酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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引っ越し、荷解きと部屋の配置やらなんやらまでだいたい終わってようやく落ち着きました。
明日から新しい仕事なので、そっちはそっちで大変です。


76話

 

 俺が伊地知家に泊まってヨヨコ先輩との出会いについて話してから数日、喜多ちゃんがひとりちゃんと共にPAさんの方へと向かって行った。

 

「あの……PAさん、歌の撮り直しさせてください!」

 

 編集作業というのは楽ではない。

 せっかくしてくれたのにもう一度、となるとPAさんの困った表情も納得できるというもので、ここで一発、何か掴んできた歌を披露してやる気を出させるみたいなイベントを起こしてくれるはずだと喜多ちゃんの方を見ると目が合った。

 

 喜多ちゃんが力強く頷いて口を開く。

 

「報酬に湊くんを好きにしてください!」

 

「やります!」

 

 PAさんが食い気味に返事をして、喜多ちゃんはうまくやったでしょ?とでもいうようにウインクしてくる。

 アイコンタクト、全然心通ってないや……

 

 というわけで好きにされる事になったのだが、なんとお泊まりに決まった。

 伊地知家にお泊まりはずるいが家の中には見られたくないものもあるとの事で、お泊まりでどこかに出かけるとなった。

 俺はこの前リョウのテントを見てからキャンプがしたかったのだが、かと言ってまだ寒い季節、PAさんをテントで寝かせるのは申し訳ない。

 

 というわけで、間をとってグランピングをする事にした。

 

 

 

「キャー!オシャレな室内!プライベートサウナ!プール!ビリヤード台!湊くん!今日は本当にありがとう!」

 

「プールは流石に入れない……いや、今度のMVにぼっちの水着を……」

 

「風邪引かせる気か!」

 

「オ………オオオオシャレ空間……でも、自然の中だからまだマシかも……」

 

「ひとりちゃん!成長したわね!じゃあ湊くんに借りたランタンスピーカーを置いて……」

 

 喜多ちゃんがドラマのBGMのような音楽を流すとひとりちゃんが溶けた。

 と、まあだいぶ騒がしくなったのは俺とPAさんがその場で話をしたのを喜多ちゃんが聞いて、同行したがったから。

 

 保護者(PAさん)がいるので親を説得しやすく、遊ぶなら結束バンドを動画に映していいから動画にしやすく、そうなると中々にお高い費用をPAさんが負担することなく経費にできる。

 そういった諸々があって、隣接する隣接する三棟を借りて、俺とPAさん、1号2号さん、結束バンドという部屋分けでお泊まりへと来ていた。

 

「じゃあ自由行動だから、とりあえず荷物置いたら各自自由な感じで」

 

「「「「はーい!」」」」

 

 

「わー、こっちも広いですね〜」

 

「二人で泊まるには十分すぎますね」

 

 一番広い棟は結束バンドに渡したにしても、やはり施設だけあってリビングも寝室も風呂もかなりの広さで、ゆったりと体を休められそうだ。

 

「店長に悪い気もしますね」

 

「それはPAさんじゃなくて喜多ちゃんが悪いと思いますよ」

 

「ふふっ、確かに従業員総出で出かけるなんて提案なかなかできないですね、その真っ直ぐさが可愛いところでもあるんですけど」

 

 店長さんもそんな感じで喜多ちゃんのわがままにOKを出して見送ってくれていた。

 STARRYでPAの仕事はPAさんが行うのが基本だけど、体調を崩した時のために当然代役の伝手はあり、バイト方面ではいつも来ている廣井姐さん、オタ活でお金を無くしたイライザさんが入り店が回される事になったらしい。

 

「喜多ちゃんのいいところですね、とりあえずやってみたいが言えること」

 

 やってみたいと言うと自分が不安に思ってることなんかすっ飛ばして話が進んでいったりするものだ。

 

「湊くんのいいところでもありますよ、他人事みたいに言ってますけど」

 

 そう言ってPAさんが頭を撫でてくる。

 言われてみたらその通りなんだけど、自分を客観視できてないのとか、喜多ちゃんと同じように店長さんやPAさんみたいな大人から子どもらしくて可愛いと思われてるのかと思うと少し恥ずかしくなる。

 

「ちなみに、湊くんの方が喜多さんよりも子どもっぽいです……というか少年っぽいというか、可愛らしいですよ?」

 

「うっ……ぐぅうううう……」

 

 恥ずかしいのにPAさんから揶揄われるのはなんだか悪い気がしなくて、それ込みでもっと恥ずかしくなってニヤける顔を隠しながらうずくまってしまう。

 

「可愛いですよ〜、湊くんは音楽漬けから最近色んなことを初めて情緒を育ててるんですから、それでいいんですよ〜」

 

 うずくまった俺を楽しそうにPAさんが抱きしめて撫で回してくるからどうしようも無くなって来たところで、ザパーン!と音がした。

 誰かプールに飛び込んだの!?今まだ冬なのに!?

