そのおかげで、完結させたもう一つの禁書小説で神浄討魔モードを出せなかった・・・。
『たすけて』『私たちを救済してください』『神様・・・・』
違うの・・・・・私は貴方達を真の意味で救済する神様ではないの・・・・・。完全に助けることなんて出来ないの・・・・・。
『貴方様は僕達を助けてくれる神様ですよね!?なんでもっと積極的に救済活動をしないんですか!!??』『たす』『神様ありがとう・・・・』『埴安神袿姫=絶対的な神。みんなも信仰するべきだ』『我らの袿姫様を崇めない不届き者に神罰が下る!!』『邪魔だ、貴様ら!!造形神の加護や寵愛を貰うのは我らだけで充分だ!!』『独占なんて許せないよ!!』『我らの女神様よ・・・・』
だから!!何度も言っているじゃない!!確かに埴安神の要素は入っているけど、厳密には本物の埴安神ではないと!!なんで・・・・誰も彼も私の言うことを聞いて信じてくれないの・・・・・。神様である以前に、輪廻転生の記憶を持ち越している、ちょっと変わった能力がある人間のはずなのに・・・・。
『・・・・?あなた様は我らの神様ですよ?なんで埴安神であることを否定するんですか?』『理想の神様という言葉は袿姫様のためにある』『本当に埴安神袿姫は凄いよ』『これが本当の「特別」なんだね』『造形神と比べたら、既存の神様なんてゴミみたいなもんだよ』『キサマはただの人間ではない!!全世界の人間達を狂気に陥れる正真正銘の邪神だ!!退治してくれる!!』『貴方様は存在するだけでこの世界の法則を塗り替える「異物」だと思います。助けてもらった恩を仇で返すようになりますが、死んでください。神様』
もうやめて・・・・・。お願い・・・・・誰か・・・・私を『特別』な存在として扱ってもいいし、埴安神袿姫として扱ってもいいから、この状況から助けてよ・・・・。
『馬鹿な奴・・・・埴安神を信仰しないで敵対するから、無様に死ぬ羽目になるのだ』『袿姫様を仇なす神敵を討ちましたよ!!褒めてください!!』『袿姫様が世界を管理したら、もっと素晴らしい世界が生まれると思います』『ぼく達のために存在する完璧で究極の偶像』『だいじょうぶだもん。埴安神袿姫に全てを委ねたら、どんな問題も解決するよ』
私は埴安神袿姫。ありふれた一人の女の子でない、みんなに望まれた『特別』な存在。この世界を救うべく、人間達の祈りの力で降臨した神様。さあ、造形神としての救済活動を始めましょう。
これは人々から神様として扱われた名も無きある女の子の過去の断片の記憶。理想の偶像になっていくまでの過程である。
「見つけ〼たよ。埴安神袿姫」
「あら、意外と遅かったじゃあない。ヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエと同レベルの領域に入っている達人の魔術師様だから、もっと早く私を見つけられると思っていたけど」
埴安神袿姫は自身の元に訪れてきた来訪者の二人組と相対していた。
「お前の行動速度という逃げ足が早くなければ、すぐさま見つけることができたんだよ。こちらもそれなりに苦労していたんだぜ?」
第十二学区にある『橋架結社』の領事館の庭園にて。アンナ=キングスフォードと饕餮尤魔は、そこにいる埴安神袿姫を遂に捉えることが出来たのだ。
「どうしてモ止まる気ハ✕のですか?」
「ええ、止まる気はないわ。望まれているからね」
即答。やると決めたらやる。今の埴安神袿姫はブレーキが取れた暴走機関車のように破滅への道筋でも全力で突き進むだろう。たとえそれが、思いやりから彼女を止めようとする存在でも邪魔だと言わんばかりに消し飛ばして都合の良いように造り変えるだろう。
「ところで饕餮尤魔。なんで貴方がそっちにいるの?」
「私に『設定』した『救済条件』を忘れたなんて言わせないぜ?」
『橋架結社』に所属する新しい超絶者と造形された饕餮尤魔の行動方針は変わらない。彼女は欲望関係で破滅しそうになる奴を救済する『設定』を忠実に守っているだけだ。だから、アンナ=キングスフォードと行動を共にして、埴安神袿姫を止めようとしているのだ。
「そうよね。饕餮尤魔にそう『設定』して造形したのは、私だったね。けれど、そんなに私が破滅しそうに見える?」
「見えるぜ。だからアンナ=キングスフォードと一緒に止めに来た」
「饕餮尤魔の言う通りです。己モそう思ってい〼」
