とある偶像の造形神   作:一般通過龍

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注意!オリジナル魔神が登場します!
後、キメラや『忘れられた神』等の原作で碌に描写がない魔神達を動かしている影響でそれらのキャラが実質オリキャラと化しています。


埴安神と魔神達

新天地。

 

アレイスター流理想送りで新天地に飛ばされた驪駒早鬼を救出しに来た埴安神袿姫は、魔神達と学園都市のどこかにある、その辺の食堂で仲良く世間話していた。まるで最初から真のグレムリンに所蔵する神であったように魔神の群れの中に埴安神は馴染んでいたのである。

 

何故、仲良く魔神達と会話しているのか、驪駒早鬼はどうなったか等の複数の疑問があるが、『忘れられた神』やキメラのようなの会話をするのが難しい魔神達もいるのに、共通トーンを駆使して普通に会話を成立させていた。

 

ビビギョルギチギチギョルとても素敵な外見ね。私はいいと思うわ、魔神キメラ

 

ぎぃんギィンごぃんぐわん分かってくれるのか!?』

 

ただ、その会話は聞くモノの耳を破裂させて、壊して、美しいと思わせて発狂させる。不快にならない美しい不協和音という矛盾のカーニバルだった。ならば声を聞かずに見るだけなら安心か?そういう甘えは許されない。両者のベクトルが違う姿の美しさを見ただけでも、普通の人間なら発狂するというたちの悪さであった。

 

 

共通トーン作成。

科学的に言えば、機械的な合成音声と同じ仕組みの術式だ。『いくつかの基本的な音』を重ねて組み合わせることで、言語の異なる相手であっても、聞き手の方で人の言葉に置き換えて会話を可能にする。勿論、こちらが聞き手で相手が喋り手の時も使える。

これはバベルの塔を作ったことで神の怒りを買ったせいで失われた統一言語を再現する魔術といえるだろう。なお、『橋架結社』に所属する超絶者なら会話の際に共通して使用している基本技能でもある術式だ。

 

そして、埴安神袿姫が特に仲良く話していたのはラヴクラフトが作ったクトゥルフ神話のせいで参考資料の原典の物語とごっちゃになって、姿が『忘れられた神』とヒッタイトで神聖視された聖獣がモデルであろうな魔神キメラと冥府の女神ヘカテの源流となったアナトリア半島やトラキアで信仰されていた神であった。

 

埴安神袿姫と仲良くなった魔神達の各々の理由を答えると、常人なら見ただけでSAN値直葬な不気味な黒い棒人間のような姿をしている『忘れられた神』は自分達の都合のよい偶像神様として勝手に崇めている人間達の影響を受けまくっていることにシンパシーを感じて、魔神キメラは美しさを追求する神として、女神ヘカテの源流となった本来の名前を失った魔神は埴安神袿姫と出会った瞬間に何か縁を感じると思った。それだけだった。

 

「『忘れられた神』と同じように本来の神名と意味を人間達に忘れられていたから、ヘカーティア・ラピスラズリという名前とWelcome Hellという文字が書いている素敵な服を作ってくれたのを感謝するわよん。埴安神袿姫」

 

彼女はアナトリア半島の人間達が理想の神様を造ろうとありったけの魔術と信仰を捧げた結果、生まれた神様であった。

 

現世が存在するのに死後の世界に何も無いなんてふざけるなよ。地獄や冥界等という不幸という概念があるなんて納得できない!死後の世界は地獄や冥界に落ちてもいいからいいから今を生きる自分達をしあわせにしてくれ・・・という人間達が魔術を学んだ結果、生み出された神である。

 

死後の世界に関する神は意外と現世利益も司って、絡んでいることが多い。誕生経緯も含めると名も無き魔神の彼女がヘカテの源流となって信仰されることは当然の帰結かもしれない。

 

今のヘカテ及びヘカーティアの源流となった魔神は白を基調としたキトンという古代ギリシアの服を着ていたが、埴安神袿姫の手によって、白い文字で「Welcome Hell」と描かれた黒いTシャツを着た。どう見ても東方Projectのヘカーティア・ラピスラズリに見える姿になっていた。

 

この魔神は魔神兼超絶者という不思議存在になったのだろうか?それともただのコスプレだろうか?

