瀬人VSキサラ~時空を超える記憶~【完結後、後日談ぼちぼち執筆】   作:生徒会副長

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瀬人VSキサラのおかげで出来た「現代にキサラが居る」という便利な世界観を再利用して考えた架空デュエルです。社長誕生日なのでデュエル前パートだけ先にうpします。海馬社長誕生日おめでとうございます!


EXTRA・TURN「キサラVSドッペルゲンガー」(オリカなし新マスタールール2019)
TURN0「未界域のドッペルゲンガー」


「暑い……」

 

 木漏れ日すら鋭い熱帯雨林は、湿度の高さも相まって、彼女──キサラには非常に厳しい環境であった。

 

「3000年前のエジプトなんて……まだ涼しかったんじゃないかと……錯覚しますよこれは……。まさか例の事件ってただの熱中症じゃないでしょうね……?」

 

 「白き龍」としての生命力と魔力で多少の誤魔化しは効くものの、ついつい息を切らせながらの独り言が捗ってしまう。

 なぜ彼女が時空を超えて伴侶になれた筈の瀬人とも、彼の会社の部下とも離れ、こんな南米の熱帯雨林をさ迷っているのか。

 享楽のためではない。

 最新のレジャー用ウェアの性能テストでもない。

 それは彼女が先ほど一人愚痴っていた、「例の事件」と関係している。

 

──

 

「昏睡3名、発狂2名、行方不明が3名、ですか……」

「あぁ。人数だけでも酷い有り様だろう?」

 

 そんな相談を瀬人がキサラにしたのは、10日前のKC社長室でのことだ。

 

「南米に海馬ランドを作るにあたり、現地の風土や伝承を調査しに森林へ入った小隊が最初の被害者だ。それの救助隊や追加の調査隊なども続々と被害に逢い、今やこの人数……という訳だ」

 

 瀬人がため息をつくのは、単なる被害の大きさだけが理由ではない。原因が不明で解決の見通しが立たないからである。

 もちろん、手がかりが無い訳ではない。発狂して生還した2名の証言がある。だが、うわ言やら寝言やら心理学的な聞き取りやらの中から信憑性の高そうなキーワードを繋ぎ合わせて導かれた答えは、

 

『地図にもない、コンパスも効かない場所に1人で迷い込んだ後、”もう1人の自分に襲われた”』

 

という突拍子もないものである。

 

「瀬人様に言わせれば、『また妙なオカルト話か』──といったところですか?」

「だからこそお前に頼みたい、ということでもある」

 

 瀬人はずいぶん長い間、千年アイテムや三千年の輪廻因縁に関することで苦労してきた。千年アイテムが地上から消えた今も、世界は瀬人が知る科学では論理的に説明がつかない事象に満ちている。

 だが今の瀬人には、頼れる彼女がいる。論理的には説明がつかない、三千年の絆と記憶で繋がった『キサラ』が!

 

「俺は別件で手が離せん。キサラ、お前に南米へ飛んでほしい。『白き龍』の力を持つお前なら大丈夫だろうとは思っているが、くれぐれも気をつけてな」

「はい。何年でも何度でも、貴方の力になりますよ」

 

──

 

 そしてキサラは、暑さに苦しめられながらも、見えざる敵と自分自身の思惑通りの状況に踏み入っていた。

 一瞬汗を拭うために目を瞑った隙に消えてしまった同行者たち。地図にない川のせせらぎ。デタラメに回り続けるコンパス。デジタル腕時計がまだ正しく動いているなら、証言通りの術中に陥ったのはほんの5分前程度か。その5分間で、キサラは鬱蒼とした森から、せせらぎの音源である小川に出ることができた。

 

「ちょーっとだけ、涼しいですね」

 

 滝のように流れ、白い肌も銀の髪も濡らしていた汗をタオルで拭いながら、しばし涼む。

 直射日光こそ直撃するものの、湿度を無駄に上げる木々がなく、小川に沿って緩やかな風が流れているが故だった。

 この涼しさの源泉である小川を少し観察してみる。

 ギリギリで一足跳びこそ出来なさそうだが、歩いて渡れそうな程度の浅さで泥も舞い上がっていない清流である。屈んで見てみれば、鏡のようにキサラが”二人”映る程の水質──。

 

「──ッ!!」

 

 『もう1人のキサラ』に首を締められそうになり、反射的に右手だけ『白き龍』の異形を顕し、振り向きざまに剛爪で反撃する。だがその斬撃は『もう1人のキサラ』が飛び退いたことで空振りに終わった。

 

「おーっと、危ない危ない! ただの女の獲物かと思ったら、とんだ化物だったらしいぜ!」

 

 銀の髪も青の眼も服装もキサラと瓜二つだが、声だけはキサラより少し低い、中性的なものだった。

 

「獲物に化物と、好き放題言ってくれますね? 私には『キサラ』というちゃんとした名前があります。貴方も名乗られては?」

 

 普段の穏やかな口調からも怒りが滲み、右手を龍の爪にしたまま睨みつける。

 

「おー怖い怖い! 俺の名はドッペルゲンガー。だがすぐに『キサラ』に改名するぜ。お前の存在を乗っ取ってな!」

「ではやはり一連の事件は貴方が……」

 

 出くわせば自分が死ぬという超常現象『ドッペルゲンガー』を名乗るこの者が下手人だったのか。

 

「あんたと同じ服装の連中か? 乗っ取ってやろうかと思ったんだが、どいつもこいつも乗っ取る値打ちが無さそうだったんでな。まあ二人だけ一旦キープしてるけど」

「私なら乗っ取る値打ちがあると?」

「あるねェ! これでも最低限の世俗は知っててさ! あんた海馬瀬人の伴侶だろ? 俺が乗っ取るには最高の条件の相手だぜ!」

「素直に私が応じるとでも?」

 

 キサラは、今度は両手とも龍の姿を顕して戦意と力を見せつけるが──。

 

「待て待て! こんな暑苦しい場所で肉弾戦なんて止そうぜ! ここはデュエルと行こうじゃないか、俺のデッキも見てもらいたいしな!」

「…………。」

 

 この提案を無視して爪で引き裂くというのもアリではあるのだが、どうせ「勝つ自信がないから肉弾戦が良いんだろ?」と挑発されれば乗らざるを得ない訳だし、無闇やたらに龍の力を解放するよりはデュエルの方が割が良いのは事実だった。龍の爪による脅しを止めて、条件を取り付ける。

 

「私が勝ったら、私も含め、貴方が今まで出した被害者を全員解放してもらいますよ?」

「俺が勝ったらアンタの身体と名前を頂くぜ。『キサラ』に成れたならどっちにせよアンタ以外は用無し! 全員解放するから安心してデュエルしてくれよな」

 

 かくして、キサラはバックパックから手際よくデュエルディスクを出し、ドッペルゲンガーは何処からともなくディスクを具現化させ、デュエルを開始した。

 

 「「デュエル!!」」

 

キサラLP8000

≪VS≫

ドッペルゲンガーLP8000

 




デュエルパートがまだ途中でキリが悪いのでまだうpできません!すみません!

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