瀬人VSキサラ~時空を超える記憶~【完結後、後日談ぼちぼち執筆】   作:生徒会副長

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TURN4-5「罪と神と真」

 

(まだ……生きたい……。 弱くても、この夢の未来で……!)

 

 そんな最後の希望を振り絞り、手を伸ばした。

 

「ッ、ドロー!」

 

 キサラに新たな1枚をもたらしたことで、役目を終えた「クリアクリボー」の効果による魔法陣は消える。そして引き当てたカードを見て悟る。

 

 本物のキサラの正体を。

 今の自分の在り方を。

 嗚呼。デッキが応えてくれるとは、こういうことだったのか──!

 

「モンスターを特殊召喚して、強制戦闘に入ります!」

「は。どうせ下らない壁モンスターによる悪足掻き……。消し飛ばせ、『ダーク・クリエイター』!!」

 

 暗黒の雷が矢の雨のようにキサラに迫り──。

 フィールドが、一際『白く』輝いた。

 

「悪足掻き? そんなものは弱者や敗者がすること。私はそんな無様な姿は晒しません!」

「な、に……?」

「誇り高く威光を放ち、強靭・無敵・最強であり続けること。それが私の在り方! デッキが教えてくれた私のロード!! 私が特殊召喚していたのは──『青き眼の乙女』!!」

 

 闇の攻撃を掻き消す純白の中から、キサラと同じ銀髪青眼の女性が姿を現す。その強い祈りと魔力は、大いなる守りの力となる。

 

青き眼の乙女/攻0

 

「『青き眼の乙女』が攻撃対象にされたときの効果発動! 自身の表示形式を変更して、攻撃を無効にします!」

「『クリアクリボー』の効果で始まった戦闘でもその効果使えるのかよ!?」

「効果にはまだ! 龍の力を呼び覚ます続きがあります! 手札から出でよ、『青眼の白龍』!!」

 

青き眼の乙女/攻0→/守0

青眼の白龍/攻3000(手札→場)

≪VS≫

ダーク・クリエイター/攻2300(攻撃無効)

 

キサラ/手札2枚→1枚

 

 キサラのカードと、『青き眼の乙女』の魔力が解き放った白き龍は、堂々たる攻撃表示でフィールドに降り立った。

 

「何が『堂々たる攻撃表示』だ! 『The Seven Sins』に攻撃力で負けてるクセに! 『未界域のビッグフット』より余程出しづらいモンスターのクセに!」

 

 だが、開闢の使者の2回攻撃まで計算に入れれば、これで正しい。クリアクリボー、青き眼の乙女、青眼の白龍、リンクリボー。4枚のカードが合わさり、闇の脅威に抗う力となった。

 

「『幻影騎士団ラスティ・バルデッシュ』で攻撃!」

 

 『青き眼の乙女』が『リンクリボー』の為に墓地へ逝き、『リンクリボー』が攻撃を無力化する為に墓地へ逝く。その斬撃は通らない。

 

青き眼の乙女/守0(リリース)

リンクリボー/攻300(墓地→場→墓地)

≪VS≫

幻影騎士団ラスティ・バルデッシュ/攻2100→/攻0

(攻撃キャンセル)

 

「『No.77 The Seven Sins』で、『青眼の白龍』を攻撃!」

 

 キサラと『青眼の白龍』の両手両脚が蜘蛛糸に絡め取られ、身動きを封じられる。まるで罠に嵌まった蝶や、磔にされた罪人のように見えるが、女と龍の表情は毅然としていた。

 ドッペルゲンガーにはそれが気に入らない。生意気なる相手の胴を貫く、その砲撃の名は──。

 

「七罪導く刺殺磔刑(セブンス・ロード・パニッシュメント)!!」

 

No.77 The Seven Sins/攻4000

≪VS≫

青眼の白龍/攻3000(戦闘破壊)

 

キサラLP5500→4500

 

「ぐぅっ……!!」

 

