ハーメルンの管理人はマジ有能で最高!
そして本当に埴安神袿姫というキャラの属性がとある世界にマッチしているなぁと思っています。
各々が定めた『条件』等で意見が食い違ったら、長い間衣食住を共にした仲間であろうが問答無用で殺すことが出来る。
そんな存在が上条当麻の処遇をめぐって、年末の渋谷に続いて二回目の戦いの火蓋を切った。
戦闘の舞台となったのは自分達の拠点の一つの『橋架結社』領事館の庭園。
最初に攻撃を繰り出したのはH・T・トリスメギストスだった。
遠方にいる青年執事の仕込み杖が白く爆破し、しかしその軌道が明確によじれる。どう考えても雷でも光でもない。あれは超高水圧の水だ。斬撃も付与されているのだろう。
狙う対象は敵対する同胞の超絶者ではない。地面に倒れてしばらく動けない上条当麻だ。
死のウォータージェットが上条に迫りくる。ばっちり幻想殺し対策をしているようで、下手に受け止めたら斬撃が付与された飛び散った個々の水の飛沫に付与されている斬撃で少年の体は粉々に斬り裂かれただろう。
それが別の何かに弾かれたと思うと、饕餮尤魔の方に流れを変えた。
おそらく『旧き善きマリア』がこちらに向かってきたウォータージェットのベクトルを変えて軌道変換させたのだろうか?上条当麻には分からなかった。
分かるのは紅茶のケトル、ガスバーナー、十徳ナイフ、ホットサンドメーカー・・・・。腰のベルトから下げた『武器っぽくも見える』キャンプ系キッチングッズを時折ほっそり指先で弄っているくらいだ。
「トリスメギストス。お前の攻撃を返すぜ!しっかり受け止めなぁ!!」
饕餮尤魔が持っているデカい先割れスプーンを振って、自分に向かってきた水流カッターを全部吸い取ったと思うとそのまま勢いよく回転してもう一回振ると、饕餮尤魔が使う超高水圧で出来た水のレーザーになって領事館の尖塔の屋根の上に建っているH・T・トリスメギストス達を襲った。
埴安神袿姫が造った饕餮尤魔の体内にある融合捕食の性質に特化し、造形術で魔術寄りの存在に作り変えられてしまった未元物質の賜物なのだろうか?饕餮尤魔は武器にしているスプーンでH・T・トリスメギストスの斬撃を捕食からの融合で自らのモノにして扱ったのであった。
それをトリスメギストスの目の前に立っていた杖刀偶磨弓が同じように踊る埴輪の形状をした仕込み刀を居合斬りの要領で抜刀して全て斬り伏せる。
彼女の手によって一筋の死の水のレーザーは一刀で斬られたとはいえ、その行動で切れ味が付与された水の飛沫が発生して杖刀偶磨弓という存在を切り刻むはずが何故か斬撃という性質がある水は跡形もなく完全に消滅していた。
これも杖刀偶磨弓という超絶者が持つ能力なのだろうか?それとも彼女が持っている剣に秘密があるのだろうか?
