とある偶像の造形神   作:一般通過龍

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完結させた方の禁書二次で色々なキャラを暴れさせて学園都市をぶっ壊す予定でしたが出来なかったので、こちらでぶっ壊す予定です。


薔薇十字/ローゼンクロイツ

炎がローゼンクロイツに届かなかったのを確認すると、キングスフォードは、薬指の土、小指の風、人差し指の水、親指のエーテルと次々に属性を切り替える。しかし、どれも銀の青年には届かない。

 

どの属性もクリスチャン=ローゼンクロイツの眼前では、あらぬ空間を削ぎ落とすに留まるだけ。

 

CRCが反撃に転じる。赤衣の青年がやったことは、アンナ=キングスフォードと同じ『薔薇』の五大属性の魔術。

 

一線を画す脅威の防御力と攻撃力に知の大女神と呼ばれた女性魔術師はローゼンクロイツとの魔術戦に怯まなかった。

 

彼女は、クリスチャン=ローゼンクロイツという魔術師、錬金術師の伝説には及ばないが、近代魔術の歴史に大きい影響を与えたアンナ=キングスフォードという偉大な魔術師である。

 

 

クリスチャン=ローゼンクロイツが放った五大属性の魔術を、炎には水、風には風と、的確に、無傷で捌き切る。

 

真の達人は大仰な霊装も限られた聖地も必要としない。

そんなのは、分かりやすい弱点になるのと同義だ。

 

ただの呼吸。

ただの指先。

ただの仕草。

そんな基本が極限まで突き詰められた時、魔術師は己の体一つで世界を両断するほどの奇跡を起こす。

 

そもそもカバラにおいて小さな人体と大きな世界は全て対応しているのだ。人体の外にある道具にすがって術式を完成させるなど、そちらの方がよほど邪道と言える。しかしそれは、人の頭でビッグバンの理屈が分かれば人の手でビッグバンを起こせるだろう、と同じレベルの暴論でしかない。

 

そしてそいつを純粋な人間の身で現実にやってしまっているのが、この二人なのだ。

 

魔術とは、ここまでやらなければそうとは呼べない代物だったのか?人間とは、ここまでやらかしてしまっても許される存在だったのか?

 

「いや楽しい。魔術の本質がまやかしと知りながら、まさかここまで真正直に研鑽を続けてきた者がいようとは、自分で自分が馬鹿馬鹿しくは思わなかったのかね?」

 

目の前にいるクリスチャン=ローゼンクロイツが、キトニタスで造られた分身ということを理解しながら、アンナ=キングスフォードは、本体と情報を共有している砂の青年に語りかける。

 

「七人ノ弟子ト共ニ『聖霊の家』ヲ構築した頃ノあなたハそんな風ではなかった筈デございますわ。他者ヲ敬い平等ニ扱う気持ちハ何処へやったノですか、CRC?」

 

「純度が落ちたぞ達人とやら。それこそ無駄な会話じゃな」

 

真の達人には四大元素に当たる四種の象徴武器シンボリックウェポンや儀式場など必要ない。だけで充分に天使を制御、召喚できる

 

メイザースを上回る速度でクリスチャン=ローゼンクロイツは、召喚術を行使する。

 

「かの者は油によりて祝福されたもの。その御前において天使の目撃は特別なものでなし!すなわち火、水、風、土、四種大天使は支局当然に舞い降り御身を守護せん! きひひっ 天使の召喚じゃあ!!」

 

剣を持つモノ、百合の花を携えるモノ、冒険者を守護するモノ、地獄の門を守るモノ。

 

翼を持つ高次生命が、いきなりの四体。

 

それぞれ一つずつであったとしても穢れきった現世を滅ぼすに足る大火力。『神の力ガブリエル』一体でさえ『御使堕しエンゼルフォール』に追い込まれた世界全体が、ローゼンクロイツに召喚された天使達によって、大幅に影響を受け、ギチリと不気味な軋みを発していた。

 

どうやらCRCは、世界に影響を与えないように天使を呼び出すことが出来る達人の魔術師なのに、あえて精度を落としたらしい。

 

天使を掌にある『薔薇』の属性で召喚したクリスチャン=ローゼンクロイツに対して、アンナ=キングスフォードがやったことはただ一つ。

 

