酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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84話

 

「ヨヨコ先輩どうしたんすか?」

 

「後藤ひとりの別名義らしいギターヒーローのアカウント見てたの……」

 

「そっちじゃなくて、なんで湊さんの膝の上なんすか」

 

「それは良いのよ、それよりギターヒーローよ、実力は似ても似つかないけど時たま見せる手癖が完全に後藤ひとりなのよね……あとこのやぼったい部屋とださいジャージも真実味がある……信じられないけどこれは後藤ひとり……登録者10万人……私も負けてられない……私が全部一番じゃなきゃ……よし!!」

 

「?先輩、今椅子にしてる人思い出すっす、10万超えても一番にはなれないっすよ」

 

 あくびちゃんの言葉も無視して、先ほどから俺の手伝いで作っていたオーチューブの画面をヨヨコ先輩が見せつける。

 

「とゆーわけで大槻ヨヨコ、オーチューブアカウント開設!」

 

 掲げられたのは登録者が俺一人のピカピカの新規アカウント。

 

「私だって実力では後藤ひとりに引けを取らないわけだし、同じことすればすぐ10万人行くはず!!」

 

「そんなうまく行きますかね〜、湊さんから見てどーっすか?」

 

「ひとりちゃんの動画って硬派と言うか、ひたすら弾いてみただけだからチャンネル登録者数が伸び辛い道なんだよね、今から同じやり方で10万は難しいと思う」

 

「ふっ、言ってなさい、早速SIDEROS本人が弾いてみた動画投稿よ」

 

「あっふーちゃん湊さんお昼外で食べませーん?」

 

「「行こ行こー」」

 

 画面の更新を続けて動かない先輩を置いて、幽々ちゃんも含めて四人でお昼を食べて戻ってきても、ヨヨコ先輩は更新をひたすら行うだけの人になっていた。

 

「どーっすか?」

 

 あくびちゃんの質問を聞いたヨヨコ先輩は次の瞬間、崩れ落ちた。

 

「どんまいっす」

 

「後藤ひとりと私の動画、一体何が違うの?」

 

「一時間くらいでそんなに伸びるわけないし」

 

「後藤さんは流行りの曲片っ端から弾いてってるね〜」

 

「プライドってものがないの!?」

 

「流行りの曲っていい曲だから俺もよく演るよ?」

 

「伸びてる人がやってるんすから、逆張りしてもいい事ないっすよ〜。だいたいオリジナルの曲で再生数稼げるわけないっすよ、大量の動画が飽和してる中で目立つにはもっと派手で刺激的な事しないと」

 

「そもそも弾いてみたで登録者増やすのがハードモードです〜」

 

「後藤さんは先見の明があったんだねー」

 

 ヨヨコ先輩以外のSIDEROSが先輩の浅慮を嗜めながらひとりちゃんを褒めて、先輩が汗をダラダラと流し始める。

 結果にこだわる人だから露骨に数字で差を見せつけられると悔しいんだろう。

 

「もうこの際後藤ひとりに勝てるなら何でもいいわ……念のために面白い企画だって実は考えてきてたし」

 

「おっ、何かあるんですか?」

 

「メントスコーラ!」

 

「さ、解散っす」

 

「なんでよ!湊の時はうまく行ったじゃない!」

 

「間違った成功体験だ……あれはウイスキーを炭酸にして100%ハイボールとか言って飲んだ姐さんのおかげだし、メントスコーラは……もう……」

 

「うっうるさい!!」

 

「いや面白いリアクションできるならいーっすけど……」

 

 あくびちゃんの忠告を聞かずにヨヨコ先輩がコーラにメントスを入れた。

 溢れ出る泡の前でただ立ち尽くすヨヨコ先輩、場が静寂に包まれた。テーブルの上をコーラが流れていき、落ちたその先にあるのはヨヨコ先輩のバッグ。先輩は気づいていない。

 

 飛びついてバッグを投げた後、俺の頭にコーラが降り注いだ。

 

「湊!?コーラが飲みたいなら言いなさいよ!」

 

「何見てるんですか、先輩のバッグを守ってくれたんですよ〜?」

 

 先輩の的外れなツッコミに幽々ちゃんがフォローを入れてくれる。よかった、ただコーラに突っ込んだバカに思われなくて……。

 

 水道で頭のコーラを流してタオルで拭こうとすると、手は宙を切り、ふわふわのタオルに頭が包まれた。

 