 超圧縮された、槍を思わせる程鋭い暗黒の光線。龍の胸に風穴が空き、彼女の心臓にまでヴィジョンが貫通する。

 否、ただのヴィジョンでは済まなかった。『青眼の白龍』の魔力を取り込み、『青眼の白龍』に匹敵する希少性あるナンバーズの、『青眼の白龍』を破壊する攻撃。しかも神と攻撃力は互角で、罪の名を冠している。偶然とてこれだけ重なれば、霊的な意味でのキサラの魂魄にすら、身体が2つに裂けるような激痛を、体表が溶けるような損壊を響かせる。

 それでも──。

 

「まだ……。まだ闘えます!!」

 

 攻撃と共に磔が終わって墜とされても、膝と右手で最低限の着地をこなす。無様な姿は決して晒さない。

 ならばと、今度は開闢の使者による追撃が繰り出される。

 

「カオスブレード!!」

 

カオス・ソルジャー─開闢の使者─/攻3000

≪VS≫

(直接攻撃)

 

キサラLP4500→1500

 

 地面を斬り裂きながら疾走る衝撃は、まさしく『滅びの爆裂疾風弾』と互角の威力。それがキサラの身体に直撃し、激しい光の柱をあげる。

 

「く、ああああぁぁ──!」

 

 それでもなお、倒れることはなく。

 

「トドメだ! 開闢の使者には2回攻撃が──」

「いいえ……いいえ! 出鱈目を言わないでください! 開闢の使者の2回攻撃は、『魔物』を斬ったときのみ! 私という『人間』を斬っても、2回攻撃は出来ません!!」

「チィ……!」

 

 理を曲げたドッペルゲンガーの脅しにも屈しない。

 

「仕留めきれなかったのは悔しいが……。カードを1枚伏せて、さらに必殺のモンスターカードも裏側で出しておく! ターン終了!」

 

ドッペルLP2500/手札なし/伏せ1枚

 

カオス・ソルジャー─開闢の使者─/攻3000

No.77 The Seven Sins/攻4000(ORU3)

幻影騎士団ラスティ・バルデッシュ/攻2100

ダーク・クリエイター/攻2300

裏側守備(メタモルポット)

 

「 ……なぁ。お前、ノリが悪くねぇか?」

 

 『クリッター』で手札に加えていた、5枚ものドローを可能にするモンスター『メタモルポット』を伏せながら、偽者は本物に対する優位点を探す。

 

「こっちが最強のモンスター軍団で怒濤の攻撃を仕掛けたのに、吹っ飛びもしないし倒れもしない。倒しがいがねぇんだよ!」

「別に。あなたの、サンドバッグや踏み台になる為に闘ってる訳ではないですし……。もっと辛い目になど、幾らでも、遭っていますからね……」

 

 肩で息をしながら、本物は本物が辿った軌跡を追想する。

 

「戦争で父と故郷を喪い。母と共に逃げた異国の地で流浪の果てに、盗賊に襲われて母を喪いました」

「5年以上の難民生活で、物や罵声を投げつけられたこと、飢え死にしかけたことなど何度あったことか……」

「本当に死んだときは、拷問が原因でしたね。その数千年後には、愛する人の手で身体を二つに裂かれて2度目の死を迎えました」

「その後無理矢理生き返らされてまた拷問。世界を滅ぼすための下僕として使役される羽目になったり……」

 

 嘘偽りなき独白なれど、それは偽者を惑わせるに十分なものだった。

 

「お前は……。お前は、いったい何者なんだ……?」

「このデュエルが終われば分かることですよ」

「じゃあ次の、俺のターンで分かるな?」

 

 ドッペルゲンガーのターンになれば、『カオス・ソルジャー─開闢の使者─』による、モンスター1体の除外。

 『No.77 The Seven Sins』による、特殊召喚された相手モンスターの全体除外。

 『ダーク・クリエイター』の効果で『宵星の機神ディンギルス』を蘇生することによる、対象に取らず破壊も介さない除去。

 『宵星の機神ディンギルス』の蘇生先が『幻影騎士団ラスティ・バルデッシュ』のリンク先なら、破壊効果が飛んでくる。キサラの敗北で決着がつくだろう。

 それ以外の選択肢があるとするならば──。

 

「この、私のターンで分かるようにします! ドロー!!」

 

 キサラ/手札1枚→2枚

 

「『白き霊龍』をコストに、『トレード・イン』、発動!」

 

 生きようとする意志と覚悟、本物の誇りと強さが最高の1枚を呼び寄せ、死に札2枚が命を宿した2枚に生まれ変わる。

 それでもなお──あと1枚、足りなかった。勝利への道は繋がらない。

 ならばこそ突き進むのみ、届かざるあと1枚の輝きに手を伸ばす──!

