薔薇十字=強い
この二つの要素を持っている老骨がクソちゅよいのは自明の理です。
上条当麻達の目の前にクリスチャン=ローゼンクロイツが出現する前の時間帯。
ボロニイサキュバスが探知用の占いをしたトランクルームの敷地内に『橋架結社』の超絶者達がいた。
しかしたくさんのコンテナを並べた風景は一掃されて、儀式用の『聖域』に変貌していた。
肝心の儀式それ自体は、一昼夜以上も続けられていた。
目的の人物を再誕させる儀式は長大な時間や手間を使うが、そもそも超絶者達は最初から『記号』として活動してきたため、それほど儀式を終えるのを時間がかからなかった。そして常に全員が登場するとは限らない。今回、ムト=テーベと杖刀偶磨弓が早々に退場してアンナ=シュプレンゲルの追撃に乗り出せたのも、儀式の序盤で出番が終わってしまったからだ。
そして、儀式を終えた『橋架結社』の超絶者達の目の前に18歳くらいの裸の青年が完成されて現れた。
CRC。
クリスチャン=ローゼンクロイツ。
あれだけ曲者揃いだった超絶者達、しかし誰もがその降臨に声も出なかった。
世を救う主。それを無事に発生させた事への喜びと同時に、話に伝え聞いていた存在が本当にいてくれたのかという感慨や驚きも含まれていたはずだ。
「お待ちしておりました。クリスチャン=ローゼンクロイツ。我らが世を救う主よ」
本当にいたのね。クリスチャン=ローゼンクロイツ!と驚いている埴安神袿姫を気にせず、H・T・トリスメギストスが恭しく赤い衣を差し出す。
「ジリジリガリガリがキュルキュル。ジジジ、キュキキュルザザ、ふむ。ま、こんなもんかの?」
共通トーンの調整をしながら、CRCは赤い衣に袖を通した。
ところで、現代の魔術サイドは『黄金』系、アレイスター=クロウリーが開発した魔術の影響を受けている割合が多いが、『橋架結社』という魔術結社は、ある意味最も『黄金』の後継に相応しい組織といえるだろう。それこそアレイスター=クロウリーから「ある種、私の欠片を最も色濃く継承している」と評価された『明け色の陽射し』という黄金系魔術結社よりも。
理由はメイザースやウェストコットを筆頭とした薔薇十字伝説に大きく影響を受けた『黄金』の組織名にある。黄金の夜明けの『夜明け』の意味はCRC、クリスチャン=ローゼンクロイツの復活と同義なのだ。
そういう意味では、『黄金』の正統後継者を名乗ってもいいかもしれない。
「貴方がCRCことクリスチャン=ローゼンクロイツなのね、お会いできて光栄だわ。アリスもそう思うよね」
埴安神袿姫がアリスを見ながらクリスチャン=ローゼンクロイツに握手を申し出た。
「そうですし!!」
埴安神袿姫の隣にはいつもの調子を取り戻したアリス=アナザーバイブルがいた。どうやら、アリスは彼女のメンタルケアで元に戻ったようだ。ただ、それは真っ当な方法ではなかった。造形術で直接、体を弄くることで精神に影響を与えるという方法だったのだ。その行為は、アリスの製造者の今は亡き自称アレイスター=クロウリーの師匠とやっていることは同じかもしれない。
「埴安神殿との握手は、この老骨は遠慮することにするぞ」
「あら、残念」
しわがれた声を出しながらCRCは握手を拒否してた。
赤衣の青年は老骨という一人称を使って老人のような声を出していたが、誰もが違和感を感じないほどのCRCであるという聖者の貫禄を全身に纏っていた。
だから、この後のCRCが起こす予想外の行動は殆どの超絶者が対応できなかった。
息を吸って吐くという当たり前の感覚でCRCは自分を中心に閃光を自然体で炸裂させたのだ。
あまりにも、自然すぎる動作すぎて、その場に集まっていた超絶者達は回避、防御も出来ずに揃いも揃って一撃で薙ぎ倒された。いきなりの衝撃も意味も分からなければ、これだけ極まった超絶者の群れが為すすべもなく転がるもありえない。つまり根本的に理解の範疇を超えていた。
自分には分かる、と思ってしまうのがすでに不敬かもしれなかった。秘めたる力。とある男を中心に全方位へ放たれた分厚い壁は、それほどまでの力と意味を有していたのだ。
激情のあまり、自分で自分の体を引き裂いて人の域を離脱したH・T・トリスメギストスもダメだった。
いいや、防御に特化した超絶者なら彼以上の存在だっているはずなのに。
超絶者として己を作り変えた、根幹に近い部分へ干渉されたとしか言いようがない。ただの力業ではないのだ。
ただし、その一撃を浴びても倒れなかった例外はいた。
