授業中に寝て起きたら山田リョウになってたんだが   作:くるぽん

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きょ、距離感が近いっ!

っていうか、虹夏、めっちゃいい匂いする。

え?

女の子同士ってこういうものなの?

腕組みぐらい普通なのか!?

思わず慌てふためいていると。

 

「リョウ? どうしたの?」

 

虹夏が首を傾げる。

もしかしたら、こういうスキンシップは普通なのかもしれないけど、ちょっと俺には刺激が強すぎる。

 

「え、えと、その、胸が……」

「え?」

 

虹夏が、あまり膨らみのない自分の胸を見た。

俺の腕にぴったりとくっついている。

 

「……リョウのえっち。あほっ」

 

そんなことを言いつつ、ちょっと赤くなって離れてくれた。

女の子どうしでもエッチとか言うんだなぁ。

冗談めかした感じだったけど、可愛い反応だ。

 

「も、もぅ。バカなこと言ってないで、行こ? 帰るのあんまり遅くなると怒られるよー?」

 

照れ隠しなのか、虹夏がてくてくと歩き出す。

結果的に腕を離されたからホッとしたけど、ちょっと残念なような気もした。

 

 

 

 

2人で夜の下北沢を歩く。

夜に歩いたのは初めてだけど、すごく賑やかだ。

商店街に、人、人、人。

居酒屋とか、カフェとか。

新宿や渋谷みたいに高いビルはないけど、個人商店がずらっと並んでいて、すごく活気がある。

やがて、騒がしい通りを抜けると、閑静な住宅街に。

 

「あ、ここの公園。この前アー写撮るとき寄ったね」

 

あーしゃ?

何語だ?

と、とりあえず適当にうなづいておこう。

 

「リョウはいいよねー、背も高いし、写真映えするし」

「そう?」

「そーだよー」

 

確かに、このリョウって子は、背が高くてすらっとしている。

でも。

俺は隣を歩く虹夏を見た。

確かにちょっと背は低いかもだけど、正直言って、それも含めてすごく可愛い。

もしも、クラスにこんな子がいたら、絶対に気になってしまうだろう。

だから、真剣に答えた。

 

「え、虹夏、普通に可愛いよ。写真とか写っても絶対に」

「うぇっ?」

 

なんか虹夏が変な声を出した。

 

あ、ありがと……

 

聞こえないぐらい小さな声でごにょごにょとお礼を言われた。

 

 

 

 

そのあとは、音楽の話で盛り上がった。

ライブハウスでバイトしてるぐらいだから、虹夏もリョウって子もすごく音楽が好きみたいだ。

虹夏が、楽しそうに話してくれる。

 

「それでさー、前にタワレコで一緒に視聴したCD、結局買っちゃったんだよね」

「どうだった?」

「すっごく良かった! もう毎日聞いちゃってるよ。リョウの方は? あの時、紙ジャケのCD買ってたよね?」

「え、あ、そ、そうだったかな」

 

紙ジャケ?

な、なんのCDだろうか?

 

「えー、買ったのにもう忘れたの?」

「いやぁ、ははは」

「あの時すっごく語ってたじゃん。なんだっけ、〝これはゼロ年代のプログレハードを牽引したバンドで、これは紙ジャケの再販で〟とか。えっと、ポーなんとかってバンド」

 

ポーで始まる、ゼロ年代のプログレッシブハードのバンド、か。

思い当たるのがあった。

 

「ポーキュパイン・ツリー?」

「あ、それ!」

 

おぉ、当たった!

