転生村   作:もつ煮トリガー

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第24話:温泉の後は

 程よく暖かく心地いい温泉の湯気の中、シュウはソウジロウについて考えていた。名前の雰囲気はアマノエ人のようだが顔つきがあまりそれらしくなく、特にヒントもない状況では大した考察もできなかった。

 

「そういえば、ソウジロウさんってどういう人なんだ?」

 

 ということで、そう尋ねた。リーランは瞑っていた目をシュウに向けて答えた。

 

「ソウジロウはモノ作りが好きっていうのは確か最初に言ってたし、聞いてたよね。」

 

 シュウは頷いて返す。そもそもあまりちゃんと聞いていなかったうえに酔い潰れた影響で、実のところ記憶が曖昧なのだが言われてみればそんな気がしたのでそうした。

 

「ソウジロウは正確には転生者じゃなくて、僕と同じ転移者なんだ。だいぶ西の方にあるグランダムって国知ってるかな。そこが向こうの世界の学校の学級が一つ丸ごと転移させたんだって。」

 

 まず、リーランが転移者ということが初耳であったシュウは一つそこで驚き、続いて学級を丸ごと転移するという愚行にもう一つ驚いた。前回の転生(転移)からの時間が短いほど、その転生者(転移者)異界異能(アルシア)の質が落ちるというのが現代の通説であったからだ。しかし、驚きが去って考えてみれば、それならソウジロウ以外の転移者がいてもよさそうなものであるがそのような人物の話は聞いたことがなく、転生村でもあった事がない。それについて尋ねてみると、リーランは打てば響くといった感じですぐさま答えた。

 

「他は元の世界に帰ったらしいよ。学級の皆で当時いた魔王を倒してその魔力を帰還用魔術に流用したんだけど、魔王を倒しても魔力が足りなくて、一人残ることになった。それがソウジロウなんだ。いや、捨てられたってのが正しいか。」

 

 リーランは少し目を逸らしまだ同じところをくるくる回るフーリの方向を眺め、一息ついたところで再び口を開いた。

 

「ソウジロウはクラスメイトとあまり仲が良くなかったみたいで、ソウジロウが作った装備が壊れるからという理由で魔王討伐チームを離脱させられたんだ。使いかたが悪かったってソウジロウは言ってたよ。前世の知識と知識が直接技術になる異界異能(アルシア)《職人肌》を組み合わせて作った俺の装備は最高だともね。」

 

 シュウはソウジロウに対してなんとなく寡黙で消極的な印象を持っていて話しかけづらかったため、自信家な一面を聞いて彼への好感度が上昇した。

 

「すごく自信があるんだな。追放されてそれでも揺らがないほどの自信は正直羨ましい。"しびれ針"も"万能ナイフ"も、俺にはどういう仕組みだか見当もつかなかった。そうだ、ソウジロウってどこに住んでる?」

 

「ソウジロウの家は結構魔物山に近い方にあるよ。帰りに寄ってみる?ソウジロウの工房は見ててワクワクするんだ。」

 

「じゃあ、行く。」

 

 そんなやり取りをするうちに小一時間が経ち、二人とものぼせかかったところで風呂を上がった。リーランがフーリを呼ぶと彼女はまた凄い速度で飛来した。かなりの距離があったのだが耳がいいのだろうかとぼんやり考えつつ服を着て、さっそく帰路に就こうとしたシュウを呼び止めたのはフーリだった。

 

「これ、飲みましょう!」

 

 差し出されたのは茶色く濁った牛乳だった。これはトゥテルにはない文化で、俗にコーヒー牛乳と呼ばれるものだ。これを風呂上りに飲むという不思議な文化はこの異世界でも無事に芽生えていたようである。

 

「ありがとう。フーリって気が利くよね。」

 

 リーランが受け取って美味しそうに飲むので、若干の抵抗を示しつつもシュウはそれを受け取った。リーランの素振りを真似して勢いよく飲む。一息に口に放り込まれたそれは、深く苦いコーヒーとほの甘くまろやかな牛乳が穏やかに共存したな風味絶妙な風味を火照った体に染み渡らせた。

 

「美味しい。」

 

 シュウの口からこぼれ出たのは、純然たる感想だった。




意地でも間に合わせるために短くしました。次回月曜投稿です。
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