「じゃあ、お前らこれを持て。」
ウォンロードに入る前に、リムが荷物の詰まった鞄を収納魔法から5人分取り出した。
「なるほど。旅人に偽装するのか。」
ウォンロードは世界一の大国、シンタに属する交易都市だ。その面積はなんとシンタの首都の倍を超えるという。当然トゥテルの首都よりも大きいこの都市は、交易に特化した構造をしており、シンタに属する都市では唯一教育機関を持たない。あるのは無数の宿屋と巨大な倉庫、そしてそれらを取り纏める金色の貿易省のみである。莫大な金と資源の集まるウォンロードは人の出入りに厳しく、関所を通れる外国人は基本的には認可を受けた商人のみだが、旅人だけは例外で半日までの滞在が許可される。これは冒険者協会の取り決めによるものなのだが、今回詳細な説明は割愛する。
要するに、彼らの目標は旅人に扮してウォンロードに滞在する半日間で、僅かでも手がかりを得て撤退するということだ。
「商人の紹介状をリリーに貰えばよかったかな。」
リムはそう言うが、どちらにせよ早急な対応が求められている現状では長居はできないだろう。リムが関所で手続きを行うところをそれ以外のメンバーで遠巻きに見ていた。そして、集まってきた関所の衛兵たちにリムが取り囲まれ、拘束されて連れていかれるところを目撃した。
「連れていかれた、な。」
最初にそれに気づいたソウジロウが言った。
「そうだね。」
その隣にいるリーランが応える。
「え、助けに行かなきゃじゃ?いや、助けはいいか…いやでも脱走なんてしたら事件になるな…」
シュウは混乱している。
「この中なら私がまとめ役かな。」
メモリアはすぐにリムの代理となることを決めた。
「でもなんで連れて行かれたんだろう。」
リーランはリムが連れていかれたことに疑念を抱いているようだ。今はどうしようもないからいいんじゃない、とメモリアが言った。そして、何か妙案を思いついたようで、メモリアはリーランとソウジロウに耳打ちした。すると、リーランはなるほどと言ってソウジロウから何かを受け取り関所の方に走っていった。蚊帳の外にされた感じがしてちょっと嫌な気持ちで待つこと2分、リーランは包帯でぐるぐる巻きにされたほぼ人間で間違いない形の物体を持ってきた。そして、メモリアがその頭部と思われる部分に触れた。シュウは同じ光景をごく最近見たことがある。《
「わかった。詠唱装置の破壊事件を受けて防衛が強化され、許可証を持たないのにウォンロードに入ろうとした全ての人を捕縛することにしたらしい。旅人は、冒険者協会会員のみ受け入れているそうだよ。当然、つい昨日決まったことだね。シュウが知らなくても無理はないか。」
なるほど納得の理由である。リムは傷ついているとはいえ、あの衛兵程度なら軽く跳ね除けられるだろうに、事を荒立てないために大人しく捕まってくれたのだろう。じゃあ、別ルートで入るしかないなとシュウが言って侵入できそうな場所を探しに行こうとすると、少し待ってとメモリアが制止した。
「やっぱり。この衛兵、犯人について知ってるよ。記憶が連続してないから記憶を消されているらしいけど、はっきり顔が見えてる。」
「そうか、じゃあ、似顔絵とか書けるか?俺たちで共有しよう!」
シュウは少し興奮して言った。予想外なところで予想外な収穫があったのだから当然だ。しかし、この提案はその必要はないとリーランに否定されてしまった。
「メモリアの《
彼はそう話してメモリアに頭を差し出した。メモリアは頭に触れて目を瞑った。続いてソウジロウ、最後にシュウがその記憶を得た。
「どう?シュウは見覚えのある顔だったりしない?」
リーランが尋ねるが、シュウは頭を捻るばかりだった。
「残念だけど、全く覚えはない。聞いていた通り服はトゥテルの暗殺者のものだからそこは間違いないと思う。」
その後、シュウは念のため《
「そういえば、リーランは何でさっき騒ぎを起こさず衛兵を攫ってこれたんだ?」
「ああ、あれはソウジロウの"しびれ針"と"捕縛帯"って道具を使ったんだ。"しびれ針"はきっかり10分全身が硬直し意識を失うんだよ。すごいよね。」
返答を聞き、シュウは少し黙って考え込んだ。
「それで衛兵を無力化して、壁を超えて入るのは駄目...なのか?」
それを聞いたメモリアとリーランはシュウと同じように考え込んだ。ちょっと考えて、二人は口を開いた。
「いけるね。」
いけるらしい。
一週間もあったのに遅れてすみません!!来週は頑張ります。