「杖刀偶磨弓とむにゃビビギギチギチむにゃトリスメギストス」
「・・・・そこは割と私のアイディンティティなのでちゃんと言ってくださいよ。しかも杖刀偶磨弓の名前は普通に言って、私の名前だけは共通トーンの調整をわざと乱して言うなんてふざけていますか?そういうのはアリスが真似します」
「長い。そもそもほかの超絶者達と違ってあなたが使う魔術の特性上、名前なんてコロコロ変わりますから別に問題ないと思いますが?」
「『旧き善きマリア』殿。実際にその通りだと思いますが、今のトリスメギストス殿の名前を一文字くらい言ってもいいのでは?」
「そこにいる杖刀偶磨弓の言う通りに『名前』という記号は大切だから私も思うぜ」
一見他愛もない話を四人の超絶者が日常で見せるいつも通りの表情で見せて喋っていたようだが、会話している四人の間の空間はチリチリと戦意で帯電しているように見えた。
「『旧き善きマリア』。あなたの救済の『範囲』は本当に広くて、ゆるい。一般的に考えて、誰彼構わず絶大な奇跡を与えるなんて無節操な」
「奇跡が選ばれた特権階級にしか降り注がないなんて誰が決めた?フ◯ック」
「欲望で破滅しそうな輩を救ってもまた同じことを繰り返して破滅を繰り返すから『一般的』に考えて意味ないのでは?饕餮という神獣の名前を持った存在でも所詮は獣な畜生だから分かりませんよね・・・・」
「・・・・それを言ったら主人の意向とは違う行動を取るのが一般的に考えたらおかしいと思わないのか?まあ、すぐに自分を躊躇なく捨てることが出来る伽藍洞な奴には難しいことか」
四人の超絶者達の表情が少しずつ厳しい表情に変わって、流れるように各々の罵倒や愚弄を喋り始めた。
『始点』と『始点』。
その言葉の掛け合いは超絶者同士のコアや芯に近い何かのぶつけ合いの応酬であった。
唐突に言葉の掛け合いは終わったと思うと、地面に巨大な亀裂が走って血の池地獄みたいな見ただけで気分が悪くなる不気味な溶岩が縦に鋭く噴き出した。その溶岩の形状はまるで苦しんで救いを求めている欲深い罪人の手を思わせる。
この攻撃をしたのは饕餮尤魔か?それとも『旧き善きマリア』か?見ていた上条には両者ともこれが出来るだろうという確信があった。
青年執事は垂直に跳躍して難を逃れ、杖刀偶磨弓は横に飛んで回避した。そこへ饕餮尤魔と『旧き善きマリア』が殺害派の超絶者に向けて攻撃を仕掛ける。
無から現れたようにしか見えない三十トン以上もある特大の氷と水の二つの塊がトリスメギストスに襲いかかる。だがトリスメギストスはそれを軽々しく切断して足場にして、さらにガラスを突き破って飛びかかってくるベッドや机、領事館の建物にある白の外壁を斬って斬って断面に透明な結晶を生やして宙に固める。
宙に作った足場で跳躍を繰り返して相手の攻撃に同じように対処する。その合間にトリスメギストスは雷、光、水・・・・等の色々な現象に切れ味を上乗せした射程距離がどこまであるのか一切『不明』な斬撃を上条達に向けて飛ばした。
・・・・一体何なんだ、あの青年執事の変幻自在ぶりは?
アラディアやボロニイサキュバスの術式は単独で魔術サイドと戦えるといえる。
それと同じ超絶者のトリスメギストスは、自分自身が巻き込まれて切断されて死ぬ可能性さえ恐れなければ、あらゆる現象に鋭利な切れ味を上乗せして、この宇宙に存在する全てのモノを斬撃で覆って微塵の殺戮と破壊で埋め尽くす事すら可能なのでは・・・?と上条当麻は思ってしまった。
それを『旧き善きマリア』は斬撃の向きを変えて防ぎ、饕餮尤魔は吸い取り捕食して自分の力に変えたその時、トリスメギストスと違って回避に徹してこちら側に近づこうとしていた杖刀偶磨弓が自身に向かってきた攻撃を全部斬って土に変貌させたと思うと見る間に埴輪の怪物の兵団に変わっていった。
「『旧き善きマリア』殿と饕餮尤魔、降伏して上条当麻とアラディアをこっちに渡しなさい。『救済条件』が袿姫様やアリス中心の一般的な『橋架結社』限定になった、今の私が持つ能力の一つの『忠誠心がそのまま力になる程度の能力』はアリスや袿姫様による補正と力の流れを受けることができるという特徴があります。『一般的』に考えてアリスや袿姫様の強さを知る貴方達なら力を借りている私の強さが分かることでしょう?」