埴安神袿姫とアリス=アナザーバイブルだ。
それを確認するまでもなく、クリスチャン=ローゼンクロイツは次の行動に目にも止まらない速度で移る。
死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死。
大量の死が超絶者達に吹き荒れた。
「ふむ?赤が足りないと思ったら、なるほど埴安神、いや『造形神』と呼称するべきか。埴安神袿姫、お嬢ちゃんが超絶者達を片っ端から『造形』し直して、失われる命を拾っていたのか」
死の台風と化していたクリスチャン=ローゼンクロイツが突如として、動きを停止した。
ローゼンクロイツの視線の先には自身の怪我や欠損を気にせずに全力で地面を操作して、そこから出てきた土と水で『橋架結社』の超絶者達を修繕した、血塗れの埴安神袿姫がいた。
彼女だけはクリスチャン=ローゼンクロイツの動きに対処して、着いていくことが出来たのだ。それでも、救いきれなかった命はあったが。
修繕するついでに眠らせたアリスを無事に動けるようになったH・T・トリスメギストスの腕の中に抱え込ませながら、埴安神袿姫は青年執事に語りかける。
「H・T・トリスメギストス。どうやら、私達の計画は失敗だったわ。アレは世を救う聖者ではないわ。その資格はあったけど、偶像であることを辞めた人間よ。私は彼をこの世に再誕させた責任を取ってきます。だから、アリスや他の『橋架結社』の超絶者達は任せたわ」
H・T・トリスメギストスにそう宣言した埴安神袿姫はクリスチャン=ローゼンクロイツに向かって歩いていく。
青年執事はその背中を黙って見ることしか出来なかった。アリスと同じイレギュラーな超絶者でありながら、埴安神袿姫はその気になれば、自身の替えを造ることが出来るとはいえ、同じように大切な存在なのだ。それでも彼女本人をこんな所で失うわけにはいかない。
だが、クリスチャン=ローゼンクロイツが自分達のような有象無象の超絶者だけでなく、『魔神』やイレギュラーな超絶者、人外の存在を完全に殺せる牙を持っていることを理解したのに。H・T・トリスメギストスはそのような行動はしなかった。
本当は埴安神袿姫を守るために一緒に行動したかったが、先程、CRCが閃光を放って超絶者達の根幹に近い部分に干渉して無力化したように、そんな行動はするなと造形術で命令されていたのもあるが、彼女の真意を察したH・T・トリスメギストスは抗わずに、ただ黙って見ることしか出来なかったのだ。
アリスを眠らせて自分に託した理由は『橋架結社』総力でCRCと全力で戦う羽目になったら、勝つにせよ負けるにせよ、結果として『救済』すべき人間達が死んで、世界が壊れるというが分かったから、彼女は一人で戦おうとしたのだ。
また、力になれなかった。真っ赤な嘘な伝説を信じた結果、彼女を孤立無援にした自分が本当に馬鹿だった。そして、聖者の皮を被った何者かに感謝したい気持ちが溢れて出てくる。あの閃光のおかげで彼女の人間性が戻ってきたのが分かったからだ。
CRCのおかげで、図らずとも青年執事が埴安神袿姫に抱いていた、もう一つの願いは叶ったとも言ってもいい状況になっていた。肝心のその願いを持っていた本人は、そんな感情を抱いてしまった自分に気がつくとすぐに自己嫌悪したが。
超絶者達を保護するために造形術で造った数多の異界に各々の超絶者を隔離した埴安神袿姫を見ながら、クリスチャン=ローゼンクロイツが『造形神』に語りかける。
「杖刀偶磨弓や饕餮尤魔、吉弔八千慧等を呼んできてもいいのじゃよ?出番が早めに終わったおかげで被害に遭わなかった、あのお嬢ちゃん達は先程やった、この老骨の閃光が効かない例外の超絶者だからのう?この世界の歴史に記述なき存在。人間達の祈りによって、外の世界から飛来させられて造られた哀れな神よ。応援を呼ぶことを老骨が許可するぞ」
「お断りするわ。貴方は今も私の構造を解析して、どう攻略するか考えているんでしょう?磨弓ちゃん達の構造から、逆算されて倒されるデメリットがデカいから、このまま一人で戦う方を選ぶわ」
「くくっ 流石に老骨の意図を見破ることがことが出来たか。じゃが、本当に孤立無援という言葉が似合っている言わざるを得ない神じゃがのう。しかし、そんな欠損状態でこの老骨を倒せるか?満足に造形術や権能、魔術が使えない身体になっているのが、誰にでも分かるくらいに目に見えているぞ」
