瀬人VSキサラ~時空を超える記憶~【完結後、後日談ぼちぼち執筆】 作:生徒会副長
キサラLP8000/手札3枚/伏せ2枚
青眼の精霊龍/守3000
白き霊龍/攻2500
続くドッペルゲンガーのターン。
「俺のターン!『手札抹殺』発動!」
(ヴェーラーとブルーアイズを捨てさせられた!?)
互いに手札の総入れ換え。ほぼ偶然に近い成り行きとはいえ、キサラの『エフェクト・ヴェーラー』は捨てさせられ、『白き霊龍』はエスケープ先を失う。
※キサラが捨てたカード
》青眼の白龍
》青眼の白龍
》エフェクト・ヴェーラー
だが──。
「クックック……」
ドッペルゲンガーの狙いは、別のところに、ある。
「ブルーアイズの進化に影。とくと見せて貰ったぜ。次は俺が見せてやるよ。未だ開かれざる界域に潜む、恐るべき獣性をな!! 墓地から誘発効果を4連続発動!!」
「何ですって……!?」
ドッペルゲンガーの墓地から4枚の写真が飛び出す。それは、『手札抹殺』で手札から墓地に捨てられた魔物たちの記録であり、これから起こる現象の予言であった。
「チェーン1『未界域のネッシー』! その巨影には、未だ誰も見ぬ魔物が潜んでいる!
チェーン2『未界域のオゴポゴ』! 自身が深淵に沈むとき、未界域の記録や同胞を、深淵の肥やしとして道連れにする!
チェーン3『未界域のサンダーバード』! その羽根が地に落ちるとき、未だ誰も見ぬ敵すらも粉砕される!
チェーン4『未界域のワーウルフ』! その咆哮は、未界域に仇なす者を萎縮させる!
『青眼の精霊龍』で止めるか? お前が止められるのはワーウルフだけだがな!」
自分の対応を決める前に、キサラは『未界域』の名を冠するカードのテキストを見ながら考えを巡らせる。何故なら。
(……初めて見るカードばかり……)
無論これはキサラが決闘者として未熟無知だからではない。彼女は今、KCでカード関連の研究や開発に携わっている身だ。全てのカードのテキストを覚えているとまでは流石にいかないが、全くカード名もイラストも未だ知らざるものだとなれば、これはI2社やKCと関係ないカードの可能性が高い。
テキストを一通り読んだ彼女の所見としては、デッキ圧縮に繋がるらしきネッシーやオゴポゴ、直接アドバンテージを奪いに来たサンダーバードを止めたいところだった。しかしワーウルフに阻まれて干渉出来ない。とはいえ──。
「『青眼の精霊龍』の効果発動! 墓地で発動したワーウルフの効果を無効にします!」
「やっぱり無視出来ないよなぁ? でもその効果は1ターンに1度だけ……」
「『青眼の精霊龍』のもうひとつの効果も発動! 自身をリリースして疑似シンクロ召喚!」
「うん……?」
精霊龍の身体は光球となって昇天してしまったが……。
「さらに!サンダーバードの対象になったリバースカードをオープン! チェーン7にて『戦線復帰』! チェーン6で『青眼の精霊龍』をリリースしているので、これを復活させる対象として選択出来ます!」
「おいおいおい……」
ドッペルゲンガーの4連続チェーンに対して、キサラは3連続チェーンで対抗してきたところで逆順処理に入る。
7つ数えればつい先ほど消えた筈の『青眼の精霊龍』が戦線復帰のカードの中から復活。
6つ数えれば『青眼の精霊龍』が昇天した空から、重量感で大地に衝撃を響かせながら『蒼眼の銀龍』が轟臨。
5つ数えればワーウルフの写真が精霊の力で掻き消され。4つ数えればサンダーバード最期の突進で『戦線復帰』のヴィジョンに風穴が開き──。
「チェーン2のオゴポゴで『未界域調査報告』を埋葬。チェーン1のネッシーの効果で『未界域のジャッカロープ』を手札に加えるが……」
「全ての処理が終了後、『蒼眼の銀龍』の効果、ホワイトフレア・サンクチュアリで強力な耐性を付与です! 効果では破壊されませんし効果の対象にもなりません!」
ドッペルゲンガー/手札5枚→4枚→5枚
未界域調査報告(デッキ→墓地)
未界域のジャッカロープ(デッキ→手札)
蒼眼の銀龍/守3000(EX→場)
青眼の精霊龍/守3000(蘇生)
「おい、その戦線復帰したヤツって……」
「1度フィールドを離れたので、また妨害が出来ますよ」
ちょっと誇らしげなキサラに対し、全く顔立ちは鏡映しであるはずのドッペルゲンガーは顔をしかめるしかなかった。だがリバースカードが減ったのは事実だし手札も悪くない。とりあえず動くしかない。
「未界域の案内人たる『魔界発現世行きデスガイド』を通常召喚。その効果で『クリッター』をご案内だ」
ドッペルゲンガー/手札5枚→4枚
