関係ないけど、とある魔術の幻想収束がサービス終了しますと告知されて悲しいです・・・・。
魔界の神の誕生を見届けた造形神が霊長園と呼ばれる異界で上条達と合流する瞬間、埴安神袿姫という超絶者を構成する過去が、サイバネティクスな壁に映し出される。
いつからだろう。自分が埴安神袿姫としてこの世界に転生していたということを自覚したのは。
もっと昔から埴安神として活動していたような気がするし、今、生誕したばっかりかもしれない。
この世界に存在する波邇夜須毘売神や東方Project世界にいる埴安神袿姫の記憶や要素が流れ込んでくる。霊格、魂の位階が違いすぎる!今までの自分が呑み込まれて、埴安神として幻想に染まりそうになる。
・・・・でも、そんなことはすぐ受け入れることはできた。だって輪廻転生というモノはそういうものなのだから。畜生として生きた自分、人間として生きた自分、天人として生きた自分。色々な人生を経験してきた。けれど、生物としても全く異なる自分を客観視して同じ自分と言いきれる生物がいるのだろうか?少なくとも私には完全に同一視することは無理だった。
今回の人生も同じことだ。これまで別の生物になるだけ。そう、別の生物に新生するだけ。それに輪廻転生とは神様や仏様になる行為でもある。埴安神袿姫という神様になって活動することに関してはまだ早いと思うが、そういう運命だと思おう。
見通しが甘かった。魂が埴安神という色に染まっても、最低限の自分は残ると考えていた。絶えず『たすけて』『私たちを救済してください』『神様・・・・』という、世界中の人間達の祈りや信仰が常に私に届いてくる。その願いに応えて『救済』活動するたびに人々が望んだ理想の偶像と化しているような気がするし、周りも埴安神袿姫という神様が持つ影響力にあてられて染まって暴走していく。貴方達の神様でもないといくら直に否定しても駄目だ。私自身でも周りを止められない。埴安神であるけど、造形神そのものでないから、完全に『救済』するなんて無理なのに・・・・。
もう疲れた・・・・・。活動をするのを辞めよう。
けれど、世界は逃がしてくれない。造形神として振る舞うことを求めてくる。埴安神袿姫らしくない行動をすれば、自分や周りに伝わる汚染という名の影響力を弱めることはできたが。あくまでもそれだけだ。
そして、埴安神というキャラが持つイメージが大きくズレて、完全に別キャラと化してしまうような解釈違いとも言える行動をとることは許されないような気がする。皆に祈られて、望まれて誕生した偶像はそれらしくしろということか。私もそう考えてしまう時点で手遅れなんでしょう。
死という逃亡は許されなかった。私を邪神や悪魔扱いする、ある意味正しい人間達に無惨にも殺されても自然に復活してしまったから。
周りに迷惑をかけない、どこか誰もいないところに行かないと・・・・。
遂に理解してしまった。私は偶像崇拝という概念に密接に関係があり、自分達に都合の良い神様を求める人間の祈りの力が発生する限り不滅だと。サンジェルマンという、ある意味での不死を実現させたことができた魔術師と出会った時に感じた親近感はこれか。
・・・・最初は造形神として、皆を助ける神様として活動するのが楽しかったと思った。崇められるのも気持ちよかった。けれど挫折してしまった時点で神様失格なのだろう。本物の埴安神袿姫なら・・・・皆を上手く救済することができたはずなのに。
・・・・初めて私を『特別』ではない。埴安神袿姫という神様でない、一人の女の子として扱ってくれる人間と出会えたような気がする。本人は神様として扱っていますよと発言したが、私をただの女の子として扱っているのが丸わかりだ。造形神によって発生する影響をあまり受けなかった貴方の『一般論』や『当たり前』を大切にする価値観にどれだけ救われたことか。
こんな日常がいつまでも大切に続きますように。
なんで忘れてしまったのだろう。存在するだけで良くも悪くも周りに影響を与えて、厄介事を呼び込んでしまうという事実を。迷惑をかけてごめんなさい。
逃亡生活の最中、アリス=アナザーバイブルという少女を保護した。ああ、彼女という存在は私と同じだ。押し付けられたのだ。そういう偶像で在れと。
私のせいだ・・・・。全て私のせいだ。造形神としての責任から逃げて、一時的にとはいえ、ただの女の子として暮らしたのが悪いんだ。文句を言わずに、造形神として、機械的に『救済』活動という役割をこなしていたら、こんな悲劇が発生するのを事前に防げたかもしれないのに!!
