シュウはトゥテルからゆっくり歩き、転生村への帰省を始めた。距離こそそう遠くないものの、ソノと比べてもリエル森林は圧倒的に厳しい環境だ。比較的弱い魔物でも正面衝突すればシュウでも怪我を負うし、強い個体なら命にも届きうる。勾配もなかなか激しい。リエル森林を歩くのは最初に転生村に来たときと、写真を宿へ回収しに行ったとき、ユメを探しにトゥテルへ向かったときと今回で4回目だが、《走力強化》を使わないのは初めてだった。
「迷ったかもしれない。」
シュウの呟きは、当然誰にも届かない。一応聞いていたウーナは、もしシュウが瀕死になったら神託くらいはあげようかという程度の考えで、ともかく彼を助ける人間はいなかった。
「トゥテルの方向は"
そう言いながらシュウは今晩の野宿の支度をしていた。基本都会から離れることのなかったシュウは今回の帰省で初めて野宿というものに取り組んでいるのだが、料理スキルや魔物の習性の知識、リヒトパーティの段取りに触れた経験から覚束無いながらもここまでの2日をいい感じにやり過ごして来た。いざとなれば味気ない魔物の肉に手を出すつもりだろうが、手持ちの食料や手頃な野生動物がいるうちはその必要も無い。
シュウはザックのアドバイスに従い、手元のメモ帳を開いて今自分ができることを整理し始めた。しかし、メモ帳には一度トゥテルに戻って再び真っ直ぐ転生村の方へ向かい帰るという案と地図を見て頑張るという案が記されたのみだった。
「無理じゃん。」
「素人が冒険紛いのことしたらそりゃそうなるよ。」
頭上から、ハスキーな声と嘲笑が聞こえた。魔物相手なら不要だと魔力探知を怠ったため、彼女の存在に気付けなかったのだろう。シュウは咄嗟に短剣を構えるが、その声に聞き覚えがあることに気づき手を下ろした。
「着いてきてよかったな。」
「私の兄ちょっと間抜けかもしれない。」
「まだ魔物肉食ってない…よかったな。」
続々と現れたのは、シュウの予想通りリヒトたちだった。幸か不幸か、妹に間抜けと言われたことは聞き逃しているようだ。
「せっかく休みだから転生村に行きたいって俺が言ったんだよ。シュウは痕跡全然残してなくて俺の鼻しか頼りになんなくて大変だったんだよ。」
シュウは今でも癖で跡を残さないようにはしているのだが、だからこそ獣人の追跡能力の高さに驚いていた。
「リヒトがずっと気遣っててね。妹の私よりよっぽど心配そうだったよ。」
そうして、再び揃った5人は現状の打開に取り掛かり始めた。しかし、冒険に関する能力はリヒトたちによって補われたが転生村の位置を知るのは相変わらずシュウのみで、転生村への行き方がわからないという一番大きな問題は解決されていない。と、いうことで、5人は頭を寄せ合ってその方法を考えることにした。最初にアイデアを出したのはリーダーリヒトだ。
「ユメとシュウで超絶魔力探知みたいなのできないのか?」
「できそうじゃない?セオがシュウに《
「他人に《
「え、やってみようか。」
なんと1つ目の案がいきなり採用されることになった。セオが何やら難しい数式とか図のようなものを紙に書き、4人を配置に着かせた。リヒトは探知の邪魔にならないように離れた場所に伏せて魔力を抑えている。
「《魔力感知》」
「《
「探知」
セオが小さな魔石を起動して、各々が順番に魔力を行使する。
「あ、結構大変。」
シュウが思わずそう言った。実際彼がいましていることは普通人間のやる所業ではない。しかし、その成果はすぐに得られた。
「あ、誰かの魔力が引っかかった!!たぶん…ノットかな?《魔力感知》すごいな。」
おお!と、リヒトたちは感嘆する。彼らはノットが誰かは知らないが、転生村の人間であることは想像に難くない。
「おいシュウ!方向を指さして!」
木の上で《魔方針》と方位磁針を組み合わせトゥテルとの大まかな方向関係を地図上に記していたミオンがそう尋ねた。シュウが東南東の方角を指さし、ミオンがメモをする。ミオンが完了の合図を出し、3人は魔力操作を解いた。
「よし、早く行こう。ノットは同じ場所に10分と留まらない。例え寝てても。」
5人はすぐに広げた荷物を片付けて、シュウが指さした方角へと走り出した。
1週間ぶり投稿です。今週は過去話の修正やってました。来週も土曜のみ投稿します。今回は「協力しようwithセオ&妹」でもありました。