そしてプロットがあっても勢いで書いて、その物語の次の話を考えるのは未来の自分に任せるというライブ感で書いています。
だから更新は安定しないモノ、不定期更新と見てもらってもいいです。
唐突だが上条当麻は死んだ。
三倍率の装値された魔女の閃光を幻想殺しで防ぎきって、閃光で壊れた建物の外壁から、上条当麻達が今いる場所に来て襲撃してきた魔女達の女神アラディアをボロニイサキュバスと一緒に戦って撃退したと思ったら、何の気配もなしに、いつの間にか、唐突に現れたとしか言いようがない埴安神袿姫に上条当麻は背後を取られて、埴安神の彫刻刀に心臓を貫かれたのである。
「埴安神袿姫!おぬし、いつの間に!?」
そう、ぞぶっっっ!!!!という音と一緒に、口と貫かれた場所から勢いよく出た血で全身を染めて、体から彫刻刀ごと飛び出てきた。造形に関わるモノとは思えない程、美しい埴安神袿姫の細い手を見ながら、上条当麻は死んだのだ。
ボロニイサキュバスの助けは間に合わなかった。アラディアとの戦いでズタボロとも言える体になる程、疲弊していて、動けなかったのである。
アラディアに同じような殺し方で2回殺されたのを含めて、埴安神袿姫に殺されたことで、今日で三回も、上条当麻は死亡したのである。
流石に魔神オティヌスとの戦いというループで繰り返された上条当麻の死亡回数には及ばないが、それを除いたら、この日は上条当麻が短い時間で連続で死亡した最も不幸な一日とも言えるだろう。
12月31日の年末の日、出稼ぎバイトの為に行った渋谷の地で、その命を散らし、上条当麻は死んだ。
上条当麻、享年15歳。まだ学生で、青春真っ盛りの人生を送るはずの人間。失うには惜しい若い命だった。
しかしそれは、分かる人が傍目からそんな目にあっている上条当麻を見ると、死の運命が上条当麻に訪れて、貴様はここらで死ぬ運命だ。と宣言しているように見える為、上条当麻がここで死ぬのは当たり前の結末とも言えるかもしれない。
「『旧き善きマリア』!坊やの右腕をぶった切るからまた『復活』を実行してくれ。わらわが死んでもかまわん!!」
アラディアとの戦闘場所になった、大型商業施設施設のホットスパのタイルに、血まみれになって倒れていく上条当麻の姿を見て、『旧き善きマリア』の『復活の調合法』をボロニイサキュバスが自身の死と引き換えに、上条当麻に使って、蘇らそうとした。
しかし、幻想殺しやドラゴン等の体に色々宿している特殊な人間とも言える、上条当麻の復活で、何故、ボロニイサキュバスが死ぬことになるのだろうか。
『復活』の奇跡が死者の蘇生で生者が死ぬ等価交換だったら、埴安神袿姫に殺される以前に、魔女達の女神アラディアに2回も殺された上条当麻を同じく2回も『復活』させた時に、ボロニイサキュバスは既に死んでなきゃおかしいはずだと思われるだろう。
それは『旧き善きマリア』の『復活の調合法』という奇跡の種にあった。その種はすでに死亡した人間の傷を全て塞ぎ、対象の肉体を心停止ゼロ秒まで戻すという、『旧き善きマリア』本人曰く、退屈でありふれた奇跡だ。
しかし、それだけでは死者は『復活』出来ない。どれだけ丁寧に肉体を修繕しても、中身の血が足りなければ新鮮な肉の塊が、再びゆっくりと腐敗していくだけだ。
そう、死んだ人間の肉体が朽ちて自然に帰るのが当たり前のように━━━━
だからボロニイサキュバスは、上条当麻『復活』条件を満たす為に、自分の血を彼に輸血した。上条当麻が流した血の代わりに、自分が血を失って死んでも構わないという覚悟の上で。
では何故、ボロニイサキュバスは2回も上条当麻を『復活』させたのだろう。上条当麻救出派とはいえ、ついさっき会ったばっかりの見ず知らずの少年の命を助けようとするものか?
