トリアの不調の原因を聞いたシュウとザックは、ウーナに言って村の住人を集めてもらい皆に全てを説明した。集合を待つ間にザックが教えてくれたことなのだが、ウーナは気まぐれに人を助けることはあるが、基本的には村の有事にすら干渉せず傍観者を貫くらしい。理由はきっと何となくだろうとザックは苦笑いして言った。そして、ザックが解決のためのアイデアを話し始めた。内容は要約すると以下のようなものだ。
その一.詠唱装置を保有する各組織と交渉してして防衛を強化してもらう。
その二.既に破壊された装置から痕跡を辿り謎の転生者を探索する。
その三.戦闘に長けた者で例の転生者を攻撃し完全に解決する。
端的にザックがそれを伝え終わると、特に問題なく全員が承諾し、すぐにでも行動を始めることになった。そして、ザックの取り仕切る10分程の会議の末、それぞれの作戦に参加するメンバーが割り当てられた。
シュウは「その二」の段階をメモリア、リーラン、リム、ソウジロウの4人と一緒に担当することになった。本心では「その三」の直接戦闘に参加して「転生者狩り」に自らの手で終止符を打ちたかったが、転生村の強者たちの足元にも及ばない自分では未知の敵との戦いに相応しくないと判断し辞退した。他のメンバーについては、メモリアとソウジロウはそれぞれの
ちなみに、「その一」にはザック、リリー、ビリー、シエラ、ハルカが、「その三」にはフーリ、レオ、カンナ、モニ、アイマが割り当てられた。ホムラはウルティマから受けた傷が未だ癒えず今回の作戦には不参加である。作戦を知れば間違いなく戦いに参加しようとするとの事で、絶対に伝えないようザックとメモリアから皆へ厳重な注意があった。
さて、交渉チームはリムの転移魔法によって詠唱装置を多く保有する各国へ、探索チームも同じくリムの転移魔法で転生者が最後に訪れたと予想される「道の都市」ウォンロードへ、戦闘チームは転生村でアイマを中心とした特訓に、それぞれ取り掛かり始めた。
「あの、リーランさん、でしたっけ。」
シュウはウォンロード郊外に転移して街へと歩く途中、初対面のリーランに話しかけていた。面識がないのはソウジロウも同じだが、食事会のとき好意的だった気がするのと、何より物理的に距離が1番近かったからだ。
「ん?そうだよ。よろしくね。僕にはタメ口でいいよ。お互いトゥテルで汚れ仕事をしてた者どうし仲良くしよ?」
おお、とても好意的で優しそうだ。もしかしたら凄くまともな人かもしれない。しかも、最初から仲良くしようとしてくれてるというのだ。幸福感に胸を満たされたシュウは少し舞い上がって質問をした。
「よろしく!えっと、リーランはトゥテルで何をしてたの?」
いきなり踏み込んだ質問をされて驚いたリーランは一瞬ぽかんとしたが、悪意は無いんだと判断してすぐに答えてくれた。
「主に工作員みたいなことばかりしてたかな。あの頃はまだ工作員って仕事はなかったけど、似たこと。魔王こそいなかったけど、資源が不足しすぎてて色々ドロドロしてたんだよねー。僕も罪の無い人の暗殺に加担したし、この手で相手組織の人を殺したこともある。今でも忘れることはないけど、ウーナさんのおかげで気持ちはかなり救われた。シュウもこれまでのこと、気負うことはあると思うけど、逃げさえしなきゃ時間が解決してくれるよ。」
リーランが話し始めた時、急に踏み込みすぎたかとシュウは一瞬後悔しかけたが、彼の朗らかな話し方と前向きだが決して軽率な訳では無い考え方、さらにはシュウの気持ちを慮ってフォローまでしてくれたため後悔はすぐに引っ込んだ。
「そうか…もしかしてだけど、トゥテルって、結構良くない国なのかな。」
「こう言うのもなんだけど、あの国はクソだよ。」
おお、優しそうなリーランからかなりキツい言葉が飛び出してきた。予想外な表現だったが、内容はシュウも同意だった。何となく祖国を悪く言うのも悪い気がしていたが、よく考えれば祖国でもないしまともな扱いを受けてないことを思い出し、気を使う必要は無いと考えを改めた。
「リーランの時代のトゥテルはどんな感じだった?俺は…王や貴族たちからの変な依頼が多かった。どう考えても依頼主に危害や悪影響を及ぼさない田舎の村人を殺す依頼とかね。そのときは確か、俺が着いた時には死んでたから任務がなかったことになったんだったな。」
うんうんと相槌を打ちながら聞いていたリーランは、シュウに返して話し始めた。
「僕の時は、トリアさんが魔法研究を広めて150年ぐらい経った頃でね。各国で独特の魔法文化が成立し始めた時期なんだ。それで、当時のトゥテルは資源と他に各国の魔法技術を奪うためにスパイを送り込みまくってた。僕もその1人になったことがあって、20年くらいの間働いたよ。とにかく国が安定しない時期だったから権力者たちは躍起になって不安因子を取り除いてたから、きっと何の関係もない人も巻き込んだだろうね。と、こんな感じだよ。国が安定してないからって言ったけど、常に2番手っていうお国柄上、トゥテルの腐敗はもう仕方ないことのようだね。」
そうか、と言ったシュウの表情は、僅かな悲しみと絶望を纏っていた。
「まあ、それでも長く関わった国だし僕も愛着はあるよ。ほら、ウォンロードに着いた。この街は色んな珍しいものがあって面白いよ。行こう。」
そう言ってリーランは、無垢な笑みを浮かべてシュウの手を取った。
来週の月水は投稿しません。ちょっと休憩です。