 

「永続魔法『ブリリアント・フュージョン』、発動!」

「ここでデッキ融合か……」

「『ジェムナイト・ラズリー』と『太古の白石』で、ジェムナイトモンスターのデッキ融合! 『ジェムナイト・セラフィ』! 『ジェムナイト・ラズリー』が効果で墓地へ送られた場合、墓地の通常モンスターを手札に加えられます!」

 

ジェムナイト・ラズリー(デッキ→墓地)

太古の白石(デッキ→墓地)

青眼の白龍(墓地→手札)

 

ジェムナイト・セラフィ/攻2300→0

 

 白と瑠璃を含む3つの輝きは、龍と天使の翼をもたらした。そして龍の命は再び輪廻する。

 

「『青眼の白龍』をコストに、2枚目の『トレード・イン』! コストにした『青眼の白龍』は、墓地から『太古の白石』を除外することで再び回収!」

「ま、まただと!?」

 

太古の白石(墓地→除外)

青眼の白龍(墓地→手札)

 

キサラ/手札2枚→3枚

 

 そして宝石の天使『ジェムナイト・セラフィ』が翼を広げるとき、新たな召喚劇が始まる。

 

「『ジェムナイト・セラフィ』の効果による通常召喚! 『青き眼の祭司』! その効果で『青き眼の賢士』を墓地から手札に呼び戻して、そのまま召喚! その効果で2枚目の『エフェクト・ヴェーラー』をデッキから手札に呼び寄せます!」

 

青き眼の祭司/攻0

青き眼の賢士/攻0(墓地→手札→場)

エフェクト・ヴェーラー(デッキ→手札)

 

 天使の左右に青き眼の一族が降り立つが、ドッペルゲンガーはまだ動こうとしない。故にキサラのデュエルは加速する。

 

「レベル5の『ジェムナイト・セラフィ』に、レベル1チューナー『青き眼の祭司』をチューニング!」

 

 6つの星を繋ぐシンクロ召喚。それが終わるよりも早く、祭司は次の仕事に取りかかる。

 

「さらに、残った『青き眼の賢士』をコストに、墓地から『青き眼の祭司』の効果発動! 墓地からモンスターを復活させます!」

 

 人と龍で命の交換が行われる。かくして7つの星は2体の龍に生まれ変わった。

 

「シンクロ召喚! レベル6、最強の融合呪印生物──『ドロドロゴン』!

 さらに蘇生召喚! 『白き霊龍』!」

 

ジェムナイト・セラフィ(シンクロ素材)

青き眼の祭司(場→墓地→デッキ)

青き眼の賢士(場→墓地)

 

ドロドロゴン/守2200

白き霊龍/守2000

 

 現れたのは、澄んだ霊気の龍と、濁った沼の龍。対象的な2匹のうち、先に効果を使ったのは霊龍のほうだった。

 

「『白き霊龍』の効果で、あなたの伏せカードを除外します!」

「……どうせまた逃げられるだろうが、一応使っておく! 3枚目の『幻影霧剣』! モンスター1体はミスト化し、攻撃出来ず、攻撃されず、効果は無効化されるぜ!」

 

 そう、逃げることが可能なのだ。この『幻影霧剣』にチェーンして、『白き霊龍』をサクリファイス・エスケープさせれば、『幻影霧剣』の除外は成功する。

 しかし。

 

「……あいにく、逃げませんよ?」

「なに……?」

 

 罠カードの呪いで、白き霊龍の透けた身体が更に霞む。相手のカードを除外する光を放つだけの実体を保てていない。

 だがこれでいい。リバースカードの正体は暴かれた。止められる心配がなくなったなら、あとは一歩踏み出すだけなのだ。

 

「これが最後の賭け! 墓地から『シャッフル・リボーン』を除外して効果発動です! フィールドに残った『ブリリアント・フュージョン』をデッキに戻して、1枚ドローします!」

 

 このドローに全てが懸かっている。ここで「あのカード」を引き損なえば、罪深い敗北に圧し潰されるだろう。

 だがキサラに怖れはなかった。

 

(あの人の、あのデュエルに比べれば!)

