転生村   作:もつ煮トリガー

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第23話:鳥頭

 リムの転移魔法により捜査チームは転生村に帰還した。シュウを除けばリーランが擦り傷を負ったくらいで皆無傷で、シュウも毎度のごとくシエラから治療を受けて無事回復した。交渉チームはトゥテル王国担当のザックとソーラス王国担当のリリー以外は帰還したと言う。ビリーとシエラは決戦用のスタミナ料理を作るため、残りのハルカが新たに捜査チームに加わることとなった。セキはリムによってその実力を見抜かれ、戦闘チームへ加入することになりレオと一緒に筋トレをすることになったそうだ。

 

 この日の残りの時間を使ってすることは破壊された術玉、詠唱魔法装置の解析である。これはリムとメモリア、ハルカの三人によって、ホムラ・メモリア邸にて行われる。ソウジロウは物作りが得意だが魔術分野に関しては全くの素人で、シュウとリーランもあまり詳しくないということでこちらの三人は不参加だ。暇になったリーランは、同じく暇になったシュウを村の近くにある温泉に誘った。当然村の結界外に出ることになるが、何故かリーランは「転生者狩り」に襲われない自信があるらしい。

 

「シエラが言ってたよね。温泉入るとスッキリするよって。」

 

 彼はシエラの進言を聞いていたようだ。せっかく誘われたのでリーランについて行くことにした。転生村の南東の方にあるということで、なんとなく魔物山の麓を経由した。すると、山の中から黒蛇のノブがシュウの下へ来た。

 

「どうした?山から下りるなんて珍しいな。」

 

 シュウはそうやって話しかけた。傍らでリーランは動物の中でも蛇が特別に好きだと言ってノブをまじまじと見つめていた。ノブは以前と同じくシュウの体に巻き付いてついてきた。山際を1時間ほど歩いた。2人は結構気が合うようで道中も何気ない話をよくした。この間はトゥテルのことだけで話が終わってしまったが、今度は好きな食べ物や様々なスキルについての話ができた。ノブが時折魔物に反応したが、今は応戦する必要も無いので揃って逃げた。

 

「着いたね。やっぱり、先客がいるようだよ。」

 

 温泉が見えたとき、リーランが言った。しかし、シュウに先客というものは見えなかった。リーランは落ち着いているので危険な状況では無いと分かりながらも、奇妙な状況に少し落ち着かなかった。その様子を見たリーランは空を指さして言った。

 

「ほら、あれ、フーリだよ。」

 

 指し示された方角を見上げると、そこには超高速で温泉の上空20m辺りをぐるぐると飛び回る人がいた。あれは何をやっているのかと尋ねると、リーランは丁寧に説明してくれた。

 

「フーリは世界で10番目の転生者で、異界異能(アルシア)は《空を飛ぶ》。作戦三の戦闘チームに振り分けられるくらいに強いけど、有り得ないくらい頭が悪くてああやって訳も分からず飛んでる時があるんだ。多分あれは温泉に入ろうとして飛んできて目的を忘れてぐるぐる回ってるんだと思う。」

 

「そ、そうか…」

 

 リーランの毒舌に少し気圧されつつシュウはそう応えた。続けて、倉庫のような建物を見てリーランが口を開いた。

 

「あ、あそこに桶があるから持ってくるよ。ソウジロウがいっぱい作ってくれたんだ。200個ぐらい。」

 

 リーランは軽快に歩いて倉庫へ向かっていった。少し時間がありそうなので、シュウはフーリとのコミュニケーションを図ってみた。

 

「フーリさーん。温泉は下ですよー。」

 

 大きめの声で呼びかける。フーリはそれに反応して落下してきた。頭から落ちたが、足元の岩盤が彼女の額に負けて凹んでいた。

 

「どこです?」

 

 ああ、もうだめだ。シュウの頭にはそんな言葉が過ぎった。しかし、リーランがここに戻るまであと20秒はあるだろう。諦めるにはまだ早いと自分を奮い立たせた。

 

「あ、温泉は後ろ、そこに。あと、フーリさんはま」

 

 温泉を指さして位置を伝えると、話を最後まで聞かずに飛び込んだ。直立姿勢から有り得ない加速をして温泉に飛び込み、お湯が飛び散った。シュウもかなりの被害を被った。

 

「…だ、服着てるんですよ…」

 

 岩盤が凹む轟音とお湯が飛び散る音を聞いて急いで駆けつけたリーランの目に映ったのは、服を着たままびしょ濡れになったフーリとシュウの姿だった。やれやれと言った感じでリーランは2人に指示を出した。

 

「シュウはほらこれ、桶持ってきたから服脱ぎな。」

 

 言われた通りに服を脱いで渡した。

 

「フーリはこれ持ってあの辺りで飛んでて。」

 

 言われた通りに桶を持って飛び立った。

 

「あのあれ、俺の服、帰ってきますか?」

 

 この短いやり取りでシュウのフーリへの信頼などできるはずもなく、寧ろ自分の服が帰ってこないかもしれない不安感が芽生えていた。リーランは特に気にしない様子で服を脱いで自分の桶に入れ、温泉に片足を入れた。

 

「大丈夫大丈夫。そういえば、この当たりの整備もソウジロウがやってくれたんだよ。ほら、入ろう?」

 

 シュウは諦めた。夕日を背景に山々が連なり、その間をフーリが桶を持って飛ぶ。そんな情景を臨む穏やかな入浴の時間を二人でのんびりと過ごした。




 大忙し。投稿時刻を変えようかとも思いましたが、まだこのままいってみます。
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