転生村   作:もつ煮トリガー

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第8話:安息を揺るがす者

 事件についてシュウとザックが話す中、そこへ近づく1つの影があった。その影は高速で移動し、玄関前で静止する。その直後、扉が派手に開いた。いや、吹き飛んだ。そこには小さくて丸い蛍光ピンクの少女、というより幼女なモニ=マニがいた。モニは何やら質問してほしそうにもじもじしている。扉を吹き飛ばした勢いはどこに行ったのか。

 

「モニか。どうしたんだ。」

 

 ザックは慣れているのですぐに扉の修理に取り掛かりながら質問する。

 

「あたしね!そいつ知ってる!この前襲われた!!」

 

 とんでもない事実が急に明かされシュウは腰を抜かした。そして、椅子から落ちる瞬間、村に来てからそんなことばっかりだな、と、ふと思った。ザックは一瞬手を止めたが、すぐに作業を再開した。

 

「こないだ、街に遊びに行ったとき、黒いのがすっ飛んできて切り付けてきたんだ!持ってたクッキー落としちゃったからもう許さない!!って、返り討ちにしてやったよ!!」

 

 シュウと、シュウよりも強いカンナが殺されそうになった相手だというのに、この幼女はそれを軽々しく返り討ちにしたと言っている。またもや驚きの事実である。

 

「でも、透明になったりはしなかったよ。逃げる時もそのままタタタって逃げてった!!あれ、じゃあ違う人じゃん!間違えた!ばいばい!!」

 

 一人で完結してしまった。しかもそのまま帰ろうとしている。ザックは扉の修理をすぐに取りやめモニを抱え、シュウの向かいに座らせた。モニは頭にはてなを浮かべていたが、またにこにこと笑顔を浮かべて、何の食べ物が好きかとか、趣味は何かとか、色々な質問を矢継ぎ早に投げつけだした。カンナのように会話ができないのも困るが、このように話しかけられすぎてもそれはそれで困る。シュウは何とか話についていこうと頑張って質問に答えていた。ザックがメモリアを連れて戻ってくるまでの2分ほどの短い時間で10の質問に答えさせられた。

 

「モニ、そいつどうだ?気に入ったか?」

 

 聞かれたモニは満足げに首を振りたくる。モニのテンションに着いてこれる人間は多くなく、シュウが頑張って着いてきてくれたことが嬉しいのだろう。今度はザックに最近あった事について話し始めた。その隙にメモリアが背後に回り、頭に触れた。そして、10秒ほど経って手を離すと、触るよと言ってシュウの頭に触れた。今度は触れてすぐに手を離した。

 

「モニを襲った人と、トリアさん、カンナの記憶にある人は同じ人のようです。シュウは遠目からしか見ていないですが、動き方はとても似ています。あと、モニさんを襲ったのは4年以上前のことのようです。」

 

 ザックは部屋の端にあるソファに座り、煙草をふかして発言する。

 

「なるほど、似た雰囲気の別人という線は消えたな。なら、そいつはつい最近、新しく《隠れ蓑》に似た異界異能(アルシア)を手に入れたと。」

 

「それなら、カンナが『村の者を我が手に』といった言葉を聞いています。異界異能(アルシア)を奪うような能力があるのではないでしょうか。」

 

 シュウは下手に口を出しても意味がないと悟り、只管に聞き手に回った。二人の理論展開はなかなか高度で、異界異能(アルシア)どころか魔法の仕組みにも詳しくないシュウは途中から聞くこともままならなくなっていった。モニも最初は聞く素振りを見せていたが、あえなく入眠。続いてシュウもノックアウトされた。

 

「話は終わった。起きろ。」

 

「ああ?人が心地よく寝てるってのに邪魔すんな!もう帰る!!」

 

 モニは起き掛けでも元気いっぱいである。ぷんすか怒って扉をぶっ飛ばし出ていった。ザック、失策である。まあともかく、その騒がしさにシュウも目を覚ました。

 

「あいつは…俺、が、倒す。」

 

 目覚めたシュウは目を擦りながら言った。

 

「寝ぼけてるのか、それとも本気か。」

 

 今度はしっかり目を開き、ザックへ向き直って言う。

 

「本気だ。俺の新しい居場所は、俺の手で守りたい。」

 

 そうか、それなら、とぶっ飛んだ戸を拾って戻ってきた。そして、少し離れたところにある小さな家を指差した。

 

「リムに挑むといい。この村で唯一、お前の師になれる男だ。」

 

 リム、その名前にシュウは珍しく反応を見せた。食事会の自己紹介のとき、リムは密かにシュウの目を引いていた。金髪にピアス、鋭い目の彼は、如何にも新入りなどに興味ないといった雰囲気を漂わせていた。その行動とは裏腹に、その目はシュウの一挙手一投足を観察していた。その視線に気づいたシュウも、リムをさり気なく観察したのだ。

 

 そもそもこの村の住人たちは規格外の生物だらけで他人の挙動など気にしない。だがリムはそうでは無かった。シュウが観測した限りでは、彼はレオには劣れど充分に規格外な魔力を持っていた。恐らくその魔力を振るわれるだけでシュウは為す術なく負ける。それなのに、彼はシュウを観察していた。シュウにはそれが心底不思議だったが、今日その結論が出る。

 

 そんな考えを胸に宿し、ザックの差した家の戸を叩いたとき、家の裏から激しい金属の衝突音がした。まさかと、音のする方へ駆ける。そこには、あの日見た金髪の青年と、両手に剣を握りそこに打ち込むカンナの姿があった。リムは右手に持つ術板のようなものを眺めながら、左手だけでその相手をしていた。素手で凌いでいるように見えるが、よくよく目を凝らすとほんの一瞬だけ可視の防御魔法を展開している。リムがちらっとシュウの方を見る。その瞬間、右手を勢いよく振り下ろしてカンナを吹き飛ばした。

 

「シュウか。どうせザックに言われたんだろう。」

 

 そう言ってツカツカとシュウの方へ歩いてくる。手合わせでも始まるのかとシュウは構えるが、いつの間にか組み伏せられていた。そして、何故か動けないシュウをビンタしてから立ち上がった。

 

「まあ落ち着け。一旦こう言え、“リムの仲間になる”と。」

 

 まあ訳が分からない。何故ビンタしたのか。シュウは転生者はこういう物なのだと諦めたつもりだがやはりただ受け入れるには無理がある。無理があるが、もう従うしかないのだ。この後、転生村入居時以来の暴力に叩きのめされることは知らずに、その言葉を復唱してしまった。




リムの異界異能(アルシア)は《遊び人(プレイヤー)》です。ところで、予約投稿のやり方と価値を理解したため、投稿時刻を毎週火木土曜の昼11時に固定しようと思います。次の投稿は火曜です。
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