影法師 村上文彦   作:+は*

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第十話 閑話
多分平穏な一幕


 

 

 

 慈悲深い死神は、獲物を前にこう言った。

 

『死ぬ前に心残りがあってはいけない、望みを言え』

 

 獲物はこう答えた。

 

「うるせえ莫迦、てめえこそ死んでろ」

 

 無慈悲極まりない獲物は死神を冥府へと送り返した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「痛みへの耐性がつくってのも、善し悪しですね」

 

 病院のベッドが気に入らないのか、何度も背中をずらしながらベル・七枝は愚痴を吐いた。

 

「虫垂が破裂するまで気付かないなんて参りました――下手に救急車で担ぎこまれちゃったから迂闊に退院できないし、暇で困ってます」

 

 無意識の内に虫垂炎の痛みを相殺したため自覚症状を持たず腹膜炎を併発し、授業中に突然倒れたのだ。つい数分前まで同級生や担任教師が見舞いに訪れ、病室は随分と賑やかだった。

 

「事件起こらないかなー、そしたら病院抜け出して暴れまわれるのに」

「たまには休んでろ」

「だって聞いてくださいよ。アレが虫垂炎とか思う訳ないですよ、ぶっちゃけ処女ま」

「ね・て・ろ」

 

 当分死にそうにない自称弟子の少女をそのままに、村上文彦は少し疲れた顔で病室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ハーメルン投稿規定最低文字数に届かないので以下余談)

 

『影使い』

 影(陰)を触媒とした法術体系あるいは異能力の使い手の総称。

 負の感情や想念という呪術要素の強い思念能力者という印象を持たれやすいが、陰陽二極で万物の根源とするという道術という側面もある。地水火風空や木火土金水といった元素術よりも一段ないし数段細かい魔術要素を触媒としているため、影をもって万物を再構築するという真似も出来ないことはないが、恐ろしく繊細な魔力制御と莫大な魔力を必要とする。一般的な元素魔術が市販されているガン〇ラだとすれば、極まった影使いはあらゆるガン〇ラの金型データを所有する超高性能な3Dプリンター(任意素材)でもある。お手軽さでは市販の〇ンプラを購入できるしミキシングビルドだの塗装だの独自解釈だの諸々改造できる元素魔術の方が圧倒的に上。一方で影使いの場合はルナチタニウムにセラミックスの複合素材どころか本物のサイコフレームを素材にした1/144スケールRB-79を製作できてしまうが、塗装のアレンジとか独自解釈などは一般モデラーと同じ土俵で戦うことになる。なお影法師はRB-79にロングレンジフィンファンネルとダブルホーンファンネルを搭載した上で推進器に土星エンジンを据えた直線番長を組み立ててしまうような「貴様は浪漫も外連味も理解しない悪趣味な男だ」と評されるタイプでもある。

 

 

 

 

 

 

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