 

もしも超絶者だとしたらアンナ=シュプレンゲルみたいなイレギュラーの超絶者に入るのか?それが本当だとしたら弱体化しているとはいえ、最強クラスの魔神が超絶者バフを貰ったらどれだけ強くなるのかを考えたら末恐ろしいものだ。

 

 

「・・・・そろそろ会話を終わらせてもらって良いか?」

 

世界を揺らしながら、会話を終わらせようとして現れたのはケルト神話の神々の王『魔神』ヌァダだった。上半身裸で全身のタトゥーを惜しげもさらす男で、伝承通りにアガートラムという銀の義手を装備していた。

 

「理由は?」

 

「第二ラウンドをどうしても始めたい」

 

「無意味な戦闘は嫌いで早く帰りたいけど・・・」

 

「それなら貴様が助けにきた革袋を私達の遊び相手として、しばらくの間だけ置いていけ。それをしてくれたら、私達は埴安神に無意味な戦闘を仕掛けないし、『向こう側』に帰ることを妨害しないことを誓おう」

 

 

魔神ヌァダは食堂の椅子を並べて作られたベッドに置かれている人影を指さしながら言った。それは驪駒早鬼であった。魔神達を相手にした戦闘でボロ雑巾のような状態になって、意識を失っていたところを埴安神袿姫が保護されているところだった。

 

流石に魔神を倒せる可能性持ちの存在であっても数の暴力という最強の力には勝てなかったようだ。

 

それでも魔神という存在にダメージをちゃんと与えているのは見事としか言える言葉がない。その証拠に驪駒早鬼が放った蹴りによって作られた痣が、元からある消えないタトゥーのように魔神ヌァダの身体に染み付いている。

 

「仕方ないねぇ・・・。そんなに戦いたいなら、もう一回付き合うわよ。だけど、この戦いに巻き込まれないように驪駒早鬼を非難させてもらってもいい?」

 

「いいとも。いっそのこと、先に元の世界に戻してもいいんだぞ」

 

「ありがたいわね。お言葉に甘えてそうするわ」

 

埴安神袿姫が来た時と同じように元の世界に繋がるゲートを造ったと思うと、倒れている驪駒早鬼だけを持ち上げると、向こう側にある地面に丁寧に置いた。

 

魔神ヌァダは超絶者としての埴安神としての性質が分かった上で、先ほどの発言をしたのだ。その結果、埴安神袿姫にとって無意味な戦闘を救うための意味のある戦闘という結果にしたのである。

 

蠕?■縺ォ蠕?▲縺滓姶髣倥?蜀埼幕縺??待ちに待った戦闘の再開だ!

 

『忘れられた神』が何やら叫びながら、食堂の椅子から立つと海に向かって走り去っていった。その直後にビルの群れをなぎ倒す、大規模な白い津波が発生した。

 

白い津波の正体は何億何兆何京から構成される蟲。たった数ミリの牙も脚もないウジのような白い蟲の群れだった。

 

ダルヴ=ダオル。銀の義手の隙間から肩の傷口に潜り込んで神の血肉と精気を奪った蟲であった。その魔術を発動した仕掛け人は『忘れられた神』ではなく魔神ヌァダだ。

 

それに対抗したのは、ギリシア神話のペルセポネと習合しているローマ神話の魔神プロセルピナ。使った術式は冥王に冥界へ連れて行かれたとき、母の花の女神が怒り地上を冬に包んだという伝承を再現した惑星規模の人工氷河期発生魔術。

 

埴安神袿姫と各魔神達が地表を覆い尽くそうとしている白い蟲の津波と白い闇の冷気に対抗しようと動こうとした時に、天空から閃光の柱が連続で降ってきた。

 

閃光の柱は、白い津波の発生源の魔神ヌァダを中心にドーム状に大爆発を起こして、全員を焼いたのであった。

 

 

衛星軌道上で閃光の柱を落とし続けているのは、黒く磨き上げられた鏡を義足にしている浅黒い男。

 

太陽神で火の開発者のテスカトリポカである。世界創造を実行に移す力を持ちながら、その力の全てを注いで人類抹殺に走った死神。

 

そんな神様を白い惑星と化していた地球の地表に、ダブルスレッジハンマーという技名がある、両手を組んで振り下ろすハンマーパンチで簡単に叩き落としたモノがいた。いつの間にか、宇宙空間に当たり前のように進出してきた埴安神袿姫である。

 

埴安神こと波邇夜須毘売神はにやすびめのかみは火の神にとことん縁がある神様と言えるだろう。鎮火の祝詞で炎の神を退治する役割がある故に火の神ともいえるテスカトリポカの攻撃を普通に耐えて、簡単に叩きのめすことが出来たのだ。

 

埴安神袿姫によって叩き落されたテスカトリポカは流星になって大気圏を突破した。それは地表のどこかに落着すると、これまでとは比べ物にならない大爆発を巻き起こす。

 

