転生村   作:もつ煮トリガー

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第46話:帰るまでが

 無傷で魔物を制したシュウたちは、森の中に横たわる魔物の死骸の解体に取り掛かっていた。魔物の構造は動物に似ることが多いが、あくまで似るだけで確立された捌き方はない。とりあえず、3人で節ごとに切り分ける。なまじ人に似ているのでリヒトは少し嫌な顔をしていたが、隣のミオンは嬉々として刃を入れていた。少しして、魔物は10の塊に切り分けられた。

 

「切り分けてみると意外とデカいな。どこが食べやすいだろうか。」

 

「リヒト食ってみろよ。ほらほら。」

 

「食ってみろって、いや、シュウ!これ食っても大丈夫なのか!?あっ押し付けないで。」

 

「大きくて硬い魔物は大体毒がないって言ってたから、大丈夫だと思う。一応加熱しながら食べて。」

 

 リヒトはその返答に肩を落としながら、口を大きく開けた。ミオンに押し付けられた肉片を魔法で加熱し、少しかじって咀嚼する。すると、リヒトの表情が嫌悪から疑惑へと移り変わった。

 

「なんか、不味くは…ないけど味薄い?」

 

 生でも味ないんだ…と、シュウが呟く。幸いリヒトには聞こえなかったようだ。リヒトには。

 

「え、シュウも食べたことないの?リヒト大丈夫?」

 

 ミオンが顔を近づけて聞いてきた。少し目を逸らしながら、

 

「たぶん。魔力量が少ない人が魔物を食べると魔力圧が高くなりすぎるとかでダメらしいけど、リヒトは多いから。」

 

 2人が話しているうちに、リヒトは勝手に魔物の肉を食べ進めていた。味ないなーと愚痴を零しながら各部位を一口ずつ食べる。6つ目の部位を口に入れかけたとき、手を止めた。

 

「ここなんか臭い。」

 

 シュウはそれを聞いてリヒトが齧ったところの匂いを嗅ぐ。

 

「ここは魔物が食べたものが変形したところだ。食べない方がいいと思う。」

 

「危な!食べそうだった。」

 

 その後、人間でいう首にあたる部位が特に柔らかいことがわかったため、それを海岸まで持ち帰った。ちなみに、残りの部位はシュウが魔力を抜いて適当に撒いた。きっと野獣の餌になるだろう。

 

「セオ!ユメ!魔物の肉だぞ!!」

 

 親友たちとの少しぶりの再会に、リヒトは大声を出す。その声は魔力強化でもかかっているのかと言う程大きく、近くて耳のいいミオンはしっかりダメージを受けた。

 

「うるさい。まだ頭痛いんだよ…てか、魔物の肉って食べられるのか?」

 

「食べられるから持ってきたんだと思うよ。2人だけならまだしも我が兄シュウもいるし大丈夫でしょ。」

 

 魔力消耗による不調により砂の上に寝そべる2人の横で、シュウの調理が始まった。調理と言っても食べやすい大きさに切って火を通すだけだが、ともかくすぐにそれは済んだ。

 

「できた。」

 

 完成した魔焼肉をユメとセオに差し出す。先にユメが手をつけ、セオが続く。味は、風味の薄い鶏肉だ。調味料もいいものがなかったのでそれがそのまま2人の口に運ばれた。それなりの量の味気ない肉をサラッと平らげたのは流石冒険者と言ったところか。途中リヒトが横からつまんでいたが、一口食べてやめていた。

 

「いい感じだ。ミオンに魔物の調理方法教えてやってくれないかな。」

 

「何でよ。セオが覚えればいいじゃん。でも、本当に効くんだね魔物肉。」

 

 回復した2人を見たリヒトは、立ち上がって深く息を吸った。

 

「じゃあ、帰るか。セオ、転移魔術装置(テレポーター)の操作頼む。」

 

 はあ、とため息を吐いてセオは立ち上がる。ユメはちょっとニヤつきながらそれについていった。シュウもその後ろを歩く。皆が簡易転移魔術装置(テレポーター)に収まったことを確認すると、セオが片手で術玉(オーブ)に触れながらもう片方の手でいくつかのレバーを操作し始めた。その様子を見たユメが、得意げにシュウに話しかける。

 

「普通の転移魔術装置(テレポーター)はレバー操作いらないんだけど、簡易版は魔石を小さくするために手動操作なところが多いんだよ。あれはセオしかできないんだ。」

 

 ふーんと、シュウは答える。見た目からはわかりづらいが、シュウは操作の様子を見て結構ワクワクしていた。セオが手を止め、じゃあ、と言って一番大きいレバーを引くと転移魔術装置(テレポーター)特有の感覚がして、到着する。

 

「よくぞ帰ったな…シュウとユメも再会おめでとう。」

 

 転移装置(テレポーター)の扉が開き、出迎えてくれたのはなんだか疲れた様子のテリアレスだった。既にシュウはその理由に感づいていた。テリアレスの後ろの方でぴょこぴょこと飛び跳ねるピンク色の小さい生き物の正体を彼は知っているからだ。

 

「モニが来たのか。何でだ。」

 

 もちろんそんなことをテリアレスが知る由もなく、返事は肩をすくめただけだった。リヒトのパーティはそのやり取りを後ろから眺めたり眺めなかったりしていたが、話が止まったところでリーダーが話を切り出した。

 

「あの、せっかくお越しいただいたところ悪いのですが、明後日また任務があるので今日はこの辺りで帰らせていただいてもいいですか?」

 

「何の任務だ。」

 

「リエル森林周辺の魔物の討伐です。」

 

「じゃあその任務はなしだ。このモニが解決した。」

 

 リヒトたちは皆、けっこうな声量で驚いていた。シュウも驚いていた。モニは得意げだった。

 

「報酬は…?」

 

「報酬は今回の分とまとめて持ってこさせた。ウェルヒンから受け取れ。」

 

 テリアレスが手を叩くと、いつの間にか隣に執事のような若い男が立っていた。4つの大きな袋を持っていて、それを一つずつ皆に手渡した。中には束ねられた大量の大銭と中銭が入っている。出費の多い冒険者でも、これだけあれば半年くらい生きるには困らないほどの大金だ。

 

「中銭が今回の任務の分だ。残りの大銭は、モニが狩った分だ。本人がいらないと言うからお前らにやろう。」

 

 棚から牡丹餅、ということわざをこの場にいる誰もが知らないが、これほどまでに似合う状況も珍しい。

 

「俺も一旦村に帰る。すぐ戻るけど。」

 

「じゃあ、解散でよいぞ。」

 

 そうして、皆はそれぞれの帰るべき場所へ帰った。




トゥテルはお箸が主流です。硬貨は5種で、大中小と上に貴、下に劣があります。1貴銭=10大銭=20中銭=100小銭=1000劣銭です。ちなみに、細かい金銭事情を扱う予定はないです。
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