ガールズ&パンツァー  これが三代目の戦車道です(女神達のメッセージ改)   作:熊さん

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大洗戦車隊の最後の幹部が登場します。
少し癖のある女の子です。

それでは、続きをどうぞ


戦車が欲しいです

 

 祐子は翔子達の突っ込みを「エヘヘ」と笑って受け止めると席に座り、自分のカバンから携帯電話を取り出す。

 

「絵里さんに副隊長の件と通信手の事をお願いしてみるね」

 

 四人は同時に頷き、それは見た祐子が両手を使ってポチポチとメールを打ち出す。

 一分ほどして本文を打ち終わると、送信ボタンを押した。

 

「今、絵里さんに送ったから」

 

 そう言って携帯の電源を落としてカバンに直そうとしたところにメールの着信音が鳴る。

 再び携帯の電源を入れて着信相手を確認する祐子。

 そして、本文を開いて内容を四人に伝えた。

 

「絵里さんから『あんこうチーム結成おめでとう。副隊長の件は了解しました。それと通信手の件、通信手部門リーダーとして謹んでお受けいたします』だって」

 

 読み終えた祐子は、クスッと笑う。

 

「絵里さん、面白いね。お受けいたしますって」

「絵里は頭は悪いけど、その場の空気を和やかにする天才だからな」

「翔子ちゃん、それ褒めてるの、貶しているの?」

「どっちもだよ」

 

 翔子が答えると祐子達は笑い、そして小さく頷いた。

 祐子はその後四人を見渡し、今メンバー達が抱いているであろう最大の関心事について自分の考えを四人に話すのであった。

 

 

 翌日、暦は替わり四月になる。

 大洗女子学園学園艦は熊本港を出港した後、一日半で母港の大洗港に到着した。

 学園では、今日から五日後に行われる入学式の準備が生徒会を中心にして始まる。

 

 その日の放課後。

 天気は曇りだが訓練場の地面はまだ乾いてはいない。

 大破した戦車達も優秀すぎる整備スタッフ達の手により修理が終わり整備倉庫前に並べられていた。

 いつもの様に戦車道履修者達はパンツァージャケットに着替え、訓練前の訓示の為戦車倉庫前に整列している。

 メンバー達の前に対面している祐子と亜希子。

 

「昨日、私が戦車長のチームを結成しました。それについて、亜希子さんから報告があります」

 

 前日にあんこうチームを結成した祐子達は、訓練前の訓示の前に同級生であるメンバーに結成報告をした。

 祐子の横に立っている亜希子は自分の口で副隊長を辞める事、それに伴い新一年生から副隊長を選び、自分が責任を持って指導する事。副隊長が決まるまでの間、自分は副隊長代理としてチームを支える事をメンバーに伝える。

 仲間達は全員が「了解しました」と答えた。

 そして亜希子はあんこうチームのメンバーを順に紹介する。

 最後に通信手の所で自分の名を言い、通信手としてあんこうチームに入った事を告げる。

 通信手メンバーの動揺があったが、リーダーの絵里は副隊長チームの通信手になり副隊長を支えて貰う事を告げ、絵里自身の承諾を貰った事も報告した。

 その絵里は今日も補習で、訓練には参加していない。

 ほぼ幽霊メンバーと成りつつあるが、通信手部門のメンバーだけでなく履修者全員が絵里に対しての評価が下がる事は無い。

 絵里の人望も各リーダーと同じ様に高いのだった。

 亜希子の報告が終わると、祐子はメンバーを前にして自分の考えている事を話し始めた。

 

「あと三ヶ月後に、夏の全国大会が行われます。そこで各チームの編成分けと担当する戦車を決めなければなりません。後で皆さんが希望する戦車を各リーダーに伝えて下さい。ただ、今すぐ決定はしません。新一年生の履修者の人数や実力を見てから、担当戦車を決めるつもりです。宜しいですか?」

「「はい!」」

「それでは、本日の訓練を開始します。解散!」

「「宜しくお願いします!」」

 

 一礼で返事をするメンバーに、同じく一礼で返す祐子と亜希子。

 そして、亜希子が作った部門事の訓練メニューに沿って今日の訓練が始まった。

 

(……皆、ごめんなさい。私、まだ自分が決めるっていう勇気がないの)

 

