酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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79話

 

 色んな意味で思い出に残ったグランピングから帰ってくると、次の週末には知名度向上と新曲のアピールに、結束バンドは路上ライブを行うことを決めて行動に移していた。

 喜多ちゃんが運用するSNSの方にも路上ライブの告知を打ってあり、

「え!?本当にバンドやってたんですか!?」「ライブ……?化粧品の実演販売のことですか……?」などのコメントが寄せられている。

 

 コメントの内容どう考えてもおかしくないか?

 

「というわけで!路上ライブの前に湊くん!私達と一緒に演奏してほしいの!」

 

「合わせが上手くなると評判の湊くんの力!貸してほしいの!」

 

「「おねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがい」」

 

「押しが強い!」

 

 喜多ちゃんと虹夏ちゃんのおねがいコールの強さに承諾する。もともと断るような内容でもない。

 

 そんなこんなでSTARRYにて、何曲か合わせることになった。

 

 結束バンドの問題点は喜多ちゃんは技術、他の三人は精神、中でも虹夏ちゃんに問題がある。

 ドラマーとして、リーダーとして全体を纏めないといけない、正確なリズムを刻まないといけない。そこに重点を置きすぎている。

 曲が決まっているロックバンドだからこそなのかもしれない、だから俺がジャズの要素で勝手にアレンジして、あえて演奏をいつもと違うものにする。

 

 俺が曲から読み取った情景、思い、それを店長さんにダイレクトに伝えるにはどうすればいいか、もしくは店長さんの心を呼び起こして情景や思いを見出してもらうにはどうすればいいのか。

 そのために音を変え、強弱を操り、伝えていく。

 

 これは店長さんのための演奏だからダイレクトに伝えやすく、彼女の涙をもって、俺の企みの成功を知る。

 

 もっと自己表現をしろ、曝け出せ、観客の前で内臓ぶち撒けて死ぬくらい、自分を音で見せろ、魅せろと、演奏の中で伝えていく。

 

 ひとりちゃんは緊張しがちだけど、最初から音楽と心中するつもりで生きていて、自己表現が音楽だから、曝け出すと決めてギターヒーローモードに入れば強い。

 

 最後にはギターヒーローと俺が音で殴って、斬って、ぶつかり合って叩きつけ合う音の世界の中、かろうじて立っているのはリョウだけで、普段以上のパフォーマンスを常に求められて喜多ちゃんと虹夏ちゃんは先にへばってた。

 SIDEROSとやる時と同じようにやったんだけど、やりすぎたかもしれない。

 

「やっちゃった?」

 

「やっちゃってるわよ!でもヨヨコ先輩の言う通り、すごくためになった!悔しいけどありがとう!」

 

 疲れきった喜多ちゃんにお礼を言われ、少し皆でフィードバックした後、今日はイライザさんのところに泊まる日なので先に帰らせてもらった。

 

 

 

 湊が帰った後のSTARRYの空気は熱さと冷たさが混じった、なんとも言えない空気だった。

 

「ヨヨコ先輩から湊くんとやるのが一番練習になるとは聞いてたけど、まさかここまでとはねぇ……」

 

「湊は個人でも凄いけど、やっぱり人と演奏した時がすごい。今日は私たちだけだけど、人数が増えても全員の力を底上げできるらしい」

 

「吹奏楽って大人数ですもんね!私たちも大人数でやれば合わせがもっと上手くなったりするのかしら」

 

「バンドはバンドで一人一人に誤魔化しが効かないから違うと思う。単純に聞き分けと音を届ける力が湊はずば抜けてる」

 

「湊くんがすごいのにやっと慣れてきたんですけど、想像よりすごいですね……でも、ひとりちゃんは湊くんに張り合えてましたよね!」

 

 喜多の言葉でひとりに視線が集まる。

 

「わ、わわわわ私なんて全然……いやでも世界的に評価されてる湊くんとあれだけできるなら、やっぱり私も……でへへへへ」

 