 

「サウナの後の水風呂にはいいんですけど、寒くて出られないですー!」

 

 喜多ちゃんの叫びが聞こえた。

 確かに寒いと水の中の方があったかかったりするよね……

 というかプライベートサウナ、行きたいな。

 そのための水着もちゃんと持ってきてある。

 

「PAさん、俺もサウナ行きたくなってきました!」

 

「ふふっ、行きましょうか」

 

 早速着替えてサウナへ行くと、ロウリュの液もあって小さいながらも良さげなサウナだった。

 

「湊、待ってた」

 

 中にいたリョウと握手を交わす。

 場所選びの時からリョウと俺はこのサウナが気になっていたし、楽しみにしていたのだから、実際に設備が良いとなると喜びもひとしおだ。

 

「郁代で検証したけど、やっぱりこの気温だとプールに入るよりサウナと外気浴で良さそう」

 

「甘いなリョウ、整う場所も必要だろう」

 

「まさか!?」

 

 リョウがサウナの扉を開けて俺とPAさんの棟のリビング、ガラス張りのあたりを見るとこちらを振り返り、サムズアップした。

 

「湊、今度テントサウナも一緒にやろう」

 

「もちろんだ相棒」

 

 俺とPAさんの棟には、本来外にあったビーチチェアをいくつか中へ入れ下にタオルを敷く事で、室内の快適な温度で作られた整い空間が作られている。

 これでサウナ、外気もしくはプール、適温の室内で完璧な整いループができているわけだ。

 

「二人とも嬉しそうですね〜」

 

 リョウと喜びを確かめあっていると、PAさんもサウナの中へ入ってきた。

 スタイルがいいのは知っていたけれど、ビキニ姿を見ると改めてそれを思い知る事になって緊張する。

 

「あ……あの、はい、サウナでテンション上がっちゃって……」

 

「ふふっ……照れてるんですか?……やっぱり、可愛い」

 

「湊、顔赤くなってる」

 

「サウナのせいじゃないか?」

 

「下手な誤魔化し、PAさんはもちろん、さっき私の汗だく水着姿にも一瞬ドキっとしてたのはバレてる」

 

 完全にバレてる。

 仕方ないと思うんだ、リョウも綺麗だし水着姿にドキドキするのは男の性だ。

 

「みんな綺麗だからつい……」

 

「ねぇ、みんなって言うからには私も入ってるのよね?私への視線も反応もほぼ無かったけど、入ってるのよね?」

 

 さっきから会話を控えて耐えていた喜多ちゃんが立ち上がり、俺の肩を掴んで揺さぶった。

 

「それとも何かしら?リョウ先輩とPAさんへの反応の違いを見るに、やっぱり湊くんは胸が大きくないと照れもしないのかしら〜?」

 

「そんな事ないよ〜、今まさに喜多ちゃんにドキドキしてるよ〜」

 

「嘘なのが丸わかりよ!」

 

 別に嘘というわけでもなかったのだが、PAさんの水着姿と比べたら全然問題ないとは思っていたので、甘んじて喜多ちゃんの怒りを受け入れ、そのまま手を引かれプールへとダイブさせられた。

 

「冷たっ!まだ俺あったまってなかったのに!」

 

「奇遇ね、私もよ!さっぶい!」

 

 水から出た顔の部分がすごい速さで冷えていくせいで思わず水中に潜ってしまう。

 しかし、ここは覚悟を決めて喜多ちゃんより先に出て、サウナへ入ってドヤ顔しないといけない。

 

 喜多ちゃんの悔しそうな顔を思い浮かべると元気が出てきたので、やってみると、案の定悔しそうな顔をしてくれて気持ちがすっと晴れた。




お礼です!

今回期間空いたので抜けがないか不安です。
抜けてても気にしないでください、もしくはアピールしてください。

⭐︎10をくださったvanillaman様、NAJIN様
⭐︎9をくださった野鳥祝詞様、シリコンドル様、じゃもの様、ブレグ様、新宿邪ンヌ様
⭐︎7をくださったyua_an様
⭐︎2をくださったアンモニアしゃちょー様

感想をくださった田中読者様、なまこな様

皆様ありがとうございます!
皆様に幸あれ!
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