魔界発現世行きデスガイド/攻1000
クリッター/攻1000(デッキ→場)
「そして! 手札から『未界域のビッグフット』の効果発動!」
手札から発動したカードは1枚であるにもかかわらず、ドッペルゲンガーの4枚の手札全てが其の手から投げ放たれ、キサラの前に扉のように立ち塞がった。
「4つのカードの扉から1つ選べ。この中から、未だ見つからざるビッグフットを見つけられたのなら、墓地へ葬ることが出来る。外せばお前はビッグフットの奇襲を許すことなる」
「……右端の扉を選びます」
迷ったところで結果が良くなる訳でもないので、手早く選んだ。その結果は──。
「ハズレ。葬られたのは『未界域のジャッカロープ』だ。よって左端の扉に潜んでいたビッグフットは特殊召喚され、俺は1枚ドロー出来る!」
左端の扉からは窮屈そうに大人の倍ほどぼ背丈を誇る巨大獣人──『未界域のビッグフット』が現れ、中央2枚の扉はドッペルゲンガーの手札に戻り、右端の扉の先ではツノ持つ野ウサギ──『未界域のジャッカロープ』が血を流して倒れていた。
未界域のビッグフット/攻3000(手札→場)
未界域のジャッカロープ(手札→墓地)
ドッペルゲンガー/手札4枚→2枚→3枚
「葬られたジャッカロープの効果! この未知にして美味なる屍肉には、未界域の魔物が群がる……。つまり、デッキから新たな未界域モンスターを守備表示で現れるんだぜ!」
「っ! 『青眼の精霊龍』の効果で無効!」
ランク8を警戒したキサラは妨害効果を使わざるを得なかった。ジャッカロープの血も亡骸も、精霊龍が放った光で浄化されて消えていく。だが……。
「手札に潜む『未界域のチュパカブラ』をコストに、墓地に埋葬されている『未界域調査報告』の効果発動! 調査報告資料をデッキに回収して1枚ドロー! もちろん本命はチュパカブラを贄にすることだがな!」
展開に繋がる未界域の魔物は、ジャッカロープだけではない。
「捨てられたチュパカブラの効果発動! その血肉は、別の同胞に受け継がれる! 『未界域のサンダーバード』を蘇生召喚!」
ドッペルゲンガー/手札3→2→3枚
未界域のチュパカブラ(手札→墓地)
未界域のサンダーバード/攻2800(墓地→場)
その怪鳥は雷電迸る紅き大翼をはためかせて出現したが、攻撃力は未だドラゴン達の脅威とはなり得ない数値だ。
故に──。
「続いて、デスガイドとクリッターをリンク2に変換! 未界域の空を舞う飛行物体『見習い魔嬢』をリンク召喚し、こいつがもたらす闇で俺のモンスターを強化しつつお前のドラゴンを弱体化させるぜ! さらに素材になった『クリッター』の効果で『メタモルポット』をサーチ!」
「うっ……まずい!」
いま中空を舞い、黒い霧をばら蒔く『見習い魔嬢』は、闇属性モンスターのステータスを500上昇させるが、同時に光属性モンスターのステータスも400減少させる。キサラのモンスター達との相性は最悪である。
ドッペルゲンガー/手札3→4枚
魔界発現世行きデスガイド(リンク素材)
クリッター(リンク素材)
メタモルポット(デッキ→手札)
見習い魔嬢/攻1400→1900
未界域のサンダーバード/攻2800→3300
未界域のビッグフット/攻3000→3500
蒼眼の銀龍/守3000→2600
青眼の精霊龍/守3000→2600
白き霊龍/攻2500→2100
「まだまだァ! そのドラゴン達は全て退場してもらう! 装備魔法『未界域捕獲作戦』をビッグフットに装備!」
装備魔法に合わせ、巨大獣人に大きな網が被せられるが、隆起した筋肉によってそれは破り捨てられる。
「このカードを装備させられたモンスターは、捕獲作戦への抵抗力で攻撃力が800アップし、モンスターへの2回攻撃と効果破壊耐性を得るぜ!」
ドッペルゲンガー/手札4→3枚
未界域のビッグフット/攻3500→4300
↑未界域捕獲作戦を装備
「このままバトルだ!『未界域のサンダーバード』よ、EXモンスターゾーンに居座る銀龍を空から襲撃しろ!」
『蒼眼の銀龍』に向けて、上空から紅い羽根と雷の矢が降り注ぎ、やがては耐えきれずに爆散してしまった。
未界域のサンダーバード/攻3300
≪VS≫
蒼眼の銀龍/守2600(戦闘破壊)
「くぅ……っ!」
「ビッグフットよ、その剛腕を2度振るい、朧気な霊龍どもを地に薙ぎ倒せ!!」
「罠カード『パワー・ウォール』! デッキトップから5枚のカードを墓地に送り、2500以下の戦闘ダメージを無効にします!」
