もっと高評価やお気に入り登録、UA数が欲しい気持ちが湧き出てくる!
上条当麻がボロニイサキュバスを『旧き善きマリア』に任せて、アラディアとの決戦に向かう前に、埴安神袿姫とある会話をしていた。
「ところで上条当麻。アラディアちゃんとの戦闘に、この埴安神袿姫の助けはいるかしら?」
埴安神袿姫の申し出に上条当麻は了承した。
「ああ、よろしく頼む。埴安神袿姫」
「「「聖魔女様のお導きの通りに」」」
現在、渋谷にはアラディアのカリスマ性と『影の書』の布教による知識の毒によって魔女達が増殖していた。
しかも、それに超絶者特有の影響力もあるが、埴安神袿姫が持つ独特の影響力で発生する、理想の偶像になりたいというコタツシンドロームで、魔女達の増殖スピードは更に増し、バイオハザードを起こすレベルまで行っていた。
「「「聖魔女様のお導きの通りに」」」
ちなみに先程からアラディアによって、魔女になった者達が呟いている言葉に魔術的な意味はない。
それは流行語やネットスラングと同じだ。
何でも良いから自分達だけが知る秘密の合言葉を共有することでコミュニティを出来上がらせる言葉に過ぎない。
でも、それによって出来上がって、カルト化した集団は、現代に復活した魔女達のサバトのようだった。
「「「聖魔女様のお導きの通りに」」」
魔女は増えていく。今の段階では、10万人程度まで済んでいるが、このままでは渋谷どころか学園都市、東京を呑み込む勢力に膨れ上がっていくだろう。
「「「聖魔女様のお導きの通りに」」」
魔女達の完成形とも言える、魔女達の女神アラディアを模した魔女の衣類を着た少女達は、『生きる見本』の魔女アラディアに近づく為に、白紙のルーズリーフに気付いたことをびっしりと書き込んでいる。
三倍の法則に縛られた新たな時代の魔女達は、この道に入るとまず先輩達から白紙の紙束を授けられる。新参者は自分が死ぬまで手に入れた知識をそこに足し続けて、自分だけの『影の書』と呼ばれる魔導書を完成させるのだ。
「聖魔女様のお導きの通りにッ!!!」」」
上条当麻を探して殺すべく、実践魔女の術式を使う魔女達によって世界が揺れていた。
普通、ここまでやったら世界に何かしらの影響が発生して、大パニックが発生するだろう。だが、世界に影響は出なかった。
それは埴安神袿姫が10万人の魔女を、造形術で造った現実世界に近い異なる世界に誘導して、神隠ししたからだ。
今のところ、彼女達は造形術によって作り出された、偽物の上条当麻相手に追いかけっこをしているだろう。
「『位相』を利用した神隠しというアイデアを生み出してくれた、アレイスター=クロウリーに感謝したいわね。もっとも『位相』をオモチャみたいに軽々しく扱うメイザースみたいに『位相』を利用する魔術師は意外といるらしいし、人が消えて行方不明になる神隠しの逸話や伝承は多いから、これも誰かが既にやったことがある芸当かもしれないね」
埴安神袿姫が造った世界の性質は、上里翔流という少年が持っている理想送りの対象になったモノが行く、新たな天地こと「新天地」に近い世界とも言えるし、『位相』世界とも言える不思議な性質を持つ世界だった。
これは、偶像に世界を委ねたいという人々の祈りで生まれた神様故に出来る芸当なのだろうか?
