転生村   作:もつ煮トリガー

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第57話:転生村で散歩

「あれ、ユメと同じくらいじゃない?」

 

 リヒトとセオがシュウにコーチングしている間、暇なミオンとユメは村の中を見て回っていた。午前中はメモリアが付き添ってくれていたのだが、昼食後は読書がしたいと家に帰っていってしまったため今は2人だけだ。そんな中で、リムとの訓練から帰るカンナをミオンが発見した。ユメは様子を見ながら近づいて話しかけるが、カンナは一礼だけして去っていった。ユメは一礼の文化に馴染みがなかったため、彼女の目には謎の仕草をしてガン無視する同世代の少女としてカンナが写ってだろう。一方ミオンは、カンナの顔を遠巻きに見つめながら見覚えがあることに気づき、自らの記憶を遡っていた。割と根気強くユメがカンナに話しかけて、なんとか振り向かせたことでミオンの記憶は鮮明に蘇った。

 

「特設S級冒険者の、シノザキカンナ?」

 

 以前大手冒険者協会の《暇人連盟(プレイヤーズ・ギルド)》からの勧誘を受けた際に、「こんな人たちも所属してるんですよ〜」と紹介された中の1人がカンナだったため、ミオンの記憶には僅かに彼女の顔が刻まれていたのだ。結局袖を振られて帰ってきたユメにミオンはそれを伝え、そそくさと引き上げた。彼女らは冒険者協会所属ではないがそれでもその道のことはそれなりによく知っているつもりだ。しかし”特設”S級というのは今思えばカンナ以外では見たことの無い称号で、そのことに2人は恐怖を覚えていたからだ。この称号は実のところ転生者を贔屓する以外の意味を持たないのだが、無所属の彼女らには知る由もない話である。

 

「おいユメ。なんかあそこやばい雰囲気があるんだけど、魔力探知できる?」

 

 フラフラ歩いて、2人は村の中央に鎮座する小屋の傍を通りがかった。その小屋の扉の前に立った瞬間、ミオンは未知の感覚に襲われた。恐怖に似ているが危機は感じず、興味に似ているが扉を開く気にはならない。それでいて、その感覚は心の大部分を占めていた。ミオンの様子を察したユメにも緊張は伝播し、神妙な面でユメは《魔力感知》を発動した。

 

「…」

 

 《魔力感知》を発動した直後、ユメは数秒沈黙した。何か罠のようなものを仕掛けられたのかとミオンが一瞬警戒するが、ユメはすぐに口を開いた。

 

「中に魔力が1つあるけど、量は一般人並みだし、波形もバラバラで洗練されてる感じは無い。すごく細かく脈打ってるから、多分魔術師の人だと思う。特別なところは特にないよ。」

 

 その結果はミオンの魔力探知と大体同じだった。違うところがあるとすればユメの《魔力感知》では魔力の細かい特性まで見れているくらいで、魔力が隠蔽されていたりということは無いようだ。

 

「ノックしてみようよ。」

 

 ユメがそう言うと、ようやくミオンの緊張も程よくほぐれ笑顔が戻った。ここは年長者が、とミオンが1歩前に出て、戸を叩く。すると、ぶかぶかのシャツを着た少女と見紛う背の低い女性が現れた。

 

「え…誰…?」

 

 女性はとても小さな声で呟いたが、ミオンの耳には届いた。

 

「あ、オレはミオンです。この村のシュウさんの紹介で、2月ほど滞在することになりました。」

 

 それを見てユメも後に続く。

 

「私はそのシュウの妹です。これから会うこともあると思うので、よろしくお願いします!」

 

 と、その時、女性はユメに1歩近づいた。元から2歩分もない距離だったので、ユメはかなりの圧を感じていた。

 

「ユメだね。ユメ凄いな。兄とは違って魔力操作をきちんと魔法発動速度に転換できている。」

 

 女性は半目開きだった目を少しだけ見開いてそう言った。

 

「あ、シュウのこと知っているんですね。でも私の名前」

 

「知っているだけ。シュウの魔力操作精度は目を見張るものがあるが、魔法が扱えないのでは話にならない。魔力操作でできることなんて大抵修練を積んだ人間なら生身でもできるようなことばかり。他に対する優位性がない。しかし、ユメなら私の理想の戦闘スタイルが実現出来るかもしれない。おいで。」

 

 女性はユメの話を遮って話し始めたかと思えば次々と言葉を吐いて小屋に戻って行った。少し歩くと振り向き、じっとユメたちの方を見ている。早く着いて来いということだろう。歩き出す前に、ユメは一言尋ねた。

 

「あの、お名前…」

 

「ああ、トリアだよ。」

 

 小屋の扉の先すぐにある階段は地下へと続いていた。その階段を15段ほど降りた時、ユメは息を飲んだ。先程まで全く感じられなかった無数の魔力と、一際巨大な3つの魔力が突然魔力探知に触れたからだ。ユメがそれについて尋ねようとすると、声を出す前にトリアが説明を始めた。

 

「ここにある無数の魔石は7割が非活性、残り3割が活性の魔石でね。活性の方はほとんどシステムに組み込んじゃってるからダメだけど非活性の方なら持って行っていいよ。汎質化は済んでるからすぐにでも使える。3つあるのは私専用の魔導装置や魔術装置に使ってるやつだ。そっちは後で見せてあげる。その辺別に触っても大丈夫だよ。触られて困るようなものが露出するような構造じゃないから。興味があったら魔導回路構造式をまとめたチップがそこにある。魔力の相互干渉と魔導銀の誘魔性を応用して《魔力感知》を使えば内容が理解できるようになってる。そうだ、ユメの杖そこの箱に入れておいて。他に魔導具があればそれも。後でちゃんと返す。後ろの…ミオン?もあれば一緒に入れて。それと…」

 

 すごい喋る。特に内容が専門的で難しく、魔法を使えるユメはまだいいがミオンは本当に何も理解していない。多分ユメに伝えるつもりで話しているのだろうから問題は無いのかもしれないがもう少し人を見た方がいいと思う。そのうち沢山の引き出しのある部屋に辿り着きトリアが立ち止まった。おもむろにトリアが柱に手をかざすと、棚のひとつが柱の内部に転移し開いた。

 

「はい。これ使って。」

 

 ユメは正体不明の魔導具をトリアから受け取った。




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