とある偶像の造形神   作:一般通過龍

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創約とある魔術の禁書目録の最新刊を見ました。
相変わらず老骨が大暴れしていました。
盛っても特に問題ないほどの強さがあって助かりました。


世界の中心点になるのはだぁれ?

「くくっ・・・・」

 

宇宙空間でクリスチャン=ローゼンクロイツは嗤う。

そうだ。上条当麻が脱線したからだ。

本当に嗤わざるをえない。その愚かさを。

 

「くははははははははは!!」

 

かつて、薔薇の聖者と呼ばれたモノは目の前にいる神浄の討魔と『ドラゴン』を見て、嗤い続けた。

 

「本当に世界を治す秘薬を出すとは、この老骨、思わず嗤ってしまうのう!!その者は普段は棺の中で眠りに就くが、この世を蝕む病巣を見つければ自然と目を覚まし、そして不要になれば再び自ら棺へ戻る、『薔薇十字』の達人と同じ『パナケア』じ」

 

クリスチャン=ローゼンクロイツの話を上条当麻は聞いてなかった。

 

宇宙空間に飛び出した時と同じように、一瞬でクリスチャン=ローゼンクロイツとの間にある全ての距離を無視して、右肩から飛び出した『ドラゴン』で触れたから。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおアアアアアア!!!???」

 

本人の感覚では、おそらくは、デコピンのような些細な一撃。それだけでクリスチャン=ローゼンクロイツが誇る、常にオートで展開していると思われている、堅牢な防御術式を破ってダメージを簡単に与えた。

 

その証拠に、第三次世界大戦の時に右方のフィアンマに向けて使用されたが、聖なる右での攻撃で返り討ちにあって、スペースデブリと化した衛生兵器の上でCRCが吐血をしているではないか。

 

 

 

だが、己の情念に溺れた銀の青年にクリーンヒットを当てた代償はただではすまない。

 

上条当麻の胸には大きめのゴルフボールと同じくらいの穴が空いていたからである。不幸中の幸いか、心臓は無事だったが、このままだと出血死するのは確定だ。

 

クリスチャン=ローゼンクロイツは上条当麻の『ドラゴン』で殴り飛ばされる寸前に、後の先といわんばかりにカウンターの一撃を決めていた。達人が限界まで鍛え上げた、ご自慢の炭素を操る魔術による至近距離からの零距離射撃。

 

それで上条当麻の胸に穴を空けて、致死的な傷を作っていたのである。

 

 

 

吐血をしたことで、宇宙空間を漂う自身の血を見ながらローゼンクロイツは、上条当麻に語りかける。

 

「きひひっ その出血量でどこまで保つ?素人の目には分かりにくいが、この老骨の目には出血死以外にも、幻想殺しイマジンブレイカーが宿った右腕を千切ったことで幻想そのものになるというタイムリミットがあることが丸わかりじゃぞ?」

 

「・・・・・」

 

こちらへ語りかけてくるクリスチャン=ローゼンクロイツの言葉には、超人となった上条当麻は返事をしない。

 

いや、何もない。顔に影が差していて表情が読み取れない。今の上条当麻の顔のそれは妖怪のっぺらぼうのようだった。

 

この例えは言い得て妙かもしれない。実際、今の少年と同じ超人のクリスチャン=ローゼンクロイツが語ったように、上条当麻の身体は幻想そのものに傾斜していっているからだ。その証拠に差している影は明滅していた。古ぼけた蛍光灯のように。

 

このままだと上条当麻という存在は完全に人間を辞めて、幻想のような世界に住んでいる怪物に成り果てるだろう。それまでに出血死というタイムリミットも抱えながら、クリスチャン=ローゼンクロイツを少年は倒さなければならないのだ。

 

しかし、それがどうしたというのだ。相打ち上等。ローゼンクロイツの思惑に乗った戦いのようだが、そんなものは気にしない。何故ならアレイスター=クロウリー戦のような戦いを何度も経験しているから。ここで確実にCRCを倒す。この手を血で汚してでも彼は彼が大切だと思う人々を何があっても助ける。

そういう決意が今の上条当麻に感じられる。

 

何かと引き換えに手に入れた力をCRCにぶつけるために上条当麻は移動する。その移動速度は空間移動テレポートと見間違うくらいの速度だった。

 

「赤き秘薬はあらゆる死病を克服し寿命そのものを操作する!」

 

だが、銀の青年の行動速度も負けてない。

 

