瀬人VSキサラ~時空を超える記憶~【完結後、後日談ぼちぼち執筆】   作:生徒会副長

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 《蒼眼の銀龍》が入った、ストラクチャーデッキ「青眼龍降臨」は、全国のカードショップで、大好評発売中です!


TURN6-7《蒼眼の銀龍》

キサラLP3900/手札0枚/伏せ1枚

青眼の究極竜/攻4500

青き眼の乙女/攻0

魂吸収

SinWorld

 

瀬人LP1100/手札3枚/伏せ2枚

ドル・ドラ/守1000

 

「まさか――。記憶をっ、取り戻したというの? そんなことが……」

 

 戸惑いを隠しきれないキサラの言葉に、瀬人は自嘲気味にフッっと笑う。

 

「さあな。そういう言い方が正しいかどうかは知らん。しかし――」

 

 熱く拳を握りしめ、彼は再び宣言する。

 

「俺が胸に宿した想いに、偽りはいささかもない! 今度こそ、お前を救う! そして、共に歩む未来を、この手勝ち取ってみせる!!」

「――私を、救う? 共に歩む未来を、勝ち取る?」

 

 キサラは、瀬人が宣言したことの要点を抜粋して、黒と蒼が混じった眼を丸くした。

 

「ふふふ……あっははは……」

 

 続いて乾いた笑い声をあげる。無知で哀れな決闘者を、舞踏者を嘲笑う。そして仕方なく教えてやった。

 

「貴方が出した答えは矛盾しているわ」

「どういうことだ?」

「このデュエルで貴方が勝てば、私は死ぬことになる。逆もまた然り。そんな私と共に歩む未来なんて、絶対に存在しな――」

「もし存在するとしたら、どうだ?」

 

 その発問は、キサラの表情をリセットさせた。

 

「あのヴィジョンの、モーメントが暴走する未来には至るまい。何故なら、あの未来にお前の姿はなかった! お前を救い、共に歩むという第三の選択をすれば、罪と絶望に満ちた未来を変えることができるはずだ!」

「……偉そうなこと言って、貴方のフィールドは、口ほどにもないじゃない」

 

 彼女は理想論を避け、現実を指摘した。

 

「貴方を守っているのは2枚のリバースカードと、死に損ないの雑魚ドラゴンが一匹だけ。対する私の場には『青眼の究極竜』がいる」

 

 それに同意するように、攻撃力4500の究極竜が低く吠えて瀬人を威嚇する。

 

「さらに――私の墓地に眠る『スキル・サクセサー』は、自身を墓地から除外することにより、モンスター1体の攻撃力を800ポイント上昇させる効果を、自分のターン限定で発動できる!」

「と、いうことは――」

 

 先程キサラが披露したブルーアイズ召喚コンボを思い出すことで、瀬人は気づいた。

 

「そう。『青き眼の乙女』の効果でブルーアイズを特殊召喚すれば、さらなる追撃も可能! このターンで、今度こそ終わらせてあげる! 私のターン!!」

 

 キサラにはドローカード以外に手札がない。しかし彼女は、それを一瞥して嗜虐的な笑みを浮かべた。

 

「『青き眼の乙女』を守備表示に変更し、バトルフェイズに入るわ! 『青眼の究極竜』で攻撃!」

 

 白い指が瀬人のほうに向く。攻撃目標を定めた究極竜の3つの口腔で、エネルギーが充填されていく。

 

「喰らいなさい! アルティメット・バーストォ!!」

 

 全てを滅ぼす光の砲撃が放たれ、『ドル・ドラ』を呑み込まんとする。しかし、瀬人の顔に恐怖の二文字はない。

 

「リバースカード、発動!」

 

 対するキサラもまた、驚愕の二文字を現しはしない。

 

「言っておくけれど、並みのカードならば無意味よ!」

「並みのカードなどではない。俺自身が信じた最強の竜。それを迎え撃つなら、最強トラップのひとつを使わざるをえまい!」

 

 勇ましき決闘者の足下でカードのイラストが、キサラからも見えるように反転する。それは、全てを跳ね返す無敵の光壁――。

 

「喰らえッ!『聖なるバリア‐ミラーフォース‐』! 相手の攻撃表示モンスターを全滅させる!!」

「なっ!?」

 

 今度こそは、キサラを驚愕させるに至った。『ミラーフォース』は、彼女の計算を狂わせるのに十分なカードだったのだ。

 

「そして俺は信じている! ブルーアイズの強さは『ミラーフォース』1枚で破られるものではないと!」

 

 光の奔流は『ミラーフォース』で反射され、光の矢となってキサラの方へ翔んでいく。

 

「さあ、どう避ける!?」

 

