「で、何をしないと出られない部屋なのよ」
「それは秘密っす、部屋にヒントが隠されてるんで何とかしてください」
「二人が何とかするまで私たちも出れないんで、早めにお願いしまーす!」
俺とヨヨコ先輩が目隠しを外された時、窓もないだだっ広い部屋の中心だった。
目隠しを持っていたあくびちゃんとふーちゃん、その様子を撮影していた幽々ちゃんも同様に部屋の中。
「なんで体張るのに乗り気なのよ」
「なんで1号さんは一人だけ外なんだよ、楽するなよ主犯」
文句を言うだけでは仕方ないので部屋を見回すと、たくさんの紙と、変な置物や家具がある部屋。
「脱出ゲームだ!」
「うるさ、急にテンション上げないでよ」
「だって!ヨヨコ先輩!これ脱出ゲームですよ!めっちゃ楽しそうじゃないですか!?」
「そんなに?」
「はい!問題は俺がクイズが全然解けないって事だけです!」
「ダメじゃない……」
「問題は二人に合わせてるんで大丈夫ですよ〜」
「幽々ちゃんが言うなら大丈夫だね」
「私はむしろ不安になったわ」
文句を言いながらヨヨコ先輩が一枚の紙を拾い上げる。
マッチ棒で出来た間違った数式を二本動かして正しい式にするというよくある問題だ。
「これ動かして≠にしたら完成ね」
「それは禁止っす」
しばらく二人であれこれ考えたが答えは全く出てこない。このレベルの問題がまだ大量にあるのだ、出るのがいつになるかわかったもんじゃない。
「悩んでる二人に朗報っす、ウチらが出すお題に答えるとヒントがもらえるんす」
「チャレンジしますか?」
「内容次第ね」
ヒントは嬉しいけど、ヨヨコ先輩が警戒してるように、どんなお題かによってはやりたくない。時間をかけても自力クリアを……できる気がしない。
「チャレンジ前にお題は教えられません〜」
幽々ちゃんの無慈悲な宣告、しかし最初から選択肢なんて無いに等しい。
「やるしかないか……」
「じゃ、一つ目のお題っす『ファーストキスの相手は?』」
「湊くんのは有名だから、これはヨヨコ先輩が答えてください」
ふーちゃんがさらっとすごい振り方をしてるけど、ヨヨコ先輩もこの質問はダメージがほぼない。
「湊と同じ、廣井姐さんよ」
姐さんは酒を抜いてローに入った後、適度に酒が入ると親愛を込めてキスするけど、ウザがられてるので目論見としては逆効果になりがちだ。
ヨヨコ先輩も割と不服な感じだ。まあ俺だってファーストキスの味が思いっきりアルコールで不満がないとは言い切れないけど。
「苦労したんすね……」
「さすがに同情します〜」
「だったら労わってくれる?」
「できかねます」
珍しくSIDEROSメンバーもヨヨコ先輩に同情的だ。それが珍しい扱いなの、相変わらず不憫だけど言い合えてる分、これで今までのSIDEROSで一番良い関係を築けている。
そんな仲良しで情報を握ってるけど優しくはないメンバーと1号さんやSIDEROSが助けてくれる事はなく、難しい問題ばかりなので俺たちはヒントの為にチャレンジを強要される。
例えば…-
「二人のロイン履歴確認、俺は全く問題ないです」
「私もよ」
ヨヨコ先輩がスマホを差し出し、ふーちゃんが受け取った。
「先輩、1週間以内の連絡が私たちと湊くんしか無いんですね……」
「別方向から攻めるのやめなさいよ!」
「でも湊さんとはほぼ毎日で、たまに通話もしてるっすね、社会との繋がりがあってよかったっす」
「引きこもりを心配する親か!」
履歴を弄る内容だったろうに、先輩の連絡先の少なさを弄られたり。
「湊くんは膝ついて、ヨヨコ先輩は撫でてあげてください」
「なんでカメラの前でーー」
「需要っす」
「し、仕方ないわね」