上条当麻が驚異的な速度で自身の目の前に現れる前に、壊れた衛生兵器を修繕、改造して生命を与えて、己の盾代わりにしたからだ。これは王冠を載せた竜の王の『威圧』、『従える力』による従属は通じない特別製。

 

 

ローゼンクロイツの手によって造形された巨大な人型ロボット、機械生命体となった学園都市製の衛生兵器が、自身を貫いた『ドラゴン』を光学兵器による閃光で蒸発させようとする。が、そんなちゃちい行為では、上条当麻神浄討魔というバケモノは止まらない。

 

右肩から姿を覗かせている竜の大顎が、ローゼンクロイツによって新しく生まれ変わった衛生兵器を瞬時に喰らい尽くす。

 

しかし、僅かな時間とはいえ、捕食に費やしたことで生まれた時間が致命的だった。相手はクリスチャン=ローゼンクロイツなのだ。赤衣の青年はその時間を無駄にしない。

 

チャンスともいえる小さい時間で取った選択肢は━━━━。

 

 

「逃げる!!!!!!」

 

逃走一択。躊躇なく。

 

上条当麻にどれだけ『力』があろうが、タイムリミットというゲームオーバーが存在するのだ。馬鹿正直に相手する必要はない。そう、バケモノと真正面から戦って勝てる『力』がこちらにもあろうが。

 

勿論、クリスチャン=ローゼンクロイツにもプライドや誇りはある。だが、遊び心という情念が最優先の銀の青年は目的や方針をすぐに変えることが出来る。だから、己の顔に泥を塗るような恥知らずな行為をすぐに取れるのだ。

 

「ひはは!!時間という壁に押し潰され、全てを失った後にまた会おう!!」

 

逃さない。そう言わんばかりに、今の自分と匹敵するような超速を出しながら生身で大気圏突入したクリスチャン=ローゼンクロイツを追いかけた上条当麻であった。

 


 

 

学園都市のアスファルトに向けて宇宙から何か降ってくる。

 

落下物の正体は組み合っているクリスチャン=ローゼンクロイツと上条当麻。それが猛スピードで落ちてくるのだ。当初、この戦いでCRCが落とそうとした彗星より被害は小さくなるとはいえ、墜落時の衝撃でクレーターが発生して、飛散した破片で周りの建築物にダメージを与えるだろう。

 

けれど、そうはならない。まるでプリンやゼリーのようにアスファルトが自らの性質を極限まで柔らかく変質させると、上条当麻とクリスチャン=ローゼンクロイツの落下時の衝撃を全て吸収して、周辺被害をゼロにしたからだ。

 

これぞ『従える力』の強みの一つ。単に、油断すれば強力な耐性を持つローゼンクロイツ自身も操られ従わされてしまう、などといったつまらないリスクの話ではない。

 

確率論を操作して空間を歪ませて世界の全てを従わせることで流れ弾、人質、他者の命。全てを無視して、持っている絶大な『力』で発生する周辺被害に考慮せず、自由に対象に振るうことが出来るのだ。

 

父性の十字と母性の花弁と呼ばれる薔薇の蔓が絡まった黄金の十字架と竜王の顎ドラゴンストライク。両者が組み合いながら、十字架と乱杭歯が噛み合う。

 

バギバギという音を立てながら十字架が歪められていく。幻想殺しイマジンブレイカーならともかく、父性の十字と薔薇の花弁では『ドラゴン』は止められない。

 

「っ!」

 

十字架を掴むクリスチャン=ローゼンクロイツに『ドラゴン』とバケモノになった上条当麻自身の牙が噛み砕こうと迫る。

 

魔術でもない。能力でもない。現実や幻想関係なく構わず抹消する『力』。

 

上条当麻が新たに獲得した、自滅と引き換えの力。ある『木原』の暗躍によって雷神となった少女を救うために出てきた『ドラゴン』の牙とは、異なる思惑を持った上条当麻カイブツの迎合の余地なき一撃。

 

「なるほどのう・・・・っ」

 

ドバドバと胸から流れる魔術を暴発させるロールシャッハテストも兼ねた上条当麻の血を浴びながら、緊張と好戦の入り混じった汗を流し、ローゼンクロイツは笑う。異様な熱の内包する笑みを貼りつけて問う。

 

「教えておくれ。何故そこまでしてみんなを守ろうするのじゃ?酷いこともされたじゃろうに?その『力』で自分の幸せを目指さずに確実な破滅を受け入れる事で一体何を見出したのかえ?」

 

 

ここだけ、だった。

 

 