これも即答。埴安神袿姫の活動を止めに来た彼女達の決意は硬い。
「まあいいわ。止めたければ止めてみなさい。だけど、貴方達が『橋架結社』の超絶者達に勝てると思って?」
埴安神袿姫がそう言うのと同時に、ダース単位でいる超絶者達がアンナ=キングスフォードと饕餮尤魔を囲むように何処からか姿を現す。
イレギュラーの存在ではない、レギュラー超絶者の一番の強みはアリス=アナザーバイブルや埴安神袿姫の存在ありきとはいえ、簡単に量産できるということだ。しかも個人で世界と戦えるレベルの魔術師が。
更に劇症型コタツシンドロームが埴安神袿姫とアリスの存在によって発生しているから、『共鳴』による影響を受けている超絶者達は『設定』を無視して動けるようになるという強化も受けていた。
いくらなんでもこれは、他の超絶者達と同じように『共鳴』による『補正』がかかっている饕餮尤魔やヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエと同じ達人の魔術師でもあるアンナ=キングスフォードでも、質を揃えた完全な数の暴力には勝てないだろう。
「やってみ✕ば、分かり〼✕よ?」
だが、二人の戦意は折れない。そのまま『橋架結社』の超絶者達との戦いの火蓋が切って落とされた。
『橋架結社』。その魔術結社は世界全体に大きく影響を与える組織である。アリス=アナザーバイブルのワガママと埴安神袿姫を筆頭とした超絶者達の救済活動のおかげで、世界の経済を動かす一つの国と呼べる規模になった魔術結社だ。
イギリス清教、ローマ正教、ロシア成教といった三大勢力が基本の魔術サイド、かつてこの世界に存在していたグレムリンといった魔術結社と同じように世界の裏側に潜みながら影響を与えていたとはいえ、その存在感は群を抜いて凄まじい。
実際に、薔薇十字団の一員であるアンナ=シュプレンゲルが『橋架結社』を表舞台に引きずり出して、クリスチャン=ローゼンクロイツを再誕させる計画を止めるために、『橋架結社』という組織をよく知るためにモデルケースとして真似て作ったR&Cオカルティクスという巨大IT企業が学園都市、アメリカ、イギリス・・・・等の色々な国を大混乱に陥れて、世界全体に影響を簡単に大きく与えたからだ。
日本との時差がざっと8、9時間があるイギリスにて。
深夜の静寂なる闇が民衆達の熱狂に包まれて消失していた。
『我らが造り出した神様を崇めよ!!』
『デウスなんてもう古いのよ!!今は造形神を信仰する時代よ!!』
『我らの生活を支えてくれて助けてくれた『橋架結社』の超絶者達こそが、この世界を支配する存在としてふさわしい!!』
『祝福しろ!!今宵をもって、俺たちの世界の「法則」は切り替わる!!人間達の祈りの力によって顕現した最新にして最古の神とも言える埴安神袿姫を軸としてぇ!!』
こんな風に群衆達が大暴走しているからだ。
既にコタツシンドロームという社会現象は学園都市の外に飛び出していた。劇症型コタツシンドロームという名前になって。
『魔神』も超絶者も超能力者も魔術師も。全てを超える存在であった、絶大な『個人』だったクリスチャン=ローゼンクロイツとは全く違う脅威。『群れ』による世界の破滅へのカウントダウンの流れ。
しかも埴安神袿姫がこの世界の人間達の祈りによって造形されたという出生をしているおかげで人間達の集合的無意識を伝わって逃れられない汚染を仕掛けてくる。感染スピードは大なり小なりと個人差があるが、よほどの『特別』な存在でない限り、誰も彼もが逃れることはできないだろう。必ず影響を受けるのだ。
二メートルもの長身に赤く染めた長髪、目の下にはバーコードのタトゥー、口には咥えタバコ。およそ聖職者と思えない出で立ちをしている、イギリス清教の神父であるステイル=マグナスは戦っていた。
誰と?敵は埴安神袿姫やアリス=アナザーバイブルを筆頭とした超絶者達と『共鳴』して、暴走するイギリスの全国民という名の魔術師達だ。
ブリテン・ザ・ハロウィンによる連合の意義やR&Cオカルティクスによる魔術の暴露という、民衆達が神秘、超常に触れる前身があったとはいえ、全員が『補正』によって、一流の魔術師と呼べる領域に押し上がっていた。
(これでは始末が追いつかないぞ・・・・R&Cオカルティクスもそうだったが、僕達の処理能力を完全に超えている!!)
