転生村   作:もつ煮トリガー

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第16話:日常に落ちる暗影

 時は飛び、ウルティマの襲撃事件から丸3週間が経った。リムはまだ戦闘訓練は出来ないが、消化器官の損傷は回復したため普通に食事ができ、ぎこちなくも走ったり跳んだりできるレベルにまで回復した。そのため、シュウはカンナとの試合を繰り返し、2人の問題点を指摘してもらうというスタイルの訓練が行われている。3週間で60度もの真剣勝負を行ったものの相変わらずカンナはコミュニケーションをとる気が一切ない。一方リムとはかなり打ち解け、趣味や過去について話すほどになった。ちなみに現在、カンナ相手の戦績は23勝37敗である。

 

 また、3日に1度ビリーに料理を教わっていたお陰で料理の腕もかなり上達し、好物のカレーは片手間に作れる程度にまでなり、ザックやリム、カンナにはよく振舞った。最近はスイーツ作りにハマっていて、昨日はシュークリームを作った。1度、シュウの上達祝いにパーティが開かれ、呼ばれていないリリーやモニ、ホムラにレオが何故か参加し主役のはずのシュウは終始てんてこ舞いだった。他はまだ分からなくもないが、リリーは本当に関わりがないのでシュウはとても困惑していた。

 

 ノットの山にもたまに行っている。ノブは懐いているのかいないのかよく分からない距離感を保ち続けているが、何だかんだ一緒にいるので好意的ではあるのだろう。最初はただの作業だった魔物狩りも、繰り返すうちに効率化を目指すようになり楽しくなってきて、ビリー曰くシュウが魔物狩りを始めてからは村に降りてくる魔物の数が半減したとのことでやり甲斐も感じていた。

 

 余談だが、シュウの《影断ち》が、魔物を食肉加工する時にする「魔力抜き」の工程を短時間で済ませるのに役立つことが判明してからは、ノットともかなり親密な間柄になった。ただし、失敗したらお前が肉だと脅されていた事実は脇に置いておくこととする。

 

 そんなこんなで、今日も魔物狩りを一晩中続けたシュウは山を降り、当たり前にある村のその姿への小さな安心を胸にして、我が家へと歩みを進めた。家へ向かう途中、トリアとすれ違いあいさつを交わしたが、その声は強気で冷静ないつもの声とは違い、弱々しくどこか苦しそうなものだった。よく見ると、顔色も良くない。

 

「大丈夫ですか?」

 

 シュウは気にかけてそう尋ねたが、トリアは突き放すように大丈夫と言ってウーナの社がある方へと向かっていった。話して貰えるような雰囲気ではなかったのでそれ以上の追及は諦めたが、強い不安感に襲われたシュウはザックに相談すべく早足で家に向かった。

 

「トリアが不調…か。あいつは不老不死の魔術で肉体の健康を維持していると言っていたが、その仕組みまでは俺は知らない。だが一つだけ言えるのは、少なくともこのおよそ3000年の間でそんなことは1度もなかったということだ。本人とウーナに話を聞いてくるが、来るか?」

 

 ザックの返答はこうだった。シュウは好奇心と、何より不安感の払拭のために着いていくことにした。早速向かおうとしたが、山から帰ってきたばかりで体と服が汚れていたので、一旦風呂に入ることになった。

 

 ザックの家に備えられた木製の風呂はソウジロウ謹製のものらしく、魔法を使わずに温度調整ができるような仕組みになっているという。魔石の加工ができるようになった近代ではあらゆるインフラを魔法によって制御しているというのに何故魔法を使わないのかは疑問だが、その疑問は極上の湯加減に溶けていった。風呂を出たシュウはノットに貰った味の薄い魔物の干し肉を噛みながらソファで穏やかな休息をとり、ザックは何をするでもなくその様を眺めていた。

 

「じゃあ、行く?」

 

「行くか。」

 

 のんびりとした時間が過ぎ、シュウの言葉から始まった短い会話を済ませた2人はとうとう社に向かうことにした。社の前に立った時、神託があった。

 

『ちょっと待って〜。トリア起こすから。』

 

 相変わらず緩い神託である。2人は言われた通り社の前の階段で他愛もない会話をして時間を潰し、次の神託を待った。

 

『入っていいよ。靴脱いでね。』

 

 今回は靴を脱ぐらしい。2人はそうした。社の中は食事会の時とは違い、小さめの畳張りの部屋の中央に小さな卓が置かれた造りになっていた。奥側には布団が敷かれ、トリアが寝ていた。

 

「ウーナ、トリアは大丈夫なのか。」

 

「うん。命に別状はないよ。原因はさっきザックが言っていた通り、不老不死の魔術の異常。魔力源の一部が消えてバランスが悪くなっているんだよ。細かいことはトリアに聞いて、って言おうとしてたんだけどいいや話しちゃう。いいよねトリア。」

 

 トリアは目を瞑ったまま弱々しくいいよと言った。そしてウーナは向き直り、胡座を組み直して話した。

 

「トリアの不老不死の魔術は、世界中で使われてる詠唱魔法装置から供給される魔力で動いてて、160個ある装置のうち46個が一晩のうちに破壊されたか、魔力を遮断されたんだ。僕は犯人を知れるけど、あんまり神格が干渉するのはポリシーに反するからヒントだけ。犯人はこの村の住人じゃない転生者だ!」

 

 そして…と、ウーナは深刻そうな表情をして話を続ける。緊張が高まり、シュウは固唾を呑んだ。

 

「トリアはこのままだとあと一ヶ月で死ぬから、皆で頑張って助けてね!」




 1~15話の間に流れた時間の倍以上が急に過ぎました。割と勇気のいる判断でした…一体犯人は誰なんでしょうか?次回をお楽しみに!
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