しかし、埴安神袿姫の造形術によって急ごしらえで作り出されたこの世界は、長くて、現実時間の一月一日午前0時までにしか保たれないだろう。
理由は、倍々ゲームの如く強くなれる三倍率の装填によって世界を壊すレベルまで成長した10万人の魔女が、造形術によって造り出された世界を壊して、元の世界に解き放たれるからだ。
これが急ごしらえでだけではなく、ちゃんと時間をかけて造った世界だったら制限時間なしで魔女達を隔離出来たかもしれない。
故に、上条当麻達は、魔女達が元の世界に戻って来る前に、魔女達を扇動して統括する魔女達の女神アラディアと決着をつけて、魔女達を沈静化させないといけないのだ。
「そう・・・・埴安神袿姫。貴方は上条当麻救出派なのね」
「そういうアラディアちゃんは、殺害派なのね。残念だわ」
同じく、埴安神袿姫が造形術で急ごしらえで造った、もう一つの世界にある渋谷のスクランブル交差点の中央で、埴安神袿姫と魔女達の女神アラディアが空中に浮かび上がって対峙していた。
「しかし、埴安神袿姫・・・・・魔神さえも救済して見せると言っていたけど、これは・・・・凄いわね。貴方、本当に魔神達を隔離出来るんじゃあないの?」
「私、埴安神袿姫は魔神を救済出来る世界を造形出来る存在、『造形神』なのよ。凄いでしょ、アラディアちゃん?」
まあ、この世界にいる魔神で確認出来たのは、ネフテュスと娘々という存在だけで、その魔神達を相手にするやる気は今はないけどね。
「でも、今のわたくしは三倍率の装填で強化されまくっているから、貴方に勝てるわよ」
そう言うが早いか、アラディアは極限までデカくなった魔女の閃光を埴安神袿姫に向かって放った。
その規模は、多くの建物を丸ごと呑み込み、東京タワーを塵一つ残さずに完全に消失させるほどの威力だった。
それを避けた埴安神袿姫はアラディアを称賛した。
「アラディアちゃんも凄いじゃあない。魔神を倒せる可能性持ちの術式を持つ魔女達の女神は伊達じゃあないね」
その称賛を受けたアラディアは埴安神袿姫を見て、愚痴を言いたくなった。
単独で自分の理想の世界を創造できる魔神と比べると、自分達、レギュラーの超絶者は拡散・破滅方向に極振りしていて、魔神達みたいに理想の世界を造ることが出来るアリスと同じ『例外』の立ち位置の埴安神袿姫が言っても嫌味にしか聞こえないのだからだ。
「威力は分かったでしょ?わたくしは埴安神袿姫、貴方を殺したくないからさっさと負けを認めて、上条当麻を引き渡して。そして、誰と重ねているのか分からないけど、アラディアちゃん呼びはやめて」
「お断りするわ。勿論、ちゃん呼びもね」
アラディアの投降勧告を埴安神袿姫は断った瞬間に、両者同時に動き出して、弾幕戦闘が始まった。
アラディアは魔女の閃光で壊れなかった無事な建物を空中に浮かしてホーミングする弾幕を放つ。
それに対して埴安神袿姫は流星の如く降ってくる、古墳のような姿にも見える光弾の弾幕で迎撃する。
「風を」
そう言ったアラディアは、唇に指を二本当てて、爆発に似た暴風を生み出したと思うと、埴安神袿姫が放った弾幕によって砕けた建物の残骸をその暴風に乗せて、より早く殺傷力のある弾幕にした。
「円形『真円造形術』」
暴風の勢いをつけて、全方位から襲ってくる建物の残骸の弾幕を埴安神袿姫は、造形術で造られた完全な球体、真球とも言えそうな光弾で構成された円形の弾幕を全方位に展開して打ち消した。
それでも埴安神袿姫が放った弾幕を避けて近づいてくる残った建物の残骸があったが、戻ってきた円形の弾幕で、埴安神袿姫に当たる前に完膚なきまで細かく砕かれて消滅させられた。