 

『瀬人! お前は第三の選択肢を! お前とキサラが共に歩む未来を示すと言ったな! この絶望を前に、何を示せるというのだ!!』

 

(この程度!)

 

 敵は数こそ多いが、せいぜい攻撃力4000。

 手元のブルーアイズは、ゼロではない。

 相対する者に、気遣う必要もない。

 そう、これは──。

 

「ただ勝てばいい決闘なのですから!!」

 

 その風の鋭さ、その光の輝きは、鞘から抜かれた名剣の如く。青き眼と共鳴した魔力が、召喚を行う前から迸って敵を斬る。

 そのカードにはテキストこそあれど、イラストがなかった。いや或いは──『最初からこのデュエルフィールドに居たのかもしれない』。

 

「わた──、このカードは、オリジナルの力を借りた場合に、手札から特殊召喚できます! もっとも、『以前のように』『デッキから除外する』必要はありませんがね。手札からオリジナルを見せつけるだけで良いのです!」

「いったい……何を……!」

 

 キサラが見せつけたのは、本物の『青眼の白龍』。偽者には、キサラの意味深な言葉の意味は分からず、その魔力がもたらす風も光も真似できない。

 

「究極の二択の果て、第三の決断に救われた第四の光──今ここに解放します!」

 

 魔力は流れる。決闘者からカードへ。カードからディスクへ。ディスクから──フィールドに現れる龍へ!

 デッキに3枚しか入れられないカードの名は名乗れない。一度闇に堕ちた過去は変わらない。故にこう名乗る──!

 

「ブルーアイズ! オルタナティブ・ホワイト・ドラゴン!!」

 

ブリリアント・フュージョン(場→デッキ)

シャッフルリボーン(墓地→除外)

 

青眼の亜白龍/攻3000(手札→場)

 

キサラ手札3枚→4枚→3枚

 

 一度は引き裂かれた身体の繋ぐのは、罪の鎧ではなく、血脈のように広がる光の筋。原点にして頂点たる通常モンスターにはもう戻れないが、攻撃的な身体と能力を備えて生まれ変わった、未来を生きる白き龍の姿だった。

 

「『オルタナティブ』──だと!? 馬鹿な! 『影』なら分かる! 『進化系』でも分かる! だがコイツは何だ!? 世界に3枚しか存在しない『青眼の白龍』の同位体なぞ、いくら海馬瀬人やペガサスでも、そう簡単に用意出来るはずがねぇ!」

「そりゃあもう……。大変でしたよ? でも貴方に教える義理はありません。『白き霊龍』をリリースして効果発動! 先ほど見せつけたオリジナルの方を特殊召喚!」

 

 『幻影霧剣』は屍には干渉出来ない。霊体の龍はその身を墓場に捧げることで霧の呪縛を振り払い、実体の龍に転生した。

 

白き霊龍(場→墓地)

青眼の白龍/攻3000(手札→場)

キサラ手札3枚→2枚

 

 頭数の劣勢、数値上の敗北を、勝利をもたらす龍は易々と覆す。

 

「魔法カード『滅びの爆裂疾風弾』! 『青眼の白龍』の単体攻撃を、相手フィールド全体への効果破壊に変化させます!」

「それでも『The Seven Sins』は落とせねぇぜ! こいつはオーバーレイユニットを身代わりにすれば破壊されない!」

「……ならばもう一発!」

「なに……?」

「オルタナティブの効果!」

 

 もう通常モンスターではない代わりに、その龍は、彼女は、只の出しやすい攻撃力3000であること以上の破壊力を身に付けていた。

 

「攻撃を制限するという意味では『以前と同じ』ですが……。『今の効果は』、自身の攻撃宣言を放棄する代わりに、相手モンスター1体を効果で破壊する、というものです!」

 

 2体の龍が口腔に光を蓄える。それが解き放たれればどのような破壊力を生むかは、すぐに分かることとなる。

 

「行きます! 滅びの──爆裂疾風連弾(バーストストリーム・オルタナティブ)!!」

 

 爆風の波が連なり、薙ぎ倒していく。見えざる守備モンスターも、開闢の剣闘士も、戦斧に宿る騎士の霊も、闇の創造神も、大罪の悪魔を守護していた──神威の絶槍と、未界域にて最強の剛腕も!