この世界は絶対的な個が世界を振り回す世界ではあるけど、暴走する群衆の力が個人を何食わぬ顔で踏み潰して世界を壊すこともある。そのおかげで彼のような『一般的』な価値観を持つ人間やアリス=アナザーバイブルのような存在が割を食う。
完全無欠な、埴安神袿姫という衣を纏って、全部を無理矢理でも、管理して造り変えなければ。私が造形する『しあわせの世界』で!!
叫びを聞いた。
造形神になった。なってしまった名前が無い少女の過去から発せられた嘆きを、慟哭を、咆哮を、上条当麻は余さず見て、耳にした。
究極で欠点が無いかと思わせる神様は上条が見た多くの魔術師達のように挫折を経験していた。
目的のためにあえて魔法名を捨てた、あるいは元から存在しない魔術師。神や悪魔と言った、ただの人間の手では余る超越存在になった者。同じように目的のために己の命や魂を投げ捨てて昇華した、ある意味哀れな魔術師とも言える『魔神』とは似たようで異なる存在。魔術サイドのもう一つの頂点。それが超絶者。
これは上条当麻という主人公とインデックスというヒロインが辿ってしまったIFみたいなものなのだろうか?
特に埴安神袿姫と深い付き合いがある、H・T・トリスメギストスになってしまったある少年や自称アレイスター=クロウリーの師匠によってアリス=アナザーバイブルにされたアリス=プレザンス=リデルの過去を知ってしまってから、余計にそう思わずにいられない。
「そんなに気負わなくてもいいわ。所詮過去は過去。既に過ぎ去った事象に過ぎないし、この過去がないと今の私が成立しないから、それでいいのよ」
埴安神袿姫は気にしない。隠された過去を他者に暴いても笑顔のままだ。既に割り切っているのだろう。薔薇十字、クリスチャン=ローゼンクロイツを生み出してしまった己の過去と向き合った時のヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエの態度とは対照的だ。
「ところで磨弓ちゃんは私の過去に対してどう思う?」
ミサカクローンの存在が世界に公表されたことで、同じような真似をしようとした学園都市の外にいる科学者達によって造られた犠牲者であり、救いの声を聞いた埴安神袿姫という閉塞した状況をぶち壊す
「本当に感想を言ってもよろしいのですか?」
主人の一人である埴安神袿姫の過去を、上条当麻と一緒に無言で見ていた杖刀偶磨弓が初めてこの場所で口を開いた。
「いいのよ。なんのために意見や勝手な行動をすることを許している機能があると思っているの?その気になれば、いつでも自由意志を奪い取ることができるのよ?」
「では正直に言います。クリスチャン=ローゼンクロイツという虚構に敗北して、邪悪な聖者CRCとして振る舞うようになったヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエと対比している関係だなと思いました」
「正直でよろしい。よしよし」
申し訳なさそうな表情で、正直に、覚悟を決めて、主人に感想を言った杖刀偶磨弓に返ってきたのは、正直に言ったことのご褒美である、埴安神袿姫に頭を撫でられるという行為であった。
その行動にはアリスに向けられたのと同じ愛情、母性が込められていた。どうやら埴安神袿は杖刀偶磨弓を思ったよりも溺愛しているらしい。
「磨弓ちゃんの言う通りに私もヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエの境遇とも似ていると感じていたわ。そう考えると、とっくに和解できているけど、一回殺し合いに発展してしまったのがとても残念なことだわ」