ちょうど知ってるバンドで良かった。

ってか、リョウって子、なかなかマニアックな趣味してるな。

そのあとも、虹夏と話していくと、かなり幅広く音楽を聴いてるってことがわかってきた。

俺自身、聴く専だけど結構いろいろ聴いてるので、わりと趣味は近いかもしれない。

虹夏は、メロコアとかジャパニーズパンクが特に好きみたいだけど、リョウのお勧めもちゃんと聴いてくれるみたいで、話が合う。

会話をしていて、すっごく楽しい。

俺、クラスだとあまり音楽の趣味が合う友達がいなくて、いつも一人で聴いてたからなぁ……。

 

「あ、そういうと、今日のライブの中でリョウが好きそうな曲あったね。ほら、最初のバンドが演奏してた曲」

「何曲目に弾いてた曲?」

「えっと、たしか3曲目」

「あ、覚えてる。確かに良かった」

 

ファンキーなベースラインがカッコよくて特徴的な曲だった。

 

「虹夏は? 気に入った曲あった?」

「えっとねー、最後の曲かな」

「あぁ、あの、キーボードがバックでブロックコードやってた曲」

「さすがリョウ、そんなとこまで聴いてたんだ」

「うん、なんか聴こえた」

 

って、あれ?

そこで、はたと気づいた。

俺の耳ってこんなに細かい音、聴き取れていたっけ?

自宅で音楽聞いていた時のことを思い出す。

なんか、もっとぼんやりと聞いていたような。

あ~、なんかカッコいいなぁ、ぐらいの感じで。

でも、振り返ってみれば、今日のライブ。

細かい一つ一つの楽器の音が、分離して理解できていたような気がする。

こう、音の解像度がかなり違ったというか。

もしかして。

 

「この体の耳が良いから?」

 

俺はつぶやいた。

 

「へ? 体?」

 

虹夏がいぶかしむ。

 

「あ、いや、なんでもない」

 

可能性はあるかもしれない。

帰宅したら、自分の知ってる曲を聞いてみるのもいいかもしれないな。

初見の曲だと比較できないけど、知ってる曲が高い解像度で聞こえたら、この体の影響ってことだ。

 

なんてことを考えていたら、虹夏が立ち止まった。

 

「リョウ、着いたよー」

 

おぉ、ここが俺……というかリョウの家か。

 

「って、え?」

 

目の前にあるのは、でかい一軒家。

洒脱な洋風建築。

しっかり庭まである。

東京でこの規模の家って、すごくないか?

 

「マジで?」

 

リョウって子、すげー金持ちなのか!?

もしかして、お嬢様?

俺の驚愕には気づかず、虹夏が言った。

 

「じゃ、そろそろ帰るね。あ、そうだリョウ、明日国語は小テストだよ?」

「わ、わかった」

 

ちゃんと勉強しときなよー、とか言いながら帰っていく虹夏。

俺は呆然と自宅の高い門を見上げていた。

 

「……お嬢様らしいふるまいとかできるのか? 俺」

 

 

 

 

※※※ボーナストラック・虹夏の独り言※※※

 

 

 

リョウを家まで送った後。

夜道をマンションまで帰りながら、虹夏は頬のほてりが取れなかった。

 

夜風に当たってるのに、なんで?

……たぶん、今日のリョウがちょっぴりおかしかったせいだ。

いつもよりも、ちょっとだけ優しいし、急に、一緒に帰ろ?とか言ってくるし……。

 

スターリーでのバイトの後、「リョウともう少し一緒にいたいな」とか思うことは時々あった。

でも、自分の家はスターリーの真上のマンション。

階段を昇ったら、そこでお別れ。

それは仕方のないことだと思っていた。

思っていたのに。

 

『も、もう少し一緒にいたいから、わ、私の家まで、一緒に帰って』

 

ま、まさか、リョウのほうからそんなこと言ってくるなんて。

そんなの……嬉しすぎるじゃん。

 

その上さっきは、さらっと私のこと、可愛いって……。

 

「うわぁ、なんなんだ、もぉ!」

 

体が、めっちゃくちゃ、熱い。

なんかぽかぽかする。

でも、リョウにからかわれてるだけのような気もして……。

 

「そもそも、女の子同士でドキッとしちゃうとか、あ、ありえんしっ!」

 

自分に言い聞かせるように、つぶやくのだった。

 

 

 

 




虹夏ちゃん視点は、たまにやりたいですね。
ちょっとでも可愛く感じてくださると嬉しいです。

ベースの話は次話か次々話ぐらいになりそうです。 
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