海、それは人々にとって最も身近な“異世界”の1つだ。森を抜けてから海に至るまでのわずか数十mで生態系は一変してしまう。そして魔物のいる
「みんな今の見えた?向こうでありえないくらい大きい何かが跳ねたんだけど。」
「見てない。どんくらいでかかった?熊とかくらい?あ、そういえば、ミオンは海見たことあるんだっけ。」
「やめろ、仲間の1人がでかい魔物に丸呑みにされたの思い出したじゃねえか…」
「え…まさかこの浅瀬まで来ないよな…」
立ち竦みながら4人はそんなことを話していた。仲が良いようで何よりだ。一方シュウは1人で上着を脱ぎ、ダイビングの支度をしていた。シュウほど魔力操作が上手ければ魔力を纏うだけでも水に濡れることはない。だが泳いだ経験もないのに潜るのは流石に愚行が過ぎると皆に引き止められた。初めての海でテンションが上がったなどと宣っていたが、海の魔物について聞いた後はよく反省しているようだ。
「海岸には着いたんだし、早く
シュウの行動を咎めるリヒトに、ユメが声をかけた。
「ありがとう。だいぶ楽だ。だが他人の魔力に干渉とか、あんたどうなってんだよ…」
「やっぱり私の兄なだけある。」
そして、2人の魔力が回復するまでしばらく休憩をとることになった。もちろん、元気な3人はミオンを中心に付近の詳細な地図を作成する。険しい崖を見つけたミオンの提案で3人で誰が一番早くその崖を登れるか競走したときは、圧倒的な柔軟性と経験を持つミオンが首位、続いて慣れないながらも高い魔力強化で強引に駆け登ったリヒト、シュウは最後だった。高い崖の上からはセオとユメが休んでいる一帯の砂浜が一望できた。森の方も当然よく見える。ミオンが遠目に魔将級か魔竜級はありそうな魔物を見つけたと言ったとき、シュウは道中で会わなくて幸運だったと身震いした。
「この森林ほとんど手つかずだってセオが言ってたしな…何100年生きてるような魔物がいたっておかしくないし、ほんとよかった。」
リヒトの呟きを聞いたシュウの脳に、いけない思考が割り込んだ。いや流石に…いやでも…と一人で問答していると、またリヒトが話しかけてくれた。
「どうした?」
「いや、ミオンさんが言ってたそいつほどじゃなくてもいいんだけど、狩ってユメたちに食べさせたら魔力回復するよなと思って…魔竜級とかだったら危ないけど、魔将級なら俺とリヒトさんとミオンさんなら無傷で行けそうかと思って…」
このとき、シュウが大きなミスをしていることに気づく者はいない。そのミスとは、ここにはハイテンションなミオンとリヒトのストッパーになる2人がいないのに、ちょっと挑戦的なことを提案してしまったことだ。かくして彼らはソノ森林に繰り出した。
「あんまり長く離れるとユメたちが襲われるかもだしさっさと済ませて帰ろうぜ。ミオン早く見つけてー。」
「シュウが魔力探知得意なんだからそっち頼れば?」
「確かに。」
「ちょうど今見つけた。充分強そうだ。」
いつもと違う臨戦態勢、シュウの考えた作戦は、全員で移動しながら攻撃して隙を作り、魔物が魔力を消耗しすぎないうちに攻撃力の高いリヒトが一撃で殺しきるというものだ。
「来た!」
シュウの5倍はありそうな人型の魔物が、木々をかき分け3人の目の前に現れた。初撃はシュウが練魔の腕輪で足を掬いつつ、《影鍼》を仕込み即座に弾けさる。しかし、衝撃はほとんど体外に逃げて効果は薄かった。
「魔物には効きが悪いか…じゃあ次!」
掛け声とともに、シュウは
「行くぜ!」
リヒトは跳躍して、真っ直ぐに脳天から胴までを一太刀で断ち切るために魔力と魔法を幾重にも重ねる。魔物はその剛腕で迫りくるリヒトを迎撃しようとするが、動かなかった。
「もう完全に使いこなせる。カルジーナさんに礼を言わなきゃな。」
ぎちぎちという気味の悪い音を立てて、魔物は2つに分かれた。
魔物はいないけど、海って怖いですよね。