上条当麻の口から人語が飛び出した。むしろそちらの方が異質に思えてしまうような、そんな状況。

 

「みんなを守る・・・・」

 

自己犠牲精神溢れている言葉だったが、それでも確かに少年の言葉だった。

 

「理由を探していたり、誰かに言い訳して戦う必要なんてないんだ・・・・」

 

汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん。

 

つまりは化け物となってしまった少年の中に残る、最後の人間性だった。胸の中でちっぽけな石ころのように転がっている、だけど絶対失ってはならない何か。それがある限り完全な脱線はしないだろう。

 

完全な脱線はしなかった理由は、上条当麻と関係を持ったみんな・・・がいたから。

 

上条当麻は異形なる存在になったことで発達した視力で一瞬だけ遠くを見る。そこには見知った顔がいた。

青髪ピアスだった。彼は何の力もない高校生だ。だけど、小さい少女を背負いながら、色々な人間達と一緒に避難誘導していた。ただ、埴安神袿姫からプレゼントされたおっぱいマウスパッドをその身から離さず、お守り代わりに着けている姿は笑わずをえないが。

 

善なる行動を取りながら、徹底した悪友の変態性に半ば幻想側に転げ落ちた少年は束の間、いつもの教室で見せるように小さく笑い、しかし決意を新たにする。

 

CRC、クリスチャン=ローゼンクロイツ。自身と同じように強大なバケモノに自由を与えて、みんながいる場所に向かわせてはならない。絶対に。負けてはならない。

 

「がァァあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

「面白いが、きひっ、だが甘い」

 

雄叫びを上げながら牙を近づける上条当麻の頭に向けて、クリスチャン=ローゼンクロイツは空いた掌からダイヤモンドの飛び道具を射出する。

 

距離が空いていたら、バケモノとなった上条当麻は『ドラゴン』の力で余裕で対処できただろう。だが、至近距離での鍔迫り合いの最中だ。食い止めることはできない。

 

ボッ!!と空気が圧縮される不気味な音があった。

宇宙空間で胸に穴が空いた時と同じように、ローゼンクロイツによって、上条当麻の頭部が消失した。

 

瞬きする暇もなかった。何事もなかったように上条の頭は回復していた。ただ、虚空から現れてくるくると飛んでいった竜の尾が身代わりとなってひしゃげていた。

 

おそらくはダメージを肩代わりする機能を持ったトカゲの尻尾。ただし上条は説明がなくても体で理解していた。あれはおそらく一回限りの大技だ。

 

あんな便利な機能があればもっと温存して、使うべき時に使えば良かったな。

 

上条の視線が横にブレる。未練を感じさせる仕草。どこか他人事に考えているようだった。少年の思考は人外そのものに近づいてきてる。

 

 

尻尾に目をやったまま、上条当麻は、自身の下にいるクリスチャン=ローゼンクロイツを竜王の顎ドラゴンストライクでこの世から消失させようとする。

 

だが、クリスチャン=ローゼンクロイツも人外と呼べる超人的な身体能力の持ち主だ。聖人とは比較にならない。比較対象は文字通りの人外か、同じような規格外の達人の魔術師や超絶者、『魔神』だ。

 

CRCは上条当麻を空中に蹴り飛ばして、マウントポジションから脱出する。

 

獲物が噛みつきの圏外へ逃れたが、上条の眉はピクリとも動かない。

 

右腕の大顎から禍々しい『ドラゴン』の翼を生やす。片方しかない翼でたっぷりと空気を蓄え、空中を飛びながら、上条は巨大なマントにも見える翼を羽ばたかせる。

 

空気が塊と化し、そして規格外の砲弾となりながら、ローゼンクロイツの元に突き進む。同時に超人達の周囲にある、あらゆる建物は白く凍りつき、空気は帯電して、四方八方からの分厚い紫電と冷気がローゼンクロイツへ殺到した。

 

「ただ風を生み出すのではない。気圧を自在に従え、気象操作までするのかえ。流石は東洋の龍神の要素も入っている能力者じゃな。しかし、この老骨もそれくらいは出来るぞ?」

 

それは本来、神の領域にある立派な奇跡の一つだ。恵みの雨にも落雷の天罰にしても。そしてCRCもそれが出来る魔術師だ。同じように二本の指で気象操作を行い、無害なただの雲に変化させる。ついでに白い水蒸気のような雲で自身の身体を包み込む。

 