太陽神たるテスカトリポカが地上に落ちた影響で、プロセルピナとヌァダのせいで白い死の惑星になっていた地球が巨大な白熱電球のように光を放った。まるで恒星のようだった。

 

しばらくして、極端極まる寒暖が融合して青い惑星がその素顔を覗かせたと思うと、海が激しく揺れた。

発生源のおおよその位置は、南緯47度9分、西経126度43分、太平洋。かの暗黒神話を知っている者なら、その場所で何が起こるか分かるだろう。

 

それは『忘れられた神』が埴安神袿姫への好意も含めて、発動させた魔術であった。魔術や科学的研究による行き詰まりを解消するためのステップ飛ばし、ブレイクスルー方法としての海底都市ルルイエ浮上。詩人や芸術家は『異常なインスピレーション』を獲得させられる。『忘れられた神』は海底都市浮上による『眠れる邪神』の顕現で起こる副産物の利用で『造形神』に新しいインスピレーションを獲得させようとした。

 

ちなみに「新天地」ではない元の世界でも、魔術結社『目覚め待つ宵闇』のボス。魔術師アーランズ=ダークストリートがある目的のために『眠れる邪神』を召喚しようとしたのを見るに人間でもできそうな魔術と思われるが、完全に再現したら100%の確率で、術者も破滅の道を辿る羽目になる、危険な魔術である。

 

だが『忘れられた神』は人間ではない。魔神である。ラヴクラフトのせいでクトゥルフ神話とごちゃ混ぜになって、原典が完全に忘れられた状況に等しくなっているとはいえ、見方を変えたらクトゥルフ神話の魔神であると定義出来る。故にノーリスクでクトゥルフ神話系魔術を使えるのだ。

 

 

宇宙空間にいる『造形神』は『忘れられた神』が行使した魔術による、海底都市ルルイエ浮上の効果で新たなインスピレーションを得たと思うと、衛星軌道上に『何か』を次々に造形していく。

 

それは軌道上防衛兵站輸送システムSpace Save Supply Shoot System━━━S5と同じ形状をしていた。

 

『造形神』が造ったのは学園都市にかつて存在した超能力者の先代第一位の万能結晶シンセサイズグリッド支配箔化アブソリュートリーフと呼ばれる能力を科学的に再現した、一種のテラフォーミング用の惑星居住計画用巨大施設であった。

 

栄養剤を混ぜた膨大な水をビーム状に整えて、生命のスープでできた大きな雲を作り出し、植物の種子を詰め込んだカーゴで不毛な大地を緑の惑星にすることが目的のオリジナルと違って、こちらは射出した弾が着弾した場所を中心に侵食し、性質を変えることで人が住める建物から先に造る。という、オリジナルのS5と対になるテラフォーミング方法を持っていた。

 

 

ルルイエ浮上と造形術の組み合わせで作られた。数十万のそれを埴安神は、躊躇なく衛星兵器として使用した。

 

 

聖書に出てくる悪徳と退廃の街ソドムとゴモラを滅ぼした神の怒りのような攻撃が無数に地球に降ってくる。

 

それがルルイエから出てこようとした『眠れる邪神』と迎撃しようと魔神キメラが自身の身体から生み出したテューポーンに次々に突き刺さる。両者とも最初は耐えていたが、衛星から射出された弾丸が突き刺さるたびに、段々と脆い金属的な性質に全身が造り変えられて壊れていく。

 

そして、泣きっ面に蜂といわんばかりにヘカーティア・ラピスラズリという名前になった魔神が二匹の怪物に襲いかかる。ギガントマキアーで女神ヘカテがギガースを撲殺するときに使用した松明を武器にした彼女の力によって二匹の怪物は一切の跡形もなく消し飛んだのであった。

 

仏教における六道輪廻の一つの修羅道や北欧神話におけるヴァルハラも顔負けな神々の戦闘は意外と早く終わった。魔神達は埴安神袿姫の早く帰りたいという意をちゃんと汲んでたのである。

 

 

 

(埴安神袿姫という新しい神の行き着く先を見てみたいわね。それに、魔女達の女神と名乗るアラディアという気になる存在もいるから『向こう』に行ってみようかしら?)