ある民衆の一人が自身に放ってきた誰でも使えるような簡易的な炎の魔術をステイルは魔女狩りの王で相殺する。
我らが求めた理想の神様に信仰を捧げない者は、一旦死んで血肉を入れ替えて蘇ってこいと善意が込められた一撃だった。
実際に、本当に善意が込められているのだろう。超絶者達と『共鳴』している彼らは心底幸せそうな顔をしている。この幸福を味わえない存在は可哀想だ。仲間に入れて上げようと善意で襲いかかってくる。
まるでゾンビ映画のパニックシーンみたいだった。まだ染まっていない者を劇症型コタツシンドロームに感染している存在が、いかにして汚染させて、仲間入りとさせようとして動いてくるから。
止まらない。『橋架結社』に所属している彼女達の影響力はもう誰にも阻止することは出来ない!!際限なく世界に『拡散』する!!
「オイオイ!!これはどういうことだぁ!!」
魔術サイドや科学サイドといった勢力から距離を離しているのにも関わらずに大国になったアメリカでもある騒ぎが起きていた。
アンナ=シュプレンゲルの手によって『薔薇』の魔術師になって、上条当麻に倒された元副大統領のダリス=ヒューレインによる、現大統領ロベルト=カッツェとアメリカという国を狙った二度目のクーデターである。
「ダリス君。もう一回大統領の座が欲しくて、敗者復活戦を仕掛けてきたのか?」
「もう大統領の座は欲しくはありません。でもアメリカの外からやってきた移民や科学の問題を解決するために『橋架結社』と手を組んだのですよ」
ホワイトハウスをキトニタスの砂嵐で隔離したダリス=ヒューレインの瞳には黒い狂気が宿っていた。以前は憎悪と呼ぶのも生温い闇に染まっていたが、今度は違う。劇症型コタツシンドロームによる『共鳴』を受けているモノ特有の目だ。まともな思考をしてないのは誰の目でも分かるだろう。
「R&Cオカルティクスの次は『橋架結社』かよ。懲りないねぇ・・・・」
「何度でも機会がある限り、私は挑戦しますよ。合衆国や世界の問題を解決するために」
狂気に染まっているダリス=ヒューレインを見たロベルト=カッツェは肩をすくめて、上等なスーツの内側からショットガンを抜く。それを見た元副大統領も魔術ではなく、同じようなショットガンを取り出して対応することを決めた。
「頭を冷やしてやる。もう一回決闘しようぜ。ダリス!!」
「いいでしょう。今度は私が勝ちますよ!!大統領!!」
世界のどこか。
「遂に造形神が本格的に動き出したね。ネフテュス」
「そうね。娘々」
完全に青ざめた顔色の少女とチョコレート色の裸身を真っ白な包帯で覆い尽くした、長い銀髪の麗人が終わりゆく世界を眺めながら、埴安神袿姫のことを語っていた。
「けれど、造形神は凄いね。元々『魔神』とは異なるカテゴリーに入る『特別』な神様で、私達も知らない外の世界の要素が入っているとはいえ、ここまでの力を持つことになるなんて驚いた」
「アレが幻想殺しや理想送りのように祈りの力で生まれた神様ということを考えると、納得いくのでは?」
