「で、そのまま帰ってきたのか。」
ザックは薄ら笑ってそう言った。彼は昨日、ホムラの戦いとは別にユメたちに冒険者協会所属の相談をしに行くという用事があったのだが、昨晩はそれを完全に忘れて帰ってきてしまったのだ。シュウにとってこれは大事な用事だが、別に大した手間がかかるものでもないのでこの後すぐにユメたちの元へ向かった。どうやら今日はホムラとの模擬戦がなかったらしく皆元気で、一緒にメモリアがくれた朝ごはんを食べた。食べ終わったあと、シュウは皆に自分の意向を伝えた。
「と、いうことだけど、確かリヒトたちって冒険者協会に所属してるわけじゃないんだっけ。」
シュウの言う通り、彼らはトゥテル現国王テリアレス直属の冒険者パーティであって、冒険者協会所属の冒険者ではない。しかし、もっと広いくくりである冒険者連盟にはその名が記されいて功績もそこそこに知られているので勧誘は後を絶たなかった。結果、彼らの元には無数の名刺が集っていた。おそらくトゥテル国内の冒険者協会は網羅されているだろう。量の名刺を差し出されたシュウは困惑しながらもユメたちの意見を受けながらそれらを選別した。
「決めた。」
シュウは名刺の1つを取り上げてそう言った。
「やっぱり"
"
「俺は"ブレイカーズ"だと思う。シュウ強いし。」
"ブレイカーズ"は近年では珍しい戦闘特化の冒険者協会だ。リエル森林の近くに複数の拠点を持ち、魔物を狩るのが主な仕事だ。
「"ブレイカーズ"か。確かにあるかも。俺は"出張料理人組合"とかかと…」
"出張料理人組合"は…
「それ冒険者協会じゃねーよ。俺は意外と"探求者の集い"とか行くんじゃないかと思ったんだけど、当たりいる?」
"探求者の集い"はトゥテル南西に位置する小さな田舎の協会だ。田舎らしく規則が緩い、ありふれた冒険者協会だ。
皆が予想を言い終わったところで、シュウは手に取った名刺を皆に見せる。
「"
おー、という声が上がる。シュウ個人の事情としてはトゥテル南西の国境近くに位置していてシンタの領地にも近いため転生村やユメたちの活動範囲にも近く世界一の大国シンタの文化文明に触れられるという利点がある。規則の緩さも気に入ったようだ。今のシュウの「仲間から離れすぎず色々やりつつ手に職付けたい」という願望に最も合致する。
「まあ、じゃあ帰ったら紹介するよ。」
こうしてシュウは今後の進路を決め、その後シュウは冒険者の暗黙の了解を教わった。ほとんどは普通の礼儀の範疇か合理的な生存戦略だったが、その例に漏れるものからは縄張りや担当といった思想を持つ冒険者も少なくないことを知った。また、ミオンから身に付けておいた方がいい技術を教わることになった。シュウは強いため戦闘面に懸念は無いが、この間のテントの組み立てで手助けできなかったようにサバイバル的な技能は無いに等しい。剣術の練習も、リヒトたちの休暇中は一緒にやる予定だ。
「じゃあもうしばらくよろしく。」
その挨拶で、シュウは1度皆と別れた。今日はユメたちを休ませてやりたいと思ったからであり、セキに用があったからだった。
「あ、セキ。」
シュウが向かったのはレオの家の庭。ここでは毎日、朝から晩までレオとセキが筋トレに励んでいる。この日も例に漏れず2人は筋トレをしていた。
「あ、シュウ。見ろよこれ。20キロ。」
そういってレオはでかい金属の塊を持ち上げた。前回会ってからそう長い時間は経ってないのに、少しガタイがよくなった気がする。相当やったのだろう。まあ、シュウは筋トレが趣味ではなく詳しくもないのでそれ以上の話はできず、すぐに本題へ入った。
「お前のこと思い出したよ。トリアに記憶を戻してもらった。本当はあの後すぐに言った方がよかったと思うんだけど忘れてた。ごめん。」
そう言ってシュウは頭を下げようとするが、セキはそれを許さなかった。
「それはまあ、記憶が戻ったんなら良かったよ。別に忘れてたのシュウのせいじゃないし謝らなくていい。」
そうか、ありがとう。とシュウは言った。そして、シュウは改めてもう1つの本題について話し始めた。
「ところでもう1つ、話がある。ユメの話だ。俺が連れて行かれてからユメがリヒトたちに拾われるまでの間、結構時間があるんだ。その間誰かがユメの面倒を見てくれたと思うんだけど、それが誰か知らないか。」
セキはそれを聞いて首を傾げ、少しして口を開いた。
「悪い。知らない。記憶はあるけど、俺もお前と同じ時に連れてかれてるからな。ユメちゃんが覚えてないならもう分からないんじゃない?」
それもそうか。とシュウは言って、感謝を述べながら帰って行った。それから約20日、シュウは以前からの料理の練習や魔物山での狩りに加えてミオンたちからの冒険者の心得の授業とリヒトたちからの剣術の授業を並列して行った。
1週間1話も投稿しなかったのは初めてです。ところで、冒険者って不思議な職業ですよね。