「世界を造ってわたくしを本来の世界から隔離したのは失敗だったね、埴安神袿姫。大方、三倍率の装填に使われる人々の視点の見方を制限しようとしたみたいけど、自分自身の見方でも三倍の倍率が乗るし、世界に気を使わずに全力を出せるわ」
その言葉を聞きながら、埴安神袿姫は、今のアラディアはどんな状態なのかと考え事をしていた。
おそらく、今のアラディアちゃんは、私を倒して神隠しにあった10万人の魔女を助けるという善行で三倍の倍率を乗せている・・・・・。
このまま時間をかけたら合間合間にする、アラディア本人の見方だけではなく私、埴安神の見方を利用した善行による倍率でどんどん強化されて、ジリ貧になる可能性があるわね。
しかし、アラディアちゃんとの弾幕ごっこは楽しいわね。まるで普通の魔法使いと呼ばれる人間が放つマスタースパークを連想させる魔女の閃光というトンデモ火力の術式を持っているのを見て、白黒の魔法使いとの弾幕ごっこを思い出させるわ・・・・・
でも、歩行者用の信号機の柱を魔女の箒代わりにしているのは、いただけないけど。
やっぱり魔女が空を飛ぶときに使う道具は、偶像通りの木の箒でないと思うわねぇ。
それはそれとして埴安神袿姫は、アラディアとの弾幕戦闘を楽しんでいて、その感想が頭の中の大部分を占めていたのであった。
本人がやめてと言っているのに、アラディアちゃんと埴安神袿姫が気安く呼び続けるのはこういう考えが原因かもしれない。
「ねえ、アラディアちゃん・・・・・この隔離された世界に自分たちの戦闘の余波に巻き込まれそう魔女がいるということを知ったらどうする?」
上条当麻の中にいるモノのエネルギーを吸って、骸炎ドラゴンと呼ばれるアンデッド染みた竜に近い姿に変貌した、自身の背後にいるエネルギー体の炎の竜が放った竜の閃光が世界を壊せるレベルまで倍率が乗った魔女の閃光を相殺したのを見ながら、埴安神袿姫はアラディアにある質問をした。
「人質作戦?それはブラフでしょ?貴方の行動理念を考えたら、そうはしないとわたくしは信じているわ」
埴安神袿姫の質問に答えたアラディアの表情は、それは崇めているモノが間違えるはずがないと信じている盲目的な信者が見せる表情に見えただろう。
「信じているからねぇ・・・・アラディアちゃん知っている?男も魔女と呼ばれるということを。貴方が探しているお目当ての魔女が姿を現すわ」
呆れたような表情を埴安神袿姫が見せた瞬間、パキィンと何かが粉砕される音が響いた。
空中から落下するアラディアの目線の先には、いつの間にかいた上条当麻が幻想殺しで、自分の力の源の影を粉砕する光景があった。
「があっ!!」
力の源の影が幻想殺しで粉砕されたアラディアはみっともなく墜落した。魔女の箒代わりの歩行者用信号機の柱のひしゃげる音が鳴り響き、魔女達の女神が地面を転がる。
空中から墜落してダメージを負ったアラディアの目の前に、上条当麻が迫ってくる。
「夜と、月と、それから魔女。・・・・ヘカテ、イシス、モリガン、フレイヤ。太古、叡智を司る女性の神は常に三つの側面をもって世界を正しく見据え、傅く巫女達を力強く守護してきた」
迫ってくる上条当麻を迎撃しようと、墜落の衝撃で血を吐きながらも両手を広げながら、切り札の『人域離脱』を解放しようとしたアラディアの行動を埴安神袿姫が放ったある言葉が中止させた。
「聞いた話だけど彼、上条当麻は無辜の人々を守る為に、魔術を使ったことがあるらしいわよ?あら?上条当麻は魔女達の女神アラディアの『救済対象』の魔女に当てはまるじゃあないかしら?」
上条当麻が魔女?このまま、上条当麻を攻撃してしまったらヤバい!このような行為が魔女達の女神として許されるのか!?超絶者アラディアとしての『救済対象』を攻撃してしまったら『三倍率の装填』という術式のデメリットの三倍の倍率の不幸が襲いかかってくるかもしれない!?