「そりゃそうだ。祈りの力は単体でもとんでもない結果を生み出す。世界中の祈りが造形神に集中していることを考えると、当たり前のことだ」
劇症型コタツシンドロームの影響を受けるのは『魔神』も例外ではない。アレイスター=クロウリーが『ゾンビ』の術式を解析して、魔術の神々のパラメーターを同時に改竄したように、埴安神袿姫の手によって超絶者になった『魔神』を伝わって、『魔神』達の『共鳴』の深度は進んでいく。そして、その力と祈りが造形神を強化する。
「「それにしてもどんな世界が造形されるのか楽しみ」」
第七学区の端にある学生寮。
当たり前の高校生でもある少年にとって、日常の象徴の一つでもある場所。皆と一緒に帰るべき我が家。そこで上条当麻達はクリスチャン=ローゼンクロイツ戦の疲労を癒やすべく、コタツに入ってゴロゴロしていた。寝正月を今度こそ達成するためのリベンジマッチである。
「終わるぜ冬休み。始まるぜ、三学期。マジか・・・・もっと家の中でゴロゴロしたいのに・・・・」
コタツの中に身体の大部分を突っ込んで、カタツムリならぬコタツつむり状態になっている上条当麻であった。『ドラゴン』、神浄の討魔としての力は、いつの間にか生えてきた幻想殺しのおかげで、無事に押さえ込まれている。おかげで怪物から人間にすっと戻れた。
「人間。可哀想だが、現実と向き合え。お前の冬休みは『橋架結社』の超絶者問題で潰れた。クリスチャン=ローゼンクロイツという、ひとまずの大きな問題は対処出来たが、そのおかげで学園都市に残っている『橋架結社』に所属する超絶者達がどう動くか予想できなくなった」
「そうだよ、とうま。私達が対処する問題はまだ残っている。特にアリス=アナザーバイブル関連の問題があるよ」
インデックスとオティヌスが上条当麻に問題はまだ残っていると提起してくる。だが、その姿には説得力がない。
上条当麻や三毛猫のスフィンクスと同じような姿のコタツつむり状態になっているからだ。顔もどこか全力でだるけっているように見えて、とてもとても、この二人が魔道図書館や北欧の魔神とは呼べないだろう。
そんな二人を見て上条当麻は、自分達を襲っている現状に危機感を覚えた。これは、コタツシンドロームと呼称されている社会現象と同じだ!!と。
どうして今までこの状況に疑問を抱いていなかったんだ!?今すぐにでもアリス=アナザーバイブルに謝りに行かなければ!!皆が話題にあまり出していなかった埴安神袿姫はどうなっているのか!?と心が叫ぶ。
『魔神』達にお墨付きを貰っている事象の中心点たる神浄討魔の特性か、世界の基準点たる幻想殺しのおかげなのか、コタツシンドロームという現象の影響から無事に脱することが出来た上条当麻が、内なる情念に素直に従って、コタツの中でゆっくりと寛ぐインデックス達をそのまま放って置いて、外の世界に通じる学生寮のドアを開けると・・・・。
そこには泥の海があった。
学園都市の姿形は最早ない。辺り一面を見渡してもあるのは泥、泥、泥、泥だけ。世界そのものが劇症型コタツシンドロームによる破滅で撹拌されて融けた挙げ句に、泥と化しているのか?
