グリザイアの教室   作:光と闇の竜

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原作って大天使一之瀬の慈悲によって坂柳と龍園が生き延びていると思うんですけどどうなんですかね。


12話 暴力事件、完 

 中間テストを無事に終えた数日後、俺は櫛田との約束を叶えるためにスイーツバイキングに来ていた。メンバーは俺、綾小路、櫛田、一之瀬、椎名だ。要は櫛田と二人で出かけるから問題なのだ。だったらグループで遊びに来たことにすればいい。池や山内も櫛田とグループで遊ぶことはあるんだからそこまで面倒な事態にはならないはずだ。

 

 櫛田と椎名は初対面だったが、一之瀬を光のアイドルとすれば櫛田は闇のアイドルなのですぐにマイペースな椎名に合わせる形で打ち解けた。椎名も俺と綾小路以外に友達が増えたことを喜んでいた。光属性の一之瀬と椎名に挟まれたらリバーシみたいに櫛田も浄化されないだろうか。そんなことを考えながら美少女三人が仲良くお喋りしている光景を眺めていたら一瞬櫛田から鋭い視線が飛んできた。エスパーかお前は。

 

 それと椎名、会話の初手を「お好きな本は何ですか?」で入るのはやめておけ。それが通じるのは俺や綾小路のような読書家だけだ。

 

 

 「一之瀬、そのタルトってどこにあった?」

 「これは入口から見て右側の、えーっと手前から3番目あたりのテーブルだったかな?あ、よかったら半分こする?」

 「いいのか?それそんなに大きくないだろ」

 「できるだけたくさんの種類を食べたいからね!美味しかったらまた取りに行けばいいだけだし、はいどーぞ」

 「サンキュ」

 「あ、このケーキも美味しい!でも春寺くん、本当にご馳走してもらっちゃっていいの?結構いい値段だったけど……」

 

 一之瀬からタルトを半分分けてもらったところで櫛田が遠慮がちにそう尋ねてくる。もちろん約束だから奢ることに不満はないのだが、櫛田のキャラ的に「よっしゃラッキー」で済ますわけにもいかないのだろう。相変わらずいい子ちゃんを演じることに関しては全力の女である。

 

 「ああ。前から気になってたんだけど綾小路と2人だと流石に入りにくくてな。櫛田達が付き合ってくれたおかげでこうして堪能できてるんだ。一之瀬達も気にしないでくれ。各クラスの美少女とデートできるんなら安いぐらいだ。ポイントにも余裕があるしな」

 「にゃはは、口がお上手ですなー」

 「ふふ、そういうことであれば遠慮なくご馳走になりますね。お礼にまたおすすめの本を見繕っておきますので。もちろん綾小路くんにも」 

 「……ああ」

 

 椎名のおすすめ、確かに面白いんだけど量がな……。読み終わる前に送られてくるもんだからキリがない。速読術を身に着けていなければどれだけ積読していたのだろうか。

 

 「そういえば、都合のいいことにCクラスの生徒もいないことですしこの場でDクラスの綾小路くん達にお伝えしておきたいことがあります」

 

 スイーツを思う存分味わっていると、椎名が改まった感じでそう切り出した。

 

 「あ、もしかして龍園くんのことかな?確かに、春寺くん達にも教えておいてあげた方がいいね」

 「龍園?」

 

 椎名の言葉に心当たりがあるのか、一之瀬の方も真面目な顔をして頷いた。

 

 「一之瀬さんには改めて謝罪を。その説はご迷惑をお掛けしました」

 「ううん、もう済んだことだから。それに、その感じだとひよりちゃんは関わってないんでしょ?」

 「はい。クラスへの協力を要請されましたが興味がないとお断りしました。ですが私がCクラスの生徒であることに変わりはないので」

 「もー、いいって言ってるでしょ!私とひよりちゃんは友達、それでお終い!」

 「……はい。一之瀬さんは本当にお優しいですね」

 「普通だと思うんだけどなー」

 

 どうやらBクラスとCクラスの人間である2人にしか通じない話があるらしい。なんのことかさっぱりわからない俺達Dクラスの前では美しい友情劇が繰り広げられていた。この2人が友達になったのつい1時間ほど前だけど。まあそれはいいのだ、友情に時間は関係ないからな。椎名から改めてどういうことかと事情を聴く。

 

 「Cクラスは龍園くんという男子生徒によって支配されているのですが、彼が中々の切れ者でして。おそらくこれからクラスポイントをめぐってクラス間での争いが活発になります。それは皆さんも薄々感じていたと思いますが……」