超絶者という存在になる為の条件は色々あるが、杖刀偶磨弓という存在が超絶者たる所以は神と呼べる異形なる存在の力を外から安全に引き出せる狡猾な巫女に当て嵌まるだからだろう。
故に部分的ではあるが埴安神袿姫の造形術を使えて、アリスが出す怪物を埴輪として使役出来るようになったのだ。
その代償として『一般論』の守護者のH・T・トリスメギストス以外の超絶者達の能力や『救済条件』は二度と使えなくなって、肝心のトリスメギストスの能力も切り札の『人域離脱』しないと使えなくなって、普通の斬撃しか飛ばせない劣化したバージョンになったが。
「特に饕餮、貴様は私との相性が最悪だから諦めた方がよろしい」
実際に饕餮尤魔と杖刀偶磨弓の相性は最悪だ。
造形術を使う起点の霊装になっている仕込み刀に直接触れられる事態が起きてしまったら、ご自慢の耐久性能は造り変えられて無かったことにされて、トリスメギストスの能力の合わせ技でそのまま斬られてしまう結果が出来てしまうのだ。
そして彼女は能力の特性上で捕食したモノの影響を少なからず受けてしまう欠点を持っている。埴安神袿姫とアリス=アナザーバイブルとH・T・トリスメギストスと杖刀偶磨弓自身の力を大量に取り込んだら影響を受けて饕餮尤魔という記号が自己喪失するだろう。
まあ、自分とは違う超絶者の要素を取り込むことで自己矛盾を起こして崩壊するのは他の超絶者も変わらないと思うが。
「諦める?決められた『救済条件』にせよ、筋はちゃんと通すもんだろう!『旧き善きマリア』よ。こちらも切り札の『人域離脱』を使うぜ!!」
それに対して、饕餮尤魔が切ったカードは『人域離脱』であった。既にトリスメギストスと杖刀偶磨弓は一般的に考えて厄介な存在には初手で本気出して葬るのが当たり前でしょう?という考えで『人域離脱』を使っている。このままだとジリ貧になって負ける未来だ。
「ママ様はここに自らのリスクを4まで許容します。一なる封印突破・人域離脱」
『旧き善きマリア』の口から、言葉が出た。
それに対して饕餮尤魔は無言の『人域離脱』だった。製造過程が他の超絶者と違うから無言なのだろうか。それとも全員の超絶者がその気になれば無言で人域離脱という必殺技を使えるのか。
ただ分かるのはあれが饕餮尤魔という超絶者の切り札と、超絶者という存在にあまり詳しくはない上条当麻に分かるくらいに饕餮尤魔の姿が周りの地面と共に赤く溶けて変貌していった。
『救済対象』に入っている上条当麻や味方の超絶者の『旧き善きマリア』等の特定の対象を除いた一定の範囲内のモノを全て喰らい、噛みつき、呑み込み、周囲の地面を赤く染めて、己の一部に変えるべく融合して、地形を変えていった。
「表に出なさい、トリコビス。ママ様がこの手で完全なる宇宙を封じ込めた実験器具よ」
震動があった。
地震かと思ったが、違う。
「「「・・・・・・」」」
上条当麻は天を見上げていた。
いいや、空中に立っているトリスメギストスや杖刀偶磨弓も無言で頭上を見上げていた。
そこに立っていたのは巨大な物体達だった。
一つは分厚い陶器のように硬いビーカーやフラスコ等の実験器具をイメージした、いびつな三本の脚で支えられているドーム球場に似た潰れた球形。
その存在は宇宙を内包している影響なのか生物的に脈打っている。
もう一つは巨大な大怪獣という姿に変貌した赤い饕餮尤魔であった。これはあらゆるモノを問答無用で吸収し無尽蔵にデカくなり、自慢の大質量で叩き潰すことが出来るだろうと思わせる。
今の姿の饕餮尤魔は一見理性なき存在に見えるが、上条当麻の目にはしっかりと理性を保っているように見えたのであった。
「━━━トリスメギストス、変節完了」
意図的に既存の色々な神を自分含めた三位一体に組み込んだ結果、自身を神の一角であるという定義を世界に植え付けたトリスメギストスが全く新しい神という存在にまた自己を作り替えながら、風を切りながら最短距離でトリビコスの上に立っている『旧き善きマリア』と饕餮尤魔の元に閃光になって突っ込んでいた。