 祐子は隊長になってから、ずっと悩んでいた。

 大洗戦車隊は、部門毎に交代で各戦車に乗って訓練してきたので、メンバー全員、どの戦車になっても対応ができる。

 だが、誰しも自分が乗りたい戦車があり、当然、そこに希望が被る担当が出てくるはずだと。

 上級生である梓達がいた頃は、隊長である梓が直接戦車と各担当を指名していたが、これからは違う。

 メンバーの希望する戦車に乗れるか乗れないか、その決定を出すのは祐子なのだ。

 そして、彼女を悩ます最大の問題が、今のメンバー全員が戦車に乗ることができない。

 戦車の数が絶対的に足りないのだ。

 

(……私は希望が叶わなかったり、戦車に乗れないメンバーを説得させる事ができるのかな……)

 

 祐子は、メンバーの訓練の様子を見ながら毎日考えている事に自問自答を繰り返す。

 そして、この日から……

 祐子達、各リーダーが知らないところで各部門のメンバー達の『担当する席の椅子取りゲーム』が始まっていた。

 

 

 三日後の快晴となった午後五時半の戦車倉庫前。

 

「今日の訓練は、これで終了です。お疲れ様でした

「「お疲れ様でした!!」」」

 

 祐子の号令と一礼に合わせ、間もなく新二年生となる履修者達も一礼をする。

 戦車を倉庫内に格納し、放課後の訓練も終了したメンバー達はワイワイと雑談をしながら戦車倉庫内の更衣室へと向った。

 祐子は倉庫の扉前に立ち、メンバーが倉庫へ入っていくのを見守っていると、亜希子が近づいてきた。

 

「隊長。少しお話があるのですが、これから時間が取れますか?」

「はい、大丈夫です」

「俺も気になっている事があるんだ。一緒にいいか?」

「うん。亜希子さん、翔子ちゃんも一緒で大丈夫?」

「ええ、翔子さんにも聞いてもらいたい話だから」

 

 翔子も祐子に近づいてくると「話がある」という。

 すると、恵とかなえも三人に寄ってきて「相談がある」というのである。

 祐子も最近の訓練を見ていて気になっている事があり、四人に相談しようと思ってた所だった。

 軽く立ち話程度で話をしたが、五人の相談というのは同じ内容だったのである。

 しかし、五人が五人とも原因と理由が分からないと言う。

 

「メンバーの事で、私達の知らない事を知っていそうな人って」

 

 頭を悩ます祐子が言うと、四人は一人の仲間を思い出す。

 そして相談をしている五人の意見は一致した。

 

「「絵里さん(ちゃん)に聞きに行こう」」

 

 直ぐに話がまとまった五人は急いで制服に着替えると、彼女がいるであろう図書室に行くことになった。

 

 

 放課後の図書室にて

 午後七時の閉室まであと一時間と少しの時間となり、室内には三人しかいない。

 そのうちの一人が、六人が一度に座れる大テーブルを一人で占拠して、十枚はあるかも知れないプリントと教科書、参考書を広げてひたすらに鉛筆を走らせている女子生徒がいた。

 彼女はプリントが隠れるくらいテーブルに覆いかぶさり、シーンとしている図書室の主であるかの如く周りを気にせず、黙々とプリントの問題を解いている。

 そこへ、祐子達、五人が入って来た。

 五人はテーブルを占拠している彼女の周りに座ると、右隣りに座った祐子が小さな声で彼女の名前を呼ぶ。

 

「絵里さん、頑張っているね」

「誰や、あたいの名を呼ぶのは?」

 

 彼女は、首を上げて周りにいる五人の顔をぐるりと見渡す。

 

「なんや、隊長はんかいな。それに、翔子はん達まで、どないしたん?」

 

 祐子を見ると彼女は、正面の翔子、恵とかなえ、左隣の亜希子に顔を向ける。

 すると、翔子が絵里に向かって、笑いながら声をかける。

 

「絵里さんや、今日は、大阪弁の日ですかえ」

「せやで、明日は九州弁の日で、明後日は、東北弁の日や」

「さいですか。方言の練習は大変やな」

「せや。練習はちゃんと続けなあかんからな。あと、翔子はんの使い方、間違うとるで。京都弁と混っちゃになっとる」

 

 絵里の指摘に、五人は苦笑した。

 

 

 彼女の名前は『加藤絵里』

 通信手部門のリーダーであり、大洗一の情報網の持ち主である。

 身長は155cmで、顔半分ぐらいの大きさの黒い丸メガネをしている。髪型はセミロングで、前髪をメガネの半分を隠すほど伸ばしている。

 体型は少し痩せ型だが、女性特有の丸みもそれなりにあった。

 彼女は二つ名を持っており、その二つ名は『日本の方言を操る女』である。

 戦車に乗って本来の通信手を担当している時は、綺麗な標準語で言葉も明瞭に発音するので、通信ミスは絶対に起こさないのだが、何故か日本の各地域の方便を完璧にマスターしており、その目的を祐子達は知らない。