そう、埴安神袿姫という超絶者はクリスチャン=ローゼンクロイツことヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエと共通点を持っていた。世界や大衆を狂わせて、真面目すぎる故に全て自分のせいにして、責任を取るための本人なりの一種の贖罪という活動していたという共通点を。
ある意味では埴安神袿姫を名乗っている彼女は色々な超絶者達と対比できる存在。超絶者を代表する超絶者なのだろう。
「磨弓ちゃん。上条当麻と二人きりで話し合いという対決をするから、この異界から離れてくれる?」
「分かりました。袿姫様」
万物の摂理は我が手中にあり、今の埴安神袿姫は何の行動も起こさなくても空間そのものに干渉して自在に操れる全能性があった。
もはや何でもありな拡大解釈全開の造形術によって造られた空間の黒い切れ目を通って、杖刀偶磨弓が霊長園という神域から退出する。
「それに・・・何回も言っているけど、貴方も超絶者としては似たもの同士ね。記憶を失う前の上条当麻という理想の偶像を被って行動している上条当麻」
「確かにそういう面では俺もアンタの言う通りに超絶者かもしれないな」
記憶を失う前の上条当麻をなぞる今の上条当麻やウィンザー城で対決したもう一人の自分。上条当麻のガワを被って『誰も取りこぼさずに救済する』という行動原理をなぞっていた神浄討魔も埴安神袿姫が言った通りに超絶者の資格を持っているのだろう。しかも、サンジェルマンによって一時的に魔術師になったこともあることを考えると更に超絶者適性が上がる。
「で、元の世界を造形させるに足る、私を納得させるだけの理由はできたかしら?」
「ああ、できたよ。もう一回だ。もう一回だけでもいい。埴安神袿姫、ただの女の子として、元の世界でもう一回生きてみないか?これが俺の元の世界に戻りたい理由だ」
その答えを聞いた埴安神袿姫は呆然とした表情を見せた。
「それだけじゃ納得いかないわ。それに・・・・役割を投げ出して責任から逃げ出すなんて悪いことだと思わない?」
この神様は同じだ。世界を救う力を持っていたために世界大戦を引き起こしたフィアンマや世界のための終焉をもたらそうとしたコロンゾンと。今の彼女は世界のために、己に定められた『役割』に忠実な機械的な神様になろうとしている。
そんな上条の考えを裏付けるように霊長園内部の壁にアップグレードしすぎて埴安神袿姫という姿を崩して、超絶者として破滅して、文字通りの機械仕掛けの神というプログラムになった。もしもの未来の女の子の姿が両者に見せつけるように映し出される。
この神域は埴安神袿姫が完全に掌握している絶対的な支配領域。誰にも干渉できない。できるとしたら・・・・彼女と同じように未踏の域に至った存在と自分から表にさらけ出す事で大きな世界全体に強く干渉することが出来て当たり前と言われる規格外の領域に入っている達人のみ。
『願い通りに埴安神袿姫のもしもの未来を上映するのを手伝ったわよん。これでいいかしら。アンナ=キングスフォード?』
『ええ、問題あり〼✕。協力ヲして貰ってありがとうござい〼』
自身の支配領域に干渉されても埴安神袿姫は何も言わない。今の自分を形作った世界のために、人間達のために、自己が完全に失われる未来に至ってしまうことくらい、覚悟はできている。
「いいんだよ。逃げ出しても。埴安神袿姫という女の子はもう一人じゃあないんだろ?俺もアンタのわがままに付き合ってやるし、世界を敵に回しても、迷惑をかけてしまっても、一緒に戦ってやる」
だけど、埴安神袿姫の成れの果ての未来を見た上条当麻はそうはいかない。何故なら、かの少年の行動原理は・・・・。
「それにな・・・・俺は!!自分より不幸な人間なんか一人も見たくはねえんだよ!!例え、それが神様として扱われる女の子だろうが!!文句があるのか!!埴安神袿姫。アンタには元の世界でただの女の子として、もう一回暮らしてみることにチャレンジさせてやる。これが俺の出した答えだ!!」