このような思考がアラディアに浮かんで、一瞬フリーズしてしまった隙を突くように上条当麻の拳が直撃した。
「その幻想をぶち殺すッッ!!!」
鈍い音が炸裂した。
ありふれた少年が全体重をかけて振った拳が、魔女達の女神アラディアの頬骨を確かに捉えて吹っ飛ばした。
「参照、『花束のプロダイウェズ』」
杖刀偶磨弓が纏っている小さな鉄板を紐で綴じあわせて作られた挂甲が、両開きの扉のように左右に開いた。
模倣先は超絶者『花束のプロタイウェズ』。救済条件は誰にも愛されない孤独な全てを救う。
術式『トータルコールシロップ』によって操られた渋谷中の数十、数百万のゴキブリやネズミの群れが津波になってアンナ=シュプレンゲルに襲いかかった。
(真に愛する者がいない孤独な袿姫様を救う為に、悪女アンナ=シュプレンゲルを殺す!)
杖刀偶磨弓の超絶者を模倣する能力にはある手間がないと模倣出来ない。それは対象の超絶者の思考や『救済条件』、服装等をある程度まで真似しないといけないのだ。
一種の偶像の理論の応用でもある。
真似している要素が多い程、オリジナルの超絶者の出力に近づく。だが、完璧に再現出来ない、組み合わせによっては可能だが、複数の超絶者の能力を同時に使えないという等の欠点が存在する。そういうところは忠誠心がそのまま強さになる程度の能力で杖刀偶磨弓はカバーしていた。
プネウマなき外殻が吐き出した世界最古の焼死という概念を包んだ炎が汚物は消毒だと言わんばかりにゴキブリとネズミで出来た津波を焼き払った。
全員、焼かれて焼死してしまったが、同じように焼かれた杖刀偶磨弓は焼死しなかった。
焼死しなかった理由は、斬れぬものはないとも言える程、殺意が高い自身の斬撃で真っ二つになっても元気に喋って再生するH・T・トリスメギストスみたいに、杖刀偶磨弓も高い再生能力を持っている耐久性が高い超絶者だったからだ。
杖刀偶磨弓は焼けたそばから再生しながら、炎の津波を無理矢理斬り分け、プネウマなき外殻ごとアンナ=シュプレンゲルを並の聖人を越える身体能力で直接、斬り殺そうとする。
(このままプネウマなき外殻と呼ばれた球体ごと斬り裂いてやるッッ!!!?!?)
プネウマなき外殻を斬り裂いた杖刀偶磨弓だったが、火山が噴火したごときの衝撃波が、アンナ=シュプレンゲルとの間に発生して、距離を離された。
衝撃波を発生させたモノは、背中は白鳥のような翼を出して、頭部はタカやワシ等の猛禽類の頭をして、光り輝く光輪を掲げている、蒼ざめたプラチナの色彩を放つ異形の天使の姿をしていた。
「勝手に出てこないで、愚鈍。興が冷めてしまうでしょう」
アンナ=シュプレンゲルを守るように杖刀偶磨弓の目の前に出てきたのは、ドイツ第一聖堂を守護するシークレットモチーフ、聖守護天使エイワスだ。
『さっさとこの戦闘を終わらせた方がいいぞ』
「分かったわ、エイワス。 ゲブラーよりホドへの進入路を開放、我が右腕に宿れ」
アンナ=シュプレンゲルが囁いたと思ったら、傍らにいたはずの天使が消えたのと、同時に杖刀偶磨弓の背後にあるビルが五つの斬撃に切り裂かれて、だるま落としのように崩れていった。
アンナ=シュプレンゲルは小さな手を握って開いて団扇のように扇いだだけだ。
たったそれだけで、距離も素材も関係なく空間が切断されたのだ。
今のアンナ=シュプレンゲルの右手は、掌で触れるだけで、あらゆる次元や空間、世界を削りとる現象を発生させる構築殺しとも呼べる存在になっているだろう。
(アンナ=シュプレンゲルが切り札を解放した!!『一般的』に考えたらこちらも本気を出すしかない!!)
