ガールズ&パンツァー  これが三代目の戦車道です(女神達のメッセージ改)   作:熊さん

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 お久しぶりになります、熊と申します。
 最終章第四話を見て、処女作の改訂を始めました。
 まだ、全然進んでいませんが、ぼちぼちと書き溜めを行っています。
 お目汚しではありますが、お暇な方、良ければどうぞ。


先輩が卒業されました。

 

 校庭に植えられている桜の樹。

 その枝に芽吹いている蕾が、力強く、日、一日と大きくなっている。

 柔らかな日差しの中、海風は大洗女子学園の校庭を、優しく駆け抜けていく。

 見上げる空は、今日という日を祝福するかの如く、青く澄み渡り、白い雲が所々に浮かんで、ゆっくりと太平洋に向かって流れていく。

 大洗町の埠頭に接岸している、旧日本海軍空母のようであるが、艦体は翔鶴型であり、艦橋は赤城型という、全長7,600m、全幅1,000m、喫水が250mという巨大な船の『大洗女子学園艦』

その学園の校門前に大きな立て看板が掲げられており、そこには、どの高校でも行われる、春を告げるイベントの名がとても綺麗な行書体で書かれていた。

 

 『茨木県立大洗女子学園高等学校 普通科 卒業式』

 

 ♪~仰げば~尊し、わが師の~恩。教えの~庭にも、早幾年~♪

 

 学園の大講堂にて、厳粛な空気の中、演壇後方にある日本国国旗と大洗女子の学章に向かって直立して歌う、胸に赤いバラを刺した女子高生達。その澄んだ歌声が、この式典をより厳かなものにしている。

 バラを刺しているのが卒業生達で、その後方で卒業生の歌を椅子に座って聴いている在校生達である。卒業生や在校生の何十名かは、ハンカチで目頭を押さえ、旅立ちの別れを惜しんでいた。

 その後、卒業式も滞りなく終了し、無事に卒業した三年生達は、式典が終るとそれぞれの教室へと戻り、学び舎に別れを告げる。そうして、学校内のそれぞれの思い出深い場所に行き、学校への別れを告げていた。

 通常の授業なら、5時限目が終るチャイムが学園に鳴る頃、校舎内へ続く玄関から、胸に薔薇を射した六人の卒業生達が揃って出てきた。

 大洗女子戦車隊を率いた二代目隊長「澤梓」と副隊長の「山郷あゆみ」。隊長車の操縦手「阪口桂里奈」砲手『大野あや』。通信手『宇津木優季』そして、装填手『丸山紗季』である。

 六人の手には、それぞれ卒業証書を収める賞状筒を持っており、いつも明るいこの六人も、今日ばかりは寂しさを隠しきれないのか、会話にも元気さがない

 

「私達……、卒業……しちゃったんだね」

「「うん」」

 

 梓が呟くと、他の五人は、同時に返事をした。

 

 「あけびちゃん達にも、来てもらいたかったけど……」

 「それは無理だよ。バレー部の後輩達に呼ばれているんだからさ」

 

 あやが思い出したように言うと、あゆみが呟くように返事をする。

 すると、桂里奈が、固まって歩く六人の中から前に飛び出し、五人の方に振り向き話し出す。

 

「忍ちゃんが話してくれたんだけどね。試合の度に磯辺先輩が応援に来てくれたんだって、手作りの『アヒルさん』マーク入り応援旗を振って『根性! 根性』って叫びながら応援席から応援してくれたんだって。妙子ちゃんも、あのパーソナルマークを見ると元気が湧いてくるって、言ってたよ」

「アヒルさんチームが途中で抜けちゃったのは、本当に痛かったけど、夏の全国大会とインターハイ地区予選が、丸被りしちゃったからね。アヒルさんチームの夢だったもんね。バレー部の復活とバレーの試合をするというのは……」

 

 隊長として苦渋の判断をしたのだろう、梓がアヒルさんの三人が、戦車隊から離脱した時の事を思い出したのか、しみじみとした雰囲気で話す。

 そこまで話しながら歩いていた六人は、広い運動場へと出る。そして視線の先に、二棟の建物が小さく見えた。右に小さな体育館のような建物、左に赤レンガ造りの建物である。

 六人は赤レンガの建物に向かって歩き続ける。そして、何か思い出したのか、あゆみが梓に顔を向けて尋ねた。

 