 

No.77 The Seven Sins(ORU4→3→2)

カオス・ソルジャー─開闢の使者─(破壊)

幻影騎士団ラスティ・バルデッシュ(破壊)

ダーク・クリエイター(破壊)

メタモルポット(破壊)

 

「ぐ……! 『The Seven Sins』以外全滅……! だが『The Seven Sins』には! オーバーレイユニットが2つ残っているぜ……!」

 

 オーバーレイユニットとして『青眼の白龍』と『No.84ペイン・ゲイナー』を残している。オーバーレイユニットの残数に拘るのは、次のターンに『The Seven Sins』の効果を発動するのにオーバーレイユニットが2つ必要だからだ。

 もっとも、キサラに言わせれば。

 

「このバトルフェイズで終わらせます! 『ドロドロゴン』の効果発動! 自身を含む融合素材をフィールドから墓地へ送って、融合召喚を行います!」

「はぁ? そんなあべこべな素材で何を……」

「最強の融合呪印生物たる『ドロドロゴン』よ! いま最もふさわしい姿に、その身を変えよ!」

 

 『ドロドロゴン』を構成するヘドロが、或いは硬質化し、或いは流れ落ち、1つの芸術品を造形する。それは、海馬瀬人が愛してやまない至高の芸術。

 

「青眼の白龍だと!?」

「さらに! 『青眼の亜白龍』は、フィールドか墓地にいる間は『青眼の白龍』として扱います! まあ、『元々は青眼の白龍だったのですから』、当然ですよね?」

「てことは、まさか!」

「そうです、青眼三体融合!」

 

 光の渦の中で1つになっていく3体の龍を見届けながら、「そういえば、三体融合も良いことばかりではなかったな」とキサラは思い返す。

 『マンモスの墓場』と融合させられたり、結局負けてしまったり……。

 

 ──自分とパラドックスとSinトゥルース・ドラゴンで、三位一体にさせられたり。

 

 あの記憶と因子は、まだ彼女の中に残っていた。これから喚び出す竜は、それを元に生まれたカードだ。その証拠に、名前は一文字貰ったし、腕と翼が一体となった造形などそっくりだ。

 だが、もう罪深き世界には飲まれない。真実は自分の眼で見極める。だから真実の名は冠していても、罪(Sin)とはもう名乗らない。今と未来では、こう名乗る──!

 

「罪深き過去を乗り越えて、真の未来を生きる光の龍! いま征きます!

 ネオ・ブルーアイズ・アルティメットドラゴン!!」

 

真青眼の究極竜/攻4500

 

ドロドロゴン(場→墓地)

青眼の白龍(場→墓地)

青眼の亜白龍(場→墓地)

 

 『青眼の究極竜』の神秘性と生命力に、さらに未来技術の機光装甲を融合させた、最強の三ツ首竜が姿を現した。

 

「バトルフェイズ! 『真青眼の究極竜』で『No.77 The Seven Sins』に攻撃!」

 

 かつての『青眼の究極竜』が、3つの首の力を1つに束ねて攻撃を編み出していたのに対し、『真青眼の究極竜』は、中央の首一本で推進力・貫通力のある光の集束を完了した。それはもはやアルティメット・バーストではなく。

 

「強靭なるアルティメット・バースト! オーバーレイユニットにされたブルーアイズは、返してもらいます!