それは超絶者ボロニイサキュバスとしての救済対象の冤罪被害者という条件に上条当麻が当てはまっていたのもあるが、無実の罪を着せられた冤罪被害者を助けたいという願いと信念が、好悪関係なく、冤罪の人間は誰でも助けに動くと言って実行する程、強かったからかもしれない。
しかし自分の命を引き換えにして『復活』の奇跡を上条当麻に使えと言ったボロニイサキュバスの隣に、ふっ、と隣に現れた『旧き善きマリア』がかえしたのは残酷な答えだった。
「残念ですが、ボロニイサキュバス━━あの少年を貫いて傷を負わせた彫刻刀は、アリスの力が込められた専用の霊装の為、ママ様の『復活』は出来ません」
旧き善きマリアの『復活』は用意さえあれば対象がどんな状態になろうが蘇生出来る奇跡だ。たとえ、対象が伝説として名を残す魔術師に殺されようが。
だが、何事にも例外が存在する。アリスの力で殺された相手だけは『旧き善きマリア』は『復活』を行うことが出来ないのだ。
「でも、埴安神袿姫が上条当麻救出派という事実は確かなようです」
「なんじゃと?」
ボロニイサキュバスと『旧き善きマリア』の目の前では、右腕を切り落として、上条当麻をアリスの力が入った彫刻刀で造り直して、死から黄泉帰らせた埴安神袿姫があった。
ちなみに死者を操ったり、別の存在に作り変える魔術は色々あるが、完全な死者蘇生は無理だと言われている。
かつてあった大悪魔コロンゾンとの決戦で、一撃で粉砕されて赤と黒の『何か』としか言いようがないグロテスクな状態になった上条当麻は、ロンギヌスの目を癒やした『神の子』の逸話に関する治癒魔術を使ったアレイスター=クロウリーの手で復活したが、魔神オティヌス曰く心肺蘇生に近いと言われている。それを考えたら『旧き善きマリア』の『復活』もそれに近いと思われるだろう。
死者蘇生とも言えることが出来る、例外は『位相』を差し込んで世界ごと改変する魔神と思ったイメージをそのまま具現化出来る黄金錬成くらいものだ。
その例外と同じ死者蘇生をアリスの力添えもありとはいえ、埴安神袿姫は成し遂げたのだ。いや、もしかしたら単独でも可能だったかもしれない。
だが言えることはある。このままだと、いずれ短い期間で必ず死にますよ?と12月29日にアリスに言われた程、上条当麻に迫りくる確定した死の運命は、アリス=アナザーバイブルのライブアドベンチャーズインワンダーランドと埴安神袿姫の造形術という無法と無法の組み合わせで消失したのである。
余談だが、埴安神袿姫が死者蘇生が出来たこの理由をアリスに言わせると、人の人生はあらかじめ決まっていると言う運命論もとい宿命論が考え方がある→人間の運命を決めたり、介入したりする神様(ギリシャ神話のテュケーや北欧神話のノルン等)が色々な神話にいる。→つまり造形神である埴安神袿姫は上条当麻の死の運命に介入して必ず造り変えることが出来るのですし!!というこじつけとも言えるトンデモ理論が返ってくるだろう。
渋谷のありふれた群衆の中で、『橋架結社』の超絶者が上条当麻救出派と殺害派に分かれて、引き起こしているこの騒動を今も観察している者がいた。
それの正体は『薔薇十字』の重鎮、アンナ=シュプレンゲルだった。
R&Cオカルティクスという巨大IT組織を立ち上げて、魔術を一般人に広めて、科学サイドと魔術サイド、両方に影響をもたらして混乱させた悪女であり、アリス=アナザーバイブルを上条当麻に合わせて、この騒動を引き起こした元凶だった。
そんな彼女の周りから不自然に人がいなくなっていった。
「アンナ=シュプレンゲル、袿姫様の元に来てもらいます。残念ながら拒否権はありません」
人払いをしたのは、主人の埴安神袿姫にアンナ=シュプレンゲルを見つけて、捕まえて連れてこいと言われた杖刀偶磨弓だった。
「へえ・・・・貴方、埴安神袿姫に土からではなく人間を基にして、作られているのね。それも科学技術で作られた人造人間を素体にしている」
「そうですけど。それがどうしたのですか?」