 彼女自身は東京都の世田谷区六本木出身であり、皆には秘密にしているが超お嬢様である。

 当然、幼い頃から家庭教師を付けられ本当の学力は中学卒業時点で東大模試のA判定を取った程の才女なのだが、学校ではその実力を隠していた。

 

 

「絵里さんなら知っているかなと思って、皆で聞きに来たんです」

「なんのことやろ?」

 

 祐子の問いに、絵里は頭にはてなマークを浮かべる。

 すると、亜希子が先程五人で話していた相談内容を絵里に聞かせた。

 

「最近の訓練で、メンバーの様子がいつもと違うのよ」

「そうなのぉ、なんだかねぇ、ギスギスしているっていうかぁ」

「……お姉ちゃんの言う通り。いつもの友達とは何か違う気がする……」

 

 恵とかなえも亜希子の話をフォローするように説明し、絵里に聞かせる。

 翔子も絵里の目の前で頷いて見せた。

 話を聞いた絵里は「それは……、そうなるやろなぁ」と答えて持っていた鉛筆を置くと、両手で頬杖をついて、五人を見渡した。

 五人は絵里を見ながら、言葉の続きを待つ。

 

「皆、不安なんよ。新入生が入って来たら、自分がどうなるかわからへんから」

「絵里さん、それはどういう事なの?」

 

 絵里の話に祐子が尋ねると、彼女は頬杖を解いて隣りの祐子に視線を向ける。

 

「単純な話なんや。今まで通りに自分は戦車に乗れるんやろかという不安から他の仲間を敵視してしもうとるんや。せやろ、今でも戦車に乗れへん仲間が操縦手が一人、砲手が一人、通信手が一人の合計三人もいるんやで。ここに一年生が入ってきてみい。それも、自分より実力が上の娘が来たら自分があぶれると思っとるはずや」

 

 五人は絵里の話に納得したのか、暗い顔になる。

 祐子は視線を落とし、ポツリと呟く。

 

「そうなんだよね。全員が戦車に乗ることができないの。でも、絵里さんに言われてみたら……。そうだよね。皆の気持ちに気づかなかった。私……。隊長失格だね」

「隊長はん、それはちゃうで」

 

 絵里はすかさず返事する。そして、祐子に話かける

 

「普通なら諦めて訓練に出てけえへんくなってもおかしゅうない。それでも皆、頑張ってるやないか。それは、皆はんと一緒に強うなりたいと思っとるからなんや。そこを間違うたらあかんで」

「絵里さん……。ありがとう」

「ええんや。亜希子はん達も同じや。それを忘れたらあかんで」

 

 絵里は、亜希子達を見ながら言うと、五人は頷いた。

 

「でも、どうしたらいいのかな。訓練方法を見直すべきなのかな」

「それはちょっと考えものなのよ。今やってる訓練は西住流の基本から応用に入る部分だから」

 

 祐子の問いに亜希子が答えると、絵里以外は頭を悩ませた。

 すると、絵里がまた話を始める。

 

「これも単純な話や。単純に戦車が足りてへんからこういう問題が起きるんや。そうやろ」

「そうなんだけどな絵里、無いものは無いから仕方がないだろ」

 

 翔子が凄く当たり前の返しをすると、絵里が首を横に振りながら言う。

 

「翔子はん、駄目やで。考えて、考えて、考え抜いて勝ち筋を見つけ出す。それが大洗女子学園の戦車道のはずや。澤隊長はん達がそうしてきたとこ、見てきたやろ。何でもええ、バカバカしいアイデアでもええから何か考えを出そうやないか!」

「そうだった。すまん。後ろ向きだったな」

 

 翔子が素直に頭を下げると、五人も後ろ向きだった考えを改めそれぞれが考え始める。

 戦車の数(搭乗員の最大数)が履修者の人数より少ない。これを打破する方法を六人で考え抜く。

 個々の訓練は問題ないが、チーム戦術の訓練が公平にできなくなる

 しかし、これと言ってアイデアが出るはずもなく、翔子が背伸びをしながらボソッと言った。

 

「あ~ぁ、どっかに『この戦車拾って下さい』って、捨ててねえかな?」

「捨て猫みたいにぃ、ダンボールの中に入ってたりしてねぇ」

「そうそう、どでかいダンボールにな。正面に書いてあるんだよ『事情があって飼う事ができません。この戦車は、とても人懐っこいです。優しい人に拾われますように』なんてな」

 

 恵のボケに、翔子が乗っかる形で更にボケる。

 五人はクスッと笑うが、一人目を輝かせた者がいた。

 