 さらにリバースカード『禁じられた聖衣』で、『No.77 The Seven Sins』の攻撃力を下げます!」

「まだだ……。まだ返す気はない! 『ペイン・ゲイナー』よ、『The Seven Sins』を守れ!」

 

 『The Seven Sins』の前に、今までオーバーレイユニットだった『ペイン・ゲイナー』が姿を現し、小さな身体から健気に蜘蛛糸を広げて攻撃を防いだ。とはいってもダメージは防げていないのだが。

 

真青眼の究極竜/攻4500

≪VS≫

No.77 The Seven Sins/攻4000→3400

(ORU2→1)

 

ドッペルゲンガーLP2500→1400

 

「ぐ……! ついにオーバーレイユニットが『青眼の白龍』だけになっちまった……! だが! そんなモンスター1体ぐらいは、次のターンの引きさえ良ければ……!」

 

 もちろん、次のターンなど来る筈もない。

 

「只のモンスター1体ではありません! 『真青眼の究極竜』は、フィールドに他のカードがない孤高の存在であるとき、3回攻撃が可能です!」

 

 追加攻撃のコストとして、2枚目の『真青眼の究極竜』が墓地に送られる。ちなみに『真青眼の究極竜』には、墓地にいる自身を除外することでブルーアイズを対象とした効果に対するカウンターが効くものだから、「それコストになってねぇだろ!?」とドッペルゲンガーと驚愕したのも無理はない。

 右の首から解き放つは。

 

「無敵のアルティメット・バースト!!」

 

 『The Seven Sins』は、またブルーアイズを蜘蛛糸で磔に、しかし今度は自らを守る盾として利用した。

 そんなことをしても、攻撃力では負けているのだから、屈折し、或いは貫通したレーザーがドッペルゲンガーを射抜くことに変わりはない。

 

真青眼の究極竜/攻4500

真青眼の究極竜(2枚目)(EXデッキ→墓地)

≪VS≫

No.77 The Seven Sins/攻3400

(戦闘破壊)

 

ドッペルゲンガーLP1400→300

 

「クク。はっはっは!」

 

 『The Seven Sins』から『青眼の白龍

』が解放されたのを見届けて、ドッペルゲンガーは軽やかに笑う。まだ何か発動出来るカードがあったのかとキサラは警戒したが。

 

「俺の敗けだよ。これが本物様の力か! さあ撃ち込んでこい! 偽者らしく、悪役らしく、敗者らしく、道化らしく! 俺も『The Seven Sins』も、盛大に吹っ飛んでやるからよ!」

 

 指先でチョイチョイと挑発してくる偽者に、キサラは小さく「ありがとうございます」と返した。

 いつかのゲームの自分のように、身体を大の字に広げて攻撃を受けようとしたのなら、自分自身を断罪するような心境になったかもしれなかったから。

 ならばあとは、『偽者の敗者』の演目に対し、『本物の勝者』の姿で応えるのみ!

 

「コストを払い、3回目の攻撃! これで最後です!

 最強の、アルティメット・バースト!!」

 

 『The Seven Sins』は、もう動こうとしない。

 残った左の首から、無抵抗な兵器とヒトを吹き飛ばすには過ぎた攻撃が繰り出される。

 だがそれでいい。

 フィナーレには何故か、全力を出しあった2人の、何処か爽やかな礼節があった気がした。

 

真青眼の究極竜/攻4500

青眼の双爆裂龍(EXデッキ→墓地)

≪VS≫

No.77 The Seven Sins/攻3400

(戦闘破壊)

 

 大罪の名を冠する闇のナンバーズが煌めいた。爆風、閃光、電流、斬?。あらゆる破壊のエネルギーが、八本の脚と、重厚な装甲を襲い──。

 

「おぉ──『The Seven Sins』が……! 最強ナンバーズの、一角が……!」

 

 神に匹敵する機構。七つの大罪と名だたる四体ものモンスターを重ね合わせて降臨した使徒は、ついに主人への遠慮も何もない大爆発を起こして破壊された──。

 

ドッペルゲンガーLP300→0

 

「ぐ……! うぅ……!! うぉぉおおおおおお──ッッ!!!」

 

 予告通り、ドッペルゲンガーの身体が何度も錐揉みしながら派手に宙を舞い、無様な墜落の後にはさらに弾みながら転がっていく。そして転がった先で大木にぶつかり、それをへし折ってしまった。

