酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

83 / 95
83話

 

「ついた〜〜!よみ瓜ランド!!」

 

「下北からすぐでしたね!」

 

「今日はライブの打ち上げあーんど」

 

「スターリースタッフ一同慰安旅行ですっ!」

 

 いつも以上にハイテンションでキラキラしてる虹夏ちゃんと喜多ちゃん、というのも理由がある。

 

「あと未確認ライオットの審査の結果が来る日ですよね!」

 

「まだ来てないね……今日は日頃の不安吹き飛ばすくらい遊ぼーーーー!!!!」

 

「うおーーー!!」

 

「ただの現実逃避かよ」

 

 白い目で見る店長さんの言う通り、今日の結束バンドは審査結果をただ待ってられなくて現実逃避に来た形だ。

 

「お姉ちゃんたちも今日は楽しんでねー!」

 

「だるい」

 

「吐きそう」

 

「しんどい」

 

「やさぐれ三銃士!!」

 

 姐さんが吐きそうなのもいつもの事だし、PAさんは夜型だから朝起きて移動してここに来るまでに体力を使い果たしたみたいだ。

 

「ほら周り見て!癒されるでしょ!」

 

「この歳になるとこういう所にくるのが何か辛くなってくんだよ、自分の道が間違ってたとは思わないけど……幸せそうにしてる同年代の子連れみると胸が締め付けられるんだ」

 

「ゆっくりと昼すぎに起きて、隣に湊くんがいるほうが幸せですね。テーマパークやお出かけが嫌なわけじゃないんですけど単純に遠出って疲れますし、人が多いところにいると頭が痛くなってきて……」

 

「ライブハウスにも人は多いよ!」

 

「ちくしょ〜〜……借金まみれなのも築52年風呂なし事故物件アパートに住んでるのも全部バンドのせいだ〜〜〜うぇーん……でるんだぞ〜」

 

「姐さんのとこの幽霊は志麻さんの審査通ってるんで安全ですよ!」

 

「湊くんのそれはフォローになってるか怪しいし、廣井さんは全部お酒のせいでしょ」

 

「こんな天気悪い曇りの日に遊園地なんて来るもんじゃねーよ」

 

「あ、雨降って来た〜……ちがった、私のよだれだ〜」

 

「湊くん、こっちは気にせず遊んできていいですよ……」

 

「今日快晴だけど!?たのしもーよ!……湊くん、なんとかして!」

 

「とりあえず腹ごなしとか?あっちの店たぶんお酒もありますよ」

 

「いいな、食べて時間潰そうぜ」

 

「賛成……」

 

「湊くん優しいですね……」

 

 PAさんからの株が上がってるから、普通にこういうとこの食べ物たくさん食べたくなるタイプなのは言わなくて良いだろう。

 

 

10分後

 

「うめ〜〜〜!」

 

「やっぱ酒が一番効くよな」

 

「大人って最高ですね〜♡」

 

 元気を取り戻したやさぐれ三銃士を見て呆れる虹夏ちゃんと喜多ちゃんに親指を立て、俺は目の前にある大量のフライドチキンにかぶりついた。

 

「もー、自分たちは審査に関係ないからって余裕かましちゃってさ!湊くんも一緒にたくさん練習したんだし、もうちょっと気にしてくれてもいいじゃん」

 

「俺としては色んなバンド応援してるし、SIDEROSが落ちるはずないからそこまで気にしなくていいかなって」

 

「そこは結束バンドが落ちるはずないから心配しないって言ってよ!結局私たちのこと気にして無いじゃん!」

 

「まあまあ落ち着いて」

 

 不満そうな虹夏ちゃんの口にフライドチキンを突っ込むと話せなくなって、遊ぶ時間が少なくなると喜多ちゃんが連れて行ってくれるのを見守った。フライドチキンを食べながら。

 

「よかったのか?行かせて、同年代で楽しんできてもよかったろ」

 

「結束バンドが頑張った事の結果発表ですから、メンバーだけにしてあげた方が良いかなって、あとは廣井姐さんPAさんとテーマパーク来るの初めてなんで一緒に回れたら嬉しいです」

 

「店員さ〜ん!水くださーい!」

 

 俺の言葉を聞いてすぐに姐さんが水を注文した。

 

「こいつが、水!?」

 

「せんぱ〜い、わかってないれすね〜、酒がなくても頼ってくれる可愛い子がいたら不安は薄れるんれすよ〜」

 