法の書の汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならんという思想をその身で体現している、ある意味、世界で最もわがままで自由な偶像だから。
「いいだろう・・・・。ならばこちらもわがままを貫き通す。波邇夜須毘売神として、埴安神袿姫として、造形神として、超絶者として、魔術師として、一個人として、貴様が心折れて諦めるまで全力で戦ってやろう。難易度は勝てるわけがないと思わせる
話し合いと言っても、両者に譲れないモノがあるから、結局は勝負事に発展する結果になる。上条当麻だけでなく、埴安神袿姫もエゴが強い存在で、彼女の中には少年も超絶者としての『救済対象』に入っているから。
相反するテーマを体現している両者のぶつかりあいと言えば、聞き覚えがいいが、これは意地と意地のぶつかりあい。どちらがわがままを相手に通すのかという勝負。それだけだった。
霊長園と呼ばれる彼女の世界。不可侵の神域の内部が全体的に赤を中心とした警戒色に染まっていくのと同時に、全力全開、正真正銘の
領事館の時とは比べものにならないレベルに達した神威の嵐の中で心を強く保ちながら、上条当麻は右の拳を固く握りしめて、戦闘態勢に入る。
これより少年が相対するのは、クリスチャン=ローゼンクロイツという薔薇十字伝説の化身と似たような造形神埴安神袿姫という異界の『法則』そのもの。偶像という概念そのものに昇華した存在。最早ただの神の領域にあらず、その身は未踏の域にあり。
不特定多数の人々が持つ祈りの結晶体とも言える
埴安神袿姫に付き従っている『ドラゴン』に頭を噛み砕かれた。
いや、それはそもそも戦闘と呼ぶことも烏滸がましかった。蹂躙。そう蹂躙だ。
百、千、万、億、兆・・・・・・・。数えることも億劫になることになるほど、埴安神袿姫との戦闘を繰り返した上条当麻という人間は死に続けて、彼女の手によって蘇ったと思うと、また挑んで死ぬことを繰り返していた。
人は神やそれに値する存在と闘争するものでない。ただの人間は神様と呼ばれる超常存在、上位存在に絶対に勝てない。そんな残酷だけど当たり前な事実という一方的な殺戮が展開されていた。
『魔神』オティヌス戦の時でも分かっていたではないか。しかも埴安神袿姫には精神的
ただ、少年にもそれは適用されている。造形神が上条の精神の消耗をわざわざ防いでいるのだ。同じ土俵に立たせるという優しさからではない。精神が万全な状態の上条当麻での負けたという声を聞くためだ。
「・・・・・・・」
ひしゃげ、切断され、叩き潰され、引き裂かれ、爆散され、散り散りに散らばって霧散した。
上条当麻は一度だって勝てない。拳を埴安神袿姫に届かせない。
だがそれだけだ。バージョンアップした
それでも、神浄の討魔でも埴安神袿姫には敵わないだろう。同じ全能でも偶像の理論や造形術で時空因果律制御機構タングラムや未踏級がいる領域に手を届かせた造形神とは、地力が違いすぎる。
一撃でいい・・・・。上条当麻という存在が一撃でも拳を届かせることができたら、彼女は負けを認めるだろう。少年は確信を持って、絶対的な神様に戦いを挑む。
事実、それは正解だった。埴安神袿姫は、本当に一撃が届いたら負けを認めると上条当麻に対して考えていたからだ。
死んで覚える。上条当麻は相手の思考や戦闘パターンが分かる領域にまできていた。・・・・ただ、それは埴安神袿姫も同じだ。
達人の領域に入った一魔術師と波邇夜須毘売神しての合わせ技。埴安神は見方を変えたら、水や風や炎も司る性質を持つ神であることと拡大解釈したことで生まれた、別世界の『法則』そのものと言える純粋な四大属性の魔術による攻撃。