杖刀偶磨弓を一目見たアンナ=シュプレンゲルは落胆した。『造形神』埴安神袿姫と呼ばれるから、神が自分の姿に似せて原初の人間を作ったように、そんな代物を自分に向けてくるかと思ったら、思ったのと違う代物が来たからである。
(埴安神袿姫・・・・・橋架結社に所属しているけど、わらわに首輪をつけて管理する王様ならぬ神様になってくれるかと思ったら見込み違いか・・・・・)
そう思ったアンナ=シュプレンゲルの行動は早かった。
「托卵」
アンナがその一言を喋ったと思うと衝撃波が一面に炸裂した。
その衝撃波は地面のコンクリートを剥がし、アンナ=シュプレンゲルと杖刀偶磨弓がいる近くの渋谷の建物の外壁を傷つけ、建物の看板を飛ばし、ガラスを全部破壊する威力だった。
もしも杖刀偶磨弓が人払いの魔術を使っていなかったら、多くの人間が衝撃波とそれによって飛んできた色々な物体で、血塗れになって横たわっていただろう。
「それは?」
衝撃波に耐えきり、飛んできた物体を斬り落とした磨弓が目の前でアンナがした行動の意味と出した物体を尋ねた。
「この攻撃に耐えきったら答えてあげてもいいわよ」
衝撃波の中心から出てきたのは、虚空に浮かびながら鈍い銀色の輝きを放つ、直径二メートル以上の大きさがある金属の球だった。
それを誇示しながら、アンナが喋った。
「プネウマなき外殻。哲学者の卵、透明なる棺、絵画や音楽の中にも潜みし術式よ。我は赤き石などを求めず、歪みし結果を出せ。ガラクタはガラクタなりに、わらわすら見せない予想外を楽しませよ」
アンナの詠唱のガラクタ呼びはプネウマなき外殻だけでなく杖刀偶磨弓も対象に入っているダブルネーミングだったかもしれない。ともかく、アンナ=シュプレンゲルはプネウマなき外殻からガコンッ!!と大きな音と一緒に出てきた世界最古の剣を振りながらそう言った。
ゴッ!!と風を切る音を立てながら、あらゆるモノの硬度を無視して斬り殺すという殺意がある世界最古の剣による世界最古の斬殺という概念が杖刀偶磨弓に向かって、飛ぶ斬撃になって飛んできた。
「参照、H・T・トリスメギストス」
しかし、杖刀偶磨弓がその言葉を言いながら、纏う雰囲気を変えたと思うと、埴輪の形をした仕込み杖から刃を解放して、勢いよく抜刀したと思うと、ギィン!と音を立てて、斬撃が飛んだのだ。
そして杖刀偶磨弓が放った斬撃は、同じようにアンナが放った世界最古の斬殺と相殺した。
「アンナ=シュプレンゲル。貴方は『一般論』的に、危険すぎる存在です。袿姫様は生かして連れてこいと言いましたが、袿姫様だけではなくアリスや他の超絶者様達、一般的な普通の人間達にとっても危険な存在です。故に、前から思っていて、言いたかったことを言います。この私、杖刀偶磨弓はアンナ=シュプレンゲル、貴方を殺す」
同じ超絶者の皮を一時的に被って、その能力を使うことが出来るようになる特別な神装術を使えるように造られた偶像、それがこの杖刀偶磨弓という存在だ。
忠誠心を強さに変えることも出来るそんな怪物がアンナ=シュプレンゲルに殺意を向けた。
「失礼、訂正するわ。杖刀偶磨弓、貴方と主人の埴安神袿姫に対する評価をわらわは見誤っていたわ」
そして、二人の超絶者がぶつかる直前に、渋谷の街にある街頭ビジョンがあるニュースを流した。
『ドイツニュルンベルク市で大学生を中心とする生化学グループが一斉検挙される事態について新情報が入りました。まずおさらいすると彼らは人間の遺伝子を操作して水分50%以下の人類を創る目的で実験器具の購入、配備を進めていて学園都市からの善意かつ非公式な協力もあって検挙されましたが、噂によると検挙される前に既に人間を創った形跡があって誰かが持ち出した形跡があると言われている模様です。』
それは杖刀偶磨弓の素体になった、名も無き造られた人間の出生を明かすニュースだった。
上条当麻が死の運命に向かっている?
一度死の運命を迎えさせて、造り変えて復活させれば問題ないよね!
超絶者埴安神袿姫が上条当麻救出派という殺害派のスタンスを取っていた理由はこれです。