杖刀偶磨弓は仕込み刀を液状化した地面に突き刺して元の地形に徐々に造形していったと思うと巨大な猫と龍の特徴が混じったようなキメラな巨大動物形埴輪を庭園の地面から出現させた。
それは埴安神袿姫が飼っているドラゴンと『不思議の国のアリス』最大戦力の猫のダイナの力が込められた巨大埴輪だ。双方ともに巨大な力を持つ故に完全再現したらコントロール出来なくて自滅する可能性を秘めていたが、杖刀偶磨弓という超絶者の切り札に相応しい強さを持っている代物だった。そんな存在を敵対する二人に向けて突撃させる。
『旧き善きマリア』と饕餮尤魔は動じない。
『旧き善きマリア』は出現させた巨大な実験器具に内包しているモノを外へ吐き出すだけでいい。
饕餮尤魔はデカくなったことで埴安神袿姫の造形術はともかく、従者の杖刀偶磨弓が使う規模が落ちた造形術ではすぐに造り変えられない。影響を受ける前にすぐに吸収して消化できる等と自身の弱点を『人域離脱』で作り変えて消していた故に恐れない。
だから向かってくる敵対者を迎え撃つのみ。
今度こそ己にかけられている封印を完全に引きちぎって、一人で世界を滅ぼせる存在の『超絶者』同士の本気の正面衝突がここに実現しようとしていた。
上条当麻の処遇で超絶者達がぶつかる少し前の時間帯。
「気紛れで自分達がいる学園都市がどういう場所かと外に出てみたら、獲物のアンナ=シュプレンゲルと出会えるとはな。お前達は対象の存在ではないし、事を荒立てたら周りにも面倒な事態になると思うから素直に渡してくれると嬉しいぞ」
学園都市橋架結社領事館に向かうアレイスター一行の目の前に空から現れたのは驪駒早鬼であった。
口調は優しかったが、アレイスター=クロウリーとアンナ=キングスフォードという伝説の魔術師の強者と出会った嬉しさで隠しきれない戦意が驪駒早鬼から溢れていた。
「アンナ=キングスフォード」
「◎、何か?」
「あの戦法を実行してくれ。私でも出来るはずだけど、格上の魔術師の君の方が確実性が高い」
「分かり〼たわ」
始祖の始祖の魔術師に余計なポーズや箔付け、前口上はいらない。女性魔術師はただ単に柔和に微笑んだだけだ。
それだけで驪駒早鬼はアンナ=キングスフォードの手で元の世界とは流れている時間の速さが違う別世界に隔離された。
「これは埴安神袿姫用に意趣返しとして作った戦法だが出し惜しみはしないことにしたよ。浦島太郎の気分を味わってこい、超絶者」
しかしアレイスターが言った埴安神袿姫用の『位相』隔離戦法とはなんだろう?どんだけ『位相』で隔離してもあの『造形神』は得意の造形術で隔離された『位相』世界から元の世界に軽々と戻ってくるだろう。
だが、そこは『人間』アレイスター=クロウリーだ。かつて、自分のプランを進める際に発生してきた「失敗の呪い」による色々な失敗を見据えて動いてきた彼は『位相』操作による封印が失敗することを前提として新たな『位相』ずらし戦法を作ったのであった。
「新天地」から無理矢理戻って来た大悪魔コロンゾンのように力ずくで空間に破れ目を作って、そこから時間と空間がずれている世界から脱出してきた驪駒早鬼が見た光景は自身が飛ばされた『位相』とは違う現実世界に似た世界だった。
「おいおい、魔神達と戦う羽目になるとは予想外にもほどがあるぞ!」
そこは世界の空き容量で作られた同一時間軸上の余剰領域の世界「新天地」。
アレイスター=クロウリーは、聖守護天使エイワスと協力して大悪魔コロンゾンを嫌がらせで『ウラシマ効果』を使って「新天地」に追放したのと同じように。『位相』ずらしによる神隠しで発生する時間のズレを利用した戦法で驪駒早鬼を新たなる天地に隔離したのであった。
高層ビルの屋上に、駐車場に停めている車の下に、路地裏の闇に、色々な場所にいる複数の魔神達の視線がこの世界に来た新参者を歓迎するように見ていた。
「最強最速を目指す超絶者、驪駒早鬼。いざ参る!」
驪駒早鬼が人域離脱を使って自身の翼をより大きく広げながら、比類なき脚力で素早く空中を蹴って魔神達に向かって動いた。
そして、この世界に来た新参者と一緒に遊ぶべく、同じバトルジャンキーの魔神なりの歓迎会が始まったのであった。
とある科学の一方通行に登場した饕餮の要素を饕餮尤魔に入れようとしましたが没にしました。