瀬人VSキサラ~時空を超える記憶~【完結後、後日談ぼちぼち執筆】   作:生徒会副長

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※これは最終回ではありません


TURN・END

 ライフが尽きたキサラは、精魂果ててガックリと膝を着いた。小さく縮こまった彼女を、透き通るほど白く朝日が照らしていた。

 

「キサラ!!」

 

 自分の身体に突き抜ける激痛を物ともせず、瀬人は彼女の元へ駆け寄る――と。

 

「ありがとう……。セト、さま……」

 

 キサラの身体が霧のように薄くなっていき、向こう側の街並みが見えるまでになった。

 

「あ、はは……。せっかく、セト様が魂を、賭けてくれた、のに……。やっぱり、ダメ、みたいですね……。」

 

 その症状は時間とともに酷くなり、キサラの濃度と反比例して、光の粒子が大量に天へ昇っていく。

 

「ば、バカな!? 闇のゲームを強いる『SinWorld』は破壊した! 『Sinトゥルース・ドラゴン』も、お前もろとも破壊しないよう細心の注意を払って攻略した! なのに――何故!?」

「やっぱり……。世界が違うのかも、しれませんね……。あなたを想うことは、罪、だったのかも……」

 

 官僚と流民。白人と黒人。ドラゴンとデュエリスト。モノとヒト。古代人と現代人。死者と生者……。

 

「あなたの力になりたかった。一秒でも長く、あなたを感じ、あなたの傍に、いたかった……! でも……!」

 

 涙を浮かべた青い眼に、精一杯の笑みをつくって告げた。

 

「さよう、なら。セト様。 あなたは、ひとりでも、未来へ……駆けて……」

 

 瞬間。気がつけば抱き締めていた。

 肌の張りも跳ね返らず、存在が曖昧になりつつあることも気に止めずに彼は抱き締めた。二人の頬を熱い迸りが伝っていた。

 

「ふ……ふ……。諦めの、わるい、ひと……。」

 

 キサラが淡く抱き返すと、瀬人は力強く魂の叫びを上げた。

 

「ああ!諦めない! 諦め屈してたまるか!

 俺は三千年の時を超えてやっとわかったんだ! お前が、ブルーアイズが、デュエルが気づかせてくれたんだ!」

 

「敗者には死を――それが全くの間違いではない! だが――勝利か敗北か、生か死の二択を強いるルールや闇こそ、本当に超えるべきものだったんだ! 見えるけど見えないもの――第三の選択肢があったんだ!」

 

「俺が生きてお前が死ぬ……。そんな見え透いた選択肢にはもう惑わされない! いまここでお前が消えても、絶対に、何千年かかってもお前の笑顔を手に入れてみせる! 絶対に手に入れるのだ! どうせ手に入るものなら、いま手に入れても同じだろう!?」

 

「だからキサラ! 諦めるな!! 諦めるだけ無駄なのだ! 本気で願い、魂を賭けてみせろ! いつの日か結ばれる二人なら――いまここで1つになることの何が悪い!?」

 

 かつては罪深い愛だった。それに対し運命は、永きの別れという罰を与えた。

 しかし――。

 

「俺達が愛を欲することが罪だというなら――。」

 

 時空を超える記憶は再び愛を繋ぎ――。

 

「そんなくだらん罪を定めるルールは、俺が壊してみせる!!」

 

 数千年の呪縛を打ち砕く――!!

 

「わたし、だって……。私だって……!! もしも、許されるなら……ううん、誰からも許しを得られない想いだとしても……!」

 

 消えゆく指先に精一杯の力を込めて、愛しい人に抱き着きながら彼女は発露した。

 

「あなたの力になりたい! あなたの傍にいたい! 私は……!」

 

「私は――! あなたと共に、『生きたい』!!」

 

 そのとき――。

 キサラの身体が、超新星の産声のごとく輝いた――!!

 

――――。

 

――――光が止むと、ビルの屋上には影2つ。

 ひとつは海馬コーポレーション社長、神官セトの生まれ変わり――海馬瀬人。

 そしてもうひとつは……。

 

「え……? わ、わたし……は……」

 

 消えもせず、死にもせず、彼女はそこにいた。

 艶があり川のように流れる銀髪も、雪のように白い肌も、深く澄んだ海のような青い眼も、スラリとした手足も失われず。

 キサラは間違いなく――人間としての生を受けていた。

 

「良かったな……キサラ! 本当に……よかった!」

「……本当に、いいの? 私なんかが……あなたと生きて……!」

 

 未だ我が身に起こったことが信じられず、涙ぐみながら確かめた。

 

「他ならぬ俺たち自身が選んだ道だろう? 誰にも否定させない。誰にも邪魔させない。

 ――共に生きよう、キサラ」

「う……うわぁぁぁぁああん……!!」

 

 歳相応、女の子として相応な号泣。服が濡れることにも構わず、瀬人は共に涙を流しながら受け止めた。

 

「怖かった! ずっと、ずっと……あなたを待ち続けていたけれど……っ」

「ああ、待たせて悪かったな……」

「自分のいるべき場所も、許される場所もなくて……ずっと不安で……っ」

「大丈夫だ。これからは、二人ともに生きていこう……」

「うわぁぁぁぁああん……!」

 

 新しい未来を見つけた二人を、昇りゆく朝日が祝福していた――。

 

 

 




次回が本当の最終回です。

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