 ……ドッペルゲンガーとキサラは全く同じ身長と体型なのだが、やれと言われても自分にあんな派手なアクションは無理だろうなと、キサラは妙な感心すら覚えた。

 

「クソ……。やはり『ジェムナイト・セラフィ』に『幻影霧剣』を使うべきだったか……?」

「……まあそれでも、『ドロドロゴン』と『白き霊龍』が並ぶところまでは行けますけどね。でも……」

 

 デッキをシャッフルする理由とタイミングが変わるから、『青眼の亜白龍』を引けたかどうかは分からない、とキサラはイラストが消えたそのカードを見せながら擁護した。

 

「お前の正体はそのカードの精霊か何かなんだろ? キサラ──いや、『青眼の亜白龍』。どおりで強いはずだよ」

「……まあ大まかに言えば」

 

 瀬人に破り捨てられた4枚目の『青眼の白龍』が、パラドックスの手で『キサラ』の人格と共に歪に復元されて『Sin青眼の白龍』となり。その後瀬人とのデュエルの後に消えるはずだったところを、他の3枚の『青眼の白龍』から力を分け与えられて『青眼の亜白龍』として生を受けた──などという話は、する義理も時間もないようだった。ドッペルゲンガーの身体は黒い靄となって欠けつつある。

 

「そういう貴方は結局何者なんです? なんでこんなことを?」

「ドッペルゲンガーだよ。ドッペルゲンガーといっても、『未界域のドッペルゲンガー』だが」

 

 偽者は、自分の正体だけでなく自分のデッキの出自も語り始めた。

 

「我ら未界域は、デュエルモンスターズ界のユーマリア大陸にて、つい最近生を受けた。Unidentified Mysterious Animal──通称UMAへの、人々の信仰と畏怖を足掛かりにな」

 

 だが原典が原典なだけに、タダで見つかって、他の凡百なカード達のように使役されるのは、プライドが許さなかったのだという。

 

「だからせめて、誉れ高く広めてくれよ──。伝説のブルーアイズにすら肉薄した、未だ開かれざる界域に潜む、恐るべき獣性を! ククク……ハーハッハッハ──!!」

 

 そのままドッペルゲンガーは、燃え尽きるように黒い靄となって消えていった。地図にない川も含めて景色も崩れて移り変わり、跡に残されたのは、つい先ほどまで使われていた【未界域】デッキだけだった。

 結局ドッペルゲンガーはどうなったのだろうか。存在まで消えてしまったのか、カードの中でまだ生きているのか。そんなことに思いを馳せながら黒い靄をしばし目で追っていたキサラだったが……。

 

「うっ……。つ、疲れた……!」

 

 勝った安心感で緊張が解けてしまい、膝が抜けてしまった。それだけの疲労とダメージを耐えきってデュエルしていたということだ。

 そこへ幸か不幸か、ドッペルゲンガーの残滓とは別の黒い靄が拡がると、その中からキサラと似た服を着た大人が3人、横たわった状態で現れた。

 ドッペルゲンガーに襲われた行方不明者たちだろう。それだけなら『幸』だったのだが……。

 

「えっ……? なんでこんなに人質の管理が雑なんですか……?」

 

 3人とも明らかに顔色が悪く、うなされているように呼吸がおかしく、服の濡れ方は大量の汗によるものだった。

 おそらく、快適とは言い難い空間に幽閉されていて、まともな食事を与えられていなかったに違いない。

 

「いったいどうすれば……」

 

 無線で助けを呼んでも、合流してから森を抜けるには相当の時間がかかりそうだ。

 合流を待たずに3人を担いで森を抜けるか? キサラの『今の』体力と体格では無理だろう。

 そうやって迷っている間にも、高温多湿の熱帯雨林は、人質3人とキサラの体力をじわじわ奪っていく。さながらマンモスの墓場と融合させられた究極竜のように。

 

「……人の命には、変えられませんね!」

 

 キサラはとうとう腹を括った。一番確実な手はこれしかない。

 瞬間。キサラという人間の身体は、強い光の中へ消えた。光の中から広がったのは、白い翼──。


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