魔術結社『薔薇十字ローゼンクロイツ』において、雲とは叡智や真実を覆い隠し許可なき者の閲覧を阻止する重要な記号だ。この中にいれば、たとえゼロセンチであっても一切の攻撃は当たらない。当たる方がありえない。これまでクリスチャン=ローゼンクロイツが展開していた防御術式を超える絶対的な防御術式だった。

 

そんな防御術式はないようなものだ。関係ない。誰にも観測されず存在の確定しない猫を、無理矢理箱の中から引きずり出して確定させて殺す術を少年は持っている。

 

「お」

 

だから。

この身がどうなっても構わない。最初から自滅は織り込み済みだ。自分に与えられた時間を使い切ってしまう前に、ここで何としても決着を。

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

大技が来る。そう判断したクリスチャン=ローゼンクロイツは虚空から何かを握り込んでいた。それは赤く光る何かだった。

 

「薔薇の色彩、純粋な赤、ルビーが示すその輝きよ。十字架の対となりあらゆるものを生産する女性の象徴、ここに死と破壊のケダモノを量産せよ!!」

 

ずん!!という震動があった。

 

一つではなかった。直系二メートルはある銀色の球体、『プネウマなき外殻』。それが辺り一面を埋め尽くすように現れたのだ。銀色の巨大な泡が、一斉に開く。中から出てくるものはローゼンクロイツ本人にも分からない。マザーデバイスたる赤き薔薇の象徴を握り込んだまま、CRCはただ笑う。

 

巫術のようにただ吸い上げ。機械的に読み解き。表の世界に出力するという行為は失敗した。

 

「愚鈍、一人で無茶をしないこと。わらわ達がいるわよ」

 

アンナ=シュプレンゲルを筆頭とした皆の攻撃がクリスチャン=ローゼンクロイツに集中して行動を妨害したからだ。アレイスター=クロウリーの霊的蹴たぐり、『旧き善きマリア』のトリコビス、アラディアの魔女の閃光、驪駒早鬼の黒翼から発生した複数のレーザー、ボロニイサキュバスと吉弔八千慧の非物理攻撃の合体技等・・・・・・。

 

特に効いていたのは、アンナ=シュプレンゲルが持っている『プネウマなき外殻』から取り出した、真っ赤なルビーで飾った黄金の巨大な十字架の杖に発生させる『薔薇』の奇跡が原因の破滅。幻滅死。だが、どの攻撃も本気状態のクリスチャン=ローゼンクロイツにとっては大したことがないダメージだろう。精々が小石に躓いた程度のダメージだけ。けれど、少年にとってはそれで充分。

 

ありふれた少年が持っていた一番の強みたる『繋がる力』は今も健在。振るう力が悲劇をもたらす『力』だろうが、力そのものには善も悪も呵責なし。振るう人によって善悪は変わる。雷神となった超能力者の少女を人外から人間に戻した時のような、この戦闘の結末をハッピーエンドに導く『ドラゴン』の『力』がクリスチャン=ローゼンクロイツに迫る。

 

「ローゼンクロイツ。お前がどんな無慈悲な現実だろうが」

 

怪物となった上条当麻の人間性が戻っていく。

 

「ひはは!!凡百の有象無象の手助けがあろうが、上条当麻という存在は、この老骨には勝てぬわっ!!」

 

運命は決まっている。幾ら足掻いても上条当麻という存在は、後もう少しというところで、無慈悲なタイムリミットのせいでクリスチャン=ローゼンクロイツの目の前で倒れる。その未来を銀の青年は世界の完全なる縮小模型で知っていた。

 

ゾゾゾゾゾゾ!!と凄まじい音を鳴り響かせて、クリスチャン=ローゼンクロイツの輪郭がぼやける。正真正銘の全力全開の本気モード。相手が全能の力を持つ上条当麻神浄討魔なら、それを上回る全能の力で押し潰す。

 

クリスチャン=ローゼンクロイツことヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエは、超絶者でもない素の状態でも『魔神』が使う『位相操作』と同じことが出来る達人の魔術師だ。さて、人間のままで『魔神』と同じ領域に入っている存在が神装術を使って、CRCという『補正』をかけたらどうなる?答えは簡単。『魔神』を超える実力者になる。しかも世界を壊さずに活動可能という出鱈目ぶりだ。

 

 

 

「醜い世界に押し潰されて、守りたかったみんなと一緒に壊れるがよい!!」

 

駄目押しにクリスチャン=ローゼンクロイツは、自身の分身が今も戦っているヘカーティア・ラピスラズリと『共鳴』して、さらなる『補正』と『力』を手に入れる。

 

『黄金』の魔術師達は、『魔神』の力を利用して、己の力に変えることが出来ると言う。ならば、全ての近代魔術の祖になったクリスチャン=ローゼンクロイツことヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエに出来ない道理などない!!

