授業中に寝て起きたら山田リョウになってたんだが 作:くるぽん
6、
「た、ただいまー」
とりあえず、インターフォンを押してみる。
すると、ちょっとテンションの高い女の人の声が。
「リョウちゃん? 帰ってきてくれたの~?」
帰ってきてくれた?
疑問に思う間もないまま、ドアが開き、お母さんらしき人が出てきた。
「リョウちゃん!」
「ぐぇっ」
思いっきり抱きしめられた。
「3日ぶり、今日はお赤飯ね~!」
そ、そんなに家に帰ってないのか、この子?
※
何はともあれ、家の中に。
家の中もすごく豪華だ。
広い。
俺んちと大違い。
「え、えっと、お邪魔します」
小声でつぶやいて、靴を脱ぐ。
今はリョウになってるけど、俺からしたら知らない女の子の家なわけで。
き、緊張する。
「今日はリョウちゃんが帰ってきたから、腕によりをかけてご飯作るわね!」
お母さんが腕まくりをした。
というか、普段どこで暮らしてるんだ、このリョウって子は。
心配になって、俺は問いかける。
「え、えと、外泊ばっかで、ごめんね?」
「そうよー、パパもママも寂しかったんだから」
「う、うん」
「帰ってくるとき、虹夏ちゃんにもちゃんとお礼言った?」
「虹夏?」
「また泊めてもらってたんでしょー?」
「あ、う、うん」
昨日まで虹夏の家に泊まってたのか。
どんだけ仲いいんだ。
「月曜日からずっと泊めてもらってたんでしょ~」
「え?」
思わずカレンダーを見た。
今日、木曜だよな。
連泊しすぎじゃね、山田。
※
そうこうしているうちに、夕食が用意された。
ずらっとテーブルに並ぶそれは……。
「フルコース?」
前菜、サラダ、パスタ、ステーキ、スープ、アクアパッツァ、あとなんか名称のわからんもの。
す、すごすぎる。
「ママ、ちょっとはりきりすぎちゃった☆」
てへっと舌を出す山田母。
どんだけ愛が強いんだ。
「あ、あれ、そういうとお父さんは?」
「それがね、今日は病院なの。患者さん多くて、お仕事終わらないんだってー」
「そうなんだ」
ということは、山田家はお医者さんなのか。
お金持ちなのもちょっと納得だな。
「リョウちゃん、おいしい?」
「う、うん」
食ったこともないような高級肉のステーキは、美味いのだが、脳の処理が追い付かない。
いや、すごく美味いんだけど!
美味すぎて、美味いということがわからない感じ。
夕飯を食べながら、お母さんといろんな話をした。
結果わかったのは、やっぱりこのリョウって子は、あまり学校に友達がいないということだ。
基本的に虹夏との話題しか出てこない。
今日一日、学校にいるときから感づいてはいたけど、これで確信に変わった。
友達と呼べる存在は、ほぼ虹夏だけだと考えていいだろう。
それは俺にとっては好都合かもしれない。
多人数と対応をする必要がないってことだから。
とはいえ……正直、少し気になった。
どうしてこのリョウって子、友達を作らないんだろう?
何か理由があるのか、それとも、単に一人でいるのが好きなのか……。
「リョウちゃん?」
「え?」
「なにか考え事?」
しまった。
今は目の前のお母さんがいるんだった。
「あ、その、お母さんの料理、おいしいなって思って」
「!!」
お母さんが震えだした。
え、なに、どうした!?
「リョウちゃん!!」
がばっ。
「ママ、嬉しい!!!」
またもやお母さんが抱き着いてきた!
しかも涙ぐんでる!?
お母さん、感動のハードル低いな!?
っていうか、いい匂いする……。
「は、離れて」
「え~?」
ひ、人妻に抱きつかれて思わずドキドキしてしまった……。
※
「いやぁ、おなか一杯になった」
食後に出してくれたハーブティーを飲みながら、お腹をさする。
こんな豪華な夕食、初めてだ。
というか、食後にハーブティーなんか飲むのも初めてだな。
なんだろう、この優雅さは。
ティーカップを持つ、自分の細い指先を見つめる。
このリョウって子、見た目も綺麗なわけだし、仕草さえちゃんとしてたら完璧にお嬢様のはずだよな。
ふと、頭の中にこの子が、どっかの庭園で午後のアフターヌーンティーを決めている映像が浮かぶ。
「今日のお紅茶はダージリンですのね」
……いや、なんか違うな。
この子はそういうことはしなさそうだ。
なんとなく、わかる。
っていうかそんなリョウを見たら虹夏が「うげっ」って顔しそう。
とかアホなことを考えていると、お母さんが声をかけてきた。
「お風呂沸いたから、もう入れるわよ~」
「はーい」
軽い調子で返事をしてから、気が付いた。
「お風呂!?」
えっとそれって……裸になるってこと、だよな?
自分の体を、見下ろす。
今の俺は、リョウって子。
つまり、女の子の身体。
…………い、いいのか?
「問題、大アリじゃね?」
冷や汗をかきながら、つぶやいた。