転生村   作:もつ煮トリガー

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第14話:猛獣狩りに行こうよ

 シュウはカレーを作った翌日、丁寧に梱包されたそれを携えリムの見舞いに行った。ビリーが最も美味しいと言った「一晩置いたカレー」は、傷を負ったリムにこそ食べて欲しいと思ったからだ。しかし、リムの家の前に立った時、シュウの頭に負傷している今のリムに辛い食べ物は辛いのではないかという懸念が芽生え足が止まる。扉の前で立ち竦んでいると、ちょうどシエラが様子を見にやってきて声をかけた

 

「リムさんのお見舞いですか?あ、この気配。カレーを持ってきてくれたんですね。」

 

 シエラがそう言った時、シュウは食い気味に目下の悩みを打ち明けた。シエラは一瞬驚いた顔を見せ、すぐににこりと笑って見せ言った。

 

「リムさんは今消化器官が傷ついていて普通ならカレー、スパイスは食べられないのだけれど…リムさんなら大丈夫ですよ。」

 

 そしてシエラは戸に手をかけそっと静かに引いた。その奥には、積み重ねられた肉とパンと果物を手をかざして次々と吸収するリムの姿だった。直後本人の口から聞いたのは、リムは《遊び人(プレイヤー)》を用いて口を介さず食事を摂ることができるらしくることができるということだ。熱や食感は感じないが味はそこそこわかるらしく、カレーを食べた?時にはおお、と声を漏らしていた。しかしちょっと気味の悪い光景である。そして、その流れのままシエラはリムの容態について話し始めた。あと2週間も経ち、《紅創の呪い》の影響を受けた細胞が代謝によって排出されると完全に呪いは解けるそうだ。今日もビリーのところで料理を学ぶことを伝えると、リムがあることを提案した。

 

「そうか。じゃあ、適当に肉でも貰って夜にあの山へ行け。面白いモノが見れる。」

 

 面白いモノ、とは何なのか、もはやこの村にある物なら何でも面白い気もするがあまり喋らないリムがわざわざ言うなら行ってみる価値はあるだろう。

 

 今日はおかゆの作り方を学んだ。シュウ自身はあまり好きではなかったが、作り方の手順がシンプルでしかも胃に優しいと聞いたのでリムがもう少し回復したら作ってあげようと決めた。そして、ビリーから肉を貰った。あの山に行くと話すとかなりの量を渡された。

 

 生肉が詰まった鞄を背負い、まだ日の高いうちに山を目指す。王国がある側とは反対の東側にあるこの山は鬱蒼としていて薄気味悪い。遭難しないよう、適当に目印を残しながら道なき道を適当に歩き進める。魔物が出そうだななどと考えていた時、その想像はすぐに現実となった。大きな猪型の魔物が群れてシュウの前に立ちはだかる。面白いモノとは、これのことだろうか。魔物が群れるのはそれなりに珍しいことだが、それでもありふれた事象でもあるし面白いと言う程のモノではないように思える。

 

「まあ、大して強くもなさそうだ。」

 

 シュウはすぐに片付けるため、短剣と《貫く矢》の術札を取り出す。今回はかなり余裕をもって準備してあるが、無駄遣いはしない。突進してくる魔猪たちを纏めて貫くため後ろに飛びのき構え、魔術を発動した。しかし放った魔力の矢は横から入り込んだ何者かに阻まれ魔猪に当たることなく霧散した。

 

「てめえうちの可愛い可愛いアゴちゃんたちに何しようとしてくれてんじゃあゴルァァ!!!!」

 

 ブチギレられた。長い髭を生やしたそのおっさんは革の鎧を身に着け、大きな鉞を持っている。魔力圧をそのまま破壊力に使用する《貫く矢》が命中しても傷がつかないということは、あの鎧は凄まじい魔力密度を持っているのだろう。現状では勝てないこともなさそうだが、他に魔物を連れている可能性を考慮し、ここは穏便に。

 

「え、ああ、すみません。急に襲ってきたものでつい反撃してしまいました。」

 

「肉のくせに喋るな!おとなしく食われろ!!!!」

 

 リムはきっとこれを知っていて送り出したのだろう。いい性格をしている。シュウは魔力探知を発動するが、その時恐ろしいことに気づいてしまった。辺りの木の上から感じる無数の魔力、そしてさらにその上にある強大な竜の魔力に。この状況で、おとなしく食われろなんて言われたらとる行動は一つである。

 

「すみません!!」

 

 ダッシュで逃げる。《走力強化》の術札(アミュレット)を使用し全力で逃げる。本気で逃げる。おっさんは怒号を発しながら猪の背に乗り追いかけてくる。木の上のある無数の魔力の正体は幾千もの鳥や蝙蝠の魔物であった。少し遅れて竜と思しき重い羽音と咆哮が聞こえる。木や石につけた印を順に辿り走る。あと少しで山から出られるという時、術札の効力が失われてしまった。すぐに次の札を取り出すが、その一瞬で僅かに距離が詰まり、おっさんが飛びかかってきた。おっさんのドロップキックが背骨を軋ませる。

 

「ぐっ…」

 

 激痛がシュウを襲う。痛みで動けないところに、魔物たちが群がってきた。そして、魔猪の一体が鞄の肉に気づく。その様子を見たおっさんが言った。

 

「お前、羊肉か!いいな食おう!来い。食わせてやる!」

 

 そうして、山奥の小屋に招かれた。少し焼かれてはいるがほぼ生の肉を差し出される。さっきまで追いかけられていた相手を目の前にしてこんな物食べる気になるはずもないが、断ったら殺されそうなので食べることにした。

 

「あ、あの、何で私を食べなかったんですか…?」

 

 言い終わってから、後で食べるため、などと言われたらどうしようかと不安になった。もっと聞くことはあったろうに、とにかく錯乱していたのだろう。奇妙な質問だ。

 

「お前は村の肉じゃなかった。知らない顔だから肉かと思ったんだ。」

 

 さて、怪文である。シュウはとりあえずなるほどと言って、言葉の意味を読み解こうと頭を捻る。多分、肉というのは食肉のことを差すのだろう。それなら、シュウは食べられることは無いらしい。村の、というのはもしかして、村の住人が定期的にこいつに肉を渡しているのだろうか。それならビリーが肉を持たせたことやおっさんが襲ってきたことに説明が着く。勘違いで人を食おうとするとは恐ろしいおっさんだが、一旦は自分の身の安全が確保されたと判断して、交流を図る。

 

「あの、お名前は…?」

 

「ノットだ。俺はここで村に魔物を入れずに育ててる。言うことが聞かないやつは殺して食ってる。羊は美味い。」

 

 このノットというおっさんは絶妙に分かりづらい話し方をする。会話経験が少ないのだろう。ここで、シュウはリムの顔を思い出した。もしや彼はこのおっさんを自分の師匠代理にしようとしたのでは無いかという考えがシュウの中に浮かぶ。どうせ帰っても大したことは出来ない。シュウは覚悟を決めて賭けに出ることにした。

 

「あ、あの、言うこと聞かないやつ、を狩るの手伝います!」

 

 祈るような気持ちでノットの顔色を伺っていたが、羊肉を食べて満悦なノットは笑顔で快諾した。




後半めっちゃ急展開かつご都合展開になっちゃいました。なるべく創作物感のある文章は避けたかったんですが、たまの強引さは良しとします。今週はスケジュールめちゃくちゃでしたので、来週はちゃんと予定通り投稿します!
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