どうやって物語に組み込もうか・・・・。
航空宇宙学を専門とする第二三学区で築かれた防衛線にて。
上条当麻は説明を求められていた。
誰に?
インデックスと御坂美琴にだ。
「ご説明なんだよ」
インデックスの肩に乗っているオティヌスも、人間、これはどういうことだ?という目線で少年を見ていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
美琴がいるところで魔術サイドの話はどうかなーと上条は思ったが、R&Cオカルティクスが台頭したことと、影響を受けて魔術師になった統括理事会の一人の根丘則斗の件で魔術への認識もちょっと変わった気がする。
ただ、魔神『僧正』や絶滅犯・去鳴などといった存在と出会っても、自分の知らない世界があるという考えしか出来なかったように。本当の本当に御坂美琴が魔術の存在をそのまま信じるかはまた別の問題だが。
「禁書目録やオティヌスはともかく、隣にいる真面目ちゃんにはいくら説明しても無駄よ、愚鈍。完全に見方が固定されているし、よしんば理解できたとしても、間違った見方をして失敗するのが目に見えているわ」
アンナ=シュプレンゲルは御坂美琴を見ると、説明する価値はないと上条当麻に提案した。小さな薔薇の悪女の中では、御坂美琴という人間は、ちゃんと一から説明しているのに言う通りにせず、魔術の扱いに失敗して自爆した教え子達と重ねて見えているかもしれない。
「ちょっとどういうことよ!!なんでアンタがあの馬鹿と一緒にいるのかは分からないけど、この状況では私も当事者よ!」
「R&Cオカルティクスの切れ端ごときに自慢の『力』を簡単に弾かれて、手加減していたわらわの軽い攻撃で即オチ2コマみたいにKOされた小娘には教える権利はないわよ」
怒りのあまりに、自身の周囲にバチバチと小さい雷を放出している学園都市第三位を目の前にしながらも、断として小馬鹿にする態度は崩さないアンナ=シュプレンゲル。
この二人を見た上条当麻は、不安になっていた。ただでさえ、クリスチャン=ローゼンクロイツという魔術師が復活して大暴れしているのに、この期に及んで内輪揉めをすることになったら碌なことにはならい。幸いにも自分達を追っていたアレイスターや『橋架結社』の超絶者達は大人しくしているからいいものの。
そんな少年の杞憂は終わった。両者が戦闘することはなかったからである。
そもそもアンナ=シュプレンゲルは訳あって悪女という皮を被って超絶者をやっている人間だ。御坂美琴に魔術を説明する価値はないと語ったのも、かつて存在した愚かな教え子達のようにならないようにという善意かも知れない。
「とうまがアンナ=シュプレンゲルを筆頭とした超絶者達と一緒に行動していたのは、オティヌスという前例があるから納得している。でも、どうしてこんなことになったのか教えてほしいんだよ?」
銀髪碧眼のシスターさんが嘆願するように見つめてくる。
なんかうるうるとこちらを見つめているインデックスの目線に耐えきれなくなった上条当麻は洗いざらいにこれまでのことを説明した。
『橋架結社』の目的と事情。『超絶者』という存在の正体。クリスチャン=ローゼンクロイツ。
「━━━ということでクリスチャン=ローゼンクロイツはアンナ曰く最悪の魔術師だ。魔術サイドや科学サイド、両方を纏めて蹂躙できる実力者なんだ。これは本当だと思う。同じように世界を相手に出来る『橋架結社』の超絶者を一蹴したとローゼンクロイツ本人が言っていたし、魔手から生き残った生き証人もいる」
「・・・・・・・・・」
話している間にオティヌスとインデックスと御坂美琴の目付きが段々と怖いものになっていった。
おっかないけど、ご許可もなく黙ったらその瞬間にドカンとくると上条は理解していた。
「本来なら皆を巻き込まないために俺だけでローゼンクロイツのヤツと戦いたいけど・・・・・。アンナ曰く、俺一人ではCRCに普通に殺されるらしいんだ。・・・・・だから力を貸してほしい!!」
自分が知り合ったみんなという存在を否応なしにクリスチャン=ローゼンクロイツ戦に巻き込むことに負い目を感じながら、上条当麻は皆に頼み込む。
少年の願いに対して・・・・肝心のみんなの答えは━━━。
「とうまのお願いなら仕方がないんだよ。━━━でも、命を懸けることを最初の前提にしないこと!!もっと自分自身を大切にするべきなんだよ!!」
「私もそう思うわ」