 

超絶者バフが乗った『魔神』がデフォルトで持っている世界改変と銀の青年自身が持つ世界改変能力が合わさって、神浄討魔を超える規模を持つ『従える力』をCRCは発揮する。全ての『位相』ごと世界が捻れる。歪む。曲がる。上条当麻達に向かって世界が倒れてくる。

 

だが、上条当麻を筆頭とした、自身に敵対する存在を、醜い世界の質量で押し潰すCRCの試みは失敗した。上条当麻神浄討魔に向けて、杖刀偶磨弓が主人の力が込もっている霊装の剣を素早く投擲して、造形術で出血死というタイムリミットを伸ばすのと同時に、アリスと埴安神袿姫による『補正』を少年が受け取りやすくなるように繋げたからである。勿論、超絶者になった『魔神』から送られる『補正』も受け取ることが出来るようになっている。

 

「なにっ!?」

 

事象の中心点がクリスチャン=ローゼンクロイツから上条当麻神浄討魔に切り替わったことで、世界が元の形に戻っていく。

 

「俺が脱線して、誰も助けられないって言うなら」

 

北欧神話のヨルムンガンドの力も宿っている透明な竜に少年は全力を込める。

 

「まずはその幻想をぶち殺すッッッ!!!!」

 

神浄の討魔の拳。それの直撃を、おもむろに顔面に喰らったクリスチャン=ローゼンクロイツは、今いる学区の外まで容赦なくぶっ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十二学区。

クリスチャン=ローゼンクロイツがこの世界に再誕した場所。

 

「ひ・・・・」

 

砕けたアスファルトの中心で倒れているが、銀の青年はまだ生きていた。

 

「ひはは・・・・・・・・。まだ終わってはおらぬ。この老骨、情念は未だ消えず・・・・・・故に立ち止まる理由はなし。リベンジマッチの開始じゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

だが、立ち上がろうとするCRCの行動を止めた存在がいた。

 

 

「無理なコンテニューはしないほうがいいわよ。CRCことヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエ」

 

倒れている銀の青年の側にいつの間にいた埴安神袿姫である。

 

「生きておったのか・・・・・・?埴安神袿姫・・・・」

 

ヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエは、何も抵抗できなかった。彼女に優しく触られただけで、胎児が母親の胎内にいるような安心感に包まれて、敵意や殺意が完全に消失していく。

 

「蘇っただけよ。そしてごめんなさいね。私の目的のためとはいえ、間接的に貴方の活動を邪魔して。でも安心して。私の活動が完全に遂行出来たら、貴方の目的も達成出来ると思うから」

 

ハニヤスの名前の由来の一つである黄土に変換される己の身体を冷静に観察しながら、ヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエは彼女に語りかける。

 

「この老骨が二度も失敗していたんじゃぞ?人として欠けていた超絶者埴安神袿姫としてはともかく、人間性が多少戻ってきた、今の『造形神イドラデウス』のお嬢ちゃんが出来るのかえ?」

 

「貴方と違って、背負っている偶像に押し潰されずにちゃんと己の目的を達成出来る」

 

自身の疑問に確信を持って自信満々に答える埴安神袿姫に対して、銀の青年は呆れざるをえない。

 

そして『薔薇十字ローゼンクロイツ』運動という偶像崇拝で勝手に作られた暴走する伝説との勝負に負けて、勝手に委ねられたCRCという偶像に押し潰された自身の過去を、世界の完全なる縮小模型で知った彼女の知られざる過去と勝手に重ねると、ヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエは、小さく笑った。

 

「この老骨のように夢半ばで散らないように頑張るんじゃぞ。『造形神イドラデウス』埴安神袿姫」

 

「ええ、頑張るわ。私が新しく造形した世界でまた会いましょう」

 

ヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエであった黄土を波邇夜須毘売神はにやすびめのかみとしての土を司る神としての権能でCRCの能力ごと、埴安神袿姫は取り込む。

 

 

今から、世界を大幅に変革する。クリスチャン=ローゼンクロイツとは違った、もう一つの脅威が人知れずに本格的に活動を開始しようとしていたのであった。

 




老骨はこれで退場ですが、一時的なだけです。出来れば、これからも登場させる予定です。
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