授業中に寝て起きたら山田リョウになってたんだが   作:くるぽん

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「え、マジか」

 

転生、というか性別まで変わってしまっているとは。

可愛い女の子になれてラッキー……なのか?

鏡をじっと見つめていると、隣の席の女の子がため息をついた。

 

「もぉ、何やってるの? 休み時間終わっちゃうよ? 早くトイレすましてきなよ」

「あ、いや、トイレに行きたかったわけじゃないんだ」

 

鏡で自分を確かめたかっただけだからな。

 

「? そうなの?」

 

女の子が首をかしげる。

 

「……美少女すぎる自分が怖い、とか言うんでしょどーせ」

 

やれやれとため息をつく。

 

「い、いや、そんなことは別に言わないけど」

 

ってか、このリョウって子、自画自賛する系の性格なのか?

見た目はむしろおとなしそうだが。

 

「することないんだったら教室戻ろうよ」

 

隣の席の女の子に引っ張られてトイレを出た。

廊下を歩いていると。

 

「あ、虹夏やっほー」

「やっほー」

 

隣の席の女の子は、結構声をかけられている。

友達が多いみたいだな。

可愛くて明るい感じだから、そりゃそうか。

名前は虹夏っていうのか。

 

「よしっ、覚えたぞ」

「どうしたの、リョウ?」

「いや、何でもないんだ」

「ほんと変なの」

 

 

 

 

そのあとは適当に授業をやり過ごし、やがて放課後。

 

「リョウ、帰ろっか」

 

虹夏が声かけてきた。

いつも一緒に帰ってるのかな。

そんなことを考えていると。

 

「もぉ、まだぼんやりしてるの?」

 

虹夏が、唐突に俺の机の中に手を突っ込んできた。

がさごそと中を探り、プリントとか教科書を机の上に置く。

 

「えっと、これはもういらないなぁ。こっちは後で小テストに出るやつ」

 

な、なんだなんだ?

 

「はい。持って帰ったほうがいいのだけカバンに入れたから」

 

俺……というかリョウのカバンを差し出してきた。

持って帰るべきものを整理してくれたのか?

 

「あ、ありがと」

「うわっ、お礼言うなんて珍しい」

 

心底びっくりした表情をする。

 

「お礼言われるとなんか調子狂っちゃうなぁ、は、早く帰ろ?」

 

ちょっと赤くなってプイっと背を向ける。

うーん、可愛いな。

 

 

 

 

2人そろって、通学路を歩く。

街並みは普通の都会だ。

どうやら異世界に飛んだとかではないらしい。

途中から、騒がしい商店街エリアに入った。

なんか見覚えがあるな……ここってもしかして、下北沢か?

こういう古着屋とかカフェとかの個人商店が立ち並んでるのって、下北か堀江かって感じに見える。

 

「ほらぁ、よそ見しない」

「うぐっ」

 

キョロキョロしてたら、虹夏にまたぐりんっと頭をまっすぐにされてしまった。

 

「今日は古着とか見てる余裕ないよー。遅くなったらお姉ちゃんに怒られちゃうんだから」

「ご、ごめん」

「うあっ」

「どうしたの?」

「もー、なんで今日のリョウはそんなに素直なのー!」

 

照れたようにぽかぽかと体をたたいてきた。

全然痛くないけど。

リョウって子、いつもはいったいどんな対応をしてるんだろう、虹夏に対して。

そんなことを考えながら歩いていると、ディスクユニオンが目に入った。

それでここが下北沢だと確信した。

聞く専だけど、音楽が好きなので、東京に遊びに行ったときにこのディスクユニオンに寄ったことがあったのだ。

 

「着いたっ」

 

虹夏が立ち止まった。

ビルの横にある階段の地下を指さす。

 

「早くいかなきゃ、バイトの時間遅刻しちゃう」

 

虹夏がとんとんと階段を下りていく先は、地下のライブハウスだ。

 

「え、マジで?」

 

ライブハウスといえば、どことなく怖いイメージがある。

しかも下北で、地下だぞ。

俺たちって、そんなところでバイトしてるのか!?

女子高生にはハードル高すぎないか……?

ガタブルしながら立ち止まっていると。

 

「ほら、はーやーくー!」

 

いつの間にか後ろに回り込んでいた虹夏に背中を押されてしまった。

 

 

 

 

がちゃっと、重い防音扉を開ける。

 

「あん?」

 

薄暗いライブハウスの奥のテーブルに、すらりとした女性が。

美人さんだけど、眼光が鋭い。

 

「ひぃっ!」

 

思わず変な声を出してしまう俺。

 

「あ、お姉ちゃん!」

「え!?」

 

思わず二度見した。

お姉ちゃん?

この人、虹夏のお姉さんなのか?

かなり雰囲気は違うが……確かに、どことなく顔立ちは似ているような。

きりっとしたカッコいい姉に、天使のように朗らかな妹の美人姉妹か。

良いなぁ。

 

「虹夏、時間ギリギリだぞ」

「ごめーん、ちょっとホームルームが長引いて」

「どうせこいつがウロチョロ寄り道してたんじゃないのか?」

 

ぎろっと俺のほうをにらまれた。

うぐっ、怖ぇー。

 

「ち、違うよっ!」

 

と、虹夏がフォローしてくれた。

 

「今日はリョウ、まっすぐここに向かってくれた。ちゃんとしてたんだよ」

 

嬉しそうな表情でそんなことを言う。

 

「お、おぅ、そっか」

 

お姉ちゃんが肩をすくめた。

 

「悪かったな、勘違いした」

 

俺のほうを向いて、謝ってくれた。

この人、案外優しい人なのかも?

 

「でも、普段からももっとちゃんとしろよな」

 

そんなことを言いながら、照れ隠しなのかパックジュースにストローを指す。

何のジュースだろう?と見てみると。

『よい子のりんごジュース』って書いてある。

この人、怖い人じゃないな、と確信した。

 

 

 

 

「さ、お仕事始めよー!」

 

元気いっぱいに虹夏が宣言する。

 

「今日は結構お客さんが多いみたいだから、気合入れないとねっ!」

「お、おぉー!」

 

そんなわけで、俺にとって初めてのライブハウスバイトが始まった。

 

 

 

 




地の文で虹夏ちゃんって書くか虹夏って書くかめちゃ悩む……。
少しでも虹夏ちゃんが可愛く書けていたら嬉しいです。
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