酔っ払い拾ったらロックに出会った。   作:西ローランドゴリラ

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85話

 

 未確認ライオットのネット投票が始まると学校では喜多ちゃんの周りに人は絶えず、結束バンドが皆に応援されていた。

 

「動画サイトにあがってる曲も何曲か聴いたけど、どれもよかった〜」

 

「ありがとう〜、ひとりちゃんにも伝えておかなきゃ!」

 

「後藤さんも本当にギター弾けるんだね、かっこいいね」

 

「ありがとう〜、ひとりちゃんにも伝えておかなきゃ!」

 

「えっ、なんでわざわざロインで……」

 

「毎日授業始まるギリギリまでどこかに隠れてるのよね」

 

 と、こんな感じで人見知りなひとりちゃんは休み時間毎に逃げ出して、喜多ちゃんが連絡を入れるのが定番になるくらい応援されている。

 

「関連のところから咲良くんのも見たよ〜、演奏凄いね!演奏凄いのにものすごく体張ってるね!」

 

「ありがとう、最近は特にスタッフ1号さんのせいで体張らされてるから、演奏褒められて嬉しいよ……」

 

「苦労してるんだね!面白いからもっとしてね!ところで、結束バンドの応援とか動画でやらないの?」

 

 嫌な応援とこの質問も何度目だろうか、フェスにゲスト出演するのが決まっているけど発表されていない状況というのはややこしくて、関係者だから行動に制限は付くのに、大っぴらにそれを言えないのだ。

 ネット投票期間中は参加する全てのバンドとコラボ動画の投稿も禁止だ。

 だからネタに困るだろう?というわけで1号さんは俺にドッキリ仕掛けてくる。

 ちなみにFOLTのチャンネルに映る分には、俺のチャンネルで宣伝してるわけでもないし、ライブハウスのチャンネルなため、特定のバンドの応援には当たらない、という際どいけどセーフ判定なので、俺もライブ審査のオープニングアクトを務める姐さんも変わらず出演できている。

 とにかく面倒なあれこれを除いて、俺に今言える回答なんてこんなものだ。

 

「期間中にコラボ動画出すと俺のおかげで受かったみたいに言われたりするかもしれないし、むしろ良くないと思うんだ」

 

「そうかも!いい事言うね!咲良くんなのに!」

 

 視聴者から見た俺の評価が非常に気になるところだけど、よくコメントしてくれる人たちもだいたいこんな感じだ。

 

「ちなみに、湊くんは私たちに投票もしてないわ」

 

 喜多ちゃんが不服そうにジトーっとした目で見つめてくる。

 

「え!?そうなの!?」

 

「えっと……SIDEROSに投票してます……」

 

「それは……うん、まあ咲良くんだしね、ヨヨコお姉ちゃんに投票しないとダメだよね」

 

「納得が早いね、そんなに浸透してるんだ……」

 

「咲良くんの関連からFOLTの動画も見たんだ、最初の企画は変だし、毎回咲良くんがフォローに入って大変な目にあってるけど、その時のヨヨコお姉ちゃんが“お姉ちゃん”て雰囲気に変わって、なんか微笑ましいね」

 

 そう、先輩は優しくて面倒見がいいんだ。ちょっと出力がおかしくてコミュニケーションが得意じゃないだけで、優しくて可愛い自慢の先輩だ。

 

「またヨヨコ先輩が褒められて満足げな顔してる……」

 

「あはは!ほんとに仲良いんだねー!」

 

 喜多ちゃんに呆れられて、結束バンドを応援してくれてる子に笑われた。

 少し恥ずかしいけれどFOLTの仲間として、SIDEROSのファンの一人として胸を張って、同じようなやりとりを何度かして、放課後FOLTへ行くと、姐さんと銀ちゃんが話しているのが目に入った。

 

「銀ちゃん見てよ〜、本当に結束バンド入ってるっしょ?」

 

「やだ〜すご〜い!またうちでライブしてほしいわ〜!」

 

「よーし、結束バンドにとうひょーっ」

 

「また後藤ひとり……私のバンドには投票しないんですか……?」

 

 同じくそのやり取りを見ていたヨヨコ先輩が姐さんに詰め寄っている。

 

