とある偶像の造形神   作:一般通過龍

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この辺は書かなくても問題ないなと思った部分はカットして物語を進めています。




大乱闘メトロポリス

一月三日。

 

上条当麻はある人物達を連れて、三勢力から必死の逃走劇を繰り広げていた。

 

世界を救済せんとする『超絶者』達の組織、『橋架結社』。

新統括理事長・一方通行アクセラレーターが管理する学園都市。

『人間』アレイスター=クロウリーと異形なる一味。

 

全部が敵の状況を作ってしまったのだ。

何故、そんな事態になってしまったのかを説明すると、吉弔八千慧の手引きでアラディアと一緒に『橋架結社』の領事館から抜け出したときに、アレイスター=クロウリー達にフィルム缶のような姿になって囚われていたアンナ=シュプレンゲルを幻想殺しを用いて助けてしまったのだ。

 

助けたいと思う理由は後から見つければ良い。そう断言した通りに少年は悪女と呼ばれる女性を助けてしまったのだ。

 

自分を殺しまくって、いたぶった敵だったはずの魔神オティヌスを庇ったことで、世界中の全てと戦うことになった前例があるから、上条当麻をよく知るモノならそういう行動をしてもおかしくはない。と呆れ果てて、ため息が出るに違いない。

 

アンナ=シュプレンゲルによって、周囲の人間達も上条当麻自身も散々な目にあっていったのに、悲劇を作る張本人が同じような目にあって困っているところを見たら、すぐに助けにいくのはある意味、上条当麻というヒーローらしいといえるだろう。

 

 

だが、少年の行動は無意味ではなかった。アンナ=シュプレンゲルとアラディアを味方につけることができたからだ。

 

彼女らは助けたことになぜ、どうして・・・?と疑問を浮かべていたが、助ける理由がなければこれから見つける!と上条当麻言った瞬間、降参するように呆れて上条当麻に力を貸すことにしたのだ。

 

彼を上条当麻たらしめて、最大の武器と呼べるのは幻想殺しや中にいるモノ・・ではなく、こういう行動ができる点だ。

 

分かりやすい攻撃力を持って『切り離す力』を増長させたら、上条当麻の『繋がる力』は弱体化するとオティヌスは語ったが、困っている他者を自分の身も構わずに救い上げることができる行動力が少年の中に存在する限り、弱体化しても『繋がる力』は他者の生命を生かし続けると思える。

 

 

 

第十二学区。学園都市で唯一、『科学的な視点』から造った宗教施設が多数存在する稀有な学区。ミクロン単位で精巧に築かれているのに拘らず、魔術的記号が一切存在しない。この学区にある建物で魔術的な記号が存在する例外は、超絶者という神秘が集まっている『橋架結社』の拠点である領事館のみだ。

 

そんな場所で上条当麻一行は逃走劇を繰り広げる。

 

うううううううウウウううううウウウウウウウウウウッッッ!!!!

 

 

耳というより腹に響く、低くて太い大音響が青空に炸裂する。

 

サイレンと同時に上条のポケットにあるおじいちゃんスマホから緊急警報が出ている。

 

「くそっ、つまり何が起きているんだ!?」

 

入ってくる情報に混乱している上条当麻を横目に、ストロベリーブランドの髪でいくつものエビフライを作って後ろに流す、ぶかぶかのドレスの布地を薄い胸元辺りでかき寄せた悪女が不吉な予言を告げた。

 

「非常事態か戒厳令か・・・・。とにかく確定はこれだけ。今から戦場になるのよ、この街」

 

 

「っ」

 

「自分から巻き込まれたがるなら覚悟を決めなさい、愚鈍。今すぐわらわを突き出して事態の進行を食い止めるって選択肢もあるのよ」

 

確かにそれでも決着はつくのかもしれない。

アンナ=シュプレンゲルは上条当麻&サンジェルマンコンビに敗北して、警備員アンチスキルに捕まった後も軽々と牢屋を抜け出し、アメリカのロサンゼルスで多くの人間達を砂にするという大事件を起こした。

 

新統括理事長の一方通行はもうアンナを捕まえて穏便に解決しようと考えてないだろう。牢屋にいながら、学園都市の暗部を刺激してハンドカフスを失敗させた経歴があるからだ。

 

捕まえてもダメなら、殺してでも止める。

 

それは多分、アンナを人間フィルム缶にして手元に置いていたアレイスター=クロウリー達も同じだ。

 

『橋架結社』なんていわずもだがなだ。彼らはそもそも最初からアンナ=シュプレンゲルを処刑すると公言し、槍の形に整えた超絶者特効の霊装『矮小液体』と処罰専門の超絶者まで用意している。

 

 

上条当麻は細く長く息を吐いて、そして言う。

選択はこうだ。

 

「・・・・それでもお前は見捨てられない」

 

「・・・・・」

 

「ちくしょう、三勢力の誰が一番怖い!?どこへ逃げれば安全なんだ!?」

 

「正解はどれ一つ油断ができない!得体の知れない学園都市のテクノロジーが襲いかかってくる!!」

 

