酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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81話

 

 三月と言えば卒業の時期、卒業式で吹奏楽部との演奏を頼まれたが、コンクールとライブと動画で忙しいと言って断らせてもらった。

 先輩と言えばヨヨコ先輩がいるけど、後輩と呼べる人間がまともにいないあたり、まだまだ学生生活を味わい尽くせていない気がする。もしかしたら何か新しい出会いがあるのかもしれないなんて思いながら迎えた新学期、いつも以上にやべー格好したひとりちゃんに喜多ちゃん、さっつーと馴染みのメンツが同じクラスだった。

 

「それにしてもその格好は何!?何かの罰ゲーム!?」

 

「あっ……えっ!?いや去年これで話のきっかけを作ろうと思ったんですけど上手くいかなかったので、今年はドメジャーバンドにしてみたんですけど……」

 

「改善すべきはそこじゃないわ!」

 

 早速ひとりちゃんの格好について喜多ちゃんが発狂してる。

 俺はSTARRYで慣れてるけど、喜多ちゃんの友達の中には珍しくて気になってる子も多数って感じだ。

 一方でライブによく行く男子達も何人かクラスにいるようだ。

 

「ただのメジャーバンドじゃねぇぞ、ド級のメジャーバンド」

 

「「「「ドメジャーバンドだ!!」」」」

 

 こうして俺のくだらないノリについてきてくれるあたり、いい奴らだ。

 

「なんで男子達は楽しそうなのよ!」

 

「ドがついたら楽しくなっちゃうんだ、男子は」

 

「私もその漫画読んだわ〜、その格好で登校してくるなんて心が強えんだな」

 

「さすがさっつー、わかってる」

 

「ミナちゃん達男子が去年からずっと擦ってるネタだったからね」

 

 固く握手を交わしてから、ひとりちゃんが色々と外してるうちに席を確認すると、今年も喜多ちゃんの隣だった。

 

「今年も隣なんて、なんかちょっと面白いわね!」

 

「男女別の50音順だからそこまで凄いことでも無いけどね」

 

「冷めすぎよ、それでも十分凄いことじゃない!」

 

「喜多ちゃんの隣よりも、後ろにひとりちゃんとさっつーが固まってる方にびっくりしてる」

 

「ミナちゃんが問題児だから仲良い人で固めて抑えようとしてるとか?」

 

「俺そこまで問題視されるような奴じゃないから」

 

「それは……どうかしら……」

 

「ミナちゃん、客観視って大事だよ?」

 

 本気で心配するような目でさっつーが俺を見てくる。俺はいったいなんだと思われてるんだよ。

 それと心配するなら俺たちに囲まれて話に入れずに泡吹いてるひとりちゃんを先に心配してあげて。さっきさっつーと自己紹介して好きなバンド聞いた時に「うち、ヒップホップしか聴かないんだよね、喜多達がやってる様なバンドは聴かないわ、ごめん」て言われてからずっと魂の抜けた顔してるから。

 

 そうこうしている内に担任が入ってきて、クラス全体での自己紹介が始まった。

 心配で振り返ったらひとりちゃんが真剣な顔したりニヤけたり百面相してる、これはだいたい不味いことになるやつだ。

 対して喜多ちゃんは完璧だ。

 

「喜多郁代です!喜多ちゃんって呼んでください♪趣味はイソスタなので映えスポットに行く事があったら私も誘ってね!」

 

 さすがだ、趣味から自然と遊びの予定も取り付けやすくしてる。

 

「もちろん皆知ってると思うけど結束バンドってバンドでボーカルしてます!」

「あはは、ギャグかよ〜」

 

「動画サイトにMVあげてるから皆見てね!そして拡散する事!」

「「「「はーい!」」」」

 

 コール&レスポンスまで!なんというコミュ力、山をも砕くほどの力を秘めてそうだ。

 

「ちなみに後ろの後藤さんがリードギターです!すっこく上手だから一度は生で観ないと損よ〜」

「「「「いつも見てるよー!」」」」

 

 野太い野郎共の声援、これは普通に結束バンドのファン。

 喜多ちゃんが振り返ってひとりちゃんにサムズアップする。ここまでお膳立てされれば大きな失敗は無いだろう。

 さっきまでの俺の不安も消してくれる頼もしい姿だ。

 

