転生村   作:もつ煮トリガー

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第28話:やはり筋トレ…!!筋トレは全てを解決する…!!

「ふん!」

 

 レオはその丸太のような脚蹴りで結界を破らんとする魔王を叩き落とす。魔王は七色の光線によって迎撃するが、レオの魔力放出によって掻き消された。そして放出された余りある膨大な魔力はそのまま転生村へと迫った。

 

「俺の出番!」

 

 すぐさまセキが飛び出し、《黒い引力(ブラック・ホール)》を発動する。叩き落とされた魔王の進行方向に、直径2mほどの黒い球が発生した。その瞬間、凄まじい勢いで当たりの全てが吸い込まれる。

 

「セキくん!これじゃ結界も…」

 

 結界への負荷に気づいたリーランが警告し、セキはすぐさまそれに応える。

 

「わかってます!"タマ"!!"対象限定"、"レオの魔力"!!」

 

 放たれた宣言に従い、タマと呼ばれた黒い球はレオの魔力に引き寄せる対象を絞る。対象の絞られた引力は力を増し、より激しくレオの魔力を吸い込む。完成した超高密度の魔力の塊に、蹴り飛ばされた魔王が触れる。魔力でできた魔王の肉体は、より高密度の魔力へ触れた傍から制御を失い分解されていく。しかし、魔王というのはそう簡単に打ち倒せるものではない。分解が始まった直後、魔王は自らを光の粒子へと分解し、四方へと飛び散る。

 

「やべ!タマ!"対象追加"、"敵"!!」

 

 《黒い引力(ブラック・ホール)》は、その名の由来であるブラックホールと同じく例え光速の物体だろうと逃がさない。だがそれは物体を巻き込んだ末に最高出力に達した時の話だ。レオの膨大な魔力を巻き込んだとはいえ、まだその引力は8割程度だった。幼いころ《灰燼の魔王》に故郷を滅ぼされたセキは、魔王が世に放たれることの恐ろしさを身に染みて理解している。だから、今ここで敵を逃がすわけにはいかないと、《黒い引力(ブラック・ホール)》を重ねて発動しようとした。しかし、レオはそれよりも早く筋肉によって導き出された最適解をとった。

 

「ふん!!」

 

 レオは背負っていた大剣を投げた。魔力を込めて。もちろん大剣は一瞬で壊れた。どんな物体だろうとレオの魔力に耐えられるはずがない。だが圧倒的な腕力で投擲された大剣は、崩れ去る一瞬のうちに"タマ"へと到達した。"その瞬間、"タマ"の持つ魔力量は直径2mの容量を超え、光速をも取り込む引力を放ち始めた。

 

「キュリキュリキュリキュリキュリ」

 

 軋むような音を立て、魔王は魔力の塊となった“タマ”へと吸い込まれていく。既に粒子にまでなった魔王はそれ以上分解されることはなかったが、その動きは止まり、次第に高密度の魔力と混じり合いながら実体化されていく。

 

「セキ」

 

 レオが呼ぶ。

 

「了解。“対象追加”、“俺とレオ”!」

 

 引力の対象となった2人は、急速に魔王へと接近する。

 

「《過剰拳撃(オーバーナックル)》…!」

 

「《黒の聖拳(ブラック・ノック)》!!」

 

 2人は今それぞれの持てる最大威力の拳を、上下から全力で叩き込む。弾け飛ぶほどの魔力圧と押し潰れるほどの引力の狭間で、魔王は消滅した。そのままレオはセキを抱えて着地した。

 

「倒せましたね。魔王。」

 

 セキは安堵し、体の汚れを払いながら言った。

 

「ああ。だが、今のは発達途上の魔王だったようだ。できあがっていた《灰燼の魔王》は俺が100殴っても砕けなかった。」

 

 おお、と感嘆を漏らすセキだったが、すぐにリーランが駆けてきた。

 

「レオ、()()()が山を降りた!温泉の方に向かってる!」

 

 

 

 その頃、シュウはローベンと対等に渡り合いながら順調に手札を割っていた。ローベンは手数と出力で圧倒的に勝るものの、複数の異界異能(アルシア)をぎりぎりで対処し続け、的確に隙を突いて仕掛けられる未だ謎の解けない初見殺しに苦しめられていた。しかし、シュウもまた体力は削られ、次第に異界異能(アルシア)への対処が覚束なくなっていく。

 

「手加減してくださいよ先輩!!」

 

「したら殺すだろ。」

 

 これまでローベンが使用した異界異能(アルシア)は、魔力を消滅させる《浄化の炎》、無を有とする《そこにある虚構(パントマイム)》、カンナの《魔剣使い》、気配と魔力を消す《隠れ蓑》、毒の霧や沼、皮膚を作りだす《毒の聖杯》。確認はできていないが、異様に速い回復速度から回復系の異界異能(アルシア)もおそらく持っているだろう。そしてその中で唯一《魔剣使い》だけは一度しか使用されていない。ローベンは持っていた短剣をシュウに奪われたため徒手であり、《そこにある虚構(パントマイム)》で作られる普通の剣は強度が低く破壊されやすい。《魔剣使い》と《そこにある虚構(パントマイム)》の同時使用によって見えない魔剣を使うべき場面はいくらでもあったが、彼はそうしなかった。異界異能(アルシア)の複数同時使用は何度か確認している。可能性があるとすれば、

 

「殺害が条件…?」

 

 シュウは考えながらついそう零した。ローベンは表情を変えなかったが、その瞬間だけ攻撃の精度と足取りが僅かに揺らいだ。それを、シュウは見逃さなかった。

 

「正解か?」

 

「チッ…勘がいいなあ…!!」

 

 そのとき、巨大な羽音が2人の頭上へと迫った。その主は紅竜だった。

 

「ハアァァァァァァァァ!!!!!!」

 

 けたたましい叫び声とともに、その紅竜はローベンへと一直線に突進する。砂煙が静まったとき、現れたのは青筋を立てた魔獣おじさん、ノットだった。

 

「きたぞ。」

 

 シュウを奮い立たせるのに、複雑な言葉はいらなかった。




16時投稿の安心感が凄まじい…(今日は書き終わったの11時前だけど)

ちなみに僕は筋トレほとんどしてないです。次回水曜です。
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