右足を軽く動かして地面に横線を引いただけ。

 

たったそれだけで、現世と天使達を分ける境界を作り出して、元のいるべき場所である『位相』に、キングスフォードは天使を追儺する。

 

複雑で難解な魔法陣は、その実、ろくに記述の整理もできていない手作りアプリのスクリプトと同じだ。細かくたくさん書き込んであるからすごいのでなく、一つの術式を起動するのにこんなごちゃごちゃと書き込まなくてはならないのかと蔑むべき。

 

本来、線の一本、丸や三角といった基本の記号にすら魔術の真髄はある。その意味を正しく理解し十分に効能を引き出せるのが、真の達人だ。

 

しんノ達人ニ言葉等要。・・・・・遊んでいるのでございますか、CRC?」

 

詠唱という舐めプをするクリスチャン=ローゼンクロイツをキングスフォードが指摘したが、青年は肩をすすって笑うのみ。

 

「それは当然。魔術など所詮はまやかしの学問、魔術と一つの存在であった科学もな。子供騙しの児戯であり、束の間の慰みに用いる以外に使い道のない代物じゃ。くくっ。真面目な顔してこんなものを振るうておる薔薇の末の嬢ちゃんが一番面白いぞ?」

 

そして、有象無象の魔術師の追随を許さない魔術戦が再び開始された。この二人の戦いはメイザースやアレイスターさえ入り込む余地は無いだろう。彼らのような上澄みに入る魔術師達も『薔薇』の達人達の前では有象無象の凡百な存在に入る。

 

 

二人の戦いは概ねクリスチャン=ローゼンクロイツが優勢だった。それは当然だろう。近代魔術に大きく影響を与えた『薔薇十字団』の始祖だから。

 

『薔薇』の大元たるクリスチャン=ローゼンクロイツに近代魔術を利用した魔術戦で勝つのは、大なり小なり『黄金』に影響を受けている今時の凡夫な現代魔術師が全盛期の『黄金』メンバーを個人で相手にするよりも難しいかもしれない。

 

実力の差でローゼンクロイツに追い詰められているアンナ=キングスフォードだったが、彼女の強みはそれだけではない。

 

悪い意味で何でもあり、どのような行動も無意味にはしないと、あのアンナ=シュプレンゲルにお墨付きを頂いている存在だ。

 

黄砂の海に飲み込まれている、地面のアスファルトを覆っているある部分の砂が少し波打ったことを確認したキングスフォードは、不利を承知でそのまま、ローゼンクロイツとの魔術戦を続行する。

 

段々と銀の青年に押されて、知の大女神の胴体は二つに千切れたが、そのまま笑った。

 

「一旦、こノ勝負は私ノ勝ちデございますよ、CRC」

 

アンナ=キングスフォードの言葉と同時に、何かがクリスチャン=ローゼンクロイツを貫いた。

 

常に展開されている鉄壁の守りの防御術式ごと、自身の身体の中心を捕食・・した先割れスプーンを見て、ローゼンクロイツ=ダミーはう。

 

「なるほど、いくら強固な護りをしていても、それごと吸収する『捕食』行為には無意味か。勉強になったのう」

 

そして、キトニタスで作られたローゼンクロイツ=ダミーは饕餮尤魔に一欠片も残さずに捕食された。

 

 

「魔力が籠もっているとはいえ、砂の味がして不味ィな!!」

 

完全に捕食、吸収し終わったと思うと饕餮尤魔は、すぐに不満を吐き出す。

 

どうやら彼女には、キトニタスで作成されたローゼンクロイツ=ダミーという食材はお気に召さなかったらしい。

 

「ところで、お前生きているよな?さっさと起きろよ、アンナ=キングスフォード。死んだふりを続けていると食べるぞ?」

 

饕餮尤魔が上半身と下半身に分かれて倒れているアンナ=キングスフォードに語りかけた。

 

永久遺体の状態からアレイスター=クロウリーの科学技術で手を加えられて蘇った知の大女神といえども、肉体的には人間の範疇に入る魔術師だ。

 

だが、誰もがこの状態では、死んでいるだろうと確信できるいう状態からアンナ=キングスフォードは蘇った。

 