「お、大槻ちゃん!あっ……SIDEROSも入ってるね!でっでも大槻ちゃんのバンド私が入れなくても大丈夫でしょ?」

 

 少し涙を滲ませた先輩がこちらを向いた。ここから俺が責められるとかある?今から入れる保険とかないかな。

 

「もちろん大丈夫ですけど!?湊は同じクラスだから結束バンドに入れたんでしょうね!私たちと違って危険だし!」

 

「え?SIDEROSに入れたよ?単純にあの中じゃSIDEROSが一番好きだし」

 

 スマホを弄って投票画面を見せると先輩の顔がパァッと明るくなった。

 

「ふふん、湊はFOLTがホームなんだから当然よね!でも学校で結束バンドに流されなかったのは偉いから褒めてあげるわ、座りなさい」

 

 言われるがままに椅子に座ると後ろから先輩が撫でてくれるが、時折鼻を啜る音が聞こえる。

 

「ヨヨコ先輩、泣いてます?」

 

「泣いてないわ」

 

 見えないけど確実に泣いてるし、廣井姐さんも罪悪感が芽生えたのかSIDEROSに投票先を変えていた。

 それを見ると完全に決壊したのか、先輩は姐さんの胸で泣いた。本人は否定してたけど絶対泣いてる。

 そんな光景を見ていると、横からピトッと引っ付いてくる感触、幽々ちゃんだ。

 

「ところでなんですけど〜、湊さん、未確認ライオットで隠し事ありますよね〜?」

 

「な、ななななななんの事だい?」

 

「隠しても無駄っすよ、湊さんが未確認ライオットの話題出さないんで逆に皆察してるっす」

 

「関係者側だよねーって話してたんだー」

 

「そうなの?」

 

 ふーちゃんが話してたって言う割に後ろでヨヨコ先輩が知らない感じの声出してるの、なんか可哀想だしその事実を知りたくなかった。

 どの道、幽々ちゃん相手に隠し事は無駄なんだけど、言っていいかは別の話だ。

 

「い、言えない……」

 

「ほぼ答えですね」

 

「ウチらに情報漏らした罰として、こっちに来てもらうっす」

 

「目隠しもするよー」

 

「なんで!?俺何も言ってないのに!なんで!?」

 

 引っ付いてた幽々ちゃんがそのまま左腕を、右腕をあくびちゃんに掴まれると、最後にふーちゃんに目隠しをされて、歩かされる。

 通い慣れたFOLTなのに見えないというだけでかなり怖い。

 

「あんたたち何してるのよ……」

 

「ヨヨコ先輩!助けて!俺この流れ知ってる!良くないことが起こるやつ!」

 

「もう起きてると思うわよ……ちょ、姐さん!?」

 

「ごめんね大槻ちゃん、もうお姉さん日本酒貰っちゃったんだ……」

 

 頼みの綱のヨヨコ先輩も捕まったみたいだ。1号さん、無駄に用意周到だ。

 

「1号さん、覚悟しておけ……」

 

「というわけでFOLTチャンネル視聴者持ち込み企画第一回、○○しないと出られない部屋in湊andヨヨコ始まります〜」

 

「「いえ〜!!」」

 

「犯人そっちかよっ!!1号さん疑ってごめん!」

 

「うーん、許しません!」

 

「撮影協力、スタッフ1号さんでお送りします、よろしくお願いするっす」

 

「やっぱりお前も噛んでたのかよ!……幽々ちゃん、俺がヨヨコ先輩と二人になるの嫌だったりしない?」

 

「後日埋め合わせ期待してます〜」

 

「ちなみに先輩以外のメンバーはスイーツバイキングで買収されてるっすよ」

 

「湊くんが好きそうなのあったら今度作ってくるねー」

 

「絶妙に責めづらくなるフォロー付きだね」

 

 1号さんはやるとなったらやる。これ以上無意味な抵抗は諦めて素直に連行された。




お礼です!

⭐︎10をくださった神撃のカツウォヌス様
⭐︎9をくださったスイナカバー様
⭐︎5をくださった佐北様

感想をくださった田中読者様、
神撃のカツウォヌス様、なまこな様

皆様ありがとうございます!

火曜日資格試験に合格しました!日曜日に次の試験が控えてるので地獄ですけど!

皆様には幸あれ、具体的には手取り増えるみたいな幸あれ
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