転生村   作:もつ煮トリガー

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第64話:支部にて

 シュウはアベリアとの戦いの後、ちゃんとした治療を行うために近くの村の"探求者の集い"支部へ身を寄せた。とりあえず受付の男性に"P・G(プレイヤーズ・ギルド)"から勧誘を受け、そしてアベリアという英雄級冒険者に襲われたことを伝えた。ついでに、連盟の名簿を確認してもらいアベリアが実際に英雄級冒険者であることを確認した。名簿に記載されている情報は所属冒険者協会と等級のみであるため新たな情報の獲得には至らなかった。詳細な情報は協会のみが保持するそうだ。連絡を済ませると、シュウは療養室で救護の心得がある常駐冒険者からの治療を受けた。まだ腕の中に弾丸が残っていたらしく、協会の規律的には任務の戦利品扱いになるとして摘出されたそれはシュウに預けられた。シュウはそれを眺めてみるが、特別なところの何もないただの鉄の塊でしかなかった。

 

「また"勧誘"しに来るのかな。」

 

 シュウがぼそっと呟くと、たまたま物を運んで近くを通った受付の男性が笑って言った。

 

「大丈夫だと思いますよ。名簿を見て思い出したんですけど、アベリアって実力はあるのに面倒くさがり、って言われてた人だったと思います。もう僕はここで働いて8、いや9年になりますが彼がこの辺に姿を現したことなんて今回が初めてなんで多分普段は遠いとこにいるんでしょう。」

 

 なるほど、ありがとう。そうシュウは返した。しかしそうだとしても疑問は残る。そもそも昨日今日でようやく冒険者になった自分の情報をなぜ彼が知っているのか、遠出したのだとしたらあれだけあっさり撤退したのか。他にも何か突っかかる点があるように思えたが、シュウにはこれが限界だった。

 

「しかし、本体がいなかったとはいえ英雄級と戦いになるって、実は俺相当強いのかもな。」

 

「魔法は使えないくせにね。」

 

 シュウが少し嬉しそうにそう独り言ちると、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「トリア。何でここにいるんだ?」

 

 驚きながらシュウは反射的に質問を口に出した。

 

「壊された詠唱魔導装置の再設置。まだ10個くらい残ってて、"探求者の集い"の本部にも置くから。」

 

 そういえばそんなこともあったなとシュウはまた違和感を覚え、すぐに口に出した。

 

「ここ支部だけど。」

 

 シュウの動体視力ですらとらえきれない程のほんの一瞬、トリアの視線が鋭く冷たいものになった。

 

「うん知ってる。知り合いがいたから来ただけ。じゃあ行く。」

 

 トリアはそう言ってすぐに転移魔法でどこかへ行った。何かを隠しているのか、もしかしたらアベリアの襲撃と何か関係があるのではないかと考えた。さっきここが支部だと指摘をした時も、一瞬だけ、怖い顔をした気がする。しかし、大した付き合いはないがトリアの知能の高さはシュウとてよく知っている。自分に隠し事をするならきっと上手くやっていて、到底到達できないようになっているだろう。そう考えてシュウはいったん考えるのをやめた。そしてベッドから降りようと足を降ろしたとき、グゥとお腹が鳴った。そういえば、色々あったせいで昼食を摂り逃している。外を見ると、景色は仄かに赤みがかっている。もう夕暮れの時間のようだ。そうしてシュウは痛む左腕を抑えながら受付に戻り、支部に必ず備えられていると説明を受けた食堂の場所を聞いた。すると男性はなぜか少し険しい顔をして言った。

 

「今日はやめといたほうがいいです。近くの冒険者割り対応の食事処を教えるんで、悪いことは言わないんでそちらへ行ってください。」

 

 あまりに真剣な顔で言うので、少し不安になって理由を聞くと男性は小さな声で耳打ちするように答えた。

 

「今日の料理担当の1人が、酷い腕なんです。前僕も食べましたけど、美味しい料理なはずなのに凄く…凄く変な隠し味か何かが入ってるのかな。酷いんだ。」

 

 そこまで言われると、シュウもその酷い味が気になりむしろ行きたくなってきていた。やめろと言われればやりたくなり、行くなと言われれば行きたくなるのはどの世界でも人の性なのだ。

 

「とりあえず、食事処ってどこですか?」

 

「よかったぁ。あ、食事処は正面から出て左の方へしばらく歩くと"タルタ飯"って看板があるのでそこがいいですよ。」

 

 シュウは聞き終わり、外に出る。しかし残念ながら"タルタ飯"に行く気は毛頭ない。シュウは足を右に向けた。

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