ウルティマの前世は軍人であった。負け戦だろうと既に勝利の確定した戦だろうと、彼は全力で戦った。国を守るためなんて大層な思想はない。死地に身を置き命の奪い合いをすること、戦うことがひたすらに楽しかったのだ。彼は戦いの才能に満ち溢れていたが、自らの命を顧みないウルティマは長くは生きられなかった。彼は戦いの中での死を喜んだが、同時にとても悔いた。一瞬の油断でまだ戦えたはずの人生を失ってしまったと。
しかし、幸いにも彼は二度目の生を受けた。ただし、人としてではなく魔物としての生だった。魔物は普通の動物と違って代謝をせず、子も生さず、睡眠もとらない、ただ本能的に魔力を欲する。ウルティマは、その本能を容易く受け入れた。魔力を欲して数多の魔物を殺し、数々の英雄を殺し、果てに魔王を殺した。彼が魔王でありながら"
そして現在、ウルティマは転生者狩りの話を聞きつけてかつてウーナと戦ったこの地へと帰還したのだ。その戦意の矛先はレオへ向き、リムへと移った。しかしもう追い詰めてしまった。リムの戦意がなくなってしまった。次の標的を探して辺りを見回し、その黄色い目がカンナを捉える。
「ウン。お前ェも、転生者だァな?」
話しかけられたカンナはあろうことか反射的に構えてしまった。それを開戦の合図と解釈したウルティマは、再び笑みを浮かべた。
「あ、おい!」
リムが引き留めようとするが、既に戦えなくなった者など眼中になかった。ウルティマは加減ができない。リムが手も足も出ないほどに力の高まった状態でカンナが一撃を喰らえば即死するだろう。シュウは手の届かない存在に居場所を奪われることに絶望した。その時、バタンと扉が開き、黒い球体がウルティマの方へと飛んで行った。それはウルティマの鋭い爪がカンナに届くよりも早くウルティマに衝突し、その小さな体を弾き飛ばした。
「カンナに手を出すな狂人が。殺すぞ。」
開いた扉からは見たこともない黒いスーツに無数の魔法陣が刻まれた分厚いローブを羽織ったトリアが出てきた。もちろん、あの立体十字の変な杖も持っている。
「トリア!!いィたなら言ってくゥれよ!」
ウルティマはとても嬉しそうに飛び跳ねて言った。トリアはとても面倒くさそうな表情をしながら杖を振る。その動きに反応して、扉からさらに浮遊する装置のようなものが無数に飛び出てくる。ウルティマはそれを見てより一層楽しそうに笑って、トリアに跳びかかった。それと同時に先程ぶつかった黒い球体がウルティマの体に纏わりついて拘束装置に変形する。次に浮遊装置が散開して何重にも妨害結界を展開し、トリアの黒スーツの表面に青い線が浮かび上がる。
ウルティマは肉体を変形・膨張させ拘束装置を振り払うと、妨害結界をものともせずにトリアに接近し爪と尾で攻撃する。黒いスーツから展開された多重の防御魔法がそれらをギリギリで受け止める。トリアは近づいたウルティマを睨みつけ、太ももに装着された魔石に触れる。莫大な魔力がスーツとローブの魔力回路に流れ、直後ウルティマを三等分に引き裂いた。ウルティマは一切怯む様子を見せずに瞬時に再生し口から光線を吐き出した。防御魔法が間に合わず、トリアのローブが溶けて穴が空いた。
「あっ、ち。」
あまりの高熱ととローブが破壊されたことへの動揺から、トリアの動きが鈍る。ウルティマはすぐさま鋭く変形させた足でトリアの足を貫き逃げられないようにして、再び光線を吐く。トリアは簡易転移魔法によって空中へ移動し距離をとりつつ回避するも、すぐに追いつかれてしまう。
「かかったね。」
まんまと空中へ飛び出したウルティマへそう言ったトリアの右手には真っ黒な
《魔王級動力式二万八千連射型貫通攻撃魔法『天穿つ槍』》
術札に刻まれた複雑な魔術は、スーツに付属した3つの魔石からの超高圧魔力によって瞬間的に発動され、ウルティマを粉々に砕く。そのとき、トリアは高速で接近する高熱の塊をその瞳にとらえた。
「はぁ。やっぱり来た?」
戦いが好きなのは何もウルティマだけではない。この村にはもう1人、入ってきたばかりの新人に戦いを挑もうとした者がいた。
ホムラだ。
爆炎を散らしながらやってきたホムラは、高速で再生するウルティマを火焔を帯びた拳で殴り飛ばす。
「ウルティマさん久しぶりだなぁ!手ぇ出すなよトリア!」
まだまだ元気そうに笑い再生するウルティマにホムラは。彼女は昔、死霊の暴走を止める旅の途中、強者を求めて旅をしていたウルティマにボコボコにされている。ウーナの制止により殺されはしなかったがそれ以降、尊敬すべき圧倒的な強者の1人としてウルティマを認めていた。この世界でウルティマをさん付けして呼ぶのは彼女くらいだろう。
「今度は前ほど容易くは行かないぜ!!」
ほぼ再生を完了したウルティマへ、深く息を吸って纏う炎を燃え上がらせる。
「《
余談だが、彼女はロマン主義なので基本技名は叫ぶタイプだ。傍から見ていたシュウは当然、そんな文化は知らないので割と引いていた。ウルティマもそれに応じ技名を叫び出した。
「《紅い爪》!《紅い尾》!《紅い牙》!!」。
ウルティマはあまりネーミングセンスが無いようである。そしてこんな感じでも、相変わらず余波で国が滅びそうな戦いが繰り広げられているのだ。シュウは呆気にとられていた。ホムラとウルティマはどちらも基本的にゴリ押すタイプだったため、勝ったのは当然、より力の強いウルティマだ。もし転生者狩りをしていた時に、こいつらを狙っていたらどうなったかを想像したシュウは、密かに身震いをした。
寝坊して遅れました!!前もって書いておけばよかったなと思います。最近バトルばっかりでしたがたぶん今回はこれで終わりですかね。