捕獲作戦による強化も手伝ってか、その巨体に似合わぬ素早い連続攻撃で、『白き霊龍』と『青眼の精霊龍』が吹き飛ばされてしまう。そしてキサラにも突風の奔流が襲い掛かろうとしたが、それはデッキトップから飛び出した5枚のカードが巨大な盾となって受け止めた。
パワーウォールで墓地に送ったカード
≫青き眼の祭司
≫クリアクリボー
≫復活の福音
≫シャッフル・リボーン
≫霊廟の守護者
未界域のビッグフット/攻4300(2回攻撃)
≪VS≫
青眼の精霊龍/守2600(戦闘破壊)
白き霊龍/攻2100(戦闘破壊)(ダメージ無効)
『復活の福音』で破壊を無効にすることも出来たが、破壊されたからこそ使えるカードもあった。
「ドラゴン族が戦闘破壊されたので、墓地から『霊廟の守護者』を特殊召喚します! さらに、『白き霊龍』が墓地では通常モンスター扱いなので、追加効果で『青眼の白龍』の回収もできます!」
霊廟の守護者/守2100→2500(墓地→場)
青眼の白龍(墓地→手札)
キサラ/手札3枚→4枚
『霊廟の守護者』は『見習い魔嬢』本人の効果でステータスが上がっており、これでダイレクトアタックは無いかと思われた。しかし。
「フゥン、中々のしたたかさだが……甘いぞキサラ!!」
「……えっ!?」
いつの間にか、対戦相手が鏡に映したような自分ではなく、最愛の人──海馬瀬人になっていた。
いや、目元のクマ、髪の分け目、指先などの、自分かモクバでなければ気づかないような違和感とこの状況から言って、ドッペルゲンガーが化けた偽者だろう。
化けた理由は、なんてことはない。あのカードを使う為の演出らしい。
「手札から速攻魔法、『エネミーコントローラー』発動! 『未界域のサンダーバード』をリリースし、コマンド入力! 左! 右! B! A! このコマンドによって、『霊廟の守護者』は、俺のしもべとして使用することが出来る!」
ドッペルゲンガー/手札3枚→2枚
未界域のサンダーバード(リリース)
霊廟の守護者/守2500
(キサラの場→ドッペルゲンガーの場)
キサラは全く惑わされもときめきもしないのだが、『霊廟の守護者』はあっさりと偽者に寝返ってしまった。これでキサラを守るモンスターは居ない。
「攻撃力1900の『見習い魔嬢』でダイレクトアタッーークッ!! ワーハッハッハ!!」
見習い魔嬢/攻1900
≪VS≫
(直接攻撃)
キサラLP8000→6100
「うぐっ……!」
紫の光弾4発がキサラの周囲で炸裂し、まずまずのライフを削り取る。それでバトルフェイズは終了した。同時に黒い炎に偽者の海馬瀬人が包まれたかと思うと、代わって偽者のキサラが現れて、三文芝居も終了した。
「楽しんで頂けたかな? 対戦相手に化けるのが本来のキャラだからアンタの姿に戻したんだけどさ」
「……70点ってところですね。あと個人的にイラッとしたので40点減点して赤点ってことで」
「えー、マジかよ。プライド傷つくなぁ。あぁ、そういえば芝居は終わったけどお前から借りたモンスターは返さないからな? メインフェイズ2にて、『見習い魔嬢』と『霊廟の守護者』でリンク召喚!」
ステータス補助の『見習い魔嬢』と高ステータスの『未界域のサンダーバード』を犠牲にするだけあって、それは強力なリンクモンスターだった。召喚条件は闇属性モンスター2体以上。
「未界域に遺されし、朽ち果ての斧から生まれた、叛逆の死徒! 出でよリンク3!『幻影騎士団ラスティ・バルデッシュ』!!」
見習い魔嬢(リンク素材)
霊廟の守護者(リンク素材)
幻影騎士団ラスティ・バルデッシュ/攻2100
生前はさぞ屈強な勇士に使われていたであろう鎧と戦斧が、青白い霊魂で空虚な中身を埋めて自立していた。その強さも、錆び付いた斧の切れ味よりも霊魂の方にある。
「ラスティ・バルデッシュの効果! デッキから幻影騎士団のモンスターを墓地に送る。その後『ファントム』魔法・罠カードをデッキからフィールドにセットする! 俺は『幻影騎士団サイレントブーツ』を経由することで、『幻影霧剣』を2枚フィールドにセットする!」
ラスティ・バルデッシュの効果で『幻影騎士団サイレントブーツ』を墓地に送ってから、『幻影霧剣』をセットする。その後墓地のサイレントブーツを除外することで2枚目の『幻影霧剣』をサーチする、というコンボだった。
幻影騎士団サイレントブーツ(デッキ→墓地→除外)
幻影霧剣(1枚目)(デッキ→場)
幻影霧剣(2枚目)(デッキ→手札→場)
「ターンを終了するぜ」
ドッペルゲンガーLP8000/手札2枚/伏せ2枚
幻影騎士団ラスティ・バルデッシュ/攻2100
未界域のビッグフット/攻3800
↑(装備)未界域捕獲作戦