急遽決まったお泊まり会in伊地知家。
別にそれほど家が遠いわけでも無いけれど、遅い時間だし、ひとりちゃんと喜多ちゃんがお泊まり会をするということらしいので、こちらのグループでもということだ。
「いやー、お泊まり会でピザ食べるのって、定期的にやりたくなるよねー」
「ピザはとっておきの日なんだってやつだね」
「マックは晩御飯ではないもんね」
「でもソースより醤油でしょ」
虹夏ちゃんとイェーイ!と手を上げるが、リョウだけはクールな感じで流して、目線はピザへ戻されている。
「いやー、学校だとこういう即興の返しできる人いないから、やっぱりお泊まり会は楽しいねー」
「そういえば二人は進学校だったよね」
「そうだよ〜、だからバンド活動とかに理解がないんだよね〜」
「じゃあこれから実力で理解させるしかないね」
熱いことを言ったつもりなのに、リョウが咽せた。
口の中のものを咀嚼して落ち着かせると、ニヤリと笑う。
「わからせおじさんだ、虹夏、湊と一夜を共にするのは危険」
ムカついた。
「確かに、虹夏ちゃんは魅力的だから危険かもなー、リョウと違って」
「さっき私の誘惑が効いてたくせによく言う」
「それはそうだ、負けました」
「湊には色仕掛けが有効、今後も活用していこう虹夏……あ、虹夏には無理かもしれない……」
そう言うリョウの視線は虹夏ちゃんの胸へと向けられている。
「うるさいわ!」
俺に魅力的と言われた時は少し照れた虹夏ちゃんだが、自身の胸をいじられてすかさず怒りリョウにチョップを放った後でため息をついた。
「全く、女の魅力は胸だけでは決まらないんだよ、ね?湊くん?」
「おっしゃる通りで!」
そうだ、小さい胸は小さい胸でいいものだ。
「じゃ、とりあえず私の良いとこ10個くらい言ってみて」
ヨヨコ先輩みたいなこと言い出したな虹夏ちゃん。先輩で慣れてるからいいんだけど。
「言葉にしてしまったら、その枠から外れると虹夏ちゃんの魅力が損なわれるみたいで嫌じゃない?」
「……そうかも」
「ただ、俺は今の虹夏ちゃんも、これから変わっていく虹夏ちゃんも好きでいるはずだよ」
「湊くん……」
よし!ありがとうヨヨコ先輩!先輩が何かある度に夜中でも電話かけてくるから、この手の面倒な質問も慣れたものだ。
「虹夏、いいように言いくるめられてる」
「え!?そんなわけ!」
「リョウ、上手い下手だけじゃなくて言葉にできない、言葉にせずに感情のままで取っておきたい音ってあるだろ?それと同じだよ」
「……そうだね、ごめん」
リョウも納得してくれたことで完璧に乗り切った。
だいたい10個もいいとこって出るもんなの?世の中の人は。
試しにやってみるとして、顔が可愛いと笑顔が素敵は分けていいのかな、っていうか容姿に言及していいのか?
家事ができて勉強もできて、ドラムもできる。
周りをよく見てサポートもできて、助けを求めることもできる。
いつも笑顔で話しやすいし、リアクションが良いから話すのが楽しくなる。
趣味も合うし、俺の動画を見て話題として振ってくれる。
他には……」
「湊くんストップストーップ!声でてるし!結構な数聞こえてるから!」
「あーあ、湊くんと仲良くしたいから聞いちゃったところは枠にハマっちゃうよー」
「うわー、湊のせいで虹夏の可能性がー」
めちゃくちゃ棒読みで責めてくるじゃん。とはいえ、どこから聞いてたかはわからないにしても最後は必ず聞いてくれてるわけだ。
「ごめんな枠にハメちゃって……これからもよろしく、視聴者」
「最低の二人称だよ!」
楽しく話して食べて、二人がせっかくだからと大量に注文したピザも最後には俺がどれだけ食べれるかのチャレンジにされたり、お風呂で無限シャンプーされた時にちょっと
「おっと〜、湊くん、まだ寝かせないぜ〜」
「まだ聞きたい事がある」
布団に入ってもう寝る気満々の俺に、ベッドの上から二人が語りかけてきた。
「修学旅行の夜かよ、なに聞きたいの?」
「廣井さんと仲が良い理由は動画でも知ってるんだけどさ、ヨヨコ先輩と仲が良くなったのはなんでなの?」
「付き合いは結構短いはず」
「そうだけど、たまたま出会った時にお互い裸の心でぶつかったのが良かったんだと思う。本音でぶつかって、認め合ったら親友だろ」
「ヤンキー漫画の話してる?」
「ロックの話だよ」
ヨヨコ先輩が気にするから動画にはしてなかった出来事。
二人になら話してヨヨコ先輩の事を知ってもらうのもいいかもしれない。
一方その頃、後藤家にて
「今日は特訓に行ってよかったわね!」
「はい、大槻さんのアドバイスで喜多ちゃん、良くなった気がします」
「それもだけど、ヨヨコ先輩と湊くんの出会い!あの二人って付き合いはそれほど長くないのに仲良いから、ずっと気になってたのよね!」
「長さよりもどれだけ本音でぶつかれたか……ですよね……うまく話せなくてすみません……」
「それもひとりちゃんの性格よ!それにヨヨコ先輩も偶然お互いが不安定な時期に出会って、ぶつかるだけで終わりそうなのを廣井さんが繋いでくれたから、運が良かったって言ってたじゃない」
「そ、そうですね……」
「あー、思い返しても素敵だわ、私にもあんな出会い無いかしら」
「あの出会いは喜多ちゃんの性格的にできないと思います」
「そうね、定期演奏会をめちゃくちゃにしたり、受賞の垂れ幕切ったり、なかなかできることじゃないわね」
「それに、そんな事しなくても、喜多ちゃんなら人と仲良くなれるはず……です……すみません私なんかが調子に乗って断言して!」
「いいのよひとりちゃん落ち着いて!もう電気消してるんだから体がバラバラになったら見つけられないの!」
必死にひとりを繋ぎ止めて、喜多は今日聞いた話を思い返す。
「それでもやっぱり、羨ましいな……」
お礼です!
⭐︎10をくださったなぎ02468様、瑞葉様、タカヒロ1982様
⭐︎9をくださったシェメ様
⭐︎1をくださったサブタレイニアン様
感想をくださったなまこな様、田中読者様
皆様ありがとうございます!
次回から1話かもしれないし複数話かもしれないですが、過去回っす
よろしくお願いします。
皆様に幸あれ
具体的には米が買えるくらいの……米……どこ……