我々が生きている
炎が上条当麻を焼く、風が体を粉々になるまで徹底的に切り裂く、霊長園を埋め尽くすほど湧いてきた水が溺死させる。土の中に埋もれさせて窒息死させる。
『魔神』オティヌス戦で使用した、相手の戦闘パターンや癖を分析して、シューティングゲームで動きや弾幕の特徴を見抜いて、ボスキャラを攻略するような上条当麻の戦法は、相手も使ってくる。つまり、戦闘による経験の蓄積は埴安神袿姫にも適用されている。両者の差は縮まらない。
しかも埴安神袿姫には龍神という肩書きを持つ炎のオーラの形をした『ドラゴン』がいるから、ただでさえスペック差があるのに、その差を更に突き放すように実質二対一の戦いを上条当麻に常に強いてくる。
「・・・・お互いが『理解者』と呼べる領域まで熟成されたわね。領事館の時に思っていた願いの一つがこんな形で叶うとは思わなかった・・・・。だがな、神浄の討魔を解放しないということはどういう了見だ?何故全力を出さない?」
不敬だぞと言いたいくらいに露骨に不機嫌な顔をして口調を厳しくしている埴安神袿姫を目の前に上条は考える。右腕から巨大な竜を出現させて彼女と戦うのは正しいことなのか?
「そちらが『ドラゴン』を使わないなら、これで無理矢理勝負を終わらせることにします」
埴安神の手が自身の側にいる『ドラゴン』に向かって動く。
「龍とは蛇であり、蛇は鞘でもある」
『ドラゴン』の体に埋まった埴安神袿姫の手が引き抜かれるのと同時に太陽の輝きを遥かに超える凄まじい光を放つ一振りの剣が姿を現す。
「その本質は剣の摘出もとい製出」
日本神話に詳しい人が埴安神の行動を見たら八岐の大蛇を討伐した
ただし、その剣は三種の神器の一つの草薙の剣そのものではない。最強の未踏級である白き女王が所有する『真実の剣』だ。埴安神袿姫は造形術で造った『真実の剣』そのものを『ドラゴン』に収めていたのである。
「この剣で殺した後に美しく造り直してやろう!!」
これは
『ええい!!もう見てはおれません!!』
女性のような、しわがれた老人のような矛盾した声が上条当麻の頭の中から聞こえた。のと同時に、何故か出力が急に上がった
変化が起こったのは
凄まじい勢いでショッキングピンクとエメラルドの外殻が上条の体を呑み込んで、有翼のトカゲを形作っていく。
これはまさかあの時の・・・・。
『若造が考えている通りよ。この
上条の頭に響いてくる声の主の正体はクリスチャン=ローゼンクロイツを作り、
『ドラゴン』を出さないで、埴安神袿姫と戦い、殺され続けた少年の姿を観測し続ける内に、じっとしていられない気持ちになって介入してしまったのだ。
神浄討魔という安易な力に頼らずに
「ヨハンなのか・・・・?」
少年は脳内に映し出された、声も姿も喋り方もがらっと変わったヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエの現状に驚いていたが、魔界の神はそんなことは気にしない。
『この
そもそもヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエは一度目の生も二度目の生も悪の聖者と振る舞って活動していたが、その原動力は、自分がしでかしてしまった事の責任を取りたいという考えがあった。つまりは他人の幸福を素直に願うことができる性格の持ち主、本来の意味での聖者に足りる資質を持つ人間であった。
『一般的に考えて、袿姫様にはもう一回女の子として過ごさせて貰おうとこの行動をすることにしました』
『トリスメギストス殿と同じ考えでこの杖刀偶磨弓もこの行動に出ました。袿姫様に対する裏切り行為になりますが、お許しを』
『繋がる力』によって、少年は埴安神袿姫と戦闘が成立する領域まで押し上げられていく。