 「春寺くんからもその可能性が高いって聞いてるよ。でも私は帆波ちゃんやひよりちゃんとは仲良しのままでいたいなって思ってる。せっかく友達になれたんだし……」

 「うんうん、競うのは仕方がないにしても皆仲良しで済むならそれがいいよね!」

 「ありがとうございます。私も皆さんにはこれからも仲良くして頂きたいと思っています。話を戻しますが、龍園くんはそのクラス間競争において学校側が介入してくるラインを探ろうと考えているようなのです」

 「それがさっきのちょっかいに繋がるわけか」

 

 にしても龍園ね、一之瀬から聞いた話だとCクラスは荒れていたらしいがそれをまとめあげたのがその龍園という男らしい。それなりの腕に加えて頭も切れると。これはちょっと警戒が必要かもしれないな。せっかくいい感じで中間テストを乗り越えられたのにクラスにちょっかいをかけられるのは鬱陶しい。

 

 「はい、実際に相談もされました。その時も興味がないからと断ったのですが、今となっては後悔しています。協力していればできるだけ穏便な方法を思いついたかもしれないのに……。すみません、最悪乱暴な方法を使ってくるかもしれません。龍園くんはそういう人物です」 

 「そんな、ひよりちゃんは悪くないよ!」

 「そうそう、うちのクラスがCクラスと揉めたのもひよりちゃんじゃなくて龍園くんの指示でしょ?そんなに申し訳なさそうな顔しないで!ほらほら、せっかくバイキングに来てるんだから甘いもの食べてスッキリしようよ!あっちのやつとか美味しそうじゃない?」

 「私がさっき食べたケーキとかおすすめだよ!」

 

 しゅんとする椎名の姿は中々庇護欲をそそるものであった。面倒見のいい一之瀬とそう演じている櫛田に挟まれるようにして連れて行かれる椎名を見送り、俺は綾小路に小声で話しかける。

 

 「どう思う?」

 「龍園という男のことか?現時点では何とも言えないな。情報がないこともそうだし、まだ向こうがどう絡んでくるかもわからない。話を聞いた限りでは荒っぽい手段も使ってきそうだから、その辺を櫛田からクラスに注意喚起してもらうぐらいしか思いつかないな」

 「そうか。ところで綾小路は不慮の事故についてどう思う?」

 「……ん?」

 「ほら、例えば不幸にもCクラスのとある男子生徒が暴漢に襲われてしばらく学校に来れなくなってしまうとか」

 「おい何の話だ?」

 「やられる前にやれ、良い言葉だと思わないか?もちろんこれはさっきの龍園の話とは何の関係もないぞ」

 

 もう俺達の学生生活を妨げるものは全て先に排除した方がいいんじゃないかと思う。まだ入学して3か月も経っていないが俺はそんな予感がしていた。この学校はとにかく普通じゃない。ちなみに俺が所属するCIRSは内閣直属の組織だ。つまりこの学校を作った鬼島という人間が俺達のトップにいるということだ。ちょっとショックだよ。

 

 「……止めておけ。まだ龍園という男がどれだけ危険かもわかっていないんだ。不要なリスクを負う必要はない。俺やお前であればどうにでも対処はできるだろう」 

 「まあつまらないジョークということにしておこうか。椎名達も帰ってきたし、この話はここまでにしておこう。必要ない責任感じて落ち込んでいるみたいだし元気づけてやれよ」

 

 クラス全体には櫛田から説明してもらうとして、須藤や池、山内には俺からも注意しておくか。須藤は勉強会の途中からだいぶ真面目になってきたけど、池と山内はラブレターを装って呼び出しとかされたらホイホイ行ってしまいそうだ。中間テストが終わったばかりだというのに、中々平穏な日々は訪れないらしい。

 

 

 

 

 

 「お、おい須藤!一人で来いって言ったろ!なんで他のやつ連れてきてんだ!」

 「須藤、ここ暑いから倒れないようにちゃんと水分補給しておけよ。夏の大会でレギュラーに選ばれたんだろ?体調管理も仕事のうちだ」

 「おうサンキュ。……ぷはっ。ただの水とはいえこれだけ暑いと妙に上手く感じるな」

 

 7月が近づいてきたとある日。案の定Cクラスがバスケ部を経由して須藤に絡んできた。まあDクラスにちょっかいをかけるにあたり一番手っ取り早いのは須藤だろう。ただしそれは中間テストを迎えるまでの話だ。今の須藤はプロのバスケットボール選手を目指すにあたって礼儀や普段の振る舞いが大事だということを理解しているので、自分に絡んでくる生徒に呼び出されたからといって、いい機会だから話つけてやるとホイホイその場に一人で赴くような馬鹿はしない。あらかじめ説明しておいたこともあってちゃんと俺に相談してきた。

