないでいてくれる先輩は優しい。
優しくて真面目な人だから、俺の代わりに怒ってくれる。
そんな人がいるならアンチがちょっと騒いでるくらい、本当にどうでもいい事だ……ということをわかってもらおう。
「なによ、急に抱きしめてきて」
「ほら、ハグするとストレスが減るらしいんで、アンチなんて俺たちの前では無力なんですよ、気にしないで今日も楽しくやりましょうよ」
「むぅ……」
ヨヨコ先輩も俺の事を慮ってか、メンバーの前ながらも手を回してハグで返してくれる。
ストレス緩和のためにこのまま少しのんびりしようかと思ってると、勢い良く扉が開いた。
「話は聞かせてもらっター!」
クノイチの格好をしたイライザさんが現れた、なんで?
「アイエエエエ!ニンジャ!ニンジャナンデ!?」
「アンタのその話し方がなんでよ」
「様式美ってやつダヨ!」
俺が先輩を抱きしめたままなので、先輩越しにイライザさんとハイタッチする。
「埋もれてる!埋もれてるのよ!私が!」
「「ごめんなさい」」
俺とイライザさんに比べて身長が低い先輩がなんか可哀想な事になってたので謝って、改めて皆でふーちゃんのクッキーを食べるために席に着いた。
「で、どうしたんですか?イライザさん」
「ズバリ!湊とラブラブ見せつけ大作戦ダヨ!」
「「「ラブラブ見せつけ大作戦!?」」」
名前だけでどう考えてもぶっ飛んでるとわかる作戦。すごい、さすがはイライザさんだ。むふーと自信ありげに息を吐く姿に俺たちはなんだその作戦はというような目を向けることしかできない。
「湊カラ女の子と仲良くしにいってルのがダメなら、私たちから湊にくっつけばいいヨ!」
説明の通りに抱きついてくるイライザさんを見て、それはつまり、いつものイライザさんなのでは?と思った。
「確かにそうですね〜、幽々も動画やってみたかったんです〜」
反対からピトッとひっついてくる幽々ちゃん、これもいつも通り。
「かなりいつも通りな気がするけど大丈夫かな」
「大丈夫っすよ、湊さんのいつも通りはだいぶ狂ってるんで、たぶん動画になります」
あくびちゃんが無慈悲な宣告をしてスマホを弄りだして、少しするとこちらへ向けた画面には新たなチャンネルの設定画面があった。
「じゃ、FOLTでチャンネルっくるっす、湊さんにゲームさせる日が来たっすね」
「一緒にお菓子作りしよーねー」
「なになに〜、なんか楽しそうな話してるじゃ〜ん!」
廣井姐さんも来て、皆でやりたい事をやるって事にして、銀ちゃんに確認を取りに行ったら、銀ちゃんも混ざりたいってことでもちろんOKが出た。
そして、記念すべき一発目の動画は俺のために最も怒ってくれたヨヨコ先輩に決まり、企画内容は俺に伏せたまま準備したいとの事なので、他の皆で演奏して呼び出されるまで待った。
準備された部屋に入って、俺は皆で演奏したことを後悔した。なぜ、ヨヨコ先輩に誰もついていかなかったのか。
「ありがとうヨヨコ先輩、気持ちだけで嬉しいよ」
「気持ちだけじゃなくて全部受け取りなさいよ」
「だって!メントスコーラじゃん!なんでメントスコーラにこだわるの!?」
「いいじゃないメントスコーラ!あんたのチャンネルでも伸びたでしょ!」
「あれはどっちかって言うとウィスキーを炭酸にした100%ハイボールの力だって!廣井姐さんが凄いだけだから!」
「なら私のメントスコーラもその半分はいけるはず!いけるはずだから!」
「助けて姐さーん!」
メントスコーラで押し切ろうとするヨヨコ先輩と逃げたい俺、揉みくちゃになってる姿が撮影されててそっちが伸びた。
ちなみに、後日メントスコーラの力を過信したヨヨコ先輩が一人で撮影したただのメントスコーラの再生回数は悲惨だった。
お礼です
⭐︎9をくださった絶許否者様
⭐︎5をくださったPLATINUM様
感想をくださったなまこな様
皆様ありがとうございます!
映画観てきました!
ラストが高架下すぎる日々を後悔してんだよってそう言い逃したあの日みたいでめっちゃRE:RE:でしたね!