 キサラは眉間に皺を寄せながら……。

 

「貴方に心配されるまでもない! 手札から速攻魔法発動!『融合解除』!! 『青眼の究極竜』の融合を解除し――」

 

 すると究極竜が輝き、その光の中に三つの影が見えた。

 

「3体の『青眼の白龍』を、守備表示で蘇生召喚!」

 

青眼の究極竜/攻4500(EXデッキへ)

青眼の白龍/守2500×3

 

 光が止むと、影は白き龍の姿を現す。姿勢を低くしているのは守備表示の証だ。龍と乙女に迫っていた光の矢は、その頭上を空しく通過する。

 

「これで、私の場に攻撃表示モンスターはおらず、『ミラーフォース』による被害はゼロ! 残念だったわね」

「残念だったのはお前のほうだろう?」

 

 同じ得意げな笑みであっても、キサラは止まり、瀬人は深まった。

 

「俺の伏せカードが『次元幽閉』のような対象を取る効果のカードだったなら、今のターンでトドメを刺せたはず――それができなかった。お前の想像を超え、究極竜を退けさせた俺に、流れは向いている!」

「減らず口を! 究極竜ではなく、3体のブルーアイズなら勝てるとでも!?」

 

 キサラは嘗められたことに怒りを露にするが――何かに気づき、吸血鬼のような笑みを浮かべ始める。

 

「――いや、貴方が相手をするのは、3体のブルーアイズ以上の布陣よ!」

 

 白い右手が天に掲げられる。まるで、何かの儀式を行うかのように。

 

「バトルフェイズを終了し、メインフェイズ! レベル8の『青眼の白龍』に、レベル1のチューナーモンスター『青き眼の乙女』をチューニング!!」

「なにッ!?」

 

 空へ翔んだ白龍と乙女は、テクスチャー前のような光の骨格に姿を変える。その後、龍は8つの光球、乙女は光輪1つのみを残して、完全に霧散した。

 

「進化の光と古の威光――いま交わりて、守護の光となる! 蒼天を臨む銀嶺が如く、此処にそびえ立て!」

 

 ☆8+☆1=☆9

 

 集いし9つの輝きは、やがて光の柱となって空を貫く。その中に、巨龍の影が映る。

 

「シンクロ召喚! 君臨せよ、『蒼眼の銀龍』!!」

 

蒼眼の銀龍/守3000

 

 最初に見えたのは、蒼く発光する眼だった。ブルーアイズよりも小さい眼が、射抜くような光線を放っている。四肢には、その巨体を支えられる強靭な筋肉が晒されている。鱗を纏わずとも、十分な防御力があるということだろう。『蒼眼の銀龍』は『青眼の白龍』とはまた異なる、逞しい美しさと強さを持つ龍であった。

 瀬人は滅びのヴィジョンを観た際に、シンクロの概念は知ることができた。しかし実物を見たのは初めてである。

 

「シンクロ召喚!? これが――未来の召喚方法か!」

「そう。人類の進化とモーメントを加速させ、最後には滅びを招いた召喚方法よ! そして『蒼眼の銀龍』の効果発動、ホワイト・フレア・サンクチュアリ!!」

 

 すると『蒼眼の銀龍』が踏みしめた所から、白い霧のようなものが立ち込め始める。それは残る2体の『青眼の白龍』の足下まで広がった。

 

「この効果は『蒼眼の銀龍』が特殊召喚に成功した時に発動し、その後2回目のエンドフェイズを迎えるまで続く! この聖域の加護を受けている限り、私が従えるドラゴンはカード効果の対象にならず、カード効果による破壊も通用しない!」

「次の俺のターンに、カード効果で対処するのは困難だということか……!」

 

 瀬人の手札には、強力な魔法カードが1枚ある。しかしそれは『対象を選択する効果』のカードだった。故に、聖域に阻まれて効果を発揮できない。

 

「それだけじゃないわ!『蒼眼の銀龍』にはもう1つ効果がある! その名は銀龍の咆哮! スタンバイフェイズが訪れる度に、私の墓地の通常モンスターを、つまり『青眼の白龍』すら蘇生させることができる!」

 

 つまり、瀬人がこのまま何もしなければ――。

 

「次のターン、3体のブルーアイズに『蒼眼の銀龍』を加えた巨龍の軍勢が、貴方に総攻撃をかける! 今度こそ終わりよ、セト!!」

 

 鬼の形相でキサラは瀬人を睨む。3体の龍も同様に、柵を破らんとする猛獣のように激しく吼えたてる。対する瀬人の場では、『ドル・ドラ』が守備表示で平伏すのみ。

 

「私のターンは終了よ。さあ――今度こそ殺してあげる。罪と絶望を生む前に、積み重ねる前に!!」

 

キサラLP3900/手札0枚/伏せ1枚

青眼の白龍/守2500

青眼の白龍/守2500

蒼眼の銀龍/守3000

魂吸収

SinWorld

 

瀬人LP1100/手札3枚/伏せ1枚

ドル・ドラ/守1000

 

「俺の、ターン……」

 

 額に汗を浮かべながら、瀬人は恐る恐るデッキに手を伸ばす。キサラが歪んだ美貌と笑みでそれを見つめていることが、彼にはわかった。

 

(このターンで『あのカード』を引けなければ……俺は確実に負ける!)