 

 「それでだ。小宮、お前馬鹿か?どう考えても罠みたいな呼び出しにのこのこ一人で来るわけねーだろ。そもそも、お前らだって関係ないやつ連れてきてんじゃねえか。誰だよそいつ、バスケ部じゃねえだろ」

 「い、石崎は友達である俺らを心配してついてきてくれたんだよ!気の短いお前に突然殴られても大丈夫なようにな!」

 

 支離滅裂だな。なんで襲われる心配があるようなやつを呼び出したんだ。しかも監視カメラもない特別棟に。ていうか校舎にあれだけ監視カメラがあるのになんで特別棟にはないんだ。まあ穿った見方をすれば映像に残ると不都合なことをする場合はここを使えという学校側からの隠れたメッセージだろうな。これに気付けた生徒だけが有利に事を運べる。もう嫌だこの学校。バレなきゃ問題じゃないのはその通りだが仮にも教育機関が推奨するのはどうかと思う。

 

 「俺もそうだ。須藤が心配でな。部活中もしつこく絡んでくるやつに呼び出されたと聞いたから友達として同行を申し出たというわけだ。それで、どうして須藤を呼び出したんだ?」

 「そ、それは須藤がバスケがちょっと上手いからってそのことを自慢してくるからだな。そういうのはよくないって注意をしようと思って」 

 

 それにしてもここは暑い。熱で思考を奪われて冷静な判断ができなくなるんじゃないだろうか?小宮だったか。お前もそう思うだろ?

 

 「須藤がそんなことをするとは思えないが、仮にそれが本当だとしても先輩なり顧問の先生になりそのことを言えばいいだろ。そっちの方が話も早い、なんでわざわざ本人に話を付けようとしたんだ。俺にはどうも、3人がかりで須藤をリンチしようとしていたとしか思えないんだが」

 「は?い、言いがかりつけてんじゃねーぞ!そんなことする訳ねーだろ!」

 「じゃあもう行っていいよな。お前らも知っての通り、須藤はレギュラーに選ばれて忙しいんだ。僻むことしかできないお前たちとは違って、な」

 

 憎々し気に唇を歪め、俺はそう口にする。表情をコントロールし、相手が苛立つような顔で須藤と小宮達の差を強調するようなことを言えば、当然小宮たちは腹を立てる。

 

 「そういうことだ。レギュラーに選ばれた俺はこんなことに時間を割いてる暇はないんだよ。俺はレギュラーとして頑張るからよ、お前らもまずは補欠目指して頑張れよ。まあ一人で俺に立ち向かう度胸もないお前らじゃ難しいとは思うがな」

 

 完璧だ須藤。演技に自信がないとか言ってたがお前才能あるぞ。特に煽りに関しては申し分ない。

 

 俺と須藤はそれだけ言い残すと小宮たちに背を向ける。余裕を感じさせるようにゆっくりと歩みを進める。それがさらに小宮と近藤を苛立たせる。

 

 「ば、馬鹿にすんじゃねえっ!」

 「おいよせっ!」

 

 石崎と呼ばれた男子生徒の言葉は届かなかったのだろう、逆上した小宮が須藤目掛けて殴りかかってくる。ここまで狙い通りに行くと笑えてくるな。そんな内心を隠して俺は須藤をかばう健気な友達を装って身体を割り込ませる。

 

 「須藤危ないっ!──がっ!」

 「春寺!てめえ小宮、この野郎っ!」

 「止せ須藤!ここで殴ればそいつと同類だぞ、お前プロ目指してるんじゃなかったのかよ。こんなくだらないことで問題を起こすな」

 「春寺……」

 

 須藤、お前はもしかしたらDクラスで櫛田に続いて演技の才能があるかもしれない。完璧じゃないか。スポーツ漫画のテンプレみたいな展開だが、何があったかを言葉でも残しておくのが大事なのだ。陰でカメラを回している綾小路にサインを送り、もう十分だと伝える。ここから先は映像に残せないからな。

 

 「さて、茶番はここまででいいだろう。それで、どうする石崎?残念ながらお前たちが須藤にやらせようとしていたことはこの小宮がやってくれたわけだが」

 「え?あ、俺……」

 

 一発殴って落ち着いたのだろう、小宮は自分がしたことに気付いて顔を青ざめさせる。

 