この技はヤバい!という自分の直感に従って判断したおかげで、奇跡的に構築殺しの範囲内に入らずに無傷で回避出来た杖刀偶磨弓は、花束のプロタイウェズに近づく為に開いていた挂甲を閉めると、主人の埴安神袿姫とアリス=アナザーバイブル、目の前のアンナ=シュプレンゲルを筆頭としたイレギュラーの超絶者を除いた超絶者達の中で一番強いと思われるH・T・トリスメギストスを模倣先にして、アリスと埴安神袿姫の合同制作で造られた自分だけの『人域離脱』をしようと思った。
「この杖刀偶磨弓は自らのリスクを4まで解放します。偶像の封印公開・人域離脱。ここに埴安神袿姫とアリス=アナザーバイブル、H・T・トリスメギストスの三の存在の力でもって、速やかにこの偶像を変質させよッ!!?!?」
杖刀偶磨弓の服装がH・T・トリスメギストスの服装に変わり、オリジナルのそれに勝るともいいかねない程に術式の出力が上がった直後に、パキンという甲高い音がどこからか鳴り響いた。
杖刀偶磨弓とアンナ=シュプレンゲルが、別々に世界から隔離される瞬間は、お互いの切り札がぶつかる寸前だった。
「あら、あら。まあ、まあ」
声が。
ふんわりとした優しげな女性な声がアンナ=シュプレンゲルの耳に滑り込んできた途端に、だったあれだけ余裕を態度を崩さなかった超絶者の全身から、どばっと気持ち悪い汗が吹き出した。
これは。
この声の持ち主は・・・・・!
「あらゆる魔術ハ国家ヤ階層、年齢や♂♀ノ区別✕万人へ平等ニ配給すべし。そういう教えノ筈だったです✕、よもや巨大ITという言葉ニ化ける羽目ニになるとは」
「・・・・・」
「あら?先程〜何やら言葉ガ化けているようです✕、流石ニ意味ガ聞き取れ✕ということハあり〼✕わよね?アナタほどノ◎お方ガ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
アンナ=シュプレンゲルは、目尻に涙を浮かばせながら、ごくりと喉を鳴らすまでに、勢い良く振り返った。
アンナ=シュプレンゲルの背後には、彼女が身も世もなく震え上がる、天敵と呼べる存在がいた。
かつて存在した、世界最大の魔術結社『黄金』は、ただ忽然と英国に現れたのではない。
その創設者達だって、最初からいきなり天才だった訳ではない。
ウィリアム=ウィン=ウェストコットやサミュエル=リデル=マグレガー=メイザースにも、右や左も分からない初心者同然の時代があった。
後に伝説の魔術師と呼べる人物達に人が起こせる超常や神秘、奇跡を教授した伝説の持ち主が、アンナ=シュプレンゲルの目の前にいた。
「アンナ=キングスフォードッッッ!!?軽く見積って、百年前には既に死んでいる筈のあなたが、何故、今になって姿を現すッ!?」
「んふ☆ ではなんて言って欲しいノでしてよ、アンナ=シュプレンゲル。アナタニお仕置きしたくて悪魔ヲ〆て引きずり回し、地獄ノ門を蹴破ったぜー的ナ? いえーい!!」
アンナ=キングスフォードの接近に気づかなかった、己の迂闊さをアンナ=シュプレンゲルは、とても後悔した。
エイワスの早く戦闘を終わらせた方がいいという警告があったのに!!
たとえ遠く離れた地球の裏側にアンナ=キングスフォードが出現するだけでも、アンナ=シュプレンゲルにとっては、震え上がる事態のはずだ。それなのに、こんなのと同じ空間にいるという、アンナ=シュプレンゲルにとっては特に致命的過ぎる出来事を作ってしまうなんて!!