「……そういえば、今日、伝えるんだったね。次の隊長と副隊長を誰にするか。梓、決めているの?」

「一年生同志の話し合いと選挙では、祐子ちゃんと亜希子ちゃんが同数だったから、梓に決めてもらうってことになっていたんだっけ」

 

 二人がそう言って、梓を見る。他の三人も同様に彼女を見た。五人の視線を受けた梓は、笑顔のままで小さく頷いた。

 

 そこまで話すと、ちょうど、赤レンガの『戦車倉庫』前に着いた。

 六人は戦車倉庫前に横一列に並ぶと、真ん中に立つ梓が、左右の仲間を見ながら言う。

 

「みんな、いい? 扉を開けるよ!」

 

 梓の問いに、五人は同時に頷き、梓が緑色の観音開き式、大扉をゆっくりと引きながら開けた。そこには……。

 扉の前から左右に別れて、倉庫奥へと続く一本道を作り、拍手している一年生戦車道履修者達がいた。その道の先には、右に、大洗女子学園戦車隊の象徴であり、戦車道が復活した直後から隊長車を務めてきた『Ⅳ号中戦車D型H型仕様、マークⅣスペシャル』とウサギ小屋に隠されていた所を、梓達が見つけ、六人の成長と共に戦ってきた。梓達の最初の愛機「M3中戦車Lee」が左に並べられて、六人を待っていたのである。

 後輩達の拍手の中、二両の戦車に向かって歩いていく六人。

 二両の前に着いた六人は、それぞれ横一列のまま、ゆっくりと来た道を振り返る。そして梓が「全員整列!」の号令をかける。左右に分かれていた後輩達は、「「はい!!」」と一糸乱れぬ唱和をした後、それぞれの担当の先輩達の前に、二列縦隊で並んだ。

 梓達六人だけが三年生で、残りのメンバーは全て一年生なのである。しかも、越境入学者が多く、履修者の数も合計で37名となっており、チームを組んでも戦車に乗れない人数となっていた。そこで梓は、チームではなく、各担当分けで一年生を指導する事にした。戦車長部門はあゆみが担当指導をし、砲手があや、操縦手を桂里奈が行う。通信手を優季が指導し、装填手を紗季が担当した。梓は、全担当のサポート役に回って全体訓練の指導を行う。これで、梓は一年生達が、平等に戦車に乗れて訓練を受けられる環境を作ったのである。

 梓は整列した後輩達の前に一歩前に出て、最後の訓示を行う。

 

「皆、今日はありがとう。私達六人は、今日でこの大洗女子学園から旅立ちます。でも、皆が残ってくれるので、戦車隊の事も心配していません。皆の目指す戦車道に向かって精進してくれる事を願います」

「「はい!!」」

 

 一年生達の元気な返事が、戦車倉庫内に響く。そうして、梓は、一呼吸置くと、目の前の後輩達に淡々と、重大な話をし始める。

 

「ここで、皆も知っている残念な話を伝えなければいけません。」

 

 梓の宣言に、一年生達全員が顔を伏せて、唇を噛みしめている。ここで、副隊長だったあゆみが一喝を入れる。

 

「隊長の方を向きなさい! 訓示中だよ!」

 

 あゆみの怒声を聞いた後輩達は、すぐに姿勢を直し、梓に注目する。

 

「皆も知っている事ですが『Ⅳ号』も私達と共に、今日で引退します。これは、生徒会経由での学園長からの要望と指示です。この事はどうしようもない決定事項なので覆せません。今後『Ⅳ号』は、記念戦車として、学園の中庭に保管されるそうです」

 

 梓の話を黙って聞いている、五人と後輩達。

 この話が持ち上がり、戦車隊に伝えられたのは、梓が隊長として最後の指揮を執った、三年生の冬の無限軌道杯が終った時である。梓は生徒会に直談判し、何とか撤回してもらおうと頑張ってはみたものの、生徒会ではなく学園長の希望というので無理だった事を戦車道履修者達は、全員知っていたのである。

 諦めきれない様子の一年生達を見て、梓は、今度は少し口調を明るめに変えて、話を続けた。

 

「……ですが、生徒会も『さすがに、これでは今まで頑張ってくれた戦車道履修者達が可哀そう』と思ってくれたのでしょう。ここにいる私達と一緒に学園長にお願いして、大きな約束をもらってきました」