 

埴安神袿姫が造った元の世界に通じるゲートをヘカーティアになった魔神がそう思いながら見ていたのであった。

 

 

 


 

第十二学区、『橋架結社』領事館。

 

時が止まっていた。

 

禍々しい革の衣装と柔肌をさらすアリス=アナザーバイブルは1月、肌を切り裂く大気に身をさらしたまま、どこか一点をぼんやり見ていた。どこか一点をぼんやりと見ていた。彼女は外の世界に興味がないようだ。

 

あれだけの超絶者が声をかけるのも躊躇っていた。迂闊な一言はそれだけで『並』の超絶者くらい粉砕しかねいと、誰もが思っていた。

 

「あ」

 

だから、H・T・トリスメギストスのそれは決して注意散漫だったのではない。

 

敬愛する主人の時間を取り戻すためなら、しくじって粉砕されても構わない。そういう青年執事なりの忠義の行動だったはずだ。

 

「アリ、ス・・・・・?」

 

耳が痛くなるほどの沈黙があった。

 

緊張を孕んでいた。

 

『橋架結社』という組織に所属して日が浅い新人超絶者や埴安神袿姫を除いたら、超絶者達はアリス=アナザーバイブルの機嫌は世界全体に勝ると骨身に染みこませられている。だから誰もがこう考える。これは地雷。最悪の三歩先まで破壊の嵐が巻き起こる、と。

 

が、何もなかった。

 

停止していた。小さな少女は倒れる事も崩れる事もなく、ただその場で突っ立たったまま固まっていた。まるで石でできた少女のように、髪の毛一本動かなかった。

 

壊れてしまった時計のようだと、H・T・トリスメギストスは思った。

 

それほどの衝撃だったのだろう。

 

上条当麻。

 

たとえ刷り込みのように後付けで入力された『せんせい』だったとしても。彼と対立することになるのは。

 

噛み締め、ぶちりと青年執事の唇で嫌な音が鳴り響いた。

 

「おおおおお」

 

いいや、唇だけではない。裂ける音は続く。まだまだ続く。青年執事のシルエットが崩壊していく。縦に真っ二つ。いや、それだけに飽き足らずに全身を切り刻んだ。己を引き裂いた、H・T・トリスメギストスは青空に向けて、全身で咆哮した。

 

「おおおおおオオオオオオ上条当麻ァァァァァァ!!!」

 

怒りの咆哮であった。

 

文字通りに人の領域を離脱とすると書いて『人域離脱』とはよく言ったものだ。今の青年執事は完全に人外の領域に入っていた。

 

トリスメギストスはありとあらゆる物体や現象に極限の切れ味を添加てんかする超絶者だ。全身に形成された断面を己の顎にして咆哮する芸当が出来る彼の術式で、やれない斬撃はないともいえるかもしれない。

 

 

最早人の姿をとどめない形になるほど激情している青年執事を見て、呆れながら声をかけた者がいた。

 

「H・T・トリスメギストス。驪駒早鬼を見つけましたよ。もう遅いかもしれませんが、超絶者同士仲良くしましょう」

 

領事館のすぐ近くで、倒れていた驪駒早鬼を担いでいる吉弔八千慧だ。領事館に押し寄せようこようとした人間達を能力でお願いして・・・・・穏便に撤退させていた時に倒れていた驪駒早鬼を発見したのだ。

 

「・・・・・・・」

 

びちびぢっと湿った音が連続したと思うと裂けたトリスメギストスの身体が再生していく。無言のまま、傷一つない超絶者が再び整う。

 

「・・・・了解しました。ムト=テーベと杖刀偶磨弓の出番が終わった今、一般的に儀式の手順を考えれば、次はあなた達の出番です。それが終わってフリーになったら、アンナ=シュプレンゲルの処罰をサポートをするのもしないのも、ご自由に決めてください」

 

ムト=テーベと一緒にアンナ=シュプレンゲルを処罰するべく、領事館から出撃した杖刀偶磨弓を見ながら青年執事はそう語った。

 

杖刀偶磨弓は、アリスに全身をねじられたトリスメギストスと同様にダメージを与えられていたが、問題なく動き回れるくらいに回復していた。勿論、饕餮尤魔や『旧き善きマリア』も同様だ。

 

「そっちはどうしますか?」

 

「外から仲間の超絶者達を呼びますよ。一般的に考えてすでに私達は事を起こしていますし」

 

そこまで呟いて、H・T・トリスメギストスはそっと唇を噛んだ。以降は声には出さない。上条当麻に肩入れしている救出派に聞かれないためにも。

 

青年執事ことH・T・トリスメギストスにとっては『橋架結社』の機密情報を漏洩するアンナ=シュプレンゲルだけではなく、上条当麻も、殺すべき標的だった。




Welcome Hell!(地獄の女神の魔神書き文字)
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