 「何もないならこのまま保健室に行って怪我の証明を貰った後小宮を訴えるが、それでいいのか?」

 「お前、全部わかってたのか……」

 「何のことだ?」

 「ちっ、惚けやがって。……連絡するからちょっと待ってろ。小宮と近藤はこれ以上余計なことするなよ」

 

 携帯を取り出して電話をかけた石崎が電話先の相手と数度やり取りをした後こちらに携帯を渡してくる。

 

 「龍園か?」

 『クククッ、随分と粋な真似してくれるじゃねーか。ああ、そうだ。俺が龍園、Cクラスの王だ』

 

 のっけから飛ばしてくるじゃん龍園。自分のことを王とかなかなか言えないぞ。しかも王を名乗る割には規模が小さい。

 

 「ああ、お前がCクラスでしてる王様ごっこの話はどうでもいいんだ」

 『ほう、言ってくれるじゃねえか。春寺だったか。用件を聞こうか。どうせ小宮に殴られるところは誰かに動画を撮らせてるんだろう。そしてわざわざ俺を引きずりだしたってことは俺との取引が目的だ、違うか?』

 

 でも中々の切れ者って話は本当らしい。説明する手間が省けた。

 

 「話が早くて助かるな。要求は1つ、BクラスとDクラスにちょっかいをかけてくるな。これだけだ」

 『そいつは簡単には頷けない話だなぁ?DクラスだけならともかくBクラスまでとはちょっと欲張りすぎじゃねえか?』

 「一之瀬は大事な友達だからな、すでに迷惑をかけられたって話だし交渉の余地はないぞ。吞めないならこのまま動画を証拠として小宮を訴えるだけだ」

 『おいおい、まさか脅してるつもりか?訴えられたところでせいぜい停学を食らうだけだ』

 「そうか。じゃあ小宮を訴えるとしよう。可哀そうにな、横暴な王様のせいで前科が付くなんて。たとえAクラスで卒業できても苦労するだろうな」

 『何?』

 「学校に訴えるなんて言ってないだろ?訴えるのは警察にだ。後ろからいきなり殴りかかられましたってな。小宮がしたのは立派な暴行だぞ。まあ軽度だから拘留か科料で済むとは思うがどちらにせよ前科は付く。それでもいいならBクラスとDクラスにちょっかいをかけるといい」

 

 この小宮への対応で龍園がどういう人間かについてはおおよその予測が立てられる。

 

 『ちっ。……いいだろう、条件を呑む。口頭だろうが取引は取引だ、破ったら承知しねえぞ』

 「それはこっちの台詞だ。今後同様のことがあった場合は容赦しない。今度こそ警察行きだ。ちなみに一之瀬も同じ考えだ」

 『クク、随分と仲良しじゃねえか。あのお人好しの女にそんなことができるとは思えねえがな』

 

 ブラフはしっかり見破ってくるな。王を名乗るだけあってクラスの仲間は切り捨てない。いや切り捨てられない。そんなことをすれば部下が付いてこないし、最悪裏切りだってありえる。戦場でも嫌われ者の上官は後ろからの流れ弾で死ぬからな。

 

 「まあBクラスに手を出せば俺が敵に回る。そのことは覚えておくんだな」

 『それはBクラスに手を出せばお前を引きずりだせるってことか?覚えておくぜ。ああ、それと確認だがBクラスとDクラスにちょっかいをかけない。この条件に間違いはないな?』

 「ああ。ちょっかいのラインはこっちで判断するから余計なことは考えるなよ。探るような真似をすれば警察行きだ。それとな、俺も一之瀬も真っ正面からぶつかる分には望むところだし駆け引きの範疇でなら好きに策を企むといい。後味の悪い手段は使うなってことだ、ここは学校だぞ?」

 『ククク、こんな真似しておいて言いやがる。それに、お友達想いかと思えばそうでもねえらしい。春寺、お前は俺の敵として認めてやる。いずれ叩き潰してやるから楽しみにしてな』

 

 そう言い残して通話は切られた。別にAクラスに友達いないしな。好きにやってくれとしか思わない。下手に手を出せば龍園という共通の敵を前に内部で主導権争いをしているAクラスが一丸となるかもしれないが龍園なら上手くやるだろう。せいぜいAクラスのクラスポイントを削ってくれ。

 

 龍園とのファーストコンタクトはこんな感じで終わった。名演技を見せてくれた須藤と動画を撮ってくれた綾小路には報酬として特盛のラーメンを奢っておいた。




龍園が素直に感じられるかもしれませんが、ハメられたとはいえあくまで自分の指示で動いた小宮に前科が付くことは認めないタイプだと思うのでこういう形になりました。もちろん裏ではなんとか出し抜こうと考えてるいつもの龍園です。
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