 

 『蒼眼の銀龍』を従えたことで勝利を確信しているキサラと違い、瀬人はデッキに可能性が残されていることに気づいていた。

 だからこそ、信じるのが怖い。裏切られるのが怖い。

 

(どう贔屓目に見ても、『最強』と名乗れはしないこのデッキを……俺は心から信じられるのか? 俺が、俺が今まで信じてきた、数少ないものは――)

 

 そこまで自問自答をして、瀬人はハッと気がついた。

 

(――何を、恐れる必要があったのだろうな……)

 

 瀬人の表情は穏やかに、微笑すら浮かべるようになり、落ち着いた様子でデッキに手を伸ばしていく。その変化に、キサラは当然気づいている。

 

「どうしたの? 追い詰められすぎて、頭がおかしくなったのかしら?」

「まさか。――信じているだけさ」

「信じる?」

 

 瀬人の手がデッキに触れる。彼はドローする前に、この一枚に託した想いを熱く語った。千載一遇の機を前にした勝負師のように。

 

「そう――。キサラ、あるいはブルーアイズ! お前は、闇に堕ちようと、傷つこうと、決して俺を裏切ることはない!

 だからこそ俺は、必ずお前を闇から救い出す! そして二度と傷つけあうこともなく、庇い合うこともなく、未来へのロードを共に歩む! このターン、このドローは、その礎に足を掛けるための、第一歩であり、ラストチャンス!」

 

 剣客が鞘から抜刀するように、気高き決闘者は風を切り光が差すほどの勢いで、運命のカードを引き払う――!

 

「行くぞ。俺の……タァァ――ン!!」

 

 その見事なドローに、揺るぎない心に――彼のデッキは、応えてくれた。

 

「キサラ。お前の心のピーズがひとつ、いま救い出してやる! 俺が引いたカードは――」

 

 二人の、再会のデュエルで使われたカードの1つ。

 決闘者の王に引導を渡す鍵となったカードの1つ。

 今まで多くの物語を紡いできた魔法。そして今、瀬人とキサラを繋ぐ魔法――。

 

「『死者蘇生』!!」

「な……なんですって!?」

 

 キサラのデュエルディスクから、一枚のカードが瀬人の元へ舞い込んでくる。彼はそれを、慣れた手つきでフィールドに出した。

 数多の決闘で繰り返してきた、今までの彼にとって当たり前だった動作――。

 

「蘇れ! 俺が最も信じ、愛するカードよ! 俺と志を同じとするならば、今一度、俺に力を貸せ!!」

 

 紫色の銀河が、太陽の如き聖なる暖かい輝きで照らされた。

 否、そのカードは、彼にとって紛れもない『太陽』だった。

 彼に力を与える光。彼を見守る光。彼の征くロードを示す光――。

 

「ブルーアイズッ! ホワイト・ドラゴンッ!!」

 

青眼の白龍/攻3000(キサラの墓地→瀬人の場)

 

 光の中から現れた白き龍は、この7ターンの中で最も力強い咆哮を上げた。

 相手フィールドの三龍を前にして、恐れなど一片もない。

 それを従える誇り高き決闘者も、その心は同じだ。

 

「ふぅん。俺はさらにカードを1枚伏せ、ターンエンド!

 さあ、来るなら来い! 俺とブルーアイズが共にある限り、敗北の二文字などない!!」

 

 普段の力強さ、自信、誇り――全てを取り戻した瀬人を前に、彼女は身体を震わせ、黒の混じった銀髪を振り乱して怒り狂った。

 

「かえせ……。そのカードを……かえせええェェッ!!」

 

 7ターン目にして、決闘は様相を変えた。

 もはや、白き龍が裁きを以て瀬人を救うデュエルではなくなった。

 これは、白き龍を従える2人の決闘者のデュエル――!

 

キサラLP3900/手札0枚/伏せ1枚

青眼の白龍/守2500

青眼の白龍/守2500

蒼眼の銀龍/守3000

魂吸収

SinWorld

 

瀬人LP1100/手札2枚/伏せ2枚

青眼の白龍/攻3000

ドル・ドラ/守1000


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