シュウはサチュアの手伝いをすることになった。サチュアは予め用意していた近くの宿にシュウを招き、そこで遊魔の卵の解析を始めた。彼は遊魔についてかなり深い知識を持っているようで、シュウの質問に答えてくれた。まず、遊魔は魔物の一種で人間の魔力に寄生して卵を作るということ。魔物には珍しい繁殖を行うタイプな上他者の魔力に容易く干渉するという稀有な特性を持ち、成体が見つかっていないという謎に満ちた存在で、サチュアは個人的にその研究を行っているらしい。そして、サチュアがシュウに協力を求めたのは、彼自身の戦闘能力の低さから遊魔に直接接触することが難しかったためだと言う。しかし、これまでも仲間を作るチャンスはあったはずなのに、なぜ彼は今、自分を選んだのか。そんなシュウの疑問は、浮かんですぐに掻き消されてしまった。
ドンドンドン。戸を叩く音がした。続いて、青年の朗らかな声が聞こえた。
「サチュアさん、シュウさん、昼食をお持ちしました。」
サチュアは「はーい」と返事をして入口に駆け寄り、扉を開けた。そこには声から想像した通りの好青年が、いくつかの皿を持って立っていた。サチュアが皿を受け取ろうとしたその瞬間、青年は動いた。皿を放り捨ててその下に隠していたナイフを、サチュアの腹に突き立てた。シュウは落ちた皿とナイフが肉を裂く音から事態の異常性を理解し、すぐさま青年を押し倒した。
「サチュアさん、大丈夫で…」
振り向いたシュウの目には、みぞおちに刺さったナイフに手をかけているサチュアの姿が写った。顔も手も青ざめていて、あまり力も入っていないように見える。しかし、シュウが制止する間もなくサチュアはナイフを引き抜いた。その瞬間、サチュアの皮膚には生気が戻り傷口は塞がった。
「凄いけど、それ
シュウの指摘に、サチュアはぽけっとくちを開いて固まった。回復魔法というものは、様々な化学反応を起こすことから見た目よりも魔力消耗が大きい、らしい。シュウは実際のところその消耗がどの程度なのかは知らないが、少なくとも魔力探知に反応しやすい魔法だということは知っていた。その反応がないということから、彼の回復能力は
「あ、ばれた?前世のこととか聞かれたくないから黙ってたんだけど。」
シュウは嘘を吐かれたことでサチュアへの疑念を少し募らせていたが、その一言でそれは晴れた。
「まあ俺も言いたくないことはあるし、別にいいよ。こっちはそっちの
いいよそんなの、とサチュアは突っぱねた。その表情は変わらず笑顔だったが、発される声はどこか冷たかった。しかし、この時のシュウはそんな些細なことに気づくことなどできなかった。
期間空いちゃったのでリハビリで短めです。