酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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71話

 

「MVめちゃくちゃ再生されてるー!やっぱり本格的な映像と宣伝があると全然違うね!」

 

「曲が良かったからでしょ」

 

 驚く虹夏ちゃんだけど、リョウがあれだけ悩んで、最後には結束バンドで完成させた曲。

 映像で1号2号さんが、俺の動画で宣伝が、それぞれの力はあれど何よりも曲が良かったから伸びた。

 アナリティクスで見ても最後まで見られてる割合が高いのと、繰り返し視聴されてるという結果が出ている。

 

 手を差し出してきたリョウに、握手で返した。

 

「湊の言ってたこと、なんとなくわかった。……ありがとう」

 

「おう、伝わったならよかった」

 

「やっぱり怪しいわ!なんか通じ合ってる!このまま湊くんがリョウ先輩といい感じになって悪い影響がぁ!」

 

「どっちかって言うとリョウは悪い影響与える側だよ、今回も結束バンドが迷惑かけちゃってごめんね、湊くん……」

 

 虹夏ちゃんが気にしてるのは俺がガールズバンドとばかり絡んでるとアンチに燃やされたこと。それほど気に病んで無さそうなのは俺の動画と、たぶんFOLTのやつも見てるから。

 

「ほんと気にしないで、動画で見てもらった通り気にしてないから。むしろこっちのアンチがそっちの動画にコメント残しててごめんね」

 

「傷心女達の日記帳代わりにされるよりかはいい、曲に変なエピソードつけるのやめてほしい」

 

「わかる……」

 

 気持ちがわかりすぎて深々と頷くと、ひとりちゃんも同じように頷いてた。

 

「じゃあ悪い話は置いといて、順調な出だしってことで祝ってこー!」

 

「「「「おー!」」」」

 

 虹夏ちゃんの掛け声で手を挙げる中、喜多ちゃんだけは少し悩むような顔をしていた。

 

 

 

 少し後、PAさんと一緒にいると喜多ちゃんがやってきた。

 

「あの……PAさん、私の歌ってどうでした?」

 

「えっ、あー……補正しがいがあって私は楽しかったですよ?」

 

「フォローになってないですよ」

 

「でも〜」

 

 へにょへにょと弱るPAさんだが、音楽好きとして嘘をつかない精一杯のフォローがあれだったんだろう。

 

「ちなみに俺からの感想は喜多ちゃんのロックンロール魂は伝わるけど、曲への解釈が足りないかな。曲と歌詞が作ろうとしてる世界観に喜多ちゃんの強弱の付け方とか表現が合ってない」

 

「もはやフォローする気がゼロね!」

 

「求めてないだろ?ロックンローラー」

 

「そうだけど傷つくものは傷つくのよ!……ちなみに、改善案はあるのかしら?」

 

「あるよ、曲の解釈を深めることと、どう表現するかを突き詰めること」

 

 例えば『ありがとう』という言葉を言う時に、元気に言うのか、しんみりと言うのか途中で少し詰まらせるのかなどなど、ありがとうの一言を何パターンも使いこなして、その場面で相手に良い印象を与える話し方をする。

 なんて事は割と皆やってるし、喜多ちゃんなんかめちゃくちゃ上手い。

 

 なら、それが曲ならば?

 音程を合わせる事だけが大事なのか?一曲を通してどこで声をどれくらいの大きさで、ここはビブラートを入れるのか入れないのか、声は掠れさせた方がいいのか、艶やかな方がいいのか、その度合いは?

 

 一つの曲を歌い切る中で、どういった流れで何を表現したいのか。

 

 一言一句、違わない歌詞、その中で何をどれだけ表現するのか、それが大事で、それを詰めるためにヨヨコ先輩とよくカラオケに行く。

 

 というのを説明すると、喜多ちゃんは何か意を決して、ひとりちゃんの方へと向かった。

 

「ちなみにカラオケボックス指定してましたけど、なんであそこを勧めたんですか?」

 

「たしかに、なんならここで歌っても良かっただろ」

 

 STARRYを出ていく二人を見ながら、PAさんと店長さんに質問されたのでスマホの画面を見せた。

 

「今日、ヨヨコ先輩が行ってるみたいなんですよね、今から連絡してアドバイスお願いしてみます……ちょっと怖いですけど」

 

「これは……確かにちょっと怖いですね……」

 

「通知の数やばいな、まだ増えてるし……」

 

 今日はMVの再生が好調だし、PAさんに会いたいしでSTARRYに顔を出すだけで特別な用事がある訳ではない。と言っておいたから、ヨヨコ先輩からの練習に付き合え連絡が止まらない。

 

「通知はいつも通りなんですけど、呼ばれたらだいたい行くんで、今日行かないとなると不機嫌にならないかが怖くて、なんならいつも通り食べ物の注文も済ませてくれてるんですよね……」