一部の声は『共鳴』によって埴安神袿姫にも届いていた。そして・・・・彼女は目の前の光景を見て柔らかい笑みを浮かべていた。
こんなにまでただの女の子として生きて貰ってほしいと願っている存在がいたなんて予想ができなかったのだろう。
そんな、嬉しいという感情を表す笑みだった。
「埴安神袿姫・・・・。これほどまでにアンタを思っている人達がいるんだ・・・・。だから・・・もう一回女の子として生きてみよう!!」
「分かったわ・・・・その祈りがこもった拳をこの偶像に届かせることができたら、もう一回だけ、元の世界で女の子として生きてみましょう。ただ、届かせることができなかったら。
こうして、一柱の神様の行く末を決める最後の戦いが始まった。
最後の戦いは霊長園の外、摩天楼のビルが見渡せる場所、前方後円墳が見渡せる上空で行われた。
埴安神にとって、完全に有利な
『若造。埴安神袿姫は輪廻転生を経験して神になった転生者でもある。つまり魔神「僧正」と同じ六道交差の術式を持っていると考えたほうがいい。今の彼女には
霊長園の壁に作られた大穴から抜け出た上条当麻の後を追いかけてきた埴安神袿姫が先に動く。
それは渋谷のアラディア戦の時に見せたモノと違って遥かに質や量がアップグレードされていた。
自動追尾してくる真球の姿をした四大属性の怪物達が『ドラゴン』になった上条当麻に襲いかかってくるが、背中に生えている翼の一つが先割れスプーンの形状になると
『守りに関してはあまり考えるな。こちらがある程度、受け取ってやる。限界はあるけどな』
饕餮尤魔の声がした。
『私の三倍率の装填なら限界を無くすことができるわよ?』
アラディアの声がした。
埴安神袿姫が流星の如く降ってくる、美しい星々にも、古墳のような姿にも見える光弾の弾幕を展開するのと同時に。
線形を交差したような、網の目を形成するレーザーも展開した。全方位から襲ってくるこれで上条を囲みつつ、流星のような弾幕で押し潰すつもりだろう。
だが・・・・避けれる!比類なき脚力を持ったことで反応速度が上がった、今の
翼の色を黒に変えた
『凄いだろ!?私の空戦能力!!』
驪駒早鬼の声がした。
背中から妖艶な蝶の羽を伸ばし、カマキリの両腕を持つ、いかなる傷も受け付けない
『一般的に考えて弱点が無ければ作ればいいのです』
『我が名は2ndサーガ、正規の北欧神話に登場しない魔術をさも当然のようにいくらでも付け足せる架空神なり。どんな存在も死の運命で破滅させてあげよう』
その埴輪は竜の血を浴びる、不死の河に浸かった英雄達のような弱点を青年執事の魔術によって斬れ味として付与されたと思うと極大の死の呪いで弱点を突かれて壊された。
・・・・あるいは巨大な歯車と無数の火砲に彩られたカラクリ細工の
『この埴輪は絶大な破壊力を持つ飛び道具で攻撃してきますが、一度に倒せるのは狙いを付けた対象のみ。対処法として上条当麻と思わせるデコイを作りましょう!ムト=テーベ殿!!』
『分かった』
杖刀偶磨弓とムト=テーベが協力して造った
・・・・あるいは、耳元に鰓を、手の指の間に水かきを、足首に尾びれを生やし、海洋生物の王を遥かに超える巨大化で持って押し潰す
『巨体と神性による比例関係。だが・・・・幾ら表記不能桁単位まで肥大化しても私の魔術の前では無意味』
創造と運命を司り、あえて記載漏れをすることで対象を自由に消すことができる超絶者ヴィダートリの魔術によって巨大な神様と言える埴輪は一欠片も残さず消失した。
・・・・あるいは、足元に四方八方に広がる根があり、全身各所から自ら松明のように燃やして一層咲き乱れる豪華絢爛な
『「トータルコートシロップ」散布完了。激甘な愛情で眠らせてアゲル♡』
『吉弔八千慧といい!!花束のブロダイウェズといい!!非物理攻撃が得意な超絶者はわらわ一人で充分ばい!!』