「頼るのが遅いぞ、人間。困ったことがあれば遠慮なく神に頼れ」
全員が心置きなく、上条当麻という人間に協力することを申し出た。
叱られると思った上条当麻は、こんなにもみんなが優しい言葉をかけて協力を申し出てくれることを意外に思ってしまった。てっきり説教をされるのかと考えていたから。
インデックスや御坂美琴やオティヌスだけでなく、ここに集まったアラディアを筆頭とした超絶者達やアレイスター=クロウリー、アンナ=シュプレンゲルも対クリスチャン=ローゼンクロイツ戦に付き合ってくれるらしい。
「みんな・・・・・・」
ところで、さりげなく混じっているはちみつの匂いがする名前も分からん少女は誰だろう?何故かボロニイサキュバスに突っかかっているが・・・・。
「長い金髪、スタイルバツグン、瞳の中にある謎のキラキラ、非物理攻撃が得意なお色気担当のサキュバスお姉さん・・・・・?こ、こいつ、何だと思っている訳ぇ!?全部が全部被りまくりダゾ!ともかく、こんなものが知らぬ間に彼に接触をしていただなんて、個人商店のすぐ隣に大手のコンビニを立てるようなケンカの売り方をしてくれちゃってぇ!!同じように非物理攻撃が得意な吉弔八千慧は胸がペッタンで個性が私とあまり被ってないからいいものを!!」
両者とも変な喋り方をしているという共通点は被り認定しないのか?それを『一般的』に考えたら現統括理事長の一方通行やクリスチャン=ローゼンクロイツなどの複数の人物に流れ弾がいって被弾するから、ツッコミをしないのが正しいだろう。
「ていうかなーに生意気言っているずら、小娘の分際でお色気お姉さん担当なんてぶっちゃけ10年くらい早いばい。そこらのチューガクセーなんぞより歴史と伝統で言ったらサキュバスお姉さんの方が圧倒的に正統派だぞ。てか小娘はほんとにマジで年を重ねてこい。そしたら、母性を持つお姉さんキャラにドリームを抱く男子高校生にとってベストなキャラになると思うずら?」
ボロニイサキュバスが具体例として大悪魔の身体を乗っ取ったアレイスターや自分と同じ超絶者のアラディアを指差す。
「下着でその辺をウロウロしている露出マニアのヘンタイにまっすぐな正論を言われたぁ!?」
少年の目に大変よろしくない、大きいモノをぎゅむぎゅむと押しつけあいながらの口論はボロニイサキュバスが勝ったようだ。
思った以上にショックだったらしくナゾの蜂蜜少女は涙目になってその場で立ち尽くしている。・・・・・あと好みのタイプの話って悪魔姉さんにゲロったっけ?上条には疑問だった。細かく覚えていないが、まさか十二月三一の渋谷で何回か死んだときに、断末魔代わりに性癖のことを喋ってしまったとか!?それだとしたらとてつもなく恥ずかしい!!
自身の性癖をボロニイサキュバスに周りにバラされて羞恥心で顔を赤くしている上条当麻の脳裏には、青髪ピアスが浮かんできて、性癖なんてバレても問題ないんやで、カミやん。と語りかけてきたのであった。
イマジナリー青髪ピアスにお前は黙っていろと少年がツッコんでいる間に、この場には謎の格付けが完了されていた。
何故か、ボロニイサキュバスと謎の蜂蜜色の中学生の口論による流れ弾でメンタルにダメージを喰らって暗い顔をしている御坂美琴と吉弔八千慧に対して、アレイスターやアラディアが誇らしげな顔をしていて、いかにも自分は勝ち組ですという雰囲気を出してマウントを取っていた。よく見るとアンナ=シュプレンゲルも大人モードになってマウントを取っている。
そこには残酷な胸格差があった。
木原脳幹に呆れた目で見られていることを気にせずに大人気なくマウントをとって誇らしげにしているアレイスター=クロウリーに語りかけた存在がいた。
「アレイスター、今の君の体は三角コーナーのものだろう。本来の身体でないのに自慢するのは間違っていると思うが?」
宇宙からやってきた地球外生命体とも噂される聖守護天使エイワスである。
本来の主人はアンナ=シュプレンゲルだが、仮初の主人であったアレイスターにツッコミをしたくて、顕現したというわけだ。
「体の主導権を私が完全に握っているから、アレイスターの体と呼ぶことには問題ないと思うが?そしてその姿は418としての数価を背負うものとしての姿かね?随分とイメチェンしたじゃあないか、エイワス」
「さあ?君が勝手に付けた変形機能を利用した、418の数価とは無関係な姿かもしれないぞ」
大悪魔の体を乗っ取った『人間』と鷹頭の天使が語り合う。