 個人技では近いところにいるのは間違いない、しかしレベルが高いからこそ少しの差を埋めるのに必要な努力やきっかけは大きく、周りと合わせるという点で力の差がありすぎる。

 なぜなら、湊はギターヒーローを含む全員に、全力以上を引き出させる演奏をしたのだから。

 その差のデカさを分かった上で個人技の点を喜べるだけ、ギターヒーローにとっても咲良湊という存在はデカいということになる。

 

「圧倒されたし、ヘトヘトになったけど、路上ライブの前にやれてよかったよ」

 

「ですね!今日のを乗り越えたならレベルアップしてる気がします!」

 

「それもそうだし、演奏が前より楽しくなりそうな気がする、なんかやる気が漲ってるというか」

 

「でも虹夏、真っ先にへばってた」

 

「ドラムの運動量で湊くんと演奏したらそうなるよ!あくびちゃんに連絡したらめちゃくちゃ同情してくれたし!緊急用のおやつを持ってくるとかアドバイスもらったから、次はリョウより耐えてみせるからね!」

 

「湊がおやつ食べてる間、虹夏だけじゃなく私も休めるのを忘れない方がいい」

 

「湊くんがおやつで演奏止めるのは当たり前に受け入れるんですね……」

 

 高校生男子の扱いとしてそれはどうなのかと喜多は思ったが、動画で触れる方が多い側の人間からすると咲良湊は音楽を遊びとか趣味に置いて楽しんで、美味しいものを食べて喜んで、と少年みたいな姿ばかりなのでそちらの方が馴染み深い。

 ヨヨコを始め、FOLTで歳上、なんなら同級生や歳下にまで微笑ましい目で見られてるのが湊なのだ、今更だ。

 

「凄いところとおばかなところの温度差で風邪ひきそうだわ」

 

「PAさんがいたらそこが良いって力説されるところだよ、ファンのお姉さん方には気をつけてね、喜多ちゃん」

 

「ただでさえ私たちは湊のファンにとってぽっと出の女、同級生なんて都合の良いポジションの郁代は気をつけた方がいい」

 

「怖い話しないでくださいよ!」

 

 穏やかに、不穏な話もしながらフィードバックと友情を深め、熱を高め、路上ライブへ向けて調整……なんて生ぬるいものではなく、挑戦を続けていき、ついに週末が来た。

 

 ライブへの意識を高め物販用に結束バンドを持ってきた虹夏、けつばんちゃんというマスコットキャラクターを描いて来たリョウ、キャリーケースの中に隠れたひとり、そしてライブとだけ聞いて打ち上げで酒が飲めるんじゃないかとやって来たきくり、周りにも続々と人が集まりライブが始まる。

 

「活動頑張ってね」

 

 通りすがりののOLがお金を入れると、いくら入ったか気になったリョウが演奏を止めるなどアクシデントはありながらも、その演奏で通行人の心を射止め、順調に人を増やしていく。

 

 出し切って死ぬくらいの全力の音は、確かに心に響いていく。

 その真剣な音は、たまたま通りがかった自称14歳のライター、ぽいずん♡やみこと佐藤愛子23歳にも、確かに届いていた。

 

 一方、SIDEROSのスタジオ練習の場に、湊も決死の覚悟で乗り込んでいた。




勉強から逃げたい、なぜ俺は資格試験を終えてすぐに次の資格申し込みしたのか
サボってると思われたくないからいやいやですね……

お礼です!

⭐︎9をくださったいばらん様、どぅな様、dla様

⭐︎5をくださったnnnnnnnnnn様

感想をくださった田中読者様、なまこな様、どぅな様

誤字報告をくださった兄やん様、夜波時雨様、Dmami様

皆様ありがとうございます!

皆様に幸あれ!
具体的にはギャンブル当たるくらいの幸あれ!
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