『勝手に対抗心を燃やしている場合ですか。ボロニイサキュバス』
火炎と爆発、火の猛威の神格の化身の埴輪は三人の超絶者の非物理攻撃で無力化されて鎮められた。
今の上条当麻は超絶者達の魔術を全部使える、いや・・・・『共鳴』によって繋がっている超絶者達が少年の身体を通して術技を放出してくると言った方が正しいか。そういう体質になっていたのである。
能力者が魔術を使う際の副作用?そんなのはアリス=アナザーバイブルが使用する究極の辻褄合わせの万能の魔術である『ライブアドベンチャーズインワンダーランド』の前では無いに等しい。
自身の手札が次々に上条当麻達に攻略される光景を見ても埴安神袿姫の表情は変わらない。相変わらず余裕をもって笑顔を浮かべて歓喜していた。
「夢のような現実だわ・・・」
埴安神袿姫が纏う雰囲気が禍々しいものになっていく。常に放出している神威の質は荒魂や祟り神に近しい物に変質したと思うと、辺り一面を埋め尽くす弾幕にそのまま変化した。
『あらゆる悪魔や邪神の概念をその身に纏うと同時に神威を弾幕に変化させましたか。造形術や偶像の理論で本来とは違う性質も付け加えられていますね。これはもう一つの
『いつから熱血系キャラになりましたか?超絶者神綺、いや・・・ヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエ。キャラを崩しすぎて、ママ様はドン引きです』
神綺という名前を持つ魔界の神になったヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエが埴安神の術技を分析、解析したのと同時に
この世全ての悪、邪悪そのもの言えるくらいの禍々しくも美しい弾幕が全て消し飛ぶ。
宇宙開闢の炎を目眩ましにして、一筋の流星の如く上条当麻が埴安神袿姫に拳を届かせようと近づくが・・・・。
「上条当麻ならこう近づいてくるよね」
長期に渡る戦闘経験の蓄積で少年の行動を読んでいた埴安神袿姫に簡単に対処された。
ショッキングピンクとエメラルドの外殻を持つ有翼のトカゲが炎のオーラの『ドラゴン』、埴安神に付き従っている龍神に受け止められたと思うと噛み砕かれる。
(後は人間に戻った上条当麻にトドメを刺すだけ・・・!?いない!!??)
戦闘経験の蓄積で上条当麻の行動が読めるようになったと言ってもそれは一人の時の上条当麻の行動である。みんなと協力している時の上条当麻の戦闘パターンは彼女は完全に読めない。
その結果、身体のコントロールをヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエに一時的に任せた少年の行動を彼女は読み違えたのである。
頭上に影が指す。
「・・・・埴安神袿姫」
見上げるとショッキングピンクとエメラルドの『ドラゴン』から、ただのありふれた高校生に戻った上条当麻が
「もしもアンタがただの女の子として振る舞えない、元の世界では暮らせないとずっと思っているなら・・・・」
すぐ近くまで迫りくる上条当麻の拳に対して
上条当麻という人間にとって一番恐ろしいのは、凄まじいフィジカルの持ち主から繰り出される格闘。だから・・・・。
「ッ!!??」
一度握り込んでいた拳を、ただ開いた。
掌の中にあったのは『ドラゴン』の外殻になっていたショッキングピンクとエメラルドの欠片。それを、五指で弾くように飛ばしたのだ。目潰しで埴安神袿姫の行動を遅らせるために。
突然の目潰しで一瞬だけ隙を見せた
「まずはその幻想をぶち殺すッッッ!!!!」
ゴッッッッ!!と、鈍い音が炸裂した。
上条当麻の右拳が、埴安神袿姫の頬骨を捉えてめり込んだ音だった。
学園都市、第十二学区にある『橋架結社』の領事館でパーティーが開かれていた。