「ところでタン壺野郎の調子はどうだ、アレイスター?」
「今のところ、コロンゾンは隙あれば私を貶めようと周りに語りかけたり、煽ってくるが、力を貸せと言えば素直に貸してくれる気前のいい女ならぬ悪魔だよ。本人はツンデレの気分というところかな」
「ハハッ、嫌も嫌も好きの内か。もしかして腰振り動物と人間を見下していた理由は、便所ブラシ自身もその素質があった故の同族嫌悪かもしれないな。そう考えると死ぬべきタイミングを逃した君と生ゴミが合体する羽目になったのは当然の結末と納得できる」
『さっきから言いたい放題言いやがって・・・・ふざけるなよ・・・・。いつか・・・!肉の器を取り戻した暁には!今度こそ・・・・!貴様らや世界を私ごと消滅させてあげたりけるから!!』
アレイスターのショートヘアから顔のような陰りが浮き出てきて、れっきとした人の言葉を話して二人に抗議する。
「見事なツンデレぶりだろう?エイワス!」
「ああ、テンプレみたいな古き良きツンデレだな!」
だがローラ=スチュアートこと大悪魔コロンゾンの抗議の声はエイワスとアレイスターには届かなかった。言っていることは物騒だが、本人達にはコロンゾンの喚きはツンデレな対応として捉えられたようだ。
『だからっ、わたしは!ツンデレじゃあない!!勝手に、このっ、『拡散』の大悪魔の属性を解釈するな!!』
『人間』と天使に弄られ続ける羽目になった大悪魔の受難は終わりそうにない。
恨むなら自身を最初に呼び出して、アレイスター達と関わるきっかけを作ったメイザースを恨め。
そんな愉快なトリオを余所に困っている超絶者がいた。
「どうしよう・・・・」
自身の仕事を達成出来なかったムト=テーベである。
彼女は、『役割』を達成出来なかった&霊装『矮小液体』を全部紛失する失態を犯して落ち込んでいたのである。
アンナ=シュプレンゲルの件は保留。今の『橋架結社』に迫る問題はクリスチャン=ローゼンクロイツだ。だが、あの銀の青年に勝てるイメージが湧かない。航空戦艦を取り込んでいた自分達を一撃で沈めた相手なのだ。同じように一撃で自分が軽く倒される運命が見える。
具体的には木乃伊のような『魔神』に轢き逃げアタックされて一撃で退場したどっかの神の右席のように。
そんな褐色少女を励ますように声をかけた人物がいた。
驪駒早鬼と杖刀偶磨弓である。
「ムト=テーベ殿。人には各々の強みや得意分野があります。学園都市というフィールド内では貴方の魔術は対CRC戦で存分に活かされると思いますので気にすることないですよ」
「杖刀偶磨弓の言う通りだ。お前の魔術は最強を狙えるぞ、だから元気出せ!」
そんな励ましで元気が処罰専門の超絶者ムト=テーベの調子が上がるだろうか?
「最強・・・・大活躍・・・・わたしは絶対に輝いてみせる」
簡単にやる気ゲージが上がった。声のトーンはあまり変わっていないが、ある爆弾を勢いよく自身の身体から生み出したのが、分かりやすい反応だろう。
その爆弾に反応を示したのは上条当麻とアレイスターだった。少し形が変わっていたけど、二人にとって見覚えがありすぎる形状をしていた爆弾だったから。
「「航空支援式ビッグバン爆弾!!」」
邪悪の一撃と称される威力を持つ兵器の出現に慌てた少年が、彼女の魔術で造られた爆弾を幻想殺しで消失させる。
「どうして邪魔をするの?」
自身の魔術で造った武装の一つを幻想殺しで消したことについて、上条に対して褐色少女が純粋に不思議そうな顔で疑問を浮かべた。
「とにかくそれはやめてくれ!みんな消し飛びます!」
「大丈夫。これは領事館で行われた『調整』の時、埴安神袿姫によって造ってもらった切り札の改良型ビッグバン爆弾。本来は使う予定なかったけど、今がその時。『旧き善きマリア』みたいな被害を抑えられる存在がいるし、クリーンな改良型だから安心して。最低でも犠牲になるのはわたし一人だけだから」
物理的に輝いて活躍しようとする超絶者を少年はなんとか説得しようとする。
「それでも集団戦で使うのはやめろ!俺もムト=テーベがこの環境で輝く火力最強の超絶者だと思うから、周りも含めて命を大切にして、安全に戦ってくれ!!頼む!死なないでくれ!」
「最強と言ってくれる・・・・周りだけでなくわたしの命も大切にしてくれる人・・・・」
どうやら説得は成功したようだ。しかしなんか彼女の様子がおかしい。これは口説き落としたといった方がよろしいのでは?