巨大なウィブルと変則ビキニが特徴的な超絶者の一角、夜と月を支配する魔女達の女神アラディアが長い銀髪を広げて言い放った直後だった。

 

 

複数のタイヤのスリップを響かせながらこちらを囲んできたのは、警備員アンチスキル辺りの通常の特殊車両とは全く違う特殊車両だった。

 

それを見たアンナ=シュプレンゲルはニヤリと笑う。

 

「やってくれるじゃない。新統括理事長さん」

 

八輪の装輪装甲車の屋根に戦車の砲塔をくっつけたような異形。いわずもがな。学園都市の主要道路を傷つける事なく高速で移動し、戦車級の火力で都市内部の危険分子を速やかに排除するための機動戦闘車。

通常モデルより多数のアンテナが立っている事から、おそらく離れた場所から操って無人で戦うドローンとしての性質すら兼ね備えている。

 

 

HsMCV−08『プレデターオクトパス』。

 

人間の上条なんて、巨大な砲塔どころか一番小さな機関銃を浴びただけでバラバラになる兵器だ。 

 

「下がりなさい愚鈍、こっち!!」

 

 

低い位置にぶつけられると意外なほどにバランスが崩れる。体の小さなアンナにほとんど体当たりされるようにして、上条はアラディア共々曲がり角の向こうへ突き飛ばされる。

 

空気が圧縮され、間近で何かが爆発した。

すぐそこのビル壁が吹っ飛んだらしい、と少年は遅れて気づく。灰色の粉塵が遅れてぼわっと膨らむ。目と鼻の先にいるからかろうじてまだ見えるアラディアが倒れ込んだ上条の耳元で大声を出していたが、耳鳴りみたいな鋭い音が均一に世界を支配しているだけで言葉が聞き取れない。

 

アラディアの目の前では空から垂直に落下してきた側頭部にお団子を思わせる髪型をしている少女、杖刀偶磨弓が、落下する勢いを仕込み刀に乗せて、上条当麻の首を全力で切断しようとする光景があった。

 

「エイワスッ!!」

 

『何か』がアンナ=シュプレンゲルの幼げな体から出てくると思ったら、色も形もない不可視の奔流が杖刀偶磨弓を吹っ飛ばして上条当麻を助けた。

 

このおかげで、上条は同じ日に二回も首を切り離されて死ぬという記録を打ち立てることは避けることができた。

 

エイワスによって、崩れたビルの瓦礫の中に埋まって倒れていた状態から杖刀偶磨弓がすぐに再起動を果たして襲いかかってくる。

 

上条当麻達を守るべく顕現した、アンナ=シュプレンゲルの切り札のシークレットチーフ。聖守護天使エイワスと『橋架結社』全体に忠誠を誓うことで埴安神袿姫とアリス=アナザーバイブルの力を引き出している超絶者杖刀偶磨弓がぶつかる、寸前に声が響いた。

 

「あらあら」

 

頭の中から直接湧き出るような奇怪な声色が場を支配する。

 

場を支配しながら灰色の粉塵の中から現れたのは競泳水着に追加の袖やパレオを足し、大きな帽子を被って魔女のシルエットを作るメガネの女性魔術師。

 

「あらあらまあまあ、だいじょうぶですか、其処ノ少年。そして自らノ業ニ一般ノ方ヲ巻き込むような事があってハなりせんわよ、シュプレンゲルじょう

 

アンナ=キングスフォードの出現にアンナ=シュプレンゲルが怯える。

 

そのまま流れるように近代魔術の始祖を超えた始祖の女性魔術師は、聖守護天使エイワスと杖刀偶磨弓の戦闘に乱入して三つ巴の状況を作った。

 

・・・・しかし上条当麻は目の前で繰り広げられる三つ巴の戦闘を見ていなかった。彼はぞくりという悪寒に逆らわずに頭上の青空に目をやっていた。

 

視線の先には宙に浮かぶ小柄な影がいた。

それはウェーブがかった長い金髪に褐色肌の少女だった。彼女はX字に大量の投げ槍を束ねたバインダーを肩に担いでいた。

 

今度は超絶者ムト=テーベが天空から上条当麻達に襲いかかる。

 

雨のように超絶者特効の槍が降った。

一度左右に大きく広がってから獲物を狙う凶器の群れは、鳥の翼を連想させる。

それらによって辺り一面が超絶者にとって逃げ場のない破壊ゾーンに生まれ変わっていく。

 

入道雲のように膨らんだ、毒々しいピンク色の液体が生み出す薬品性の煙がしばらくして消失したのを確認するとムト=テーベは、ゆっくりと地面に下りた。

 

「命の中心を捉えた手応えがない。どこかに逃げた?」

 

アンナ=シュプレンゲル達がいないことに不思議そうな顔をしているムト=テーベだった。

 

 

よそでは空気が膨らむような衝撃波が複数発生していた。アンナ=キングスフォードと聖守護天使エイワスと杖刀偶磨弓の衝突によって発生したのだろう。三者がどのように戦闘しているかは粉塵に包まれて詳しくは見えない。斬撃とプラズマの光、炎等の彼らのモノと思わしき一部の攻撃が激しく飛び交っているのがかろうじて見えるだけだ。

 

だが、褐色少女のムト=テーベはそちらを無視する。

ただ単に『設定』された目的を優先して任務を忠実に遂行するのみ。

 

彼女はその場で静かに屈みながら特殊な八輪車両の下を覗き込んで、対象を探す。

 

(標的・アンナ=シュプレンゲルは車体の下に潜ってやり過ごした訳でもない。そうなると『矮小液体』が着弾して薬品の煙が舞い上がったタイミングで遠くへ、とか?)