 そしてひとりちゃんが立ち上がった。なんかメモを手に持っている……やっぱり不安になってくる、なんて頼りない姿なんだ。

 

「ごっ後藤ひとりです……あだ名はぼっちです。なっ名前の通りリアルぼっちです……へっ……あっ、出身は神奈川です……中学の人が居ない高校がよかったので二時間かけて通学してます。まっ毎日寝不足でこの学校にしなきゃよかったって……こっ、後悔してます……」

 

 ダメだ……もうやめてくれ、聞いてるだけで辛い……

 

「けっ、欠点は人の目を見れない事、“あっ”てつける事です……ってそっそこ笑うな……あっえっと……『シバくぞ!!』」

 

 ダメだ、誰も笑ってないし急にシバくぞだけ大声で言われてひたすら怖い。一部男子がうんうんと後方彼氏面して頷いてるのだけが救いかもしれない。そんな奴らを救いにしてはいけない。

 

「モノボケやります!武田信玄の軍配!!」

 

「そんな下らない事するために持ってきたの!?」

 

 最後にはギターを持って奇行に走って、喜多ちゃんにツッコミ入れられて終わった。

 地獄の空気をさっつーが雑な挨拶で流してくれたおかげで、俺のところに回って来る頃には普通の空気感の中であいさつできるようになっていてよかった。

 去年はシンプル過ぎて誰とも関わりが増えなかった。かと言ってひとりちゃんみたいになってもいけない。大きな失敗しないようにシンプルに好きなもの少し話すくらいにしておこう。

 

「咲良湊、ロックが好きです。特にSICK HACKとSIDEROSが個人的に関わりもあって好きです。〜〜〜〜」

 

「長いわ湊くん!SICK HACKとSIDEROSが好きなのは伝わったから!」

 

「そんな!まだ廣井姐さんの話をしだしたところで……」

 

「いいから座って!」

 

 喜多ちゃんの剣幕に押されて座ると、ゴゴゴゴゴと変な音とオーラが見える。キターン以外の音も出せるんだ、不思議だね。

 

「湊くん、ひとりちゃん、後でコミュニケーションと加減について勉強しましょうね」

 

 さっきあんなに頼もしかった後ろ姿が今は怖い……。

 

 

放課後

 

「そうだ後藤」

 

「ひっ、さっささささん!!」

 

「さっき言い忘れてたけど去年の文化祭のギター、かっこよかったよ。あれが印象的だったから後藤の事覚えてたんだよね〜」

 

「えっ?」

 

「そんじゃね〜、学校頑張って来なよ〜」

 

 さっつーがイケメンムーブをして教室から出て行った。ひとりちゃんとクラスメイトの交流の姿に後方彼氏面の奴らも涙を流しながら頷いている。

 その姿を見て安心した俺も、喜多ちゃんに捕まる前に気配を消して教室を出て、追いかけられてもいいようにいつもと違うルートで下駄箱へと向かっていると軽音部の前で泣いてる女の子がいた。

 

「怖いよ〜、今朝の人いるかなぁ……」

 

「やめた方がいいよ!ヒッピー先輩絶対いるって!!」

 

 どうしよう、今朝の場面を見てないのに軽音部にいそうなやべー格好の奴に心当たりがある。

 

「君たち一年だよね?」

 

「はい!そうです!」

 

 元気に返事をしてくれたので、そのまま彼女らの言うヒッピー先輩がひとりちゃんなのかを確認してから、ちゃんと軽音部には所属してないと伝えておいた。

 ついでに活動のこととか聞かれて連絡先の交換までした。

 

 先輩って呼ばれるの、かなりいいな。ヨヨコ先輩が俺のことを可愛がってくれる理由が少しわかった気がする。




お礼です。

⭐︎9をくださったぱち様、煙緋ちゃんスコ様、筋肉レボリューション様
⭐︎8をくださった黒数珠様
⭐︎3をくださったpolo様
⭐︎2をくださったひつまぶし様

感想をくださった田中読者様、なまこな様、ひつまぶし様、くらいもん様

皆様ありがとうございます!

皆様に幸あれ!具体的には冷蔵庫で常に炭酸水が冷えてるくらいの!
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