「このケーキ美味しいんだよ!!」
「そうですし!!」
埴安神袿姫主催のケーキパーティーだ。
このパーティーにはアンナ=シュプレンゲル含む『橋架結社』に所属していた超絶者達だけでなく、上条当麻やオティヌスやインデックス等も招待されてケーキを食べていた。
いつも着ている服装とは違う、クッキング用の服装に着替えてケーキ作りを楽しんでいた埴安神袿姫に上条当麻が話しかける。
「埴安神袿姫。神様ではない、ただの女の子として気負わずに活動するのは楽しいだろ」
「勿論、貴方の言う通りに楽しいわ。後、
どこにでもいる普通の女の子らしい笑顔を見せて感謝をしてくれた埴安神袿姫を見て、上条当麻は安心した。
ただ、残った疑問があった。元の世界に戻ったのがいいが、学園都市で騒ぎを起こした『橋架結社』関連の問題の跡が綺麗さっぱりに無くなっていたから。
埴安神袿姫曰く改変したつもりはないようだ。だが、それでも元の世界と言えることは確信できる。あの騒動の記憶は上条当麻や超絶者達を筆頭とした一部の人間しか覚えてないけど、まあいいだろう。深く考える必要はない。これで『橋架結社』関連の問題は終わったのだから。
「それで『橋架結社』の今後はどうなるんだ?」
「『橋架結社』は、元々はアリスのために創設した魔術結社。だから、アリスがいる限り存続し続けることにします。ただし、私達の『救済』活動の規模は小さくなりそうだわ。だって、世界中の人間達が不幸を無くそうと積極的に助け合う未来が近い内に訪れると確信できるんだから」
学園都市内にどこにでもあるような路地裏に二人の女性がゴールデンレトリバーの目の前で話し合っていた。
「アンナ=キングスフォード・・・・。私はこの事態に役に立てたのだろうか?」
「何ヲ言っているノですか?アレイスターハちゃんト役ニ立ち
そこにいたのは、アレイスター=クロウリーとアンナ=キングスフォードと木原脳幹の三人?組であった。
「さあ、己ト一緒ニ『橋架結社』ノパーティー会場ニ向かい
「私にはその資格がないッ!!だからっ、引っ張らないでくれ!!女史!!」
無理矢理『橋架結社』の領事館に通じる道を歩かされる友の『人間』の後ろ姿を見た木原脳幹はアンナ=キングスフォードにバレないように煙草を口に咥えながら、ボソッと呟く。
「これもロマンかな・・・・?」
その二柱の超絶者達は魔界、地獄と呼ばれる異界にいた。
「ヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエ、それとも神綺と言いましょうか?『橋架結社』が学園都市に対して起こした問題を大多数の存在が違和感を持つことなく自然に消去して改変したのは貴方ですよね?」
「そうですよ。あなたの言う通り、この
赤い髪の女性が銀の髪の女性と仲良く話している。
「しかし、着こなし慣れたクリスチャン=ローゼンクロイツの皮を再び被らないのですか?このままでは神綺としての動きが段々と定着してしまいますよ?」
ヘカーティア・ラピスラズリの質問に魔界の神となったヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエが答える。
「このままでも問題はないです。この
『
「・・・・・幸せになれよ。上条当麻、埴安神袿姫。そして私の子供とも言える『
その言葉を最後に世界を救う聖者ならぬデウス・エクス・マキナとしての働きをした神綺になったヨハン=ヴァレンティン=アンドレーエはヘカーティアと一緒に地獄、魔界の最深部に消えていった。
途中からアドリブ全開で書いていましたが、とある偶像の造形神。これにて完結です。
読んでくださりありがとうございました。
そして色々なキャラを盛ってインフレさせてしまったが、後悔はない。