「それや! ワイはなんてアホなんや、なんで気づかへんかったんやろ」

 

 絵里がいきなり大声で立ち上がった。

 図書室にいた五人の他、図書委員と他二名が絵里に向かって人差し指を唇の前に置き『シ〜。静かに』のポーズを取る。

 絵里は思わず口に両手を当てて『黙ります』のポーズで返し、静かに着席した。

 

「絵里さん『それや』って、なんの事?」

 

 祐子が尋ねるが、絵里は「ちょっと待ってや」と答えると、スカートのポケットから、携帯電話を取り出す。

 

「今からあたいの記憶が間違うてへんか、確認してみるさかい」

 

 そう言って、猛烈なスピードでどこかへメールを打ち始めた。

 上下左右に動かしメールを打つ絵里の右手は、尋常な動きではない。

 唖然としている五人の中、翔子が手品を見ているように驚きながら絵里に話かける。

 

「相変わらず凄えな。どんな練習したらそこまで早く打てるようになるんだ?」

「メールの早打ちは、通信手の必須スキルやさかいな。通信手の仲間達も結構早いで。あたい程ではあらへんけどな。五百文字ぐらいなら十五秒ぐらいで打てるで」

「マジかよ!」

「もちろん、予測変換を使ってやけどな」

 

 翔子と会話しながらも右手の親指を高速で動かし続ける絵里。

 そして、七秒程たったところで右手の動きが止まり、今度は目が左右に動き出す。二秒程左右に動いていた目が止まると小さく「よっしゃ、送信、ポチッとな」と言って、送信ボタンらしきものを押した。

 

「あとは、メールの返信を待つだけや」

 

 そう呟くと絵里は、携帯電話をスカートのポケットに戻した。

 絵里の行動に置いてけぼりを食らっている五人は、彼女からの話を待っている。

 しかし、絵里から説明が行われる様子もなく、彼女は広げていた教科書やプリント等を片付け始める。

 

「絵里ちゃん、私達、絵里ちゃんのぉ、話を待っているんだけどぉ」

 

 恵が痺れを切らして尋ねると、絵里は「もうすぐ閉室の時間やで」と言って話をはぐらかした。

 そして、テーブルに広げていたものを全てカバンにしまうと自分を見ている五人に「ほな、行こか」と言って席を立つ。

 吊られて五人も立ち上がろうとした時に小さな「ブ~ン」という振動音が絵里のスカートから聞こえた。

 絵里は直ぐにカバンをテーブルに置くと、再びポケットから携帯電話を取り出す。

 そして、送られてきたメールの内容を読む絵里。

 そして彼女は小さく頷き、また席に座ると独り言を言い考え始める。

 

「……確か改造が……、でも……、うん、大丈夫なはずや。だから……」

 

 ブツブツと言う絵里だが、肝心な所が聞き取れない。

 彼女の行動や様子に全くついて行けていない五人を見て絵里がようやく話し始めたのだが、これもよく分からない事だった。

 

「よし、とにかく行動せなあかん。皆はん、あたいは明日から二日間、学校を休むで。でも、サボりとはちゃうから心配せんでええから」

「絵里さん、学校を休むって、よく分からないんだけど」

 

 祐子が聞くと、逆に絵里が祐子に尋ね返してきた。

 

「隊長はん。あたいは堂々と行くべきやろか、それともコソコソと行くべきやろか?」

 

 聞かれた祐子は「えっ」と言う顔になる。

 しかし、他の四人は同時に同じ事を思っていた。

 

(ここで祐子に選ばせるって、何?)

 

 祐子は立ち上がると、絵里の顔を真っ直ぐに見ながら答えた。

 

「もちろん、堂々と行ってください。絵里さんがやろうとしている事が分かりませんが、堂々と動く絵里さんの方が上手くいく気がします」

 

 祐子の言葉を聞いた絵里は「不思議やな」と言って、祐子に話かける。

 

「隊長はんが決めてくれると、何もかもが上手くいく気がしてくるわ。よっしゃ、気合が入ったで。皆、あたい、頑張ってくるからな。吉報を待っててや!」

 

 絵里はそう言って五人より先に図書室を出ていった。

 そして、宣言通りに絵里の姿が学校から二日間消えたのである……。

 

 





読んでいただき、ありがとうございます。
関西在住の方で、使い方がおかしいと思われた方、どうか、誤字、脱字訂正をお願いします。

ちなみに、熊は九州在住ですので、関西弁は漫才等でしか分かりません。

次回は、仮題「驚きの連続です」です
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