 

 自分の左右にいる五人を交互に見ながら、笑う梓と卒業する五人。

 梓の話を、背筋を伸ばして聞いていた一年生履修者は、ざわつきはじめた。そして梓は、簡潔にその結果を報告する。

 

「新しい隊長車『あんこう』が、学校にやってきます」

 

 梓の話を聞いた後輩達は、一瞬、キョトンとした表情になり、そして、直ぐに歓声を上げた。傍にいる仲間と手を取り合い、中には抱き合っている者さえいた。その様子を嬉しそうに見つめる六人。

 

「澤隊長。その戦車はどんな戦車なのでしょうか?」

 

 戦車長部門の先頭に並ぶ、二人の女性の内の一人が、そう言って、眼鏡の奥に見える目をキラキラとさせながら、質問してきた。それを聞いた他の履修生達も、同じように整列し直し、目を輝かせて梓を見つめる。

 梓は、一度コホンと咳払いをして、間を置くとゆっくりと戦車名と購入できた理由を説明した。

 

「……やってくる戦車は『ティーガーⅡ』です。学園長が、西住流師範の西住しほ先生へ購入の相談をして、信じられないような格安で購入できたそうです。おそらく、みほ先輩の力添えもあったのかと思います。」

「『ティ……ティーガーⅡ』」が、学園に、く、来るんですか?」

「うん、来るよ。まだ時間が掛かるけど、生徒会長が五月の中旬ぐらいだと言っていたから、夏の大会には間に合うんじゃないかな」

 

 質問した娘の隣にいた、おとなしそうな、しかし、芯がありそうな強い瞳を持つ女性が驚きながら言うと、梓は笑顔でそう言った。

 梓の両隣の五人は、サプライズが見事に決まって、満足そうな顔で後輩を見ていた。

 梓はまた小さく微笑むと、喜んでいる後輩達に、三代目の隊長と副隊長の名を告げる事で、訓示を閉めた。

 

「新しい『あんこう車』を、皆に届ける事が、私達、六人が残ってくれる後輩達にできる最後の事です。皆は四月になると二年生になり、新入生も入学してきます。戦車チームも新チームになり、大きく変わることになります。頑張って、楽しく真剣に戦車道に向き合ってくれることを、私達六人は願っています。その新チームの隊長は……」

  

 そこまで話した戦車長部門の先頭に並ぶ二人の内、左に立っている、芯の強そうな眼をした女生徒を見る。

 

「遠藤祐子! あなたを隊長に指名します。そして、副隊長に……」

 

 梓は祐子の隣の眼鏡をかけた女生徒に視線を移して告げる。

 

「北川亜希子! あなたが副隊長です。両名とも力を合わせて、大洗女子学園戦車隊を引っ張って下さい」

 

「「はい!!」」

 

 二人は、同時に力強く返事をすると、梓に対して、敬礼をする。それを受けた梓は、ゆっくりと答礼を返す。こうして、最後の引継ぎが終わった。

 梓は、左右にいる五人に目配せをすると、五人は頷き、それぞれが受け持つ担当部門の後輩達の列に向かった。

 

「桂里奈先輩。桂里奈先......輩。俺、おれ……」

「もう、翔ちゃん。大きな体なのに、小さくなって……。泣かない。泣かないよ」

 

 操縦手部門の前に立った阪口桂里奈に、後輩達の先頭にいた、ひときわ目立つ身長の女性が、背中を丸め右腕で涙を拭きながら、桂里奈の名前を呟き続ける。呼ばれ続ける桂里奈は、小柄な体を目一杯伸ばし、泣き続ける彼女の頭を、ポンポンと撫でている。

 

「皆は本当に操縦が上手になったよ。これからもその調子で頑張るんだよ」

「「はい!!」」

「私達はーーー」

「「やればできる娘です!!」」

「うん。その通り!」

 

 ドヤ顔になった桂里奈は、大きく頷いた。

 

 

 砲手部門を担当している、いつも笑顔で明るい、大野あやも、今日ばかりは、静かに訓示を行っている。

 一年生の先頭に立つおっとりとした雰囲気の女子が、神妙に訓示を聞いている……。

 

 

 その隣になる、通信手部門担当の優季は涙をこらえながら、一年生に優しく訓示を示していた。

 