「ごめんね湊、飛び込んだ時に怪我はなかった?」

 

 拭いてくれてるのはヨヨコ先輩だ、完璧主義だから自分のミスにも厳しくなりがちな先輩は申し訳なさそうに上目遣いで俺を見ている。

 

「大丈夫っすよ!学校ではもっと無茶するし、もっといろいろあるから……」

 

「それイジメじゃない!?何されてるの!?大丈夫なの!?」

 

 おっと、フォローミスった。

 でも実際もっとアホな事はしてるしな……田中考案の○玉ギャッツ○ーは制裁の定番になってきた。金○がギャッ○ビーでスースーするどころか熱くなるのだ。

 ちなみに執行役も他人のタマを触るというある種の罰ゲームなため、全方位が辛い思いをしているが比較的平和な解決方法のためうちの男子達では定番になってきた。

 

「ちょっと、頭が上がってきてるわよ、下げなさい」

 

 学校でのことを思い出してると自然と普通に立っていて、身長差で頭を拭くヨヨコ先輩は非常に辛そうだ。

 

「すみません」

 

 頭を下げると先輩がまた丁寧に優しく頭を拭いてくれる。

 ふわふわのタオルってなんか水吸わないし俺けっこう強く拭きたい派だから焦れったくなってくる。

 暫くされるがままにしているけど、だんだんと姿勢も辛くなってきた。

 

「先輩、まだですか?」

 

「もう少しよ」

 

 もう少しなら頑張ろう、そんな俺の心を折るようにヨヨコ先輩の少しは結構長めに取られた。

 

「先輩、まだですか?」

 

「もう少しよ」

 

「このやり取りさっきもしませんでした?」

 

「気のせいよ」

 

「先輩、そろそろ今の姿勢しんどい」

 

「仕方ないわね」

 

 どこか不満そうなヨヨコ先輩の手が離れて姿勢を戻すと、後ろであくびちゃんがスマホを構えていた。

 

「ヨヨコ先輩、そういうの、そういうのでいいんすよ」

 

「湊にコーラをかければいいってこと?」

 

「それはそれで需要ありそうっすけど……そういうところは直してください」

 

「そういうのとかそういうとことか!どういうことよ!」

 

「そんな事より、幽々もオーチューバーなりたーい」

 

「あ、わたしもやりたーい」

 

「適当にゲーム配信とかしたら伸びるんすよ」

 

 あれよあれよという間にヨヨコ先輩のチャンネルは乗っ取られてFOLTの皆で曜日ごとに投稿になっていった。

 あくびちゃんのゲーム配信、ふーちゃんのお菓子作り、幽々ちゃんの心霊スポット解説、姐さんのお酒レビュー、銀ちゃんのメイク、などなど皆の強みを活かした内容の中、ヨヨコ先輩は毎回企画倒れしている。

 

 それでもある程度数字があるのはやっぱりヨヨコ先輩の魅力あってこそなので、俺も鼻が高い。

 

「なんで湊来てからが本編とか言われてるのよ!」

 

「ポンコツなヨヨコ先輩がお姉ちゃんやりだすからっすね、需要あるっすよ」

 

「私のとこでも湊くん人気あるんだ〜、食べっぷりが気持ちいいとか、大型犬を見てる気分とかで」

 

「うちでもゲームしてるのに急に楽器取り出すとこは賛否っすけど賛多めっすね」

 

「幽々のとこでは最初から一緒です〜」

 

「なんで湊ばっかり順調なの!私のチャンネルなのに!」

 

 本人的にはすごい不満みたいだけど、SIDEROSのファンは増えてるみたいなのでヨシッ!

 ちなみに銀ちゃんの動画で女装させられた時は普通に体型が筋肉質でゴツいので気持ち悪がられたし、俺だってダメージ受けてるぞ、頑張れ先輩。

 もう完全にFOLTのチャンネルだけど……頑張れ!先輩!




お礼です!

⭐︎10をくださった猫猫猫猫ネコ様

⭐︎9をくださった神撃のカツウォヌス様、とぅりくん様

⭐︎8をくださった長鎖嘉音.様

⭐︎6をくださった桶の桃ジュース様

感想をくださった田中読者様

皆様ありがとうございます!

皆様に幸あれ!
具体的には受けた試験ことごとく受かるくらいの
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