傷一つない、美しい姿を保ったまま。

何も知らずにこの姿を見た者は、彼女が先ほど、ローゼンクロイツによって胴体を真っ二つにされたことを想像できないだろう。

 

流石はアンナ=キングスフォード、地球の裏側にいようが気が付いたら、何もない暗がりからいきなり笑顔で出てくる。ホラー映画に出てくる怪異に等しい存在と評価されていて、アンナ=シュプレンゲルがトラウマを抱いている魔術師は伊達ではないということか。

 

「ありがとうございますわ。羊のしょうじょ

 

「感謝される謂れはないよ。ただ落とし前をつけにきただけだ。それに私には饕餮尤魔という名前がちゃんとある」

 

一種の妖怪のように身体を再生させて起き上がったアンナ=キングスフォードに、饕餮尤魔は動じない。そもそも人外と言える自分達や超絶者という存在がいる故に。

 

しかし何故、饕餮尤魔が達人同士の戦闘に割り込んで、CRC相手に見事に奇襲を成功させることができたのか。答えは彼女の特性とアンナ=キングスフォードにある。

 

ローゼンクロイツより実力は劣るとはいえ、キングスフォードが上澄みを超えた上澄みの魔術師で、どんな行動も無駄にしない達人でもあり。饕餮尤魔が自身の特性を活かして、キトニタスに呑まれた周囲の地形と一体化して、あえて自分から砂になることで対象の感知を誤魔化せた。

 

この二つの要素が揃ったからこそ、舐めプ有りの分身体とはいえ、クリスチャン=ローゼンクロイツを倒すことができたのである。

 

「三位一体の構造を利用して活動していたクリスチャン=ローゼンクロイツの分身を吸収したとはいえ、追加で出現しないように完全には消化していないぜ。それでお前はどう行動する?一人で単独行動をするのか、私と一緒に本体を倒しに行くか?」

 

「己ハあなた達ノ主人ノ一人ヲ探しニ行きますわ。直接見たことハないけど、情報ヲ確認した限りいきていると確信できる

 

「そういう考えだったら、私も着いていくよ。監視も兼ねてな」

 

そして、砂に埋もれた第十五学区から、埴安神袿姫を探して二つの人影が去っていた。

 


 

その頃、本体のクリスチャン=ローゼンクロイツは学園都市を自由気ままに探索していた。

 

『ちくしょう!!これが報告にあったロサンゼルスの黄色い砂か!!』

 

『総員退避!!呑まれるなよ!!第二防衛線まで退避ぃ!!』

 

『っ。承服できません!!まだ民間人が残っています!!』

 

『バカやめろっ・・・・・くそ!!!!』

 

探索と言っても彼という災害が通った場所の跡地は数多の人間によって作られた血と悲鳴、砂に覆われていた。少なくとも第十二学区と第十五学区は赤衣の青年の手によって壊滅している。

 

ただ、本気でCRCが暴れていたら学園都市という小さな街は一瞬で壊れて、地球という小さな枠組みから星の海に飛び出て、更に被害を周囲に与えるだろう。

 

『すみません。限られた戦力なのに無駄死にしました。自分はここまでみたいです・・・・・』

 

『やめろ構うな。駆け寄ったところでお前達も同じ目に遭うだけだ』

 

『後はお願いします。これがロサンゼルスの件と同じなら、元凶さえ倒せば・・・・黄色い砂から生存者を引きずり出せるはずですから・・・・』

 

『総員退避!!続きは第二防衛線だ、砂と化した愚かものの言葉を忘れるなよ!!』

 

そうなってないのが奇跡の状況だった。

 

今の世界は『魔神』とは方向性が違う極めた存在で、同じように魔術サイドの頂点に立っているクリスチャン=ローゼンクロイツの気紛れによって生かされているに限られない。

 

 

学園都市の脅威の科学技術によって作られた第一防衛戦とやらを散歩するような気分で軽々と超えたクリスチャン=ローゼンクロイツはある人影を見つけた。

 

「何をしとるんじゃー?」

 

「わあ!?」

 