そして、アンナ=キングスフォードの出現に慌てた、アンナ=シュプレンゲルは魔術を行使した。
「わらわの逆鱗こそが最大最悪の地雷だわ・・・・・」
アンナ=シュプレンゲルが取り扱うのは小さな宇宙、『夏の成長』を取り出す。本来あるべき万物の生と死、中でも植物の輪を堰き止めることで万物を無尽蔵に増やすという基盤を整えた上で、八番目の作業と結合させる。すなわち『分離』。これをもって、足の先から触れただけで四肢を外し、あらゆる臓腑をバラバラにする死の領域を作り出し、どこまでも広がる。
アンナ=シュプレンゲルは、地中から犠牲者の脚を喰らう悪趣味なガラス製の対人地雷な必殺の魔術をアンナ=キングスフォードに向かって放り投げた。
「あらあら」
だが、呆れた一言をアンナ=キングスフォードが言うのと同時に、死の術式を閉じ込めていたガラス製の対人地雷は不発という結果で終わった。
「・・・・・・・・・・・」
「『是』が魔術ですわ。今以上ノ説明がいり〼か?」
アンナ=キングスフォードはにこにこ柔和な笑顔をしていたが、シュプレンゲル嬢の奥義とも呼べる魔術に対して、キングスフォード視点の評価の答えである0点という結果を光の文字で空中に表していた。
「己ハもっと魔術ニ関する講釈がしたい✕、早めニ終わらせてくれと言われてい〼カラ、決着をつけ〼よ。アンナ=シュプレンゲル」
特別な霊装も、大仰な動作もなかった。ただウェストコットやメイザースを手のかかる困った子として教育した、知の大女神はありふれた言葉を並べた。
「ソロール、キングスフォード、1888」
それだけの言葉で、だ。
ぼひゅっ!!とアンナ=シュプレンゲルの右腕から異音が響いたの同時に肩から先が消えた。
「あ」
アンナ=シュプレンゲルの体が抉れる。消える、なくなる、失われる。
腕が、足が、胴が!!肌が!!肉が!!!骨が!!?一つずつ順番に消失していくッッッ!!!?
「ガァあああああああああああああ!!!?!?」
「・・・・・ふふ。あの子犬のようニ✕で同じ机にいられ✕ったメイザースモ、『是』デ〆るとわんわん、きゃんきゃんと泣いて許しヲ請うたものですわ」
そして、アンナ=シュプレンゲルは、アンナ=キングスフォードの手によって死ぬに死ねない、フィルム缶状の真実の口のような円盤になった。
ちなみに、アンナ=キングスフォードが使ったこの魔術を簡単に説明すると、円盤の正体は羊皮紙で作った護符をいくつか貼り固めたもので、護符にアンナ=シュプレンゲルの肉体を封じただけのものだ。
しかし、アンナ=シュプレンゲルにとって、この存在を相手に遠慮している暇はなかったはずだ。それなのに、エイワスの力を使わなかった理由はなんだろうか?切り札の存在が、アンナ=キングスフォードに簡単に仕留められるという最悪の事態がイメージ通りに具現化するのを無意識に恐れたのだろうか?
「ご苦労、女史。渋谷の騒動が完全に終わる前にここから去るぞ」
「分かり〼たわ」
『位相』世界で時間稼ぎの為に作られた埴輪軍団と戦って、魔神達の遊び相手になった本来の体の持ち主のコロンゾンのように、異世界から抜け出してきた『人間』アレイスター=クロウリーが現れて、アンナ=キングスフォードから喋る円盤を受け取りながら渋谷から去った。
「さあ、『橋架結社』の超絶者達。特にアリス=アナザーバイブルや埴安神袿姫のことを喋ってもらうぞ、アンナ=シュプレンゲル」
「アンナ=シュプレンゲルの件、袿姫様になんて説明しようかしら・・・・・」
アンナ=キングスフォードによる時間と空間の『隔離』が解かれた渋谷の地で、残された杖刀偶磨弓はアンナ=シュプレンゲルのことを主人の埴安神袿姫にどう説明しようか迷っていた。
ノリで書いていたらなんか規模がデカくなってしまったかもしれない。
そしてアンナ=キングスフォード女史、貴女にもう一回言いたいことがあるんです。
貴女の口調は、本当に!エミュしづらいし!!書きにくい!!