突然だが、ムト=テーベという少女は男性と接触する機会が滅多になくて免疫がない。つまりきっかけさえあれば簡単にハートを射抜かれる照れ屋さんである。H・T・トリスメギストス?ヤツは例外だよ。好みではない、対象外である。
話を戻すが、ムト=テーベは愛の重さでブラックホールを作れちゃう系の危険なストーカー気質ありの女性だ。惚れやすい彼女が上条当麻に完全に好意を持つのは時間の問題だろう。
この場にムト=テーベと似たような魔術を取得している去鳴を妹として接して育てた上里翔流がいたら、同情するような目で上条当麻を見るのは間違いない。
対CRC防衛線で愉快なやり取りを繰り返す仲間達を見ながら『旧き善きマリア』がふと気になることを思い返した。
そういえば、自分達はどういう方法で異界から出てきたのだ?そしてアリスや埴安神袿姫、トリスメギストスを筆頭とした他の超絶者達はどこへ消えたのだ?
刑務所で対クリスチャン=ローゼンクロイツの作戦を立てて、各部隊に指揮をしている新統括理事長の一方通行は、自身を覆っている壁の向こう側に気配を感じて不意に顔を上げた。
「誰だ?」
ザザギンッ!!!!と刑務所の分厚い耐爆壁にいくつもの直線が走り、切り分けられ、重力に引かれてガラガラと崩れていった。
そんな光景を目にしても一方通行はそのままベッドに腰掛けていた。
「・・・・・オイ、誰だっつってンだろ。答えねえのは知性と礼儀のどっちが足りてねェンだ?このクソ忙しい事態の進行中に喧嘩を売ってくるのを見るに空気を読む能力は足りてねェように見えるンだがな」
学園都市第一位のベクトル攻撃に耐えた実績がある『窓のないビル』と同質の材料で作られた壁をあっさりと切断した下手人が姿を現して自身の名を告げる。
「H・T・トリスメギストス」
「・・・・・・・」
「あなたが学園都市をどう動かそうが、悪辣に振る舞うあの『薔薇』の錬金術師には勝てません。勝てる可能性自体はありますが大勢の被害が出て死人が出るでしょう。いわば試合に勝って勝負に負けたという感じですね。だから我が主人の一人である埴安神袿姫が目的のために学園都市を手中に収めようと早めに動いたわけです。安心してください、もう一人の主人であるアリスはこの戦いには参戦しないと思いますよ」
瓦礫の向こう側にいる青年執事に続いて、少し大人びた姿になっている『造形神』が外部の光に照らされながら姿を現す。
「トリスメギストスの言葉を借りるなら、『一般的』に考えて、この埴安神袿姫にCRCを筆頭とした問題を委ねるのがベストな選択。だから偶像に世界を委ねてちょうだい」
埴安神はCRCを復活させるという間違いを犯したばっかりなのに自身の行動に疑問を抱かないで笑顔を浮かべる。自身が動いたら全ては良い方向にいくと、世界の完全な縮小模型という霊装のおかげでそのような未来が造れると確信が取れたから。
彼女は特大の善意で歩む。既存の世界を壊して、自分好みの法則で満ちた新しい世界を造形するために。
「どっ、ドローンからの映像です!ヤツらが来た!!真っ直ぐこちらに向かってきます!!ど、どうしましょう!?」
CRCを監視するために空に飛ばしたドローンから送られてきた映像を見た警備員が青い顔になって慌てて情報を伝える。
「ヤツら・・・・・?」
果たして彼はどんなモノを見てしまったのだ?
第二三学区に迫ってきた黄砂の嵐の中から複数の人影が姿を現す。
最初に姿を現したのはCRCだった。それ自体は驚かなかった。だが、少年を驚かしたのは続けざまに出てきた複数の人物達だった。
だってその人物達には少年と共闘したことがある『薔薇』の魔術師の特徴があったから。
「サンジェルマン・・・・・?」
自分に従う忠実な兵隊を作ったクリスチャン=ローゼンクロイツは邪悪に嗤う。
「さあ、世界の法則の一つとも言える上条当麻よ。周りにいる命を拾い上げて助けるという性質をこの老骨の目の前で壊されずに充分に活かすことが出来るかえ?」
彼は特大の悪意で歩む。誤った偶像を歴史に刻んだ世界と法則を壊して自分好みの『真実』を作るため。
二人の超絶者が近しいようで異なる思惑を持ちながら、学園都市という世界で活動する。
今のところは未来は決まっていない。
両者ともアカシックレコードとも言える世界の完全な縮小模型という霊装を通して、偶像の理論、類感魔術による共感性を利用することで世界全体に強く深く干渉しているが、拮抗していて未来は不確定のままだ。だが、どちらが倒れたら世界の運命は片方の都合の良いように確定して運行するだろう。
さて、この重大な事態にヒーローという偶像はどうやって対応するのだ?
吉弔八千慧は自分の中では、胸は平らと独自解釈しています。