 そう言って廣井姐さんが頭を撫でてくれる。

 こうして姉さんが潰れる前に止めれるのは俺とヨヨコ先輩の特権だ。ただ、ここに来るまでも飲んでたから既にかなり酒臭い。

 

「湊くんを取らないでください〜、湊くんがいないと狭い部屋に一人、ご飯を作っても食べてくれる人がいなくて毎日コンビニ弁当。壊れてく身体、壊れてく心……」

 

 まだそんなに飲んでないのに体が弱ってたからか早速酔ってるPAさんも悲しい事を言いながら、廣井姐さんを剥がして俺の頭を撫でてくれる。

 

「やっぱお祓い受けたほうがいいぞお前、厄介な女ばっかり引っ掛けても碌なことないから」

 

「お祓いして二人と離れるくらいなら俺は呪われてたいですね」

 

「咲良ちゃ〜ん!それでこそだよ〜、目指せ!曜日別彼女!」

 

「廣井さんが言ったら湊くん本気にするんですよ!やめてください!」

 

「残念だがもう手遅れだ、こいつ、前にもそんな事言ってたから」

 

「やっぱりロックンローラーたる者、人間的にダメなところが無いとダメだと思うんだよね、私の酒然り……でも咲良ちゃんて良い子だし、年齢的にできる事は限られてるから……ね?」

 

「ね?じゃないですよ!私の……私たちの……ファンやヨヨコさんの可愛い湊くんを悪い道に引き込まないでください!高校生なんてまだ小さな子どもなんですから!」

 

「いやデカいだろ、だいぶ」

 

 店長さんの言葉は虚しくもPAさんには届かない。

 というか小さい子ども扱いならそれに手を出したPAさんの方がヤバくなってしまう。言わないけど。

 

「というかそれならPAさんの方がヤバいじゃーん!咲良ちゃんに手出してんだからさー」

 

 姐さんが言った、言っちゃった。

 痴話喧嘩だとか、姐さんのことをダメな大人として見ていた目もチラホラあったので周りの目が居た堪れなくなって、食べ終えるとようやくランド内を周る事になった。

 店長さんが可愛いもの好きだからマスコットキャラの瓜ボーにビビられながら写真を撮ったり、アシカショーを見たり、アトラクションもほどほどに楽しんで暗くなってきたころ、結束バンドに呼び出されて集合場所に行くと、こちらに気づいた虹夏ちゃんが走って来て店長さんに抱きついた。

 

「デモ審査とおった〜〜〜〜!」

 

「うわっ危ねっ」

 

 虹夏ちゃんと一緒に走って来た喜多ちゃんは店長さんを通り過ぎて俺の方まで走ってくる。

 目が合うと思いは伝わった。

 

 最後まで言葉は出さずにスラムダンクの名シーンを完コピしたポーズで勢いよく手を叩きあった。

 

 

 

 お祝いの焼肉や練習の話で盛り上がる結束バンドの姿を眩しそうに見つめるのは二人。PAさんと廣井。

 

「もう閉園しますけど〜……聞いてないですね……」

 

「あ〜〜青春してるな〜……」

 

 いろんな思いを乗せた廣井の言葉は、同じく時を重ねて青春に羨ましさを感じるPAさんにだけ届く。

 

「羨ましいですね青春って」

 

「そうだね、やっぱ青春はいいものだよ。だから咲良ちゃんにももっとあげたいんだ〜」

 

「湊くんに?」

 

「そ、咲良ちゃんに。もっともっと、たくさん壁にぶつかって悩んで越えさせてあげたいんだけどなー」

 

 若さ故の悩みと乗り越えることで得られる成長。今までも何度か湊はそれを示したけれどまだ足りない。

 それは情緒を育てる中で必要なこと……だと廣井は考える。

 捻くれた人生を迎えてしまった自分だからこそ、自分を慕ってくれる湊は捻くれないように導いてあげたい。

 そんな彼女なりの愛。

 

「廣井さん、真面目な話もできるんですね〜」

 

「え〜、まあ、それほどでもあるかなぁ……」

 

 音楽漬けで心の成長が追いついていない湊に、心が成長するきっかけがあればという廣井の願いは、後に望まぬ形で叶えられる事になるが、今はまだ誰も知る由はない。





お礼です!

なまこな様、感想ありがとうございます!

3巻の終わりまでいけた、4巻中盤の未確認ライオットのフェスでやりたい事は何となく決まってるから頑張る。

10月はぼざろ単行本3種一気に発売も楽しみだし、楽しみがたくさん!

資格の方は何とかなれ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。