彼女という超絶者は道具を使うとはいえ、その気になれば、体一つで術技を行使できる、魔術師としても高レベルな存在だ。だが、そのような存在は裏を返せば傷つけられたら、大幅な制限がかかるということだ。
クリスチャン=ローゼンクロイツが指摘した通りに埴安神袿姫は、片目が潰れて、右腕が千切れるといった色々な部位を傷つけられた、全力を出せないと分かるような、血塗れな状態になっていた。
「問題ないわ。この程度の怪我は造り直せばいいから」
胸から込み上げてくる血を吐き出して、自身の服を更に赤に染めながら、残った左腕で埴安神袿姫は自身の身体を新しく造形しようとする。
「その行為を大人しく、この老骨が見逃すと思っている訳がないじゃろう?」
ローゼンクロイツが掌を水平にかざす。
死の嵐を巻き起こして、超絶者達を命を刈り取ろうとした不可視の一撃が埴安神袿姫に迫りくる、が。
埴安神袿姫の背後の空間に現れた炎の『ドラゴン』が、主人の盾になるように前面に出たと思うと、CRCの飛び道具をその牙で食い止めた。
「超絶者になった異世界の神とはいえ、腐っても本物の神。流石に瞬殺はできなくて当たり前か」
燃える牙でCRCから射出された黒い塊を完全に焼き砕いて消滅させたドラゴンの横で自身の身体を対クリスチャン=ローゼンクロイツ用の少し大人びた姿に調整して、完全に回復させた埴安神袿姫を見て、情念を燃やす聖者が目の前にいる神を完全に敵として認識した。
「この世界は面白いのう・・・・。まだまだ未知がある!!さあ、この老骨と楽しい遊びをしようぞ!!『造形神』のお嬢ちゃん!!ひひひ!!」
「弾幕ごっこのような戦闘なら、こちらも大歓迎するわよ?」
埴安神袿姫とクリスチャン=ローゼンクロイツ。
この世界で規格外の強さを持つ存在が戦闘を開始する。
「其は黄色の象徴、あらゆる人が夢の中に求める四つの作業の一角なり。腐敗の先にある変化の兆しを象徴する汝の役割はすなわち『発酵』。ただ腐らせて終わらせるのではなく死体にそれ以上の意味を持たせる善なる変化と暴力なり。外界へと表出しろキトニタス、四つの作業、永劫に行い一点へ尖っていくその一色よ!!」
詠唱が終わるのと同時にクリスチャン=ローゼンクロイツを包み隠すように噴き出るのは大量の砂。かつてロサンゼルスという巨大都市を丸ごと飲み込んだ極悪な凶器は、固体という性質を忘れてまるで粘ついた強酸を噴射したように埴安神袿姫に迫る。
これに対して、埴安神袿姫がしたことはただ一つ。
迫りくる黄砂の海に向けて、持っていた粘土ヘラをCRCの炭素弾のように超速で射出した。
粘土ヘラを飲み込んだ砂の津波が土と水が主体の四大属性の津波に置き換わったと思うと、進路方向を反転してローゼンクロイツに迫る。
「きひひっ!!キトニタスを造形術で造り替えて我が物にしたか!!じゃが、これは対応できるかえ!!?」
目の前の光景に焦らずにローゼンクロイツは手元にカードの束を出現させた。それは扇のように広がり、そこに留まらず、重力を無視してぐるりと一周周った。
「ROTAの秘文はその回転によってTAROすなわち10の球と22の経路を示す示す山札へと変じる。さあ目覚めよ七八枚。樹の外から注ぐ光とはすなわちアインソフオウル、アインソフ、アインに迫る正規にして唯一の出入口なり!!」
カードの輪、その中心の空洞から否定の三重光と呼ばれる白き凶暴な光が爆発的に溢れると、CRCを土と水で造り変えようと迫ってきた津波をついでとばかりに空間ごと完全に消滅させるのと同時に閃光が埴安神袿姫に直進した。
今のクリスチャン=ローゼンクロイツが振るっている力は、ただの人間には絶対に理解できない神の領域に入っている力だった。万全の『魔神』に匹敵するか、それ以上の力を世界を壊さずに使えるCRCと呼ばれる何者かの技量は、間違いなくこの世界のトップクラスの実力者と言えるだろう。
まあ、錬金術は世界や神の御業を解析して再現しようとする学問ということを考えると、最高峰の錬金術師と呼べるクリスチャン=ローゼンクロイツは、神の領域、神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くものこと、SYSTEMに入っている人間でもおかしくはない。
だが、埴安神袿姫はそれにも対処した。
人には絶対に理解、表現できない攻撃?それがどうした!!埴安神袿姫は『造形神』である。解析して、万物の根源たる否定の三重光を利用して、未知の物質を生み出すこと等、容易い!!
そういわんばかりに自身に向かってきた閃光を自信満々に黄金みたいな未知の物質に造形して対処したと思うと、埴安神袿姫に付き従っている龍神と呼ばれる『ドラゴン』が牙を擦り合わせて、不気味な音色を発して造り出されたそれを操る。
埴安神の子供である龍神は炎だけではなく、黄金等の鉱物や金属、穢れを祓う、方位除け、こうなりたいという願いを司る神様として人間達に崇められていた。故に埴安神袿姫を主人にしている『ドラゴン』は土公神や竈の神等の龍神として関連することを自身の力として使えるのだ。
クリスチャン=ローゼンクロイツを絶対に葬るという必殺の意志を持つ祈りの力が込められた、埴安神袿姫と『ドラゴン』の力が合体した産物である燃える黄金の濁流に赤衣の青年は飲み込まれていく。
規格外の超絶者同士の対決の勝者は埴安神袿姫。二人の戦闘は第十二学区どころか、学園都市そのものが潰れてもおかしくはない激しい戦いだったが、区域が無事だった理由は二人の技量が高かったのもあるが、埴安神が災害を鎮める神様としての能力をフルに使って被害を抑え込んだのもあるだろう。
クリスチャン=ローゼンクロイツに勝ってしまったわ・・・・。しかし、アレが『橋架結社』が求めていた人物?なんか思っていたより強くないし、違和感がある・・・・・。私が戦っていたのは、本物のCRCなのかしら?
埴安神袿姫が自分が仕留めたのは、本当にクリスチャン=ローゼンクロイツだったのか疑っていた時、
「『造形神』のお嬢ちゃんが思っている通りじゃよ。アレは過去、学園都市に来た、老骨と同じ錬金術師のアウレオルス=イザードが造り出した基礎物質にケルト十字を用いたテレズマの塊のアウレオルス=ダミーみたいなもんじゃ。いわば、ローゼンクロイツ=ダミーというべきかのう?まあ、キトニタスという術式だけで砂で出来た自身の分身を造ることが可能じゃがな。そして、この老骨に少しでも全力を出させようと思わせた時点で、問答無用でそちらの負けじゃよ」
後ろからもう一人の邪悪なしわがれた声が埴安神袿姫の耳に響いたと同時に、大きい何かが彼女の身体を貫いた。
「ッ!!!??」
驚愕の感情が見える表情で埴安神袿姫は、自身の胸の真ん中に大きく穴を空けて貫いたモノを血を吐きながら見る。
それは鋭い薔薇の蔓が何十にも絡みついた十字架だった。一メートル以上ある塊は全て重たい黄金で作られていた。
「世界の完全な縮小模型を利用した擬似黄金錬成と世界を歪める魔術でありながら、幻想殺しと同じように世界の『基準点』ともいえる性質を持つ父性の十字に母性の花弁。この二つはちょいと便利すぎるから、あまり赤き秘宝に頼り過ぎても自分の頭で策を練って努力する事をやめてしまいかねんのじゃがのう。まあ、分かりやすく言えば、『造形神』のお嬢ちゃんの行動は全て老骨の掌の上だったというわけじゃよ。ふははははははは!!」
パナケア。日本語だと万能薬とか普遍薬。
マクロな宇宙とミクロな人体は互いにリンクする。『黄金』と『薔薇』を貫いている共通の理屈だ。
拡大解釈すれば人間に効く薬を作れば世界を癒やす事もできる。
世界の良くない部分を優しく癒やすにせよ、冷たく切り取るにせよ。
世界の病を治すため、必要があれば硝子の器を砕いて外の世界を旅して、目的を果たせば自分から元の場所に戻る。パナケアに当てはまるモノ達の特徴だ。
そんな妙薬に当て嵌まり、世界を救済できる両者の存在の対決はクリスチャン=ローゼンクロイツが一手上回った。
CRCは掌の中にある世界の完全な縮小模型と父性の十字と薔薇の母性の花弁を両方使うことで、世界の未来を自分の都合の良いように書き換えていた。即ち、埴安神袿姫対クリスチャン=ローゼンクロイツという戦いは勝者が既に決まっている茶番だったのだ。
遺体は120年も変化せず。この世界の完全な箱庭を創り、過去現在未来の全てを再現する事で望む答えを手元にまとめ。世界全体を癒やす秘宝の製造を遂げた賢者の中の賢者。
自分から表にさらけ出す事で大きな世界全体に強く干渉することが出来て当たり前の達人である、CRCは伊達ではないというか。
ある意味、ローゼンクロイツという存在は、神智学の開祖であるヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキーという女性が提唱したアカシックレコードという概念に接続した魔術師と解釈することができるかもしれない。歴史は薔薇十字団の方があるが。
「貴方の行動は・・・・暴走した大衆に都合のいいのように信仰されて、歪んだ結果生まれたCRC信仰を具現化した側面もあるわね・・・・。ようやく、薔薇十字伝説の真実が分かったわ・・・・」
自分とは似て非なる偶像な存在に胸を貫かれて死んでしまうとは・・・・。上条当麻にやったことが返ってきたわね・・・・・因果応報と言うべきかしら・・・・。
そして、埴安神袿姫はマギステルの称号を貰いながらも、世界に真実を訴えても、大衆に無視されて、自分が造り出した理想の存在だけしか見て貰えなかった、哀れな錬金術師の話を思い出しながら、父性の十字に母性の花弁の効果で戦闘不能になった。
「最後に老骨も救済すべき存在と認識したか・・・・。だが、救済はこの老骨には不要、一人で成し遂げることができるぞ。しかし、勝手に名も知れぬ大衆達に理想の偶像を押し付けられて、神装術を使う羽目になって、自意識を見失いかける羽目になるとは哀れじゃのう・・・・」
キトニタスで砂に変換されて封印されていく、埴安神袿姫の死体を見ていた、CRCの言葉には何故か憐れみの感情が籠もっていた。過去に何かあったのか分からない故に憶測になるが、彼も同じような行動を取っていたからシンパシーを感じたのか。
そして、CRCは異界にいる超絶者達を埴安神袿姫に向けた恩情として最後に殺すと決めると、第十二学区の全ての生命を砂に変換させながら目標に向けて進撃を開始した。
ローゼンクロイツが去って、砂に埋もれて誰もいなくなった第十二学区で動く影があった。CRCの炭素弾によって千切れて吹き飛ばされた埴安神袿姫の右腕と父性の十字と母性の花弁によって主人が貫かれて、倒れる直前に急いで戦闘場所から猛スピードで離脱した『ドラゴン』である。
何故かキトニタスによって砂になってない二つの存在はやるべきことを開始した。『ドラゴン』は主人の封印を解くための行動、あらかじめ自立して動く機能が付けられた右腕はCRCとの戦闘中に造形した自分用の世界の完全な縮小模型と『造形術』で本体を蘇生する準備。
そして、二つの存在のおかげで砂の中から吐き出されるように蘇った埴安神袿姫は、偶像崇拝の理論の悪用でCRCが造り出した都合の良い世界の未来を本人に気づかれないように改変して、ヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエの行動を間接的に妨害し始めた。
偶像崇拝の理論という基礎的な魔術の応用も極めたらここまで来るのか。恐るべし。
老骨はいくらでも盛ってもいい。そう思っています。