結局、文句を言ってた割に先輩が離してくれなくて幽々ちゃんに止められるまで結構な時間撫でられたり。
「次はこれです〜、普通のクイズですね湊さんが答えてください『この前、内田幽々とデートする時、ヨヨコ先輩に服を選んでもらった』○か×か」
「これは余裕だね!○!」
「「うわ〜」」
「問題は正解ですが、人として×の問題行動です〜」
「そうなんだ……」
「というわけで、ヒントはこの中です」
幽々ちゃんの手には禍々しい色の液体が入ったコップ。明らかに不味そうだ。
「それを……飲めと……」
「栄養は補償します〜」
しっかりと圧をかけられ、手に取り、口に入れる。
瞬間、口内に広がる刺激、えぐみ、明らかにこれを飲み込んではいけないと警告する体を無視して飲み干した。
「先輩、あと、よろしく……」
グラスの底にヒントが見えるのを確認して手渡してから、カメラの画角の外に出て叫びながらのたうちまわった。
気を遣ったのに、落ち着いた時にはしっかりカメラを向けられてた。
いろんなお題を乗り越えてなんとか全ての問題を解ききった。
二人でたくさん苦労して結構な時間が経ったはずだ。
部屋に時計が無いからわからないけど、女性陣はトイレの我慢をしてモジモジしてる。
「やっとトイレに行けるんすね」
「どうしてそんなに全力で体張るのよ、企画の時点で止めなさいよ」
「正直ここまでの長さになるとは思ってなくて……」
「照れる湊さん見たさに1号さんからOK出てもやり直しって言い続けたのも良くなかったですぅ」
いつも余裕綽々の幽々ちゃんも今は少し焦ってる。早く扉を開けないと。
キーワードを繋げて出来上がった文『かぎなしとびらおもいだけ』ふざけんな。
「マジでなんだよこれ!!」
「扉に鍵あるじゃない!」
「あれ、マグネットっす」
苦労して完成させた文がカスみたいな内容で俺とヨヨコ先輩が怒るけど、どこかで見てる1号さんは絶対に楽しんでやがる、ふざけやがって。
扉を押しても鍵がかかってるようなカチャカチャという音と共にしっかり止まる。
扉を壊すくらいの気持ちで押すとグググと開いていき、扉の裏を見るとしっかりしたバリケードが作られていた。
「すぐ出れたじゃん!恥ずかしい思いしなくても!」
「ウチら○○しないと出れないとは言ったっすけど」
「問題を解けとは言ってないよー」
「そんなんで納得するわけないでしょ!」
「ぷふっ問題は二人のレベルに合わせました〜」
扉が開いてすぐにトイレへ向かいながら喧嘩するSIDEROSを、遠回しにバカと言われて膝をつきながら見送る俺の方へコツコツと足音が近づいてきた。
「安心しな少年、君の恥だけじゃない。部屋の中にも隠しカメラがあったから、トイレ我慢してる皆の姿もバッチリアップロードしてやるよ」
「カスの自己申告じゃん……」
「仕返し、したくない?」
救いを与えに来たような顔で最悪の暴露をする1号さんの手を、硬く握って口を開く。
「もちろんしたいです」
「お主も悪よのう……そう言うと思った。大槻ちゃんの説得は任せるから、やらかそう!」
悪魔の手を取り、先輩の説得もできたので仕返し企画が決まった。
どちらの企画も非常に好評だった。……好評だったせいで全員企画の曜日でよくね?とヨヨコ先輩の担当曜日が無くなりそうなのが逆に問題になるくらい好評だった。
お礼です。
⭐︎8をくださったメンシスコーラ様
感想をくださった田中読者様、なまこな様
皆様ありがとうございます!
この前試験会場が下北沢の近くでして、試験後に遊びに行くことだけ考えてたら受験票と筆記用具と電卓を忘れてました。
受験票は当日発行、鉛筆は借りて、計算は気合で乗り切りました。
皆様に幸あれ
具体的には忘れ物しそうになると思い出せるくらいの幸あれ