「……絵里ちゃん。あなたが作ったもう一つのチーム……。きっとチームの為になるから……。頑張ってね」

「あ、ありがとうございます……」

 

 通信手部門の先頭にいた、大きな眼鏡をかけているが、顔の半分を前髪で隠した絵里と呼ばれた子が顔を手で覆いながら返事をする。

 

 

 そして、不思議な空気を作っている部門があった。丸山紗季が受け持つ、装填手部門である。

 紗季は、黙ったまま後輩達の前にいる。一年生達は、目を潤ませているが、同じよう一言も喋らず、紗季を注目していた。

 すると、ようやく紗季から、言葉がでた。

 

「……装填手は、……体が丈夫じゃないと……、ダメだから……。……体、鍛えて……」

「「はい!」」

 

 言葉が少ない先輩で、後輩達も大変であっただろうが、紗季も慕われていたのだろう、紗季の短い訓示を聞いた途端、後輩達は、その場で静かに泣き出したのである。

 

 

 そして、戦車長部門担当の山郷あゆみは、激に近い訓示を後輩達にやっている。

 

「車長は、決断するという勇気が一番大切なの! それを絶対に無くさないこと! いいわね」

「「はい!!」」

 

 そう言った後、祐子と亜希子を見て、二人に対して、さらに続ける。

 

「二人はそれぞれの役割を分かって、チームの事を第一に行動するんだよ。いい?」

「はい!」

 

 あゆみは、自分が育てた戦車長達の凛々しい顔を見て、思わず涙が出そうになったが、それをこらえて、「以上!」と叫ぶ。

 

「「ありがとうございました!!」」

 

 後輩戦車長は、一斉に頭を下げた……。

 

 

 それぞれの様子を、二両の戦車前で見ていた梓は、左手首に付けていた可愛らしい腕時計を見る。

 

(時間が来ちゃった。そろそろ行かないと……)

 

 腕時計から視線を戻すと、後輩達と最後の引継ぎを終えた五人が、梓の方へ戻って来た。

 梓は、五人の顔を見渡し、小さく頷く。五人も同じ様に頷き返した。

 六人は後輩達を見て、あゆみが「私達、そろそろ行くね」と告げると、新隊長になった、遠藤祐子が初めての命令を出した。

 

「全員、見送りの体形へ移動!」

「「はい」」

 

 返事とともに、素早く移動した一年生達は、六人を迎えた時のように、大扉に向かって道を作った。

 その様子を見ていたあやが、隣にいた優季にそっと耳打ちする。

 

「あれって、絶対練習していたよね」

「うん、絶対してた」

 

 二人の会話は、他の四人にも聞こえたのか、それぞれが小さな声で「うん、やっていたね」と言って、顔を見合わせて笑った。

 開かれた大扉までにできた道を、六人は横一列の隊形で進む。そして、大扉前に来ると。梓が左右を見て言った。

 

「……じゃあ、決めていた通りに」

 

 そう言って、、両隣にいたあゆみと紗季のそれぞれの手を握った。それを合図にあゆみは右隣の優季の手を、優季は一番右にいる桂里奈と手を繋いだ。紗季は、一番左にいるあやの手をつかむ。そして、梓が「みんな、行くよお」と言ってタイミングを図る。そして……。

 

 「「せーのーで」」

 

 六人全員で声を合わせると、繋いだ手を大きく振り上げ、ジャンプしながら、戦車倉庫から飛び出した。

 着地した六人はその場で「キャッキャ」と笑い出した。そうして10mほど歩くと、今度は後輩達が、倉庫から、ワラワラと出てきた。六人はそれに気付くと、全員振り向いて、見送る後輩達に、卒業証書の入った症状筒を大きく振って、別れを告げた……。

 

 

 西住みほが造り上げた『初代大洗女子学園戦車隊』

 その復活時から戦列に加わり、負けられない数々の激闘に、主力チームとして加わり、一試合ごとに大きく成長してきた仲良し六人組で結成された戦車チーム。

 初代戦車隊の偉業を知る、最後の戦車チームが、自分達が育てた後輩達と二両の戦車に見送られながら、学び舎と戦車隊から卒業したのである。

 そして……。

 

 

 ここから、三代目となった、遠藤祐子率いる戦車隊の、悩みと挫折、それでも立ち上がり努力の末に勝利を掴み取る、歴史が始まった。

 




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