何故か世界に残っているのは上条当麻が住んでいる学生寮だけだった。しかしこの勢いだとそのうち呑み込まれるだろう。人間である少年には止める術はない。神浄の討魔と呼ばれる姿でも無理だろう。
数多あるハニヤスの由来の一つでもある泥が一点に集って、ナニカを造形していく。世界そのものを一つの材料として凝縮されて造られたのは・・・・・。
巨大な目玉と思えるような数km程の球体だった。
その球体の名前は時空因果律制御機構タングラム。魔法のランプのように願いを叶えてくれる夢のような機械。どこにでもあって、すべての世界をまたいでいて、でも、だからこそ、発せられる引力が大きい故に、一つの世界に留まることが許されないモノ。
だが、それはタングラムそのものではない。中身は丸っきり別物だ。異なる世界の理そのもの。『真実の剣』と呼称される力で満ちていた。
『真実の剣』。それは無理矢理、黒を白に、白を黒にすることで所有者の正しさを担保する絶対的な武力の塊。その本質はケルト、北欧、日本・・・・・それこそ世界中で語られている『正しい所有者の手にある限り、一度解き放てば自動的に飛び回って勝利をもたらす武具』である。
本来の持ち主の戦装束と化している『真実の剣』は、そんな生ぬるい性能をしていないが。
少なくとも世界全体を完全にぶっ壊し、不要なモノを取り除いて再び世界を作り直すという芸当ができることは確かだ。しかも所有者の意思を無視して、自立して勝手に動くことも可能だから始末に負えない。
埴安神袿姫は、紛い物とはいえ、それを造形術で造ってしまったのである。なんと、白き女王でもないのに『真実の剣』に『正しい』所有者と認められるという前代未聞の事態も起こして。
いくらなんでも、埴安神こと波邇夜須毘売神が時の天皇に加護を授けて、日本を統一させた天下を司る神としての側面があるとはいえ、こんなことがあり得るのか?もしかして埴安神袿姫という存在は、CRCという『補正』を貰っている時のヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエと同じように『魔神』という神格を超えた存在なのか。未踏級の領域まで足を突っ込んでいるのでないか?考えれば考えるほどそういう疑問が湧き出てくる。
だけど言えることはある。錦の御旗はここにあり。今、この瞬間から彼女の行動は全てが正義と認知されるようになったことだ。
「袿姫。世界を管理する新しい神様として新生しても、少女が知っている姿を見せてくれると約束してくれませんか?」
タングラムもどきの上で四人の超絶者が立って会話をしていた。埴安神袿姫と杖刀偶磨弓とH・T・トリスメギストスとアリス=アナザーバイブルである。
「・・・・・勿論。新しい世界でもアリスが知っている姿を見せると誓うわ」
嘘だ。
今からするのは、硬いサナギの中で幼虫が自分の筋や臓器を破壊して成虫にするための素材にするような古い自分から新たな自分を再構成するための一種の儀式だ。新しい世界で再構成される埴安神袿姫が前の彼女と同じだということを保証は出来ない。
H・T・トリスメギストスは、それをよく分かっていた。
・・・・思えば遠くまで来たような気がする。まさか、ここまで事態が大きくなるなんて。心なしか、アリスはともかく、埴安神袿姫の表情が不安に駆られているように見えるのは気の所為か?これはクリスチャン=ローゼンクロイツが再誕した時に不意打ち気味に放った閃光の影響かもしれない。本当にこのままでいいのか?このままだと、自分だけでなく、彼女達の距離も遠くなるかも知れない。
その気持ちを察したのか、杖刀偶磨弓が二人の主人の元まで動いた。
「袿姫様、アリス。無理をしないほうがいいと思います。」
彼女なりの心遣いだろう。その言葉には、今なら引き返しても大丈夫です。取り返しが付きますよ。という意味合いが込められていた。
「大丈夫よ、磨弓ちゃん。私なんかを心配しなくても問題ないわ。H・T・トリスメギストスも私達を心配して支えようとしてくれてありがとう」
埴安神袿姫が杖刀偶磨弓とH・T・トリスメギストスを引き寄せて抱きしめる。それは感謝の意思表示。
『アリス=アナザーバイブルより通達。これより、バージョンアップされた「ライブアドベンチャーズインワンダーランド」の変速カバラ式創作ブリッジ連結作業を開始します。対象は埴安神袿姫。これを未踏級や時空因果律制御機構タングラムと繋げて、アップグレードさせます』
埴安神袿姫が行った二人への感謝の行動が終わる瞬間。神も悪魔も自身の玩具に出来る存在なのに、他の存在と同じように『共鳴』して、極限まで出力が上がったアリス=アナザーバイブルの究極の辻褄合わせの魔術が発動した。
崩壊する世界を最後まで生き延びていた上条当麻は見た。
埴安神袿姫が『真実の剣』もといタングラムもどきと融合するのを。既存の世界が白を中心とした極彩色に塗り潰されながら、造形神を核とした新しい世界に変貌するのを。
この作品の超絶者埴安神袿姫はCRCという虚構に敗北して作った本人こそが嘘の存在にされたヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエやアナザーバイブルにされたアリス=プレザンス=リデル、周りからヒーローという偶像を押し付けられているように見える上条当麻、その他の超絶者達と対比させるようなキャラ設定にしています。