 

「その通知、いつも通りなんですね……」

 

「メンヘラかよ……」

 

 メンヘラかは怪しいけど、俺とヨヨコ先輩がお互いに依存してる部分があるのは間違いない。

 お互いの辛い時期を支え合って、戦い抜けてきた。

 俺たちの音楽にはもうお互い切っても切れない何かがある。

 

「ちなみに、廣井姐さんが困ってる時はもっとたくさんの通知とちょいちょい電話が来ますし、ほっとく訳にも行かないので夜遅くに駆けつけることになります」

 

「あいつ……」

 

「リョウは困るとひたすら電話してきます、行くまでまともに使えなくなります」

 

「湊くん、ただでさえ忙しいのに……」

 

 PAさんが頭を撫でてくれる。

 こんな風に仲良くするのも最近は黙認状態で、どちらかというと店長さんも慈しみの目を向けてくれてる。

 

「お姉ちゃんてさー、湊くんに対しては大人〜って感じだよねー」

 

「ぬいぐるみが無いと眠れないのに……ふっ」

 

 そんな風に大人な二人に癒されてると、虹夏ちゃんとリョウが来た。

 

「お前らと違って湊は揶揄ってこないし素直に尊敬してくれてるからな!」

 

 ぬいぐるみ弄りをしたリョウを捕まえようと店長さんが手を伸ばすが、リョウが俺を盾にして隠れる。

 

「まあ、湊の尊敬が心地良いのはわかる。私も作曲で尊敬されてるのが気持ちよくて、ついついご飯を奢ってもらってしまう」

 

「それ、私もって言わないでくんない?湊にそんな事させてないし」

 

「風評被害ですね〜」

 

「まあその真偽は置いといて、喜多ちゃんの悩み相談に乗ってくれたみたいで、ありがとうね湊くん」

 

「置いとくなよ」

 

 店長さんの言葉を無視したまま虹夏ちゃんが俺に歩み寄ってくる。

 正面からほぼ0距離になったところで、さっき俺を盾にしたまま後ろにいたリョウに羽交締めにされ、虹夏ちゃんに目の前で手をパチンと鳴らされ拝まれた。

 

「図々しいお願いだけど、私たちのレベルアップも手伝って!お願いします!」

 

「報酬は今背中に当ててる胸の感触」

 

「報酬の押し売りすぎる、逃がす気が無いだけじゃん」

 

 リョウの身長と力じゃ俺を止めれるはずがない、かと言って無理に逃げようとしたら目の前の虹夏ちゃんにぶつかって怪我をさせるかもしれないから動けない。

 

「変な誘惑はやめてください!」

 

 そんなリョウと虹夏ちゃんの策略を壊す圧倒的な(おっぱい)

 リョウよりも圧倒的に大きな質量を持つPAさんによって救出され、抱き寄せられるままに抱き返す。

 

「リョウ、お前の誘惑が効かなかったわけじゃない、でもPAさんの前では無力だ」

 

「くっ……私の均整が取れすぎた美しすぎるプロポーションが負けるなんて……巨乳好きめ!」

 

「どんだけ自己肯定感高いんだよ……」

 

「でも、リョウの誘惑が失敗したって事は……」

 

 虹夏ちゃんが悲しそうな声をあげる。

 PAさんの感触を楽しんでるせいで背中を向けたままなのもあって、断ると思われてるんだろうか。

 

「いや、普通に頼んでくれたらできる限り協力するよ?別にドラムもベースもそこまで上手くないけど」

 

「……もー!リョウ!だから言ったじゃん!普通に頼もうって!」

 

「おかしい、未確認ライオットにSIDEROSが出る以上、ライバルの私たちを強くしすぎるのはリスキーなはず、郁代は初心者で同級生だからともかく、私たちまで強くしたら危ないと思うはず」

 

「自己肯定感高いのか低いのかどっちだよ、お前との友情をもっと信じてくれよ。あと、ヨヨコ先輩はそんなんじゃ負けねーよ」

 

「湊、女を抱きしめながら他の女の話するのは良くないと思うぞ」

 

 アンチの言う女の敵と言うのはあながち間違いでは無いのかもしれないと、ひとしきり揶揄われた後、頼まれたのはギター演奏。

 個別の技術指導なんて、専門の楽器じゃないので二人にできるようなものは無いから、合わせをして精度を上げる。

 

 集中して遅くまで練習しすぎたせいで、伊地知家でお泊まり会となった。





お礼です!
⭐︎9をくださったライナ・ナカジマ様、川崎罪歌様、黒耀様

⭐︎8をくださったれいもんど様

感想をくださったorange333様、田中読者様、なまこな様

皆様ありがとうございます!
皆様に幸あれ
具体的には家にクッキーアイスがあることで無敵の精神状態になるくらいの幸あれ
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