転生村   作:もつ煮トリガー

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第22話:要介護逃亡戦

 セキとやらは、シュウを背負って走っていった。他の戦闘員たちは裏切り者が出たと挙ってセキを追ったため、メモリアはがら空きの部屋を通って安全に屋外へ脱出できた。セキはシュウに覚えてもらえていたのが嬉しいらしく、ウキウキで追跡者たちを蹴散らした。しかし、彼はシュウがどこへ逃げればよいのかを一切知らない。そこに方向音痴も加わっているのか、せっかく逃げた施設にまた戻ってきてしまった。セキの都合など知らないシュウは、魔法の影響による混乱も相まってパニックになった。セキの背を蹴って距離をとるが、すぐに目眩により倒れ込む。

 

「ごめん!俺道わかんないわ。」

 

 セキはすぐにそう言った。しかし、そんな弁明は混乱するシュウには届かない。

 

「俺を騙そうとしてるんだろう!友達だとか言って、俺はお前なんて知らない!」

 

 知らないと言われ傷ついたが、それでも、何としてもシュウに安心してもらいたい彼は、腰に差していた剣を捨てて手を広げて歩み寄る。だがシュウは興奮した為かその場で気を失ってしまった。駆け寄るセキは親友への心配のあまり、背後に立つ人影に気づかなかった。

 

「止まりなさい。」

 

 施設のものらしき魔法銃を構え、そう言い放ったのはメモリアだった。シュウの魔力隠蔽が途切れていることに気づいた彼女は戦闘員の記憶から魔法銃の扱いを学び、ここへ駆けつけた。

 

「いや、待って!俺はその、シュウの友達で…見ての通り武器も捨てて助けようと!あなた、たぶんシュウの仲間ですよね?魔法銃の気絶魔法が変に作用してなんか変な感じなんです。助けてあげてください!」

 

 メモリアの《追憶(メモリー・バック)》では、相手に触れられないこの状況で発言の真偽を確かめられない。他に有用な魔法もない。シュウの友人を名乗るこの男が敵である可能性を排除しきれない以上、この状況で彼女のとる行動は1つだ。引き金は引かれた。戦闘員の肉体の記憶を反映した彼女の体は正確に目標へとその魔法弾を導いた。魔法弾はセキの胸に命中し、一瞬で意識を奪う。メモリアは足早にシュウへ近づいて彼の記憶から状況を探った。肉体に刻まれた記憶から適切に回復魔法による処置を施すが、完全な処置はメモリアの能力では難しかった。その過程で、セキが施設からの脱出時友好的であったことも知る。

 

「こっちもやっておくか。」

 

 セキにも手を触れてその記憶を覗く。シュウの話から推測して、2人が会っていた可能性のある時期へ遡る。そこには確かに、シュウと楽しく会話を交わす記憶があった。少なくとも、シュウの友達であるというのは嘘ではないらしい。そして最新の記憶を見ようとしたとき、彼女は驚愕に見舞われた。セキの記憶はたった今も続いている、つまり、彼は気を失っていないのだ。メモリアは、今の隙に攻撃しなかった事実と垣間見た彼の人生から感じる誠実さからそう判断し、声をかけた。気絶したフリを続ける意味のなくなったセキは立ち上がって応える。

 

「信じてくれてありがとうございます。ところで、あの施設で今警報が鳴っててそのうち誰か来ちゃうんで、逃げましょう。」

 

 そう言って再びシュウを背負った彼はメモリアと一緒に歩き始めた。しばらく2人は無言で歩いていたが、外壁のすぐ下に辿り着きメモリアが口を開いた。

 

「君、もしかして転生者じゃない?」

 

 セキはかなり驚いた様子で、転びかけた拍子に危うくシュウを落っことすところだった。その衝撃でシュウは目覚めた。

 

「シュウ、起きた?君の友達が手伝ってくれたから、ここまで来れたよ。」

 

 未だ体調の優れないシュウは震えた声で返した。

 

「いや、俺…こいつ知らない…」

 

 そう訴えるが、メモリアには《追憶(メモリー・バック)》という最強の証拠があるので気が動転しているのだと考えた。

 

「ああ、大丈夫。ソウジロウとリーランともう合流するし、リムも脱獄して中央の詠唱装置の残骸を回収したって連絡があったから。ところで、君は転生者なんだね?前世はどこ出身?異界異能(アルシア)は何?」

 

 すぐに話はセキのことに戻る。シュウはリムの名前を聞いて安心して再び目を閉じた。メモリアがこうも彼に質問するのには理由がある。実は、彼女は既に先程の《追憶(メモリー・バック)》によって彼の能力や前世については知っている。この質問の意図は、未だ信頼し切れるとは言い難い彼が嘘をつかないかを見極めることだ。

 

「俺は前世日本人で、異界異能(アルシア)は《黒の引力(ブラックホール)》で、どんなものでも吸い寄せて圧縮します。魔法弾も触る瞬間に圧縮してただの魔力塊にしました。」

 

 嘘は無い。ここでメモリアは彼を完全に信じることと決めた。その後の追手もセキが強力な異界異能(アルシア)を以て撃退し、そしてリーランとソウジロウが合流した。メモリアはセキについて軽く伝えて外壁を登り外に出る。数分逃げ隠れし、リムは一足遅れて到着した。リムの言うことには、縛りプレイをしていたら牢獄を出るのに手こずったそうだ。ゲーム用語を知らないリーランとソウジロウに何か誤解を植え付けたような気もするが、この際全員無事なのだから良しとしよう。そうして、捜査チームとおまけ1名は転生村へと帰った。

 

 ともかく、ミッションコンプリートだ。




 リムやリーラン側の描写もしたい。
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