 

と、そこでムト=テーベは何かに気づいた。

 

八輪どもの布陣は結構バラけていた。そして超絶者からやや離れた場所にある『プレデターオクトパス』の砲塔が回り、こちらの顔をピタリと見据えていた。

 

爆音と掌はほぼ同時だった。

 

音の壁を突き破って飛来した120ミリの戦車砲を、ムト=テーベは表情一つ変えずに片手で掴み取っていた。

 

ところで戦車の砲弾はただの鉛の塊ではない。内部には信管があり、接触反応があれば装甲を貫通し車内で人目や機関部などを殺傷・破壊するよう、ありったけの炸薬を起爆するように数値設定されている。

 

「あ」

 

 

ムト=テーベを中心に派手な爆発が発生して、爆発音と衝撃波の壁が近隣の窓ガラスを片っ端から砕いた。

 

褐色少女の超絶者はそこで終わらなかった。爆発の中心点には傷一つない身体があった。

 

「・・・・・・なるほど」

 

直後に少女の体に変化があった。鈍い音と共に少女の右腕の外側から戦車砲弾が飛び出したのだ。何発も、何発も。奇怪な鳥の翼のように。

 

奇妙に白色で塗りつぶされた兵器の群れと共に、ムト=テーベはうっすらと舌舐めずりをしながら笑って言う。

 

「埴安神袿姫の言うとおりに科学も面白い・・・・」

 

科学サイドと魔術サイドの線引き?『協定』?そんなモノは知らんというばかりに処罰専門の超絶者ムト=テーベが学園都市という環境で生まれた科学の力で強化されまくっていた。

 

 

ムト=テーベによって無人で戦う陸上ドローンの性質もある『プレデターオクトパス』達が蹂躙されて、聖守護天使エイワスと杖刀偶磨弓とアンナ=キングスフォードの三つ巴の戦闘の勝者がキングスフォードに決まった時、上条当麻達はさらなる窮地に陥っていた。

 

『魔神』が目の前に現れたからである。

 

ことの経緯はこうだ。世界から突然音が消えたのを疑問に思った上条当麻が、アンナ=シュプレンゲルがハックした機動戦闘車の中からハッチを開けて出た瞬間に一人の女性が目の前にいた。

 

白い文字で「Welcome Hell」と描かれた黒いTシャツを着て、黒いロシア帽のような帽子の上に球体を乗せている変な格好をしていたが、上条は気にしなかった。一般的に考えて変だと言える服装をしている色々な人間達を見てきたため、慣れたものだ。

 

だが、この女性が放つ雰囲気は・・・・まさか・・・・・。

 

 

同行しているアンナ=シュプレンゲルやアラディアを除いたら誰もいない世界を背景に戦闘車の上に立っている女性が少年の目の前で自己紹介をする。

 

「ギリシア神話のヘカテやエジプト神話の女神ヘケトと同一視された『名も無き魔神』。埴安神袿姫によって超絶者ヘカーティア・ラピスラズリに生まれ変わった『魔神』が登場わよん☆」

 

 

『プレデターオクトパス』の中に隠れていたからムト=テーベの索敵から逃れたと思ったら間違いだった。彼女によって違う世界、『位相』に自分達が乗っている車両ごと神隠しされていたから見つからなかったのだ。

 

 

上条当麻の脳裏にオティヌスや僧正といった魔神によって作られた出来事が浮かび上がってくる。黒一色の世界で繰り返された無限の迷宮の地獄や十二月三日の学園都市で行われたうほほーい☆な『分からせる』ための鬼ごっこ。

 

魔神という存在に関するトラウマが蘇る!!

 

「うおおおおおおおああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!???」

 

荒魂と化した埴安神袿姫の時と違って、恐怖心が平常に働いた上条当麻は絶叫しながら機動戦闘車の中に転げ落ちるように倒れていった挙げ句に意識をシャットダウンした。

 

「愚鈍!?愚鈍━━━━━!!!?!?」

 

そんなことを知らずに『プレデターオクトパス』の車内に落ちてきた上条当麻を心配するようにアンナ=シュプレンゲルとアラディアが騒いでいたのであった。




新天地から野良超絶者になってやってきたヘカーティア・ラピスラズリ、『橋架結社』、アレイスターと愉快な仲間達、何故か悪女アンナ=シュプレンゲルを引き連れている上条当麻。
そして登場予定のCRCこと老骨だ。

学園都市を練り歩いて今の統括理事長の一方通行のストレスの元になるぞ。
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