突然声をかけたクリスチャン=ローゼンクロイツに驚いて飛び上がったのは、戒厳令を無視して、目的のカプセルトイのマシンのために学生寮を飛び出してきたやんちゃ命知らずな小さい子供達だ。

 

「お、おとなだぞ?」

 

「でもこの人は警備員アンチスキルさんじゃないみたい」

 

「このおっさんだって外に出ているって事は俺達と同じだよ」

 

興味深い。ひげさえあれば誰でもおっさんに分類されるのか。

 

クリスチャン=ローゼンクロイツは銀の顎鬚を指先で軽く弄ぶ。

 

子供達は目の前にいる赤衣のおっさんを気にせずにカプセルトイの中にある玩具を獲得するため、小銭を入れる。

 

「やるぞ、今日こそ激レアを手に入れるぞ」

 

「でもこれ、本当に激レアのゲコ太カラー旅客機入ってんの?横から見ても分かんねーぞ」

 

「当たり入ってない説もあるなんて」

 

CRCは号泣した。わざわざ欲しいものが確実に買えない仕組みに群がる人間の莫迦さ加減に。

 

「このような幼子が必死に溜めてきた限りあるお小遣いが、卑劣な騙し討ちで全て失ってしまう運命とは・・・・。よろしい、この老骨が排出率を確かめてくれる!!実際どうなんじゃ、うりゃ!!」

 

ド派手な爆発音を発生させて、カプセルトイのマシンそのものが砕け散った。

 

クリスチャン=ローゼンクロイツは砕け散ったカプセルトイから出てきた丸いカプセルを一つずつ確認する。

 

「一つ、二つ、三つ。四つ、五つ・・・・あった。何じゃ普通にあるではないかゲコ太カラー旅客機!はっはっは、良かったな、別に騙されていた訳では」

 

言いかけて、その言葉が止まった。小さな子供達はいきなり号泣してカプセルトイを破壊したローゼンクロイツに驚いて慌てて逃げ出したらしい。

 

「許せなかった・・・・この老骨が排出率を確かめてあげたのに!!」

 

わざわざ確かめてあげたのに、勝手に逃げ出した子供達に対してクリスチャン=ローゼンクロイツは怒ったが、位置を特定して攻撃することはなかった。

 

別にそんなのはどうでもよかったのもあるが、次の情念の向き先が見つかったからである。どうせなら本物を見てみようと第二三学区に、ローゼンクロイツは足を向けてみた。

 

遠目から見た第二三学区は第二防衛線が築かれてあった。

 

その時、銀の髭の青年に電流が走る。

 

あの程度の軍勢は邪魔だ。クソゴミとばかりに蹴散らすことができるが、それに付き合って、こちらも兵隊を用意して戦争ごっこをしてみよう。そうだそうだ、その方が面白そうではないか。

行動不能状態になった自分の分身を補う意味もあるし、一石二鳥だ。

 

クリスチャン=ローゼンクロイツは踵を返して、逃げ遅れて砂と化した警備員アンチスキルを筆頭とした人間達の所に向かった。自らの情念に利用するために。

 

 




アンナ=キングスフォードの語録の法則を一応まとめてみました。創訳11巻で語録が追加されるのは確定だと思いますが。
己→一人称
詰→つまり
ガデヲハノニヤモナト→接続とか助詞?
〜→から
×→ない,なく,ふよう,ですが,なけ(れば),ふでき(不出来),なか(った),わがまま,だそく,いえ,いいえ,(出来)ず,ふよう,む(無),まだ,ただし,はんき(反旗),わるい,しぬ,が,し(死),だけど,しかし
○→ふつう,で(きる),ある,あ(っては)←あるなし?
◎→こんなにも,むじんぞう,すぐれた,じゅうぶん,ある,さいじょう(最上),れきぜん,ある,よい,だいじょうぶ,ぜったい,ぜんぶ,いきる,はい
〼→ます,まし
△→ぼんやり,ほそ(い),ちょっと
〆→しめ
♂→しょうねん,だん(男)
♀→しょうじょ,じょう(嬢)
〼×→ません
◎×→あるなし,ぜんあく
××→いえいえ
◎◎→はいはい
◎×→たかいひくい
〼××→(間違え)ましたが

法則が